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犬との生活・春の注意

 春とは3月、4月、5月のことです。冬の寒さが和らぎ、眠っていた生き物や植物の芽などが顔を見せ始めます。犬との生活において、春に注意しなければならないこととはいったい何なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

ダニ

 ダニは基本的に通年性で、1年中予防薬を投与することが理想です。しかし春が始まる3月ころから増え始めますので、特にこの時期のダニ対策は忘れないようにします。
 犬のマダニ症とは、ダニの一種である「マダニ」に咬まれることで発症する病気のことです。マダニに食い破られた皮膚表面では、破損した皮膚の細胞とマダニから分泌された唾液成分(吸着セメント)によって免疫反応が起こり、時として痛みやかゆみが生じます。 犬の体の部位別に見たダニに食われやすい場所一覧  またマダニの体内に含まれる様々な病原体が犬の体内に入り込み、重大な感染症を引き起こすこともあります。特に上の図で示したような場所が食われやすいため、散歩帰りには念入りにチェックするようにしましょう。 犬のマダニ症
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フィラリア

 春になるとフィラリアを媒介する蚊が活発に動き始めますので、外飼いだろうと室内飼いだろうと予防策を入念に行う必要があります。
 犬のフィラリア症とは、寄生虫の一種であるフィラリアによって引き起こされる症状のことです。犬に寄生するのは「犬糸状虫」(いぬしじょうちゅう, Dirofilaria immitis)と呼ばれる種で、犬の心臓(右心房/うしんぼう)と肺動脈(はいどうみゃく)を最終的な住みかとします。
 フィラリアを媒介するのは日本中どこでも見られるトウゴウヤブカ、コガタアカイエカ、ヒトスジシマカなどのありふれた蚊で、繁殖に最適な温度域が22℃~27℃、4月下旬~11月中旬が主な活動期間です。 犬のフィラリアを媒介するヒトスジシマカ  フィラリアを媒介するヒトスジシマカのライフサイクルには初春の平均気温が大きく影響しており、気温が高いほうがより早く活動を始めます。その結果、沖縄では4月なのに対し盛岡では6月下旬といった具合に、同じ日本国内でも大きな開きが生じます。以下は蚊が活発になり始める時期を地域ごとに見たときのマップです(Komagata, 2017)。 日本国内におけるかの活動開始時期ヒートマップ  フィラリア予防は通年が理想ですが、蚊が活発に動き出す春先になってからはより念入りに対策を講じるようにしましょう。またフィラリア予防薬「イベルメクチン」に対して中毒症状を示しやすい犬種というものがあります。遺伝や予防法に関する詳しい内容は以下のページで解説してありますのでご参照ください。 フィラリア予防薬(イベルメクチン)中毒を引き起こすMDR1遺伝子の変異率調査 フィラリア症
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抜け毛

 犬の被毛は夏に少なくなり冬に多くなります。こうした被毛量の増減に合わせ、春と秋に「換毛期」(かんもうき)と呼ばれる抜け毛の季節があり、断熱材として機能しているアンダーコート(下毛)が大量に抜け落ちます。一般的に「ダブルコート」と呼ばれる犬種の場合は春におけるブラッシング頻度を少し多めにしたほうがよいでしょう。「ダブルコート」とはトップコートとアンダーコートの二層構造になっている犬種のことです。 ダブルコートの短毛種~換毛期の抜け毛の量が半端では無い ダブルコートの短毛種および長毛種には具体的に以下のような犬種が含まれます。ブラッシングの頻度は春や秋の換毛期で1日2回を目安にします。ブラッシングの具体的なやり方に関しては以下のページをご参照ください。なお公園やベランダで毛を撒き散らしながらブラッシングすることは法律違反になりますのでご注意を。 犬のブラッシングのやり方
ダブルコートの短毛種
ダブルコートの長毛種
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春の植物

 春になると様々な植物が芽を出し、花を咲かせるようになります。しかし中には間違って食べてしまうと中毒に陥ってしまうものもありますので要注意です。散歩中に遭遇しやすい花や植物に関しては以下のページに写真付きでまとめてありますのでご参照ください。特に好奇心旺盛な子犬で誤食事故が起こりやすくなります。 散歩中によくある有毒植物
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花粉症

 人間と同様、犬にも花粉症はあります。
 季節性のアトピー性皮膚炎を示した柴犬の皮膚症状3月から5月にかけ、脱毛、炎症、かゆみといった皮膚炎症状を示す柴犬が東京大学付属の動物病院を受診しました(Masuda, 2002)。時期的にスギ花粉が増えるころなのでスギのアレルゲンである「Cry j 1」に対する皮内テストとIgEテストを行ったところ、両方で陽性と判定されたといいます。症状の悪化は花粉が飛散る季節に一致しており、なおかつIgE抗体濃度の高まりとも一致していたことから、最終的には花粉に含まれるCry j 1をアレルゲンとする季節性のアトピー性皮膚炎と診断されました。
 上記したように犬にも花粉症に近い症状がありますので春先のアレルゲン対策は入念に行うようにしましょう。以下は、アレルゲン(抗原)としてよく名前が挙がる物質の一覧リストです。 主要アレルゲンの季節別増減  具体的なアレルゲン予防策としては「HEPAフィルター付きの空気清浄機を付ける」「洗濯物を外干ししない」「散歩から帰ったら犬の体表面や飼い主の衣服から花粉を落とす」などがあります。ただし人間用の花粉症薬を投与すると最悪のケースでは中毒に陥ってしまいますので絶対NGです! 犬のアトピー性皮膚炎
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春に目覚める生き物

 春になると目覚める生き物の中には、犬に害を及ぼすものがあります。
 爬虫類で危険なのはヘビです。噛まれることによる傷のほか、毒を保有しており蛇毒症を引き起こす種類もいますので、山林や草地を歩くときは注意するようにしましょう。特にヤマカガシ、マムシ、ハブには要注意です。 日本国内で見られる代表的な毒蛇~ヤマカガシ、マムシ、ハブ  昆虫ではハチやテントウムシなどが挙げられます。ハチの場合は刺されることによる刺咬症やアナフィラキシーショック、テントウムシの場合は間違って食べてしまうことによる口の中への寄生が問題となります。 犬の硬口蓋に規制したナミテントウ(Harmonia axyridis)  例えば日本全国に分布している極めてありふれた種ナミテントウ(Harmonia axyridis)を犬が散歩中に拾い食いをしたり、虫の付いた植物の葉をかじってしまうと、まれに口の上(硬口蓋)に張り付いたまま寄生してしまうことがあります。ゾッとしますね。
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年中行事

 春に行われる年中行事に付随する食べ物の中には、犬が口にすると危険なものがあります。具体的には以下です。犬が間違って食べたり飲み込んだりしないようしっかり後始末をしましょう。特に飼い主にお酒が入っている場合、「日本酒をテーブルの上に放置する」など普段やらないようなとんでもないミスをしがちですのでご注意ください。 犬が異物を飲み込んだ
春の年中行事と食べ物
  • 花見(3~4月)→お酒
  • 雛祭り(3月3日)→白酒
  • ホワイトデー(3月14日)→ホワイトチョコレート
  • こどもの日(5月5日)→柏餅
  • 母の日(5月第2日曜)→カーネーションやケーキ
  • イースター(復活祭)→イースターエッグ
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火事

 火事は冬になると多くなる事はよく知られていますが、実は春も同じくらい危険です。
 消防庁が公開している消防白書(平成29年度版)では、平成28年度における火事を件数ベースで見ると冬よりも春の方が多いことが確認できます。 季節ごとに見た火事の出火件数~冬よりも春の方が多い  また出火原因の中から「放火」と「放火の疑いがある」を除くと、「タバコ」「こんろ」「焚き火」「電灯・電話の配線」など身近なものが火元になっていることが確認できます。 出火原因のなかで多いのは放火を除けばタバコ、配線、電気機器など屋内にあるもの  「タバコ」「電灯・電話の配線」「電気機器」は、飼い主の心がけによって防ぐことができるでしょう。「こんろ」に関しては近年、ペットがタッチ式調理器具に触ってスイッチが入り、火災につながるというパターンが懸念されています。犬が近づけないようにするなど、部屋の中をドッグプルーフする必要があります。 犬が喜ぶ部屋の作り方
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人の頭の切れ

 日本においては冬から春にかけて受験シーズンが到来しますが、脳のバイオリズム的に見ると最も頭の切れが悪い時期に相当するようです。
 「fMRI」と呼ばれる最新機器を用い、1年を通じて脳の機能がどのように変動するかが観察されました(Meyer, 2016)。その結果、「注意持続作業」に関しては夏至付近で最高、冬至付近で最低になるという波が観察されたといいます。また「作業記憶作業」に関しては秋で最高、春で最低になったとも。
 「春眠暁を覚えず」に象徴されるように、春先は少し頭がぼーっとしがちですので、散歩しているときにうっかりリードを離してしまわないよう注意しましょう。 犬の散歩の基本
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人の心臓発作

 明確な理由まではわかりませんが、心臓発作は春になると増えてしまうようです。
 1986年から1995年の期間、心臓発作でアメリカ国内にある退役軍人病院を受診した72,779人のデータを長期的に調べたところ、出血性の発作では明確な季節性が見られなかったものの、虚血性の発作では確認されたと言います。具体的には5月中旬がピークで、暮らしている地域や人種によって変動しないことが明らかになったとも(Oberg, 2000)。
 また1988年から2001年の期間、滋賀県高島市で行われている循環器疾患発症登録研究に、発作患者として初登録された男性患者893人と女性患者772人を対象とした疫学調査が行われました(Turin, 2008)。その結果、発症時の男性の平均年齢は69.4歳、女性の平均年齢は74.2歳で、春における患者数が多く(231.3/10万人)、男性でも(240.8/10万人)女性でも(222.1/10万人)同じ傾向を示したといいます。また危険因子として挙げられている高血圧、糖尿病、飲酒、喫煙の有無にかかわらず、春の発作で多いのは脳梗塞(154.7/10万人)と脳出血(53.7/10万人)だったとも。 犬の散歩グッズ 緊急連絡カード~地震対策ウェブ版 緊急連絡カード~大阪市版  65歳未満の人に限定してみたところ72.6/10万人、65歳以上に限定してみたところ875.9/10万人と大きな開きが見られましたので、特に65歳以上の人は突然の心臓発作に気を付けた方がよいかもしれません。万が一発作に巻き込まれたときに備え、上のサンプル画像で示したような「緊急連絡カード」を携帯していると安心です。
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