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犬との生活・冬の注意

 冬とは12月から翌年の1月、2月までのことです。気温が下がって体の抵抗力が落ちると同時に、頭の方も少し鈍くなってしまいます。通常であれば防げるはずの事故や怪我でも、飼い主のうっかりミスからとんでもない事態に発展することがありますので十分に注意しなければなりません。では犬との生活において、冬に注意しなければならないこととはいったい何なのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

屋外での怪我や事故

 以下は冬の屋外において負いやすい怪我や遭遇しやすい事故の一覧リストです。全て避けられるものですので、飼い主がしっかりとリスク管理をしてあげましょう。

低体温症

 犬の体は被毛に覆われているため、基本的には寒さに強い動物です。しかし犬の種類や年齢によっては冬の散歩が低体温症を招く危険性があります。 シングルコートで短毛、小柄なチワワは最も体温を失いやすく、すぐにブルブル震えだす  低体温症とは、生命活動に必要な体温を維持できず、体が異常に冷たくなってしまう状態のこと。犬においては35℃以下で発症するとされています。「犬の体温調整・寒いとき」でも解説したとおり、犬の体は通常被毛で覆われているため保温性が高く、滅多なことでは低体温症に陥ることはありません。しかし被毛が短い短毛種や被毛自体をそもそも持たないチャイニーズクレステッドドッグのような無毛種においては、体温が外に発散されやすく、低体温症に陥るリスクが高まります。具体的には以下のような犬種です。チワワがいつもプルプル震えているのは体が小さくて体温を失いやすいからです。
シングルコートの短毛種
 また老犬においては筋肉量の低下から体内で作られる熱が少なくなり、やはり低体温症のリスクが高まります。冬の気温が15℃以上ある沖縄においては神経質になる必要ありませんが、0℃を下回る北海道においては、飼い主が犬の体温維持を補助してあげなければなりません。被毛量が少ない、筋肉量が少ない、歳をとっている犬には、ペット用のウインタージャケットを着せてあげるといった配慮が必要となるでしょう。また犬を外飼いしている場合は、せめて冬の間だけは家の中に入れてあげてください。その他犬の低体温症を予防するためのコツは以下のページにまとめてあります。 犬が低体温症に陥った 犬の体温調整・寒いとき

凍傷

 雪が降る地域においては、地面に降り積もった雪と犬の肉球とがダイレクトに接することになりますので、凍傷にかかるるリスクが高まります。
 凍傷とは体の一部が異常に冷えてしまうことにより細胞の正常な新陳代謝が妨げられ、部分的に大量死してしまった状態(壊死)のことです。犬の肉球には動静脈吻合というメカニズムがあり、凍傷にかかりにくい仕組みになっています。しかし温度を維持する能力の限界があり、地面があまりにも冷たかったり、あまりにも長い間冷たい地面に接していると、上記した凍傷が起こり、肉球が壊死を起こしてしまいます。 犬と猫の肉球断面比較図  雪は降り積もる地域においては、「雪のない場所を歩く」「散歩の時間を短くして回数を多くする」「犬用ソックスをはかせる」といった工夫が必要になるでしょう。またたとえ雪が降らない地域であっても、キンキンに冷えたマンホールの蓋にベロや肉球が張り付いて取れなくなることがあります。 冷たくなりすぎたマンホールに舌の先がくっついてしまった野良犬  例えば上の写真は2018年1月、氷点下15℃という厳寒のウラジオストクでベロがマンホールのふたにくっついてしまった哀れな犬の姿です。幸い通行人に助けられて何とか無傷で生還できましたが、飼い主が気をつけていないとペット犬でも同じ目に遭ってしまうかもしれません。同様に2016年2月には、ブルックリンにある公園内で肉球が地面にはりついた犬が救助されていますので気をつけましょう。 犬が凍傷にかかった

融雪剤・不凍液

 冬になると車に用いる不凍液(ふとうえき)が道端に捨てられることがあります。また雪が降り積もる地域においては、自治体が道路に融雪剤(ゆうせつざい)をまくことがあります。
 犬が散歩中、道路に落ちていた不凍液を舐めとってしまったり、足の裏に着いた融雪剤をなめてしまうと重大な中毒症状に陥ることがありますので要注意です。不凍液の主成分であるエチレングリコールは急性腎不全を引き起こし、最悪のケースでは死亡してしまいます。また融雪剤の主成分である各種の化学成分は以下に示すような症状を引き起こすことがあります。
融雪剤の成分と副作用
  • 塩化ナトリウム犬における致死量は4g/kg程度と推測されています。体重5kgの場合、20gくらいの量を飲み込む必要がありますので、「融雪剤の袋を破って直接食べる」といった状況でない限り死亡事故につながる事はないでしょう。少量摂取した場合の主な症状は下痢や嘔吐といった消化器不全です。
  • 塩化カリウム大量に摂取した場合、下痢や嘔吐といった症状を示します。胃や腸の内壁が出血を起こし吐血や血便を示すこともあります。
  • 塩化マグネシウム大量に摂取した場合、下痢や嘔吐といった症状を示します。犬が腎不全を患っている場合、体内での代謝がうまくいかず高マグネシウム血症を発症することもあります。
  • カルシウム塩塩化カルシウムや炭酸カルシウムを摂取した場合、少量でも下痢や嘔吐といった症状を示します。また皮膚に付着するとその部位の炎症を引き起こすこともあります。融雪剤を撒くときは手袋をしてくださいと言われているのはそのためです。
  • 尿素一般的に動物に安全といわれていますが、大量に摂取した場合、よだれを垂らして消化器症状を示すことがあります。その他、重症の場合は衰弱、震え、メトヘモグロビン血症につながることもあります。
道端に捨てられてた不凍液や道路にまかれた融雪剤は、犬の中毒事故の原因になりうる  飼い主は散歩中、道の真ん中に融雪剤がまかれていないこと、および道端に赤、青、緑色の不凍液が捨てられていないことを確認しましょう。また犬の動きをよく観察し得体の知れないものを口に入れないように注意します。さらに散歩から帰ったら足の裏や肉球の間を丁寧に拭いてあげるとより安心です。雪の中に頭から突っ込むのが好きな犬の場合は、事前に安全性を確認してあげてください。散歩から帰った途端、犬の内容物吐き出す時は何かを誤飲してしまったかもしれません。吐き出した物のにおいを嗅ぎ、写真をとった上で動物病院に相談しましょう。 犬の散歩の基本

水難事故

 水の温度が冷たい冬における水難事故は時として命取りになります。
 冬の気温が0℃を下回る東北地方や北海道では、川や池の水が凍りついてしまうことがあります。しかし決してスケートリンクではありませんので、人間や犬が上に乗っかると突然氷が割れて大変危険です。 犬が凍った池の中に落ちてしまうと、犬にもそれを救助する人間にも危険が及ぶ  氷の下の水は0℃に近く、あっという間に体温を奪ってしまいます。助けようとして飛び込んだ飼い主も低体温症に陥ってしまう危険性がありますので、文字通り「薄氷を踏む」のはやめましょう。 犬が低体温症に陥った

交通事故

 交通事故による死亡者数はなぜか冬に増加する傾向があります。
 警察省が毎年公開している「交通事故発生状況」を見てみましょう。試しに平成27年から29年までの年間死亡者数をグラフにすると以下のようになります。 交通事故による死亡者数は11月から12月にかけて急増する  秋が終わる11月から急激に増え始め、冬が始まる12月にピークを迎えるという一定した傾向を見て取ることができます。こうした現象が起こる理由としては「寒いので車移動する人が増える」「日が短くなって暗い時間帯が増える」「年末の交通量が増える」「道路がスリッピーになる」などが想定されていますが、はっきりした事はよくわかっていません。ひょっとすると後述する「冬になると人間の頭の切れが悪くなる」という現象とも関わっているのでしょうか。
 いずれにしても冬になると交通事故に巻き込まれてしまう危険性が高まりますので、道路脇を歩くときは注意しましょう。また日が短くなっていますので、暗がりの中でも車の運転手から見えやすいよう、白っぽい上着を来たり犬にライトや反射板を装着するといった工夫もあります。 犬の散歩のマナー 犬の散歩グッズ
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室内での怪我や事故

 以下は冬の室内において負いやすい怪我や遭遇しやすい事故の一覧リストです。ほとんどは飼い主のうっかりミスを原因とするものですので、気持ちを引き締めてしっかりとリスク管理をしてあげましょう。

火傷や熱中症

 冬になって気温が下がると凍傷低体温症にかかるリスクが高まるということは誰でも知っていることです。しかし寒さをしのごうとして押し入れから取り出したコタツやストーブなどの暖房器具により、逆に火傷熱中症にかかりやすくなるということも忘れてはいけません。
 寒さがそれほど厳しくない関東地方より南の地域では、エアコンを暖房に切り替えることで冬を乗り越えることができます。しかし寒さが厳しい東北地方や北海道に暮らしている場合や、関東以南でもエアコンの風が行き渡らないくらい広い部屋に暮らしている場合は、冬を乗り切るためにコタツやストーブといった暖房器具に頼る機会が多くなります。 寒さをしのぐための暖房器具により、冬の間は逆説的に火傷や熱中症のリスクが高まる  こうした器具によって部屋が暖まる事は確かですが、暖房器具を直接触ってしまうことによる火傷や、暖房器具の近くに長時間留まることで発症する熱中症のリスクが高まってしまいます。ストーブを用いる場合は、火の近辺に近づけないよう周囲を取り囲む「ストーブガード」を用意しておく必要があるでしょう。コタツを用いる場合は、犬がその中でうたた寝をしてしまわないよう気をつけるようにします。なおコタツの中での居眠りは、人間においても脱水症状のリスクが高まりますのでご注意を。 犬が熱中症にかかった 犬が喜ぶ部屋の作り方

年中行事

 冬に行われる年中行事に付随する食べ物の中には、犬が口にすると危険なものがあります。具体的には以下です。犬が間違って食べたり飲み込んだりしないようしっかりを後始末をしましょう。なお日本ではあまり馴染みがありませんが、「塩生地飾り」とは塩を練り込んだ生地を粘土のようにして作ったクリスマスツリー用の飾りのことです。犬が食べると急性食塩中毒に陥ってしまうことがあります。
冬の年中行事と食べ物
  • クリスマス(12月24・25日)→塩生地飾り・骨付きの肉料理・ケーキ・お酒・ポインセチア
  • お正月(1月1日)→お酒
  • 成人の日(1月中旬)→お酒・タバコ
  • バレンタインデー(2月14日)→チョコレート
チョコレートの誤飲による中毒事例はバレンタインデーがある2月にピークを迎える  特にバレンタインデーがある2月はチョコレートの誤飲による中毒事例がピークを迎える時期です。犬に関するあらゆる市販本やあらゆるネット記事に「チョコレートは危険!」と書かれているにもかかわらず、知らずに与えてしまう人やうっかりテーブルの上に置き忘れてしまう人が毎年後をたちません。最悪のケースでは死んでしまうこともありますので、犬が間違って食べてしまわないよう十分ご注意ください。 犬にとって危険な毒物 犬が異物を飲み込んだ

火事

 冬になると拍子木を鳴らしながら「火の用心」と言って回る声が近所で聞かれるようになります。その理由は空気が乾燥して火事が発生しやすくなるからです。
 消防庁が公開している消防白書(平成29年度版)では、平成28年度における火事を件数ベースで見ると春と冬に多いことが確認できます。 季節ごとに見た火事の出火件数~春と冬に多い  また出火原因の中から「放火」と「放火の疑いがある」を除くと、「タバコ」「こんろ」「焚き火」「電灯・電話の配線」など身近なものが火元になっていることが確認できます。 出火原因のなかで多いのは放火を除けばタバコ、配線、電気機器など屋内にあるもの  「タバコ」「電灯・電話の配線」「電気機器」は、飼い主の心がけによって防ぐことができるでしょう。「こんろ」に関しては近年、ペットがタッチ式調理器具に触ってスイッチが入り、火災につながるというパターンが懸念されています。犬が近づけないようにするなど、部屋の中をドッグプルーフする必要があります。 タッチ式のこんろが出現したことにより、犬や猫と言ったペットを原因とする火事が増えつつある  上の写真は2018年2月、アメリカ・マサチューセッツ州にあるアパートの一室で留守番中の犬がキッチンコンロを点火した瞬間をとらえたものです。幸い火災報知器がしっかりと作動したことにより消防隊が駆けつけて事なきを得ましたが、キッチン周辺に犬を立ち入らせないことの重要性を痛感させてくれますね。なお飼い主が留守中、犬がガスコンロのボタンを押して火災が発生した場合、不注意により火事を起こした「失火罪」で飼い主が罪に問われる可能性がありますのでご注意ください。 犬が喜ぶ部屋の作り方

ヒートショック

 ヒートショックとは暖かい場所から急に寒い場所に移動したり、逆に寒い場所から急に暖かい場所に移動したときに生じる体のパニック状態のことです。
 人間や犬を始めとする恒温動物の体温は、脳内にある体温調整中枢と自律神経系などによってコントロールされています。しかしあまりにも温度差が激しい場所を行き来すると、体温を自動調整する自律神経系がパニック状態に陥り、全身の血圧や心拍数に異常が生じてしまうことがあります。これがヒートショックです。 犬の体温調整・暑いとき 犬の体温調整・寒いとき 寒暖差が激しい場所を行き来すると自律神経や心臓に強い負担がかかる(ヒートショック)  持病として高血圧や動脈硬化を抱えている場合や高齢者の場合、最悪のケースでは脳卒中や心筋梗塞を起こしてその場に倒れこんでしまうことがありますので侮(あなど)れません。冬においては「暖かい屋内→寒い屋外」「寒い屋外→暖かい室内」の両方においてリスクが高まりますので、しっかりと防寒具を身につけ、体が感じる寒暖差がなるべく少なくなるようにしましょう。また室温を少し下げておき、外気温との差をあらかじめ小さくしておくというのも効果的です。 犬の散歩
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病気や感染症

 以下は気温が下がる冬において増える病気や感染症の一覧リストです。リスクを認識していれば予防することはそれほど難しくありません。

ノロウイルス

 気候が温暖な北半球では、冬にノロウイルスが猛威を振るう傾向があります。
 1997年から2011年の間にノロウイルスに関して公開された論文(38の症例報告+29の集団発生事例)を分析したところ、人間における症例の52.7%、集団発生事例の41.2%が冬の間に起こっていることが判明したといいます。また期間を「涼しい時期」に広げたところ、症例の78.9%、集団発生事例の71.0%までもが含まれたとのこと(Armed, 2012)。
 日本においても11月くらいから増えはじめ、12月~1月にピークを迎えるという傾向が確認されていますので(→厚生労働省)、この時期におけるノロウイルス感染には十分な注意が必要です。 北半球の国々では冬季にノロウイルスの流行が来る  冬におけるノロウイルスの猛威は犬にとっても無関係ではありません。一昔前まで犬はノロウイルスに感染しないと考えられてきましたが、近年行われた調査により真実でないことが明らかになりました。この事実を発見したのは複数の大学から構成されるイギリスの研究チーム(Caddy, 2015)。325頭の犬から採取した血液サンプルを解析したところ、そのうち43頭から、ノロウイルスに対する抗体(感染した証拠)が発見されたといいます。さらに、数あるノロウイルスのうち、代表的な7つのジェノタイプ(遺伝子の型)を実験環境で観察したところ、犬の消化管の組織に結合する様子が確認されたとも。ノロウイルスが犬の消化管細胞内に侵入して自己複製できるかとか、複製できた場合どのような病原性を発揮するかに関してはまだよくわかっていませんが、少なくとも「犬もノロウイルスに感染する」ことは事実のようです。
 ノロウイルスによって発症する感染性胃腸炎は、そのほとんどが経口感染です。厚生労働省では、特に以下のような感染経路に注意するよう呼びかけています。
ノロウイルスの注意点
  • 感染者のふん便や吐ぶつ
  • 感染者のくしゃみや咳
  • 二枚貝を非加熱で食べる
  • 井戸水や簡易水道を消毒不十分で摂取する
 また予防策は「汚染源を触らない」「生ものは食べない」「よく手洗いをする」などです。上記調査によると犬がウイルスを保有している可能性を否定できないため、ウンチの処理後は必ず手洗いをした方がよいでしょう。

インフルエンザ

 インフルエンザとはインフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症のこと。誰でも一度はかかり、発熱、吐き気、下痢といった症状に苦しんだことがあるのではないでしょうか。 インフルエンザウイルスの顕微鏡拡大写真  インフルエンザウイルスは基本的に種特異性があり、ある特定のウイルスはある特定の動物にしか感染しないという特徴を持っています。例えば「鳥インフルエンザ」「豚インフルエンザ」「ヒトインフルエンザ」などです。その一方、突然変異によって種の壁を超えやすいウイルスとしても知られており、本来馬にしか感染しないはずの馬インフルエンザや本来鳥にしか感染しないはずの鳥インフルエンザが犬にも感染することが確認されています(Crawford, 2005 | Song, 2008)。また2009年、豚インフルエンザウイルスが人の体内で突然変異を起こし、世界的な「2009年新型インフルエンザ」を引き起こしたことは記憶に新しいでしょう。以下は新型インフルエンザが猛威を奮った地域です。 2009年、世界的な大流行を見せた新型インフルエンザウイルス「H1N1/2009」の伝播図  さて、インフルエンザウイルスが突然変異によって種の壁を超えてしまった場合にやっかいなのは、「人→犬」「犬→人」という感染ルートが生じてしまうという点です。2009年11月、中国においてインフルエンザに感染した2頭の犬を調べたところ、人間の間で新型インフルエンザとして流行した「H1N1/2009」に極めて近いタイプであることが確認されたと言います。症状自体は軽かったものの、ウイルスは鼻の分泌物から外界に拡散され、犬から犬に伝播することが確認されました(Lin, 2009)。
 上記した事実から、種特異性を失ったインフルエンザウイルスが現れた場合、犬から犬、人から人、人から犬、犬から人へウイルスが広がってしまう可能性を否定できません。 インフルエンザウイルスの種類によっては人から犬、犬から人への感染もあり得る  日本においては11月下旬から12月上旬にかけて患者数が増え始め、翌1~3月頃にピークを迎えた後、数ヶ月かけて少しずつ終息していくというのが恒例のパターンです(国立感染症研究所)。ひょっとすると犬は症状を示していないだけで、実はインフルエンザウイルスに感染しているかもしれません。最悪の事態を想定し、特に冬の間は唾液や鼻水が口の中に入らないよう注意したほうが無難でしょう。危険なのは「よだれのついた食器を片付ける時」「犬に手を舐められた時」「顔の近くで犬がくしゃみをした時」「犬に顔を舐められた時」などです。

回虫

 犬の消化管に侵入して勝手に居候(いそうろう)生活を送る内部寄生虫のうち、「回虫」は冬になると増えるかもしれません。
 2011年7月から2014年10月の期間、オランダ国内に暮らしている生後6ヶ月以上の犬938頭から月1で糞便サンプルを回収し、寄生虫症の一種である回虫の初感染と再感染に関する統計データを長期的に収集しました(Nijsse, 2016)。その結果、初感染にしても再感染にしても感染率のピークが冬にくることが明らかになったといいます。
 この現象の理由はよくわかっていませんが、犬の祖先である狼から受け継いだ生体リズムや、散歩量が減ることによるストレスが犬の免疫力を低下させているのではないかと推測されています。冬季の虫下しは念入りに行なったほうがよいかもしれません。 犬の回虫症 犬の回虫症における初感染と再感染の危険因子

キャビンフィーバー

 キャビンフィーバー(cabin fever)とは狭い空間に長時間閉じ込められたときに生じる精神的苦痛を表す俗語です。
 冬になると気温が下がるため外に出て何かをしようというモチベーションが下がり、家の中に引きこもりがちになります。食事を宅配ピザやネット通販で済ませている場合は、もはや短時間の外出すらする必要がありません。こうした生活を続けていると知らないうちにキャビンフィーバーを発症し、気分が鬱々としてしまうかもしれません。 狭い場所に長期間とどまっていると気分が鬱々としてキャビン・フィーバーを発症する  2008年カナダのカルガリー暮らしている428人に対してアンケート調査を行い、散歩量に季節性があるかどうかの検証が行われました。その結果、夏と冬におけるリクリエーション目的での散歩量は犬を飼っていない人よりも犬を飼っている人の方が統計的に多いことが判明したといいます(Lail, 2011)。
 どうやら犬を飼っていること自体が冬期における散歩のモチベーションとなり、飼い主の運動量を増やしてくれるようです。散歩は飼い主の「キャビンフィーバー」を予防するためにも、犬のストレスを解消するためにも重要ですので、防寒を整えた上で習慣的に行うようにしましょう。 犬の散歩
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バイオリズム

 以下は冬の到来に伴いバイオリズム(生体リズム)が変化して現れる様々な変化です。バイオリズムとは時間や季節に合わせてONとOFFが切り替わるスイッチのようなもので、犬だけでなく人間にもあります。

食事量

 被毛の長さにかかわらず、冬になると体温を維持するため犬の食事量が増えるようです。
 ダブルコートの短毛種であるビーグル5頭とダブルコートの長毛種であるシベリアンハスキー5頭を対象とし、季節ごとのカロリー摂取量を長期的に観察したところ、ハスキーでは夏の中旬が最低で「49 kcal/kg/day」、11月が最高で77%増の「87 kcal/kg/day」になったといいます。またビーグルでは夏の間が最低で「85 kcal/kg/day」、11月が最高で69%増の「144 kcal/kg/day」だったとも(John L. Durrer, 1962)。
 さらに石川県の金沢で外飼いされているメスの雑種犬を対象とし、季節ごとの体温や熱産生量をモニタリングしたところ、冬になると被毛量を増やして保温性を高めると同時に、休息時の熱産生を高めて寒さに順応していることが明らかになったといいます(Sugano, 1981)。 気温が下がる冬になると基礎代謝を保つため犬の食事量が増える  上記したような観察結果から、被毛の長さにかかわらず気温が下がる冬の間は体温を産生するために大量のカロリーを消費する必要があるようです。犬が突然食いしん坊になるのは普通のことですので、エサの量を夏よりも少し多めしてあげましょう。ただし犬を室内飼いにしている場合、外飼いの犬のようにカロリー消費量が60~70%も増えるということはさすがにないでしょうから、10~20%増やした上で犬の様子を観察してみましょう。あまりにも増やしてしまうと単なるカロリーオーバーになってしまう危険性があります。 犬に必要な栄養量

抜け毛

 メス犬の発情サイクルと被毛の成長サイクルは連動しているようです。
 ジャーマンシェパードのメス犬を対象として被毛の成長サイクルを数年に渡って観察したところ、発情前期の直前もしくは発情前期と同時に換毛(脱毛量の増加)が起こるという現象が確認されたといいます(Patricia A.Hale, 1982)。またメスのグレーハウンドを対象として被毛の成長サイクルを2年間にわたって追跡調査したところ、発情によって毛の成長が抑えられる傾向が見られたとのこと(W. F. Butler, 1981)。
 メス犬を屋外で飼育した場合、日照時間の影響から晩冬~早春に発情することが多くなりますので、避妊手術を行っていないメス犬の場合、2~3月になると脱毛量が増えて被毛のトータル量が減るものと考えられます。この時期のブラッシング頻度をやや増やしてあげる必要があるかもしれません。ブラッシングの具体的なやり方に関しては以下のページをご参照ください。 犬のブラッシングのやり方 犬の去勢・避妊手術

いがみ合い・攻撃性

 夏の終わり頃から初の始めにかけて起こりやすいメス犬の発情期に合わせ、犬同士の敵対行動が増えるかもしれません。
 インド・カトワの郊外に暮らしている野犬12頭を対象とし、敵対的交流の季節性が検証されました(Pal, 1998)。その結果、グループ内における敵対的交流はメス犬が発情期に入っている夏(雨季)の終わり(12.33±1.99)およびメス犬が泌乳期に入っている冬(13.33±1.89)で最多になることが明らかになったといいます。また別グループとの間における敵対的交流に関しても、夏(雨季)の終わり(27.75±2.01)と冬の間(32.25±4.43)に最多だったとも。攻撃性は特にメス犬において高い傾向が見られました。 発情サイクルが犬(特にメス)の攻撃性に影響を及ぼす可能性がある  メス犬を屋外で飼育した場合、日照時間の影響から晩夏~初秋に発情することが多くなりますので、野犬と同様体内におけるホルモンバランスの変化から犬同士のいがみ合いが増えるかもしれません。無駄な争いごとを避けるため、犬を室内飼いに切り替えたり避妊手術を施すといった配慮が必要となるでしょう。 犬が喜ぶ部屋の作り方 犬の去勢・避妊手術

人の頭の切れ

 日本においては冬から春にかけて受験シーズンが到来しますが、脳のバイオリズム的に見ると最も頭の切れが悪い時期に相当するようです。
 「fMRI」と呼ばれる最新機器を用い、1年を通じて脳の機能がどのように変動するかが観察されました(Meyer, 2016)。その結果、「注意持続作業」に関しては夏至付近で最高、冬至付近で最低になるという波が観察されたといいます。また「作業記憶作業」に関しては秋で最高、春で最低になったとも。
 冬至(12月22日ころ)を境目とした冬の間は少し頭がぼーっとしがちですので、散歩しているときにうっかりリードを離してしまわないよう注意しましょう。冬に交通事故による死亡者数が増える理由は、ひょっとすると「注意持続作業」の能力が低下するからなのでしょうか?
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