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犬に関する夏の注意

 犬は全身を毛で覆われており、人間よりも寒さに強い反面、暑い環境が苦手です。 犬のこうした特性を理解せず、飼い主の体感温度を犬の体感温度と勘違いしていると、思わぬ病気や事故につながります。以下では犬の体温調整の仕方や、夏場を快適に過ごすためのヒントについて解説しますのでご参照下さい。

犬の体温調整について

 以下では、犬の体温調整に関する基礎知識について解説します。

気化熱とは?

 犬と人間は、共に「気化熱」を利用して体温を下げています。「気化熱」(きかねつ)とは、水の分子が空気中に散らばる際、それまで付着していたものから奪い去る熱のことです。 水が対象物から熱を奪う「気化熱」の基本イメージ  少々わかりにくい気化熱を理解する際は、熱々のラーメンを冷ます状況をイメージすると分かりやすいでしょう。 人間や犬が体温を下げるメカニズムは、ラーメンを冷ますのと一緒 麺を箸で持ち上げ、フーフーと息をかけると、次第に温度が下がって食べやすくなります。これは、麺の表面に付着していた水の分子が息の力で外にはじき出されるとき、麺の持っていた熱を一緒にもっていくために起こる現象です。人間や犬が体温を下げるときも、この「ラーメン冷まし」と同じメカニズムが働いています。
 「暑い」と感じたとき、人間は全身の皮膚に分布している汗腺から汗を出し、その汗を蒸発させることで体温を下げます。一方犬は、舌から気道にかけての部分を唾液で濡らし、その水分を蒸発させることで体温を下げます。その両方に共通しているのは、「体に付着している水の分子を空気中に散らすことで、体温を気化熱として体外に出している」という点です。これは、息を掛けられたラーメンが少しずつ水分を失い、徐々に冷めていく現象と同じと言えます。

犬のパンティング(あえぎ呼吸)

 犬の「ハーハー」というパンティング(あえぎ呼吸)は、人間で言う「うちわ」や「扇風機」に相当するものです。
 ラーメンに息を吹きかけると冷たくなるのと同様、人や犬が効率的に体温を下げるには、風が重要な役割を果たします。汗をかいた体にうちわや扇風機で風を当てると、ひんやりとした体感が生まれます。これは、体の表面に風が当たり、そこにあった水分子を効率的に体外に弾き飛ばしてくれるためです。また犬が暑いと感じているときは、舌を出して「ハーハー」と荒い息遣いをします。これは、素早く呼吸することで風を生み出し、舌や気道に付着している水分を効率的に外に弾き飛ばそうとしているのです。
 つまり、犬が「ハーハー」というパンティング(あえぎ呼吸)をしているときは、ちょうど人間がうちわをあおいでいる状況と同じと言えます。
気化熱とは、水分子を仲介役として体温を外界に逃がすことなのです。
せっかく体温を逃がしても、熱を含んだ湿気が再び体温を上昇させてしまいます。

犬と人間の体感温度の違い

 人間も犬も、水分が蒸発するときの気化熱を利用して体温調整をしていますが、その調整能力には大きな差があります。
犬と人間の体温調整能力
  • 汗腺 人間は、体中に存在している汗腺(かんせん)という分泌腺から汗を噴き出すことができますが、犬に汗腺はほとんどありません。その結果、水分を気化できる部分が呼吸器系の表面に限定されてしまい、放出できる気化熱も少なくなります。つまり、犬は体温がこもりやすいということです。
  • パンティング 犬は呼吸器表面の水分を効率的に蒸発させるため、「パンティング」と呼ばれる激しい呼吸をします。しかしこのパンティングには、肋間筋(ろっかんきん)や横隔膜といった筋肉の収縮が必要です。筋肉の収縮運動には体温の上昇を伴いますので、せっかく冷えた体もすぐに温まってしまいます。
  • 被毛 人間と違い、犬は被毛に覆われています(一部の犬種を除く)。犬の被毛は人間のダウンジャケットと同様、体温を外界に逃がさないようにする作用があります。
 「汗腺をもたないこと」、「パンティングを要すること」、「被毛を持つこと」という特徴により、犬は寒さに強いけれども、体温を下げることが苦手です。その結果、人と犬との間には、以下に示すような体感温度の違いがあるものと考えられます。 人間と犬の体感温度を比べると、犬のほうがはるかに暑い思いをしていることが理解できるでしょう。  人間が「ちょっと暑いかな・・・」と感じているとき、犬は「死ぬほど暑いよ!」とあえいでいる 可能性もありますので、特に夏場は以下で解説する熱中症に注意しましょう。
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犬の熱中症対策

 熱中症(ねっちゅうしょう)とは、上昇した体温をうまく冷却できず、体のいたるところに不調をきたす病態です。最悪のケースでは死に至る危険性をはらんでおり、人間のみならず、犬や猫などのペットもかかるあなどれない病気です。このセクションでは「犬の熱中症予防」にテーマを絞り、解説していきます。 犬が熱中症にかかった

常に「コートを一枚羽織った状態」を想定する

犬の体感温度をシミュレーションするためのコツです。  コートを一枚羽織った状態は、ちょうど犬が被毛に覆われている状態に相当します。犬の体感温度を理解するため、その厚着の状態を想定して温度調整しましょう(ちょっと涼しいと感じるくらいが犬には適温です)。また短毛種の場合(ミニピンやスムースダックスなど)はコート一枚ではなくシャツ一枚くらいを想定して温度調整します。

扇風機とエアコンを併用する

犬が風に当たっていると気持ちよさそうな顔をしますが、果たして体温を下げる効果があるのでしょうか?  夏場、犬に対して扇風機を当てている人がいますが、人間の体感と犬の体感を同一視することは危険です。この方法は被毛の中の空気の入れ替えにはなりますが、先述したとおり犬には汗腺がありませんので、体温自体はそれほど下がりません。犬はパンティングによって体温を下げていますが、扇風機を当てることで口から放出できる気化熱の量が劇的に増加するわけでもありません。ですから犬に扇風機を当てることは、まったく無意味ではないにしても、実はそれほど効果的ではないのです。
 根本的な解決法はエアコンで部屋の室温自体を下げることです。ただし電気代がバカになりませんので、日光が入ってくる窓を遮光カーテンなどで遮ったり、扇風機を併用して冷気が満遍なく部屋に行き渡るようにして冷房効率が高めましょう。 犬に必要な睡眠・管理グッズ
節電熱中症  近年はエコの観点から節電が一般化し、なるべくエアコンをつけないようにするという心がけが浸透してきています。しかしその一方、暑さを極端にやせ我慢しすぎて、結果的に熱中症にかかってしまう「節電熱中症」というケースが増えてきています。特に年配の方や乳幼児のいるご家庭では、体調を崩さないよう室温管理には十分お気をつけください。以下は一般的な人間の熱中症の症状です。危険信号として参考にしてください。
  • 汗の量が異常に多い
  • 暑いのに皮膚に汗をかいていない
  • ズキズキと心拍に合わせて拍動する頭痛
  • めまいや吐き気
  • 体温が異常に高い
  • 意識がもうろうとする

扇風機を最大限に利用する裏技

汗をかかない動物たちは、夏場いったいどのようにして体温を外界に逃がしているのでしょう。  暑い砂漠に住んでいる哺乳動物は、自分の被毛をなめることで気化熱の放出量を増大させ、体温を下げます。また豚は泥の中を転げ回ることで水分を身にまとい、その水分の気化熱で体温を下げています。
 これと同様、犬の被毛に霧吹きなどで軽く水を吹きかけた上で扇風機を当てると、人間の汗と同じように大量の気化熱が放出され、犬は涼しさを感じます。犬が舌を出してハーハーと苦しそうな呼吸をしているときやエアコン代がかさむ時は、取り急ぎこの方法で体温を下げてあげてください。 なお被毛を短くカットして地肌に水を塗布した方がはるかに効果的です。
犬に霧吹きするときの注意
  • 犬が嫌がる場合は無理をしない
  • 水は犬が体をブルブル振るって”脱水”しない程度に
  • 極端に冷たい水は心臓に悪いので、人肌程度の温度にして
  • 風がないと水が気化しないので扇風機とワンセットで
  • あまり何度も繰り返すと逆に体が冷えるので様子を見ながら

被毛を夏仕様にトリミングする

 気温の上がる夏場は、ポメラニアンを柴犬カットにするなど、 被毛をやや短めにトリミングしてあげると効果的です(パピーカット, サマーカット)。これは人間が「衣替え」(ころもがえ)によって夏服に切り替えるのと全く同じ理由で、被毛の中にこもってしまいがちな温かい空気を外に逃がしやすくする効果があります。 地肌が見えてしまうくらい犬の被毛を刈り込んでしまうのはNG  ただし、いくら犬が暑そうだからと言って、地肌が見えるくらい被毛を短くしてしまうのはやめたほうがよいでしょう。メリットよりもデメリットの方が大きくなる危険性があります。
犬を丸刈りにするデメリット
  • 外気温がもろに体に伝わる
  • 紫外線を浴びやすくなる
  • すり傷などを負いやすくなる
 冬場における犬の被毛は、体温を外に逃がさない「ジャケット」ですが、夏場における被毛は外気温を中に入れない「断熱材」として機能しています。特に外気温が体温よりも高い37度を超えるような日は、本来被毛が遮断してくれるはずの外気温が、もろに体内に入ってきてしまい、熱中症を予防するどころか、逆に助長してしまうという結果になりかねません。 夏場における犬や猫の被毛は、外気温から体表を守る断熱材の役割を果たす  サマーカットとはあくまでも、夏を目前にして犬が自然と被毛量を減らす「換毛期」(かんもうき)を手助けすることです。換毛期で全ての被毛が抜け落ち、つるっぱげのヘアレスドッグになってしまう犬種はいません。この事実は、いくら暑い夏といえども、被毛をある程度残しておくことには意味があることを示しています。 犬の毛 ASPCA BLOG

飲み水が絶対切れないようにする

 先述したように、犬はパンティングによって体温調整します。気温の上がる夏場は飲み水が絶対切れないように注意してください。脱水症状(だっすいしょうじょう)を起こし、最悪のケースでは死に至ります。

散歩のスケジュールを変える

 直射日光のほか、 犬はアスファルトや地面からの照り返しをもろに浴びます。人間の体感温度よりはるかに暑いと感じていますので、日の照った日中を避け、朝方や夕方に散歩時間を変更してください。このとき、飼い主が事前に、自分の手で地面の温度を確認するようにしましょう。また、まず冷房の効いた室内で芸やトリックを仕込んで犬を少し疲れさせ、外が涼しくなったタイミングで外出し、散歩は早めに切り上げるという方法もあります。 犬の散歩 犬の芸・トリック

犬が屋外にいる場合

 やむをえない理由により犬を屋外で飼育している場合は、夏季における室外犬の注意点を以下に列挙しますので、参考にしてみてください。ちなみに夏場、犬を車の中に放置することは、たとえ5分でも厳禁です。 犬を庭や外で飼う
外飼いの犬を熱中症から守る方法
  • 室内に入れてあげる  涼しい室内に入れてあげることが一番です。飼い主自身が厚手のセーターを着た状態で1時間ほど犬小屋の近くにとどまってみれば、犬のしんどさがわかります。
  • 日陰を作る  直射日光をさえぎる「すだれ」や「よしず」、ビニールシートのようなものを小屋周辺に設置しましょう。
  • 飲み水を切らさない  夏場はボールに入れた水も早く蒸発してしまいます。2~3時間おきに犬の飲み水を確認し、絶対切れないようにします。
  • 地面からの熱を遮断  犬小屋を高床式にし、熱せられた地面からの熱が、直接床に伝わらないようにしましょう。
  • 日光の直射を避ける  犬小屋の入り口が太陽の指す方向に向かないようにしましょう。
  • プール  入れるのは、もちろん犬専用のプールです。体温より冷たい水に入るとかなりの冷却作用がありますが、必ず飼い主監視の下で入らせてください。
  • 犬小屋用扇風機  扇風機には小屋の中にこもった熱い空気を若干低い外気と入れ替える効果はありますが、注意点もあります。まず一つは、犬が好奇心にかられて触ると、怪我をしてしまう恐れがあるという点。そしてもう一つは、外気温が体温と同じ、もしくは体温より高い場合、扇風機は体にドライヤーを当てているのと同じことになり、逆効果になってしまうという点です。使用する場合は外気温を確認し、飼い主が監視した状態を基本としてください。
  • 打ち水  犬小屋周辺に打ち水をすると、若干地面の温度が下がってくれます。また、犬小屋の外壁に水をかけても、少しだけ小屋内の気温上昇を抑制してくれます。
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夏場の花火について

  夏の風物詩(ふうぶつし)として「花火」がありますが、犬にとって花火は雷と同様恐怖の対象でしかありません。花火大会の最中、恐怖に駆られて脱走し迷子になる犬が多いので、飼い主はあらかじめ花火の音に対して犬を慣らしておきましょう。

犬をいろいろな音に慣らす

 犬をある特定の音に慣らす際のしつけ方は、下にリンクした「いろいろな音に慣らす」をご参照下さい。また花火大会の開催予定もリンクしておきますので、近くで大会がないかどうかご確認下さい。 いろいろな音に慣らす 2017年度花火大会予定表
花火と犬の迷子について  アニコム損害保険株式会社は2012年6月21日、ペット保険「どうぶつ健保」契約者を対象とした、ペットの迷子に関する調査結果を発表しました。この調査は、2010年4月1日から2012年3月31日までの間に、同社の契約者専用サービス「迷子捜索サポートサービス」に寄せられた捜索依頼の情報をもとに行われたものです。
 月別の迷子発生件数に関しては、6月から9月にかけて増加傾向にあり、なかでも8月、9月は1年で特に発生しやすいとのこと。犬の場合、雷や花火などの大きな音に驚いて逃げてしまったケースが多く、猫は窓や網戸を自分で開けて逃げてしまったというケースが多く見受けられたそうです。

花火の音サンプルいろいろ

 代表的な花火の音を当サイトで用意しました。小さい音から始めて徐々に音量を上げていきましょう (詳しくは「いろいろな音に慣らす」をご参照下さい)。  下記リンクをクリックすると花火の音が切り替わります。音量はつまみで調整してください(別ウィンドウ・YouTube)。
花火の音いろいろ
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