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犬がやけどしたらどうする?~原因・症状から応急処置法まで

 犬がやけどした場合について病態、症状、原因、応急処置法別に解説します。不慮の怪我や事故に遭遇する前に予習しておき、いざとなったときスムーズに動けるようにしておきましょう。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬がやけどしたときの原因と症状

 やけど(熱傷)とは、熱・化学薬品・放射線などにより、皮膚を始めとする体表組織が局所的に損傷を受けた状態を言います。
 ストーブ、焚き火、アウトドアのグリル、熱々のお風呂への落下などによる重いやけどの他、電気コタツ、ペット用電気カーペット、電気ストーブ、ドライヤーなどによる低温やけどもあります。また化学薬品や火事の煙、夏場の暑く焼けたアスファルトも原因として数えられます。
 犬がやけどしたときの症状としては以下のようなものが挙げられます。
犬がやけどしたの主症状
  • 患部を気にするしぐさ
  • 患部を触ると痛がる
  • 毛のこげた臭いがする
  • 皮膚に赤みが見られる(I度熱傷)
  • 水泡(みずぶくれ)ができている(II度熱傷)
  • 皮膚がむけている(II~III度熱傷)
  • 皮がむけて皮下の筋肉が露出している(IV度熱傷)
低温やけどとは?
 低温やけどとは火傷の一種で、比較的低温の熱源による皮膚の損傷を言います。一般的に熱源が44度の場合、約6~10時間で火傷となります。主な原因は、冬場の湯たんぽ、カイロ、ストーブ、ホットカーペットなどです。
 なお以下は、やけど(熱傷)の重症度を深さによって分類したときの一覧です。皮膚は上から「表皮」、「真皮」、「皮下組織」という層から成り立っており、熱源がどの深さまで達したかによってI~III度に分類されます。皮下組織のさらに下にある筋肉まで達したやけどがIV度ですが、火事に巻き込まれるなどよほどひどい状況でない限り、ここまでのやけどを負うことはありません。
深度によって分類したときのやけど
  • I度 I度は表皮に限局される熱傷です。皮膚が赤くなったりジンジンと痛みを発したりしますが、数日で回復します。犬や猫においては被毛で覆い隠されているため、確認すること自体が困難です。
  • II-a度 II-a度は真皮の上半分くらいに限局される熱傷で、「浅達性II度」とも呼ばれます。赤みや痛みのほか、水ぶくれ(水疱)が形成され、治癒するまでには10日~2週間を要します。
  • II-b度 II-b度は真皮の下半分くらいに限局される熱傷で、「深達性II度」とも呼ばれます。赤み、痛み、水ぶくれ(水疱)、潰瘍のほか、真皮を構成しているコラーゲンの破壊によって軽度のケロイド(瘢痕)が形成されます。治癒するまでには1ヶ月以上を要します。
  • III度 III度は皮下組織にまで及ぶ熱傷です。表面が薄黄色~褐色に変色し、乾燥してゴワゴワになるため、ときに「羊皮紙」と形容されます。血管や繊維芽細胞を含めた皮膚の全層が破壊されるため、もはや組織が再生することはありません。熱傷の痕は可動域を制限された拘縮状態になるため、皮膚移植が必要になることもあります。

犬がやけどしたときの応急処置・治療法

 犬がやけどしたときの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬がやけどしたときの主な治療法
  • 患部を冷やす  犬の皮膚は被毛で覆われていて患部が見えにくいので、痛がらない程度によく探します。皮膚がやや赤くなって毛がわずかに抜けている程度でしたら、応急処置は人間の場合と同様、 火傷した部位を氷水で冷やして炎症の激化を防ぎます。
  • 獣医さんへ  皮膚がむけて地肌がもろに露出していたり、水ぶくれができているような場合(II度以上の熱傷の場合)は、ガーゼや脱脂綿を冷水で濡らしてそっと患部にあて、早急に獣医さんの元へ行きましょう。
  • 感染対策 組織の壊死や欠損が生じているような重症例においては、皮膚による防御機能が失われた状態にあるため、感染の危険性が高まります。そこで行われるのが洗浄とデブリードマンです。洗浄は、熱傷部分を水や生理食塩水できれいに洗い流すことで、感染の原因となるような異物や壊死組織を除去します。デブリードマン(仏:debridement)とは、壊死組織を外科的に切除して周辺組織への影響を防ぐ処置のことで、メスや剪刀を用いて行われます。その後、免疫力を落とさないため安静時の2倍程度のエネルギーが供給され、経過観察が行われます。日帰りでできる治療ではないため、通常は入院が必要です。