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犬を外で飼うときの注意・完全ガイド~庭の整え方から犬小屋の正しい設置方法まで

 家の庭を犬に開放して思う存分遊んでもらうにはどのような工夫をすればよいのでしょうか?また犬を外で飼うときはどのような点に注意すればよいのでしょうか?ここではプライベートドッグランを安全に作るときのポイント、および犬を外飼いすることのデメリットや注意点について詳しく解説します。

犬が遊べる庭を作る

 一戸建て住宅の場合、敷地面積から建物の面積を差し引いたエリアは庭として用いられることがあります。ここでは、個人宅の庭を犬が自由に遊べるプライベート・ドッグランにするときのポイントと注意点について解説します。なお犬を庭に出すときは、万が一迷子になってしまったときに備え、迷子札やマイクロチップを装着しておきます。

サークルフェンスを設ける

 庭の一区画だけをドッグランにしたい場合は、庭の中にフェンスで囲まれた空間を作る必要があります。
 地面が土で支柱を打ち込めるような場合は市販されているドッグランセットなどが利用できるでしょう。多くは等間隔で打ち込んだ支柱の間にネットを張るというものです。簡単に設置できるというのは大きなメリットですが、高さはせいぜい1m程度しかありませんので、小型犬以外に対する脱走予防効果はあまりありません。また一度打ち込むと移動するのが大変というデメリットもあります。
 地面が固くて支柱を打ち込めないような場合は置いて設置するタイプのサークルフェンスもあります。しかし高額なため広い面積を囲おうとするとそれなりの費用がかかります。
 アウトドア用の簡易サークルフェンスを使うという手もありますが、かなり小さな面積しか囲えませんので、犬が思う存分走り回るには少し手狭でしょう。

外構フェンスを設ける

 庭全体をドッグランにしたい場合は、敷地の境界線近くに外構(がいこう, エクステリアとも)フェンスを設置する必要があります。
 ブロック塀の上に設置するタイプや地面に支柱を埋め込んで設置するタイプなどがあります。ブロック塀を用いる際は建築基準法によって地盤面より2.2m以内などの規制を受けますので詳しくは専門業者にお問い合わせ下さい。どちらのタイプのエクステリアにしてもDIYで作ってしまうと知らないうちに法令違反になっていることがありますのでご注意下さい。主なポイントと注意点は以下です。

飛び越え予防

 ブロック塀タイプにしても支柱埋め込みタイプにしても、犬がフェンスをジャンプして飛び越えてしまわないよう、ある一定の高さが必要です。犬における高飛びの世界記録はグレーハウンドの「シンデレラ・メイ」がもつ1.73mですので、これよりも高い1.8mあれば中~大型犬でもひとまず安心でしょう。
 しかしブロック塀タイプの場合、フェンスを支えているブロックの段差部分を足場にして犬が飛び出してしまう危険性があります。このタイプのフェンスを用いている場合、犬を放つときは必ず飼い主が付き添って目を離さないよう気をつけます(下図)。 ブロック・フェンスの場合、擁壁を足場にして犬が脱走する危険性あり また支柱埋め込みタイプでも、フェンスの近くにゴミ箱や物置、コンポストを置いてしまうと犬が踏み台にして脱走してしまいますので同様の注意が必要です(下図)。 支柱フェンスの場合、フェンス近くの障害物を足場にして犬が脱走する危険性あり  フェンスの中には鳥よけや防犯のためスパイクをつけているものがあります。しかしフェンスを飛び越えようとした犬に突き刺さってしまうというケースがたびたび聞かれるため、犬のことを考えるとこのデザインは避けたほうがよいでしょう。例えば以下は2016年、ノースカロライナ州のイエローラブ「ウィルバー」に起こった悲劇です(→出典)。幸い一命はとりとめましたが、中~大型犬の場合、150cm程度のフェンスなら乗り越えられるようです。 犬が飛び越えようとしたとき体に刺さる可能性があるスパイクフェンスは危険  器用な犬だとまるでサルのように網目状のメッシュフェンスをよじ登ることができます。このタイプのフェンスを用いている場合は絶対に犬から目を離さないようにしなければなりません。

穴掘り予防

 フェンスが支柱埋め込みタイプの場合、支柱と支柱の間に障害物がなく、地面がむき出しになっていることがあります。犬が前足で地面を掘り進めて脱走してしまう危険性があるので、レンガや植木鉢を置くなどして穴掘りを予防します。ただしゴミ箱や物置など踏み台になるものは置かないようにします。地中に金網などを埋めて掘り返し防止(dig-proof)をするという方法もありますが、犬が爪を引っ掛けて怪我をしてしまうかもしれませんので一長一短です。 犬が出入り口下の地面を掘って隙間から脱走するというパターンはよくある

すり抜け予防

 隙間が広いフェンスの場合、小型犬がすり抜けて外に逃げ出してしまう可能性がありますので、網の目は最低でも犬の頭の骨が通過できない幅にします。ただしあまりにも目を細かくすると通気性が悪くなるというデメリットもあります。 小型犬の場合フェンスの隙間をくぐりぬけてしまう危険性あり

倒壊予防

 フェンスの中には置くだけでしっかりと固定しないタイプのものがあります。こうしたものを敷地の外周に置いてしまうと、台風が来た時に倒れたり、大型犬が体当たりして倒してしまう危険性がありますので、使用するときは敷地内だけにとどめておきます。

電気柵は違法!

 フェンスに弱い電流を流して動物の行き来を妨げる「電気さく」は電気事業法の規制を受けます。使用条件は「田畑、牧場、その他これに類する場所」、「野獣の侵入又は家畜の脱出を防止するため」、「感電又は火災のおそれがない」ですので、一般家庭で使用するのは違法です。2015年7月、静岡県の仁科川支流で、自作の電気柵からの漏電で子供を含む男女7人が感電する事故が発生したのは記憶に新しいところです。 一般家庭における電気柵の使用は違法  一方、海外では「見えない柵」という商品が販売されています。これはフェンスや地中に発信装置、犬の首輪に受信装置をつけ、装置同士が近づくと犬の首輪に電気ショックが流れるというものです。動物虐待に当たるという観点から法律で使用を禁じている国もあります。例えばウェールズでは2010年3月から犬猫に対する電気ショックを与えるアイテムの使用を禁じており、違反者には最大で2万ポンドもしくは6ヶ月の懲役が科せられることになっています。翌2011年には電気カラー(首輪)をつけたボーダーコリーが動物保護施設に収容され、マイクロチップを通して判明した飼い主が罰金刑を受けました(→出典)。幸いこの商品は日本で流通していないようです。無駄吠えを防止するための似たような商品はありますが…。

適切なフェンスがない場合

 ブロック塀やフェンスに十分な高さがない場合は、犬に長めのリードを装着して脱走を予防します。
 最悪なのは、勢い良く走っているときにリードの限界が来て「ガツン!」と強い衝撃が加わってしまうことです。ハーネスではなく首輪の場合は舌骨を骨折する危険性がありますので、「首輪の代わりにハーネスを用いる」「リードの長さに十分な余裕をもたせる」「リードの一部がゴム製で伸縮性のあるものを使う」「あまり全力で走らせないようにする」といった配慮をします。
 なおフレキシブルリードを用いる場合は、犬の体に合わせたものを使い、オートブレーキ機能を備えたものは避けるようにします。
 庭に木があってワイヤーを張ることができるような場合は、トロリードッグラン(エアリアルドッグラン)にするという選択肢もあります。これは中空に張ったワイヤーに犬のリードをつなぐというもので、ちょうどトロリーバスのようなイメージです。基本構造は以下。
トロリードッグラン基本構造
  • 固定具木などに先端が輪になったアイボルトなどをしっかり差し込んで固定する。
  • ワイヤーホームセンターなどで先端が輪になった金属製のワイヤーを買う。固定具と固定具の間の長さは予め測っておく。
  • ターンバックルワイヤーのテンション(張り具合)を調整する器具。緩んだままだとワイヤーが外れてしまう危険性あり。
  • 滑車輪状のスプリングフックだけだと滑りが悪いのでワイヤーには滑車を取り付ける。
  • ランナーケーブルショック吸収機能がついたもの。
トロリー(エアリアル)ドッグランの特徴はトロリーバスのようにワイヤーで中空につながれている点  上記「トロリードッグラン」はDIYで作れないこともないですが、犬が動くたびに多少の音が鳴りますので、常時つなぎっぱなしにするのではなく、犬が庭で遊ぶときだけに限定します。またつないだまま目を離すと破損や脱走の危険性があるため、使う際は必ず飼い主が付き添い、トラブルに備えます。近隣住人との騒音トラブルにも気をつけて下さい。
 ワイヤーを10m以上にすると、ワイヤーの重さだけで相当な負荷が固定具にかかります。そこに中~大型犬の引っ張り力が加わると、金具が根本から外れてしまう可能性を否定できません。使う前には必ず固定具の安全チェックをするよう心がけます。

床材

 犬の足が接する庭の床面には様々なバリエーションがあります。かかる費用を度外視し、犬に対する「優しさ」という観点で優先順位を付けると人工芝>天然芝>その他といったところでしょうか。
 以下は、それぞれの床材が持つメリットとデメリットです。
庭床材のメリットとデメリット
  • 土の地面そのまま【メリット】
    費用がかからない
    【デメリット】
    見た目が悪い | クッション性がない | 水はけが悪く雨が降ったときグジャグジャになる | 足が汚れやすい
  • 人工芝【メリット】
    クッション性が高くて犬の足に優しい(パイルが十分長い場合に限る) | 排水孔があり水はけが良い | 熱すぎたり冷たすぎたりしない | 1年中使える | 日当たりが悪くても大丈夫 | 防草シートにより雑草や虫がわかない | 寝転んでも汚れない(トイレにしていない場合に限る)
    【デメリット】
    導入費用がかかる(DIYの場合1㎡あたり1,000~5,000円/業者に頼んだ場合1㎡あたり5,000~10,000円) | 寿命は長くて10年(日焼けで変色したり芝のパイルが寝てしまう) | 水はけが悪いとカビが生える | 火気厳禁(商品によっては防炎加工あり) | クッション材の危険性(芝の間に巻く黒いゴムチップの発がん性が海外で問題になっている) | 夏場はやや熱を持つ
  • 天然芝【メリット】
    導入費用が安い(人工芝の1/10程度) | クッション性が高くて犬の足に優しい(草が生い茂っている場合に限る) | 熱すぎたり冷たすぎたりしない | しっかり管理すれば10年以上もつ | バーベキューができる
    【デメリット】
    しっかり管理しないと雨が降ったときグジャグジャになる | 芝刈り(5~10月は月一)、肥料(4~6月)、水やりなど管理が大変 | 冬は枯れてしまう | 雑草が紛れることがある | 激しい運動で芝がちぎれる | 日当たりが悪いと枯れてしまう | 防虫剤(なめくじ・アリ・わらじむし)の危険性がある
  • その他その他の床材としてはレンガ、タイル、マイクロセメント、砂利、石畳などがあります。しかしどれも夏は熱く冬は冷たい、照り返しが激しい、クッション性がなくスリップしやすい、犬が足を痛めやすいといったデメリットを持っており、犬が走り回るときの理想的な床環境とはいえません。

出入口

 フェンスに連続する形で設けられている出入口の中には、下の部分にかなり大きな隙間が空いているものがあります。小さい犬の場合くぐり抜けて脱走してしまう危険性がありますので要注意です。また把手がハンドル式の場合、犬が見よう見まねで開けてしまうかもしれませんので、事前にしっかりとロックしておきます。 エントランスゲートの下にある隙間は犬の脱走口になりやすい

家庭菜園・ガーデニング

 庭の一角で家庭菜園を行っている場合、犬に荒らされてしまう可能性が大です。あらかじめ置くだけタイプのフェンスで囲っておけば入れなくなりますが、菜園が小さい場合に限ります。
 植物の中には犬に有害なものもありますので植えないようにします。例えばニンニク、ニラ、タマネギ、長ネギなどです。ニンニクに含まれる「アリシン」や玉ネギに含まれる「アリルプロピルジスルファイド」を誤食してしまう、溶血性貧血を起こす危険性があります。また土に用いる肥料や殺虫剤なども危険です。 散歩中によくある有毒植物 庭の菜園やガーデニングでは犬の誤食による中毒事故に注意が必要  庭の一角でガーデニングを行っている場合、家庭菜園の場合と同様、荒らされてしまう可能性がありますのであらかじめ置き型フェンスなどでできるだけ囲っておきます。また植物の中には有毒なものもありますので、何でもかんでも植えてよいというわけではありません。有毒植物のリストに関しては非常にたくさんありますので以下のページをご参照下さい。 犬にとって危険な有毒植物

池・水たまり

 庭の中に池(ビオトープ)や水たまりがある場合、季節によっては蚊の幼虫であるボウフラが発生してしまいます。使用していない場合はつぶしてしまうのがベストですが、事情によりつぶせない場合はポンプなどで水をこまめに循環させます。また犬のフィラリア対策も行いましょう。 庭の中で水の溜まる場所は常にボウフラが発生する危険がある  庭の中にできた小さな水たまりがボウフラの発生源になることがあります。具体的にはブロック塀の穴、放置されたプラスチック容器、スイレン鉢、雨水枡(うすいます)、ししおどし、鉢・プランターの受け皿などです。雨が降った翌日などは特に水が溜まりやすいため、排水できるものはこまめにしておきます。
NEXT:犬小屋の置き方

犬小屋の正しい設置方法

 犬にとって飼い主の家は本宅、犬小屋は別荘です。以下では庭に犬小屋を設置して犬に快適に使ってもらうためのポイントを解説します。なお犬を外につなぎっぱなしにするという行為は、たとえ都道府県の条例で認められていても明らかな動物愛護法違反です。犬を屋外に出して外飼いするのは1日のうち数時間にとどめ、夜は家の中に入れてあげて下さい。

最低限の広さ

 アメリカ合衆国農務省(USDA)が設定しているガイドラインでは、犬の収容スペースに必要最低限の空間を「(体長+15cm)×(体長+15cm)×(頭の高さ+15cm)」としています。これはちょうど、壁に触れることなく体を自由に方向転換できる程度の広さです。庭に犬小屋を設置するときも最低限このくらいの広さは欲しいものです。 アメリカ合衆国農務省(USDA)が定める犬に必要な収容空間最低値  ただしあまりにも大きい犬小屋を作ってしまうと、建築基準法が定める「建ぺい率」に違反してしまうことがあります。「建ぺい率」とは敷地面積における建物面積の割合のことです。例えば敷地面積が100坪で建物面積が50坪の場合50%となります。この建ぺい率は防災上の観点から地域によって30~80%の範囲内で上限が定められており、原則として超えてはなりません。ここで言う「建物」には家屋のほか「土地に固定されており、中に人が入るような物置、車庫、カーポート」も含まれます。
 ガレージのような超巨大な犬小屋を建てる人はあまりいないでしょうが、人が入れるほど大きなものは「建物」とみなされ、建ぺい率に影響を及ぼす可能性がありますのでご注意下さい。

犬小屋の置き場所

 犬小屋を置くときのポイントは、小屋が犬にとっての快適な別荘になるよう、ストレスの源をできる限り少なくするということです。以下で一例を示します。

騒音ストレス予防

 犬を設置する際は騒音が少ない場所を選びます。交通量が多い往来が家の前にある場合はなるべく家屋に近い場所に設置してあげましょう。家屋側にあるエアコンの室外機もまた騒音源です。吹き出す風もわずらわしいため近くに犬小屋を置かないようにします。人の出入りが激しい場合は玄関ドアからも遠ざけるようにします。

視覚ストレス予防

 警戒心が強い犬の場合、犬小屋から見知らぬ人や犬が見えただけで興奮し、ストレスを溜め込んでしまいます。吠える原因になる可能性もあるため、目隠しフェンスなどで視界を覆ってあげましょう。一方、家族の姿が見えないと不安を覚えて吠える犬もいます。犬小屋の出入り口から家屋のサッシが見えるように置いてあげるといくらか安心してくれます。

嗅覚ストレス予防

 犬は嗅覚の動物であり、人間の数万倍も敏感に臭いを感じ取ります。犬小屋の近くにトイレ、柔軟剤たっぷりの洗濯物、薬品、カビだらけのレンガや人工芝、コンポストなどを置かないようにします。またトイレ以外の場所におしっこをしてしまった場合は、市販の消臭剤などをかけて可能な限り臭いを消します。

触覚ストレス予防

 犬小屋が傾いていると体にアンバランスな力が加わり、常にどこかの筋肉に無理がかかってしまいます。設置するときは必ず平らな場所を選ぶようにします。
 犬小屋の素材にはプラスチック、スチール(鉄)、木がありますが、スチール製のものは夏は熱くなり冬は冷たくなります。外気温の影響を最も受けにくい木製のものがベストでしょう。
 木の真下に置いてしまうと、枝が落ちてきて小屋が壊れたり犬が怪我をしてしまうかもしれません。そうした場所を最初から避けるか、落ちそうな枝がないかどうかを定期的にチェックするようにします。

係留道具

 犬が逃げ出さないようにつなぐ器具のことを係留道具と言います。土がむき出しになっている場合は「係留ポール」や「ドッグアンカー」を打ち込んで犬をつなぐためのアンカー(いかり)にします。舗装されていたり石やタイルで覆われている場合はアンカーを打ち込むわけにはいきませんので、柱や重石に鎖をつなぐ形になるでしょう。
 アンカーと犬をつなぐケーブルは、散歩するときに使うリードよりも丈夫な金属製のチェーンやワイヤーが多く用いられます。ショック吸収機能を持ったランナーケーブルなども売られています。

トイレの場所

 庭の中で犬が自由におしっこやうんちをすることはおすすめできません。理由はたくさんありますが、不衛生であること、臭いが残ること、天然芝が部分的に枯れてしまうことなどが挙げられます。
 またトイレを外に置くことの大きなデメリットは、犬が高齢になったときに現れます。長年外をトイレにしてきた犬が高齢になり足腰が弱った場合、おしっこやうんちを催すたびにいちいち庭に出ないと排泄できないという事態が生じるのです。これは老骨に鞭打つ犬にとっても、それに付きそう飼い主にとっても酷でしょう。
 基本的には室内にトイレスペースを設けますが、何らかの事情でどうしても屋外にトイレを設置しなければならないという場合は、家屋の近い場所に少し大きめの犬用トイレを置いてあげます。飼い主の目が届きやすい場所にトイレを置いておけば、トイレシーツが汚れてもすぐに気づいて取り替えることができるでしょう。また雨が降ったときなどもすぐに片付けることができます。
 もし犬がトイレ以外の場所でおしっこをしてしまった場合は、近隣から苦情が来てしまう前に市販の消臭剤などで臭いの発散を抑えます。

防虫対策

 屋外にはノミやダニのほか、フィラリアを媒介する蚊がいますので、防虫対策はしっかりと行います。防虫薬の使用量は体重によって変動し、おおむね以下のような目安です。
屋外犬の防虫対策費用
  • フィラリア5kg未満の小型犬で1ヶ月800~1,400円、20~40kgの中・大型犬で1ヶ月1,500~2,000円
  • ノミやダニ5kg未満の小型犬で1ヶ月1,000~1,500円、20~40kgの中・大型犬で1ヶ月1,500~2,000円
  • 感染症予防のためのワクチン接種5~6種混合ワクチンが1回5,000~7,500円、8~10種が1回5,000~10,000円程度
 犬小屋の近くに植物があると虫が寄ってくるので、植木鉢、花壇はなるべく置かないようにします。芝生がある場合は定期的に草刈りや草むしりをしましょう。なお蚊が多いからと言って犬小屋の近くに蚊取り線香をおくと、臭いがきつくてストレスになる可能性があるため控えます。またアリ、なめくじ、ワラジムシといっ害虫用の殺虫剤は、犬の足に付着してなめとってしまう危険性があるため使わないようにします。犬にとって危険な毒物

夏場における犬小屋の暑さ対策

 暑い夏場における犬小屋設置のポイントは、犬が熱中症にかからないようにすることです。熱中症とは、上昇した体温をうまく下げることができず、体調不良に陥ることですが、最悪のケースでは死に至ることもある恐ろしい病気です。犬は人間よりも体温を低下させる能力が劣りますので、犬小屋の設置方法を間違えると、暑い季節には容易に熱中症にかかってしまいます。 犬との生活・夏の注意 犬が熱中症にかかった
夏場における犬小屋の設置方法
  • 常に新鮮な水を用意する犬の体温調整はハーハーというパンティング(荒い呼吸)による気化熱です。水がないと暑いのに十分な気化熱が得られず熱中症に陥る危険性が高まるため、こまめに飲み水を交換してあげます。
  • 日陰を作る「すだれ」や「よしず」、ビニールシートのようなものを小屋周辺に設置しましょう。直射日光をさえぎられて暑さが緩和されます。
  • 地面からの熱を遮断犬小屋を高床式にし、熱せられた地面からの熱が、直接床に伝わらないようにしましょう。
  • 日光の直射を避ける犬小屋の入り口が太陽の指す方向に向かないようにしましょう。
  • 犬小屋用扇風機扇風機には小屋の中にこもった熱い空気を若干低い外気と入れ替える効果はありますが、注意点もあります。まず一つは、犬が好奇心にかられて触ると、怪我をしてしまう恐れがあるという点。そしてもう一つは、外気温が体温と同じ、もしくは体温より高い場合、扇風機は体にドライヤーを当てているのと同じことになり、逆効果になってしまうという点です。使用する場合は外気温を確認し、飼い主が監視した状態を基本としてください。
  • 打ち水犬小屋周辺に打ち水をすると、若干地面の温度が下がってくれます。また、犬小屋の外壁に水をかけても、少しだけ小屋内の気温上昇を抑制してくれます。

冬場における犬小屋の寒さ対策

 犬は厚い被毛で覆われている分、人間よりも寒さに強いといわれます。寒冷地方で生まれた長毛種に関しては確かにそうかもしれませんが、子犬、短毛種、シングルコート種、短く刈り込んだ長毛種、老犬などは、むしろ寒さに弱いと言っても過言ではありません。寒さで震えている犬を外に放置する行為は動物虐待に相当しますので、すぐ家の中に入れてあげましょう。以下では、寒い冬場に犬小屋を設置するときの注意点を解説します。 犬との生活・冬の注意 犬が低体温症に陥った
冬場における犬小屋の設置方法
  • 寒風をさえぎる寒風が直接犬小屋にあたらないよう、ビニールシートなどで囲いを作ってあげます。
  • 地面からの冷気を遮断冷え切った地面からの冷気が直接犬小屋にあたらないよう、かならず高床式にし、地面との間に空間を設けます。
  • 入り口からの冷気の侵入を防ぐ冷気や寒風が直接犬小屋の入り口に入り込まないような向きにします。また、「のれん」状のビニールなどを入り口に取り付け、風や冷気の侵入を防ぐのも手です。
  • 防寒具を敷く犬小屋の中に毛布やいらなくなったセーターなど、保温性の高い防寒具を敷いてあげます。
  • 犬小屋用暖房器具に注意犬小屋専用の暖房器具を取り付ける際は、犬がコードを食いちぎって感電したり、器具に振れることによるやけどの危険性が常にあります。犬小屋専用暖房器具を用いる際は、必ず飼い主が監督している状態で使用するようにします。
 その他の基本的な注意としては、以下のような点が挙げられます。
冬場の屋外飼育注意点
  • 常に新鮮な水を用意すること冷たい雪を水の代わりにすることは酷です。また、ボールの水が凍ってしまうこともありますので、こまめに飲み水を交換してあげます。
  • 多めのカロリーを与えること寒い冬場は体温を維持するために基礎代謝が上がり、それだけ多くのカロリーを消費します。暑い夏場よりもやや多めのえさを与えてください。
  • 凍傷に注意すること耳、鼻、しっぽ、足先は冷気に触れやすく、寒い季節にはすぐ凍傷にかかってしまいます。定期的にそれらの場所をチェックしてあげましょう。 犬が凍傷にかかった
  • 定期的なブラッシングをすることよごれや毛玉を取り除き、犬が本来持っている被毛の防寒性を最大限に引き出してあげます。 犬のブラッシング
  • 薬剤に注意すること融雪剤や不凍剤など、冬場に登場する薬剤に、犬が近づかないようにしましょう。 犬にとって危険な毒物
  • 犬のストレスを読み取ること吠える、くんくん鳴きをする、同じ場所を行ったりきたりするなどのストレスを読み取り、屋外につないでおく時間を縮めたり、室内飼育に切り替えたりしましょう。 犬のストレスチェック 犬が喜ぶ部屋の作り方
 いくら寒さに強いからといって、本来群れを成して生きる社会的動物である犬を、寒い屋外に長時間外につなぎっぱなしにするという行為は、よほどの理由がない限りやってはいけません。外飼いのデメリットに関しては犬の外飼いはかわいそうで詳しく解説してありますのでご参照ください。

犬小屋の洗い方

 汚れたままの犬小屋を長期間放置しておくと、悪臭の原因になりますし、ノミダニの温床にもなって非常に不衛生です。季節の変わり目をきっかけにするなどして、定期的に犬小屋を洗うようにしましょう。以下は一般的な手順です。
犬小屋洗浄手順
  • 水洗い犬小屋の内部、および外壁をきれいに水洗いします。最近はプラスチック製の小屋が多いようですが、旧来の木製小屋を用いている場合は、尿の臭いや糞の臭いが材質の隙間にしみこむとなかなか取れません。硬めのブラシやデッキブラシなどを用いて、やや強めにゴシゴシと洗ったほうがよいでしょう。内壁には皮脂とほこりなどが交じり合った汚れが付着していますので、ここも忘れずにきれいにします。
  • 乾燥水洗いが終わったら、太陽光に直接さらす形で自然乾燥させます。うまく光が差し込まない場合は、犬小屋を傾けるなどの工夫が必要です。紫外線には殺菌効果もありますので、なるべく晴れた日がよいでしょう。
  • 消毒犬小屋が十分乾燥したら、薬局で市販されているクレゾール石鹸などを用いて、小屋の内外を殺菌します。原液では濃すぎるので、3%(100ミリリットルに対して3ミリリットル)程度に希釈して用います。噴霧する際は100円ショップなどで売っている霧吹きを用いるのがよいでしょう。消毒液はにおいがきついため、ある程度臭いが消えたタイミングで犬を小屋に戻します。
NEXT:外飼いはやめて!

犬の外飼いはかわいそう

 一部には「外で飼うのが当たり前」という信念を抱いており、今だに犬を外飼いしている人がいます。2023年のデータによると、犬を散歩や外出時以外は室内で飼っている人の割合が90%であるのに対し、室内と屋外半々で飼育している人がおよそ4.4%、そしてもっぱら屋外でのみ飼育している人が5.6%という内訳だそうです出典資料:ペットフード協会, 2023)
犬をどこで飼っている?(2023年版)
2023年における犬の飼育場所データ  5.6%の人たちがどのような信念を抱いているのかは分かりませんが、犬の祖先は群れで行動することを習性とするオオカミです。オオカミとイエイヌ(現代のいわゆる犬)は早ければ13万5千年前、遅くとも1万5千年前に分岐したと考えられていますが、分岐してから「単独行動」という習性に変化したという証拠はなく、逆に「人間とともに共進化してきた」という考え方すらあるくらいです。つまり犬をぽつんと外につなぎっぱなしにすることが普通であるという考えを支持する理由は何一つないということです。 犬の祖先と進化 犬は人間と共に進化してきた?

外飼い犬を助けたい!

 外につながれたままの哀れな犬を助ける方法はないのでしょうか?結論から言うと、外で飼っているという理由だけで飼い主を動物愛護法違反に問うことは難しいと言わざるを得ません。

犬の外飼いと日本の法律

 犬の外飼いが動物愛護法に違反していることは明白です。例えば動物愛護法の冒頭にある「第一章 総則」には以下のような記載があります。
【第一章 総則第二条1】
動物が命あるものであることにかんがみ、何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないようにするのみでなく、人と動物の共生に配慮しつつ、その習性を考慮して適正に取り扱うようにしなければならない。
【第一章 総則第二条2】
何人も、動物を取り扱う場合には、その飼養又は保管の目的の達成に支障を及ぼさない範囲で、適切な給餌及び給水、必要な健康の管理並びにその動物の種類、習性等を考慮した飼養又は保管を行うための環境の確保を行わなければならない。
 「習性」という言葉が出てきましたが、犬の習性とは群れの仲間と一緒に行動し寝食をともにすることです。外にある犬小屋にぽつんと住まわせることは犬の習性を無視した行為であり、動物愛護法の最初に記載されている最も単純で最も基本的なルールすら守っていないことは言うまでもありません。
 しかし都道府県の中には、「犬をさく、おりその他囲いの中で、又は人の生命若しくは身体に危害を加えるおそれのない場所において固定した物に綱若しくは鎖で確実につないで、飼養又は保管をすること」といった条例を設けているところがたくさんあります。つまり「逃げ出さないようにつないでいれば外でもOK」という、法律とは矛盾した規則を設けているのです。
 犬を外飼いしている飼い主を動物愛護法違反に問うことが難しい理由は、上記したように地方自治体が法律に反する条例を設けてダブルスタンダードにしてしまっているためです。

犬の外飼いを通報するには?

 犬を外飼いしているだけでは不適切な飼養とみなされない可能性が大です。しかし外飼いに「水や餌を与えない」といったネグレクト(怠慢飼育)が加わった場合は動物愛護法になる可能性があります。
 例えば兵庫県には2014年1月から「アニマルポリス・ホットライン」と呼ばれる電話相談窓口が設けられており、市民からの通報を広く受け付けています。動物虐待に当たる行為とは具体的に「犬や猫などを殺したり傷つけたりする」「犬や猫などに餌を与えず衰弱させる」「犬や猫などを遺棄する」などです。犬が外飼いされていると通報しても流されるだけかもしれません。しかしそこに「犬がガリガリに痩せている」とか「飼い主が犬を蹴飛ばしていた」「体力の弱い子犬を外につないでいる」といった行為が加わると、動物虐待として扱ってくれる可能性が高まります。適切な給餌がなされていないと判断されれば動物虐待として扱われる可能性が高い  通報を受けた行政の対応は、行政による指導から警察による介入までさまざまです。飼い主による飼い方が不適切とみなされ、犬の所有権を放棄してくれれば、新しい飼い主のもとにリホームされて外飼い環境から救い出せるかもしれません。

海外の係留禁止法

 アメリカでは犬を外につなっぱなしにすることを虐待とみなす州が多く「係留禁止法」(Dog Tether Law)が設けられているところもあります。内容は「一定時間以上係留し続けてはならない」というものが大半です。いずれにしても根底にあるのは「犬を外につなぎっぱなし=虐待」という認識であり、係留禁止法が動物虐待防止法の一部に組み込まれている州(ウェストバージニア州など)すらあります。
 日本でもこうした法整備が進んでくれれば、犬をつなぎっぱなしにしているだけで法律違反になりますので、哀れな犬たちがぐんと減ってくれるでしょう。 Table of State Dog Tether Laws

犬を外で飼うデメリット

 犬は社会的であり、群れで行動することを好む動物です。ですから基本的に、犬を屋外につなぎっぱなしにし、エサだけを与えるという飼育方法はお勧めしません。こうした飼育環境がいかに不自然なものであるかは、犬の幸せとストレスをお読みいただければある程度理解することができるでしょう。
 また1999年に行われた実験では、社会的・空間的な隔離が、犬に対して慢性的なストレスになることがはっきりと示されています。調査の対象となったのは、グループで飼育された後、仲間から引き離され、小さな犬小屋の中に閉じ込められたビーグル。6週間に渡って観察を行ったところ、以下のような行動が見られるようになったといいます。 Chronic Stress in Dogs Subjected to Social and Spatial Restriction
社会的・空間的な隔離による行動変化
  • 姿勢を低くする
  • 頻繁に毛づくろいする
  • 前足を挙げる
  • 吠える
  • 食糞(自分のウンチを食べる)
  • 同じ行動を繰り返す
社会的・空間的に長く隔離された犬は、無駄吠え、食糞、常同行動などの傾向を示す  研究者は、上記リストを犬に慢性ストレスがかかっているときのサインとして提唱しています。また慢性ストレスがかかった状態の犬に対し「拘束する」「階段を降りさせる」「真新しいものに出会わせる」「大きな騒音を聞かせる」「見知らぬ犬に会わせる」といった様々な刺激テストを行ったところ、攻撃性、興奮性、不安定性の増加が見られたとのこと。こうした事実から、社会的・空間的な長期間の隔離は、犬に対して多大なるストレスを与え、行動パターンをマイナス方向へ変化させることが明らかとなりました。 犬の幸せとストレス  外飼いのデメリットは犬のストレスばかりではありません。外につながれている、もしくは外に出されている犬をめぐるトラブルとしては「子供が犬を撫でようと敷地内に入ってくる」「人が通るたびに吠えて飼い主や近隣住人が不眠症になる」「悪意ある人間が犬に悪戯をする」「犬が郵便配達人や宅配業者に怪我をさせる」などがあります。
 犬の無駄吠えによる騒音トラブルは近隣住人との関係性を悪化させ、コミュニティにおける居心地が悪くなるでしょう。子供や宅配業者に怪我を負わせた場合は傷害事件に発展して賠償金を支払わされるかもしれません。
 犬の外飼いは犬のみならず犬を取り巻く人間にも悪影響を及ぼす可能性をはらんでいるため、室内飼育に切り替えることが強く望まれます。

外飼いの代替案

 何らかの事情で犬を外飼いしている方は、以下に述べるような方法を試してみて下さい。犬を外に出しっぱなしにしておく理由がなくなるかもしれません。

犬を番犬として飼っている

 犬を番犬として飼っているという方は、犬の代わりに防犯ブザーやセンサーライトを買ってはいかがでしょうか?
 犬の飼育費用は体重10kg未満の小型犬の場合、年間最低でも9~53万円、体重20~40kgの中大型犬の場合12~74万円超かかると考えられます。これだけの費用があればホームセキュリティと契約することもできるでしょう。
 番犬は不審者が餌を与えて手なづけてしまうこともありますし、暴力をふるって黙らせてしまうこともあります。家から犯罪者を遠ざけるためだけに犬を飼っているのなら、もっと効果的な方法があるはずです。

大型犬で部屋に入らない

 大型犬で部屋の中に入り切らないという方は、せめて夜だけでも家の中に入れてはいかがでしょうか?
 大型犬と言ってもたたみ1~2畳程度の広さがあればベッドとしては十分です。一戸建てで部屋が余っていたり、使っていないスペースがあるような場合は、せめて夜の間だけでも犬に開放してあげてはいかがでしょう。犬が喜ぶ部屋の作り方

問題行動が多くて

 問題行動が多くて犬を家の中に入れたくないという方は、しつけ直しを試してみてはいかがでしょうか?
 問題行動には部屋の中で粗相やマーキングをする、カーペットを前足で引っかく、夜中になると吠えて飼い主を起こす、テーブルの上にあるものを落として壊すなどが考えられます。しかしこうした行動は適切なしつけによって治る可能性が大です。
 まずは飼い主がしつけの基本をもう一度復習し、今までの方法が間違っていなかったかどうかを確認します。もし誤解やミスがあった場合は、正しい方法でしつけ直しをしてみましょう。よくある間違いは、古典的条件付けやオペラント条件付けの基本原理を理解していないことと、家族の間でしつけの方針が一貫していないことです。詳しくは以下のページで解説してありますのでご参照ください。犬のしつけ方
SNSでは、鎖や係留ロープを引きずったまま迷子になった外飼い犬がたくさん見られます。最悪のシナリオは保健所に収容された後の殺処分、放浪中の交通事故死などです。犬が喜ぶ部屋の作り方を参考にし、ぜひ室内飼いを!