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犬が凍傷にかかったらどうする?~原因・症状から応急処置法まで

 犬が凍傷にかかった場合について病態、症状、原因、応急処置法別に解説します。不慮の怪我や事故に遭遇する前に予習しておき、いざとなったときスムーズに動けるようにしておきましょう。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬が凍傷にかかったときの原因と症状

 凍傷(とうしょう, frostbite)とは、低温によって皮膚の血行が極端に悪化し、細胞や組織が損傷を受けた状態のことです。
 凍傷はまず、皮膚の表面温度が0℃に近づくことから始まります。皮膚温の低下を感じた脳は、患部の血管を収縮させて熱の放散を防ごうとしますが、結果として血液の流入量が減り、細胞への酸素と栄養の補給が滞ってしまいます。これが組織損傷のメカニズムです。
 犬は被毛に覆われており、人間に比べればいくらか寒さに強いことは事実です。しかし、長時間、寒い屋外につなぎっぱなしにしたり、非常に寒い中を強引に散歩に連れ出すなどすると、皮膚温が0℃に近づき、凍傷にかかってしまうことがあります。
 犬が凍傷にかかったときの主な症状は以下です。心臓から遠くて冷えやすい体の末端部分が特に障害を受けます。
犬の凍傷にかかったの主症状
  • 体の先端部(足、耳、しっぽ、陰嚢)の変色
  • 患部の水泡(みずぶくれ)
  • 患部の壊死(えし=組織が死んでしまうこと)
 なお以下は、凍傷の重症度を深さによって分類したときの一覧です。皮膚は上から「表皮」、「真皮」、「皮下組織」という層から成り立っており、低温がどの深さまで達したかによってI~III度に分類されます。皮下組織のさらに下にある筋肉まで達した凍傷がIV度ですが、ここでは割愛してあります。 深度によって分類したときの凍傷
  • I度 I度は表皮に限局される凍傷です。皮膚が赤くなったりジンジンと痛みを発したりしますが、数日で回復します。いわゆる「しもやけ」に近い状態です。
  • II度 II度は真皮にまで到達した凍傷のことです。皮膚は黒っぽく変色し、1~2日後には水ぶくれ(水疱)が形成されます。1ヶ月ほどで見た目は回復しますが、皮膚の感覚が失われることもあります。
  • III度 III度は皮下組織にまで到達した凍傷のことです。血管が壊れて酸素や栄養の補給が絶たれてしまうため、患部は潰瘍を起こして最終的には壊死してしまいます。神経も死んでいるためもはや組織としては使い物にならず、切断を余儀なくされることもしばしばです。

犬が凍傷にかかったときの応急処置・治療法

 犬が凍傷にかかったときの治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬が凍傷にかかったときの主な治療法
  • 体を温める  凍傷にかかるということは相当寒い環境にいたことを意味しますので、体温自体が下がっている可能性があります。低体温症を防ぐため、毛布などで犬の体をくるみ、暖かい部屋へ移動してやります。
  • 患部を温める  犬を暖かい場所へ移動したら、患部をぬるま湯(人肌程度で40度を超えない)で温めてあげます。
  • 獣医さんへ  患部に水泡や壊死が生じている場合は、切除手術が必要となることもありますので、早急に獣医さんに相談しましょう。
低体温症
 低体温症とは、体温を正常範囲内に保つことができず、低下してしまった状態のことです。軽度の低体温症は「32~35℃」で、「元気がなくなる・震え」といった症状を示します。中等度の低体温症は「28~32℃」で、「筋肉の硬直・低血圧・呼吸数の減少・意識の混濁」といった症状を示します。重度の低体温症は「28以下」で、「心音微弱・呼吸困難・昏睡」といった症状を示します。
 主な原因は凍傷の場合と同様、冷たい外気に長時間さらされることや、極端に冷たいものと長時間接することです。