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細菌性腸炎~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の細菌性腸炎(さいきんせいちょうえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

細菌性腸炎の病態と症状

 犬の細菌性腸炎とは、細菌によって腸炎が引き起こされた状態を示す広い概念です。
 代表的な細菌はサルモネラ菌、クロストリジウム菌、カンピロバクター菌、スピロヘータ、大腸菌、プロテウス菌、緑濃菌などです。中でも犬の腸炎を引き起こす原因菌として重要なのは、サルモネラ菌とカンピロバクター菌だと言われています。 犬の細菌性腸炎を引き起こすサルモネラ菌とカンピロバクター菌  サルモネラ菌は小腸に定着して細胞内に侵入し、腸間膜のリンパ節で増殖しながらエンテロトキシンと呼ばれる毒素を産生します。腸炎を引き起こす主犯格はこの毒素です。またカメ、ヘビ、トカゲといった爬虫類が高率で保菌していることでも知られており、2005年に行われた調査によると、ペット用爬虫類のうちこの菌を保有していた割合は、家庭内飼育で32.2%、ペットショップで80.0%、輸入直後で56.0%だったそうです。一方、カンピロバクターもありふれた菌で、下痢をしていない犬の49%、正常な猫の45%程度が保有し、日常的に糞中に排泄していると考えられています。
 犬の細菌性腸炎の症状は、原因菌の種類や感染部位によってまちまちですが、おおむね以下です。発症する犬のほとんどは、免疫力の弱い6ヶ月齢未満の子犬、妊娠中のメス犬、そして生肉を与えられる機会の多いレース犬やそり犬です。
細菌性腸炎の主症状
  • 下痢(軟便・水様便・血便)
  • 食欲不振
  • 腹痛(触ると痛がったり、背中を丸めている)
  • 脱水症状(下痢による体液の喪失)

細菌性腸炎の原因

 犬の細菌性腸炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
細菌性腸炎の主な原因
  • 経口感染  細菌に汚染された水、食べ物、食器などをなめることで犬の体内に侵入します。具体的には生ごみあさり、屋外の死肉、古いドライフード、生肉、豚耳などが危険因子として考えられています。また糞便を口にしやすく、ストレスのかかりやすい繁殖施設、保護施設、多頭飼い(ホーディング)といった高密度・不衛生環境も同様に危険です。

細菌性腸炎の治療

 犬の細菌性腸炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
細菌性腸炎の主な治療法
  • 投薬  抗生物質を投与することで細菌を駆除します。代表的なものはクロラムフェニコール、カナマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、テトラサイクリンなどです。しかし薬剤に対して耐性をもった菌が出現する危険性もあるため、症状が重い場合に限ります。
  • 対症療法  症状の軽減を目的とした各種の治療が施されます。脱水症状が起こっているときは輸液(リンゲル液やブドウ糖液)を行い、腸粘膜を保護するための保護剤なども用いられます。
  • 免疫力を落とさない  犬の約10%は何らかの細菌を保有しているといわれます。免疫力が正常であれば症状が出ませんが、ストレスや手術、栄養不足などをきっかけとした免疫力の低下につけ込んで細菌が繁殖し、発症することがあります。こうした 「日和見感染」(ひよりみかんせん)を予防するため、日ごろから免疫力を落とさないよう気をつけることが重要です。 犬の幸せとストレス