トップ犬を飼う前に犬アレルギーについて

犬アレルギーについて

 犬アレルギーとは、犬と接触することによってアレルギー反応が引き起こされ、くしゃみ、鼻水、咳など、風邪とよく似た症状を発症することです。犬をひとたび家に迎え入れると、向こう10年近く同居することになります。自分のみならず、同居している家族全員が、犬に対してアレルギー症状を示さないことをあらかじめ確認しておくことが重要です。

犬アレルギーとは何か?

犬アレルギーは風邪に似た症状を引き起こす  「犬アレルギー」とは、犬が人間に与えるアレルゲンによってアレルギー反応が引き起こされた状態をいいます。アレルギー反応とは、体内に入ってきた異物に対し、白血球を始めとする免疫系が過剰に反応しすぎて、本来守るべき人間を逆に苦しめてしまう現象のことです。そしてこのアレルギー反応を引き起こす物質がアレルゲン(抗原)です。
 何がその人にとってのアレルゲンになるかには個人差があり、例えば、ある人にとっては単なるお昼ごはんである蕎麦(そば)が、ある人にとっては恐ろしいアレルゲンなるということも大いにあり得ます。ですから、ある人にとっては可愛いペットである犬も、別の人にとってはそうでないといことが、十分ありうるわけです。
ペットアレルギーの割合
 アメリカの「American Academy of Allergy, Asthma & Immunology」(AAAAI)の調査によると、犬アレルギーと猫アレルギーを合わせた数は、人口の15%程度と推定されています(→出典)。また1983年に行われた研究によると、犬アレルギーよりも猫アレルギーの方が発症頻度が高いようです(→出典)。この理由としては、「犬に比べて猫の方がより親密に接触する機会が多い」という点などが考えられます。なお1997年、日本において少数の患者(38人)を対象として行われた調査によると、犬の飼育歴がある鼻炎患者のうち、3%は犬の上皮に対してアレルギー反応を示したそうです(→出典)。
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犬アレルギーの症状

 犬アレルギーの軽い症状としては以下のようなものがあります。ちょうど風邪をひいたときの状態から発熱だけを引いた感じです。
犬アレルギーの軽い症状
  • 喘鳴(呼吸がゼーゼー)
  • 目の充血・かゆみ
  • 鼻水・鼻のムズムズ
  • くしゃみ
  • 皮膚の発赤
 これらの症状がさらに悪化すると、以下のような重い症状に発展することもあります。個々人の体質のほか、すでに喘息を患っているなどの条件が引き金になることがあります。
犬アレルギーの重い症状
  • 下痢
  • 嚥下困難
  • 呼吸困難
  • めまい
  • 吐き気・嘔吐
  • 心拍数の増加
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犬アレルギーの原因

 犬の体内で生成されるアレルギーの原因物質、すなわち「アレルゲン」としては、現在7種類が知られています。中でも最も有名なのが「Can f 1」であり、犬を飼育している家庭のほとんどで検出され、また飼育していない家庭の15%でも、なぜか検出されたというデータがあります。
犬のアレルゲン
  • Can f 1 「Can f 1」は皮脂腺から分泌される「リポカリン」(lipocalin)という物質から構成されており、被毛、フケ、唾液中に多く存在しています。犬アレルギーを示す人のうち、およそ52%はこの物質に対してIgE抗体を持っているというデータがあります。非常に小さいため、ホコリなどの微粒子に付着して空気中を漂い、容易に拡散します。
  • Can f 2 「Can f 2」も「Can f 1」同様、「リポカリン」(lipocalin)という物質から構成されています。類似物質としては、ネコの「Fel d 4」、ウマの「Equ c 1」、ウシの「Bos d 2」や「Bos d 5」、ラットの「Rat n 1」、マウスの「Mus m 1」、ゴキブリの「Bla g 4」などが挙げられ、「Can f 2」にアレルギーを示す人の多くは、こうした物質にも反応します。
  • Can f 3 「Can f 3」は「アルブミン」(albumin)という物質から構成されています。猫アレルギーを示す人のうち、およそ44%は犬のアルブミンにも反応したというデータがあります。
  • Can f 4  「Can f 4」は「脂質輸送タンパク」という物質から構成されており、犬のフケに多く含まれます。 犬アレルギーを示す人のうち、35%はこの物質に対するIgE抗体を保有しているというデータがあります。
  • Can f 5 「Can f 5」は「アルギニンエステラーゼ」(Arginine Esterase)という物質から構成されており、前立腺に含まれる「カリクレイン」と同じ構造をしています。
  • Can f 6 「Can f 6」は、「Can f 1」や「Can f 2」とは別の「リポカリン」(lipocalin)から構成されています。
  • Can f 7 「Can f 7」は2016年に発見された新しいアレルゲンで、細胞小器官「リソソーム」に含まれる「NPC2」というタンパク質から構成されています。アレルギー患者の血清陽性率はおよそ10~20%です(→詳細)。Environmental assessment and exposure control
犬の毛が直接アレルギー反応を引き起こしているわけではない  「犬の毛がアレルギーを引き起こしている」という通説がありますがそれは間違いです。正確に表現すると「犬の毛に付着したアレルゲンがアレルギー症状を引き起こしている」となります。また近年、アレルギーになりにくい「ハイポアレジェニック・ドッグ」(Hypoallergenic dog)として、抜け毛が比較的少ないプードルビションフリーゼをもてはやす人がいます。しかし「Can f 1」を唾液や尿中に含まない犬は今のところいませんので、「アレルギー症状が出にくい犬」は理論上いたとしても、「アレルギーが出ない犬」はありえないということになります。
 「理論上はありうる」と言いましたが、2011年に行われた研究では、一般的にアレルギーが出にくいとされる11犬種と、そうではない49犬種とを比較したところ、結局アレルゲンレベルに差はなかったという結果が出ています(→出典)。またアレルゲン「Can f 1」の産出には、個体の大きさや体質が大きく影響していますので、実際に「ハイポアレジェニック・ドッグ」と呼べる特定犬種が存在するかどうかは、かなり怪しいものです。にもかかわらず、アメリカの犬種協会である「アメリカンケネルクラブ」(AKC)は、明確なエビデンス(医学的証拠)を示さないまま、「アレルギーでも飼いやすい犬種」として、以下の11犬種を大々的に明言しています(→出典)。
アレルギーでも飼いやすい犬種(?)
 日本のペットショップやブリーダーが、「この犬はアメリカの犬種協会で、アレルギーの出にくい犬として認められているんですよ」といった宣伝文句を使っている場合は要注意です。なぜなら、そのアメリカの犬種協会の言葉自体に、それほど確固たる根拠がないからです。
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犬アレルギーの予防

犬アレルギーの事前検査としては、プリックテストとRASTテストがある  犬アレルギーを予防するためにはまず事前にアレルギーテスト受けておくことをお勧めします。アレルギー反応が出ていても、それが犬に由来するものなのか、それとも犬の毛に付着した花粉やその他のアレルゲンに由来するものからはっきりしないことがあります。アレルギーテストを受け、一体何がアレルギー反応を起こしているのかが明確になれば、この先犬を飼うことができるかどうかの判断材料になるでしょう。
 犬アレルギーを検査する方法としては「プリックテスト」と「RASTテスト」が主流です。いずれも100%の精度というわけではありませんが、犬と同居する人全員が事前に受けておくことが推奨されます。内科、耳鼻科、皮膚科、アレルギー科等にご相談ください。
犬アレルギー検査法
  • プリックテスト プリックテストとは、アレルゲンを付着させた針で、皮膚の表面を軽く刺すという検査方法です。多くの場合、前腕の内側で行われます。
  • RASTテスト RASTテストとは、少量の血液を採取する検査方法です。血液中に「IgE抗体」と呼ばれるアレルギー反応の副産物が出るかどうかが判定されます。
 一部の研究では、生後1年以内に犬や猫と接すると、成長してからアレルギーを発症しにくい体質になるとの結果が示されています(→出典1出典2)。しかし別の研究では、幼少期におけるアレルゲンへの暴露は、成長してからの喘息やアレルギー性鼻炎の発症率に何の影響も及ぼさないという相反する結果が出ています(→出典)。
 意見が分かれている中で、「赤ん坊の頃に犬や猫と接するべきだ」と断言することはできません。しかし少なくとも、乳幼児期における犬や猫との接触が、成長してからのアレルギー発症率を高めるという報告は見られませんので、「赤ん坊の頃に犬や猫と接するべきではない」とも言えないのが現状です。
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犬アレルギーの治療

 現在、アレルギーに対する特効薬はありません。ですから、犬を迎えた後でアレルギー症状が出てしまった場合は、なるべく症状が悪化しないよう抑え込むことが中心となります。

生活環境の改善

 生活環境の中からアレルゲンを可能な限り少なくするためには、日頃から以下のような改善をするよう心がけます。
犬アレルギーを軽減する方法
  • 立入禁止区画を作る 犬の行動範囲を特定の場所に制限すれば、人がアレルゲンと接する可能性を減らすことができます。リビングや寝室など、飼い主の使用頻度が高い空間に犬が立ち入れないようにすれば、それだけ症状を軽減することができるでしょう。しかしだからといって、犬を屋外飼育することは著しく福祉を損なうため、お勧めできません。
  • 空気清浄機を稼働する 部屋の中で空気清浄機をつけっぱなしにしておけば、それだけアレルゲンを減らすことができます。特にHEPAフィルター(※下記ボックス参照)付きのものがお勧めです。
  • こまめに掃除機をかける アレルゲンを吸着しやすい布団、クッション、カーテン、ぬいぐるみなどにこまめにHEPAフィルター(※下記ボックス参照)付きの掃除機をかけるようにすると、それだけアレルゲンを減らすことができます。ただし布団をパンパンと叩く事にはあまり意味ありません。
  • 犬をお風呂に入れる 1999年に行われた実験では、犬をシャンプーとシャワーで洗うと、被毛とフケ中のアレルゲンを8割以上減らせるという結果が出ています(→出典)。ただし、1週間に2回の頻度で行わなければ、またアレルゲンレベルが戻ってしまうとも。シャンプーを嫌がらない犬の場合はこの対策も有効でしょうが、入浴のしすぎて皮膚炎にならないよう注意も必要です。
  • こまめにブラッシングする アレルゲンを媒介する抜け毛やフケの量を減らせれば、それだけアレルギー反応も減らすことができます。ただしブラッシング自体が症状を悪化させることがありますので、できる限り犬アレルギーを持っていない協力者に頼むようにしましょう。
  • こまめに手を洗う アレルゲンを媒介する唾液やフケは、犬と最も接触しやすい手に付着します。意識的に手洗いを行うだけでアレルゲンとの接触を減らすことができるでしょう。
  • 部屋をよく換気する アレルゲンは大変小さいため、空気中にも漂っています。部屋の換気を行えばそれだけアレルゲンとの接触を減らすことができます。ただし花粉症など他の物質に対するアレルギーを持っている場合は、外気を取り込むことによって逆に症状が悪化してしまうこともあります。その場合は空気清浄機で代用しましょう。
HEPAフィルターとは?
 HEPAフィルター (High Efficiency Particulate Air Filter) とは、空気中からゴミ、塵埃などを取り除き、清浄空気にする目的で使用するエアフィルタの一種です。JIS Z 8122 によって、「定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」と規定されています。

お医者さんに相談する

 生活環境を改善して症状が軽減することもありますが、あまり効果がないこともしばしばです。そんなときはお医者さんに相談するという方法もあります。先述したとおり、アレルギーに対する特効薬はありませんので、お医者さんにできることは、今出ている症状をなるべく軽減する「対症療法」がメインとなります。内科、耳鼻科、皮膚科、アレルギー科のお医者さんと相談し、体質にあった薬剤を処方してもらいます。具体的には以下です。
アレルギーへの対症療法
  • 鼻スプレー
  • 抗ヒスタミン薬
  • ステロイド薬
  • 気管支拡張薬
  • 脱感作療法
 最後に挙げた「脱感作療法」(だつかんさりょうほう)だけは、症状の根治を目指したものです。これは、低濃度のアレルゲンからスタートし、徐々に濃度を高めていく中で、アレルゲンに体を慣らしていくという治療法のことです。うまくいけば症状が大幅に軽減されますが、やや時間がかかるという点、および効果が出ない人がいるという点が玉に瑕(きず)です。
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