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犬の飛びつく癖をしつけ直す

 体の大きな中・大型犬が人に飛びつくと、時に怪我や事故の元になりかねません。また、動いている自動車やバイクに飛び込んでいっても大変です。そこで飛びつく癖を矯正(きょうせい)しておく必要が出てきます。

犬の飛びつく癖について

犬の飛びつきとは、子犬時代の自然な行動を放置した結果として現れる悪癖  犬の飛びつく癖とは、飛びついてはいけない場所や物、タイミングで犬が対象に飛びついてしまうことです。
 ドッグランで他の犬に飛びついてマウンティングするのはマナー違反です。また散歩中に他人に近づいて怖がらせると、思わぬ事故につながります(驚いた小学生が転んで怪我をするなど)。他の犬に飛びつくのも、犬同士のけんかの原因になりかねません。いずれにしても飼い主の制止を振り切って勝手気ままに何かに飛びつく癖は、あらかじめ直しておかなければなりません。
 まずは犬の飛びつき行動が出る状況や心理を考えて見ましょう。

犬の飛びつく癖が出る状況

  • 尻尾を振りながら飼い主に飛びつく 『(留守番していた犬)お帰り!寂しかったよ!』 喜びによる飛びつき 『ねぇねぇ!早く散歩に行こうよ!/ねぇ!遊んでよ!』 要求としての飛びつき
  • 他の人や他の犬に飛びつく 『ん?!見慣れないなぁ・・自分とどっちが強いか確かめてみよう!』 序列確認による飛びつき
  • 見慣れない物に飛びつく 『あれは何だ?!面白そうだから近づいてみよう!』 好奇心による飛びつき
  • 動いている物に飛びつく 『あっ獲物だ!追いかけて捕まえなくちゃ!』 狩猟本能による飛びつき

犬の飛びつく癖の原因

 上記したように、犬の飛びつく癖が出る状況や心理は色々ありますが、犬の飛びつく癖の原因を一言で言うと飛びつき行動と不快が結びついていない、および飛びつき行動をやめることと快が結びついていないという点です。
 してほしい行動と快、してほしくない行動と不快とを上手に結び付けることができれば、すでに癖になってしまった悪習でも十分改善される可能性があります。飼い主としては辛抱強く犬のしつけ直しにチャレンジしてみましょう。
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犬の飛びつく癖をしつけ直す~基本方針

 犬の飛びつく癖をしつけ直すに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
興奮して自分勝手に何かに飛びつかない
してほしくない行動
興奮して自分勝手に何かに飛びつく
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬の飛びつく癖をしつけ直す場合を考えて見ましょう。
強化
「興奮して自分勝手に何かに飛びつかなかった」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「興奮して自分勝手に何かに飛びついた」瞬間に不快(罰)を与える
 犬の飛びつく癖をしつけ直す際は強化、弱化の両方が効果的です。
 犬の飛びつく癖をしつけ直す際は、興奮して飛びついた瞬間に罰を与える「正の弱化」をメイントレーニング、飛びつくことをやめておとなしくなった瞬間に賞を与える「正の強化」をサブトレーニングとして進めていきます。
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犬の飛びつく癖をしつけ直す~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬の飛びつく癖をしつけ直すに当たっては、以下の3つのことを準備します。

準備1: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備2: 罰を用意する

 飛びつく癖に対する罰としては、精神的な罰であるタイムアウトをまず第一に考えます。タイムアウトとは、一定の時間だけ犬の行動に対して全く無視を決め込むことです。これは厳密な意味では罰ではありませんが「注目される」という報酬を剥奪された時の欲求不満がちょうど罰の代わりになり、特に飼い主の注目を得ようとして飛びついてくる犬に対して威力を発揮します。
タイムアウト
 タイムアウト(一時中断)とは犬に対する注目、ふれあい、関心を一切遮断し、一定期間「空気」のように扱うことです。「遊びたい」・「触れ合いたい」・「散歩したい」といった欲求を抱えている犬にこのタイムアウトを適用すると、欲求不満という苦痛がそのまま罰の代わりになってくれます。罰の効果を高めるため、犬をクレートや飼い主とは別の部屋に閉じ込めてしまったり、飼い主自身が退室するという方法も効果的です。
 上記したタイムアウトのほか、補助としてサプライズを用います。サプライズとは、苦痛を与えることよりも驚かせることを主目的とした罰のことであり、具体的には以下のようなものがあります。
犬に対するサプライズいろいろ
  • 視覚的サプライズいきなり布や上着のようなものを犬の視界にかぶせる
  • 聴覚的サプライズ石を入れた空き缶を落とす
  • 嗅覚的サプライズ酢を薄めたスプレーを噴霧する
  • 味覚的サプライズ噛み付き防止剤=ビターアップル
  • 触覚的サプライズヘッドカラーを軽く引く
サプライズ
 サプライズとは、強烈な不快感を味わわせるのではなく、犬を驚かせて行動を強引に中断させることを主目的とした罰の一種です。従来の「天罰」(出所の分からない罰)が犬に苦痛を与えることに重点を置いていたのに対し、犬を驚かせてとりあえず目の前の行動をストップさせることに重点が置かれていることから、当サイト内ではサプライズと表現します。
 なお、サプライズを含めた罰を与える際には多くの注意点、および相応のリスクがあります。用いる前には必ず犬への罰についてを熟読し、またできれば臨床行動学(問題行動を専門に扱う)の専門家に事前に相談することが望まれます。

準備3: 犬が飛びつく状況を知る

 まずは自分の飼っている犬が何を引き金にして飛びつくのかを見極めましょう。代表的な状況は以下です。
犬の飛びつき癖が出る状況いろいろ
  • 飼い主が外出から帰ったとき
  • 散歩やえさをねだるとき
  • 知っている人や犬を見たとき
  • 見知らぬ人や犬を見たとき
  • 見知らぬものを見たとき

しつけの実践

 犬の飛びつく癖に当たっては、以下の6ステップに沿って行います。

ステップ1: 服従訓練を徹底する

 まずアイコンタクトオスワリマテの3つしつけを完璧にマスターしておきます。じっとしている状態が当たり前だと考えている飼い主は、しばしば落ち着いて座っている犬に対してごほうびを与えることを忘れてしまいがちです。ですからは日頃から、じっとしているとおいしいものがもらえたり、ほめられたりするぞ!という思考パターンを犬の中にしっかりと形成しておきましょう。
 具体的には問題行動予防トレーニングをご参照ください。

ステップ2: 犬の欲求不満を解消する

犬の飛びつき癖の原因としては、まず第一に欲求不満を考慮する  犬が飛びつくのは、何らかの欲求不満が原因かもしれません。たとえば、ふれあいに飢えている犬が、帰宅した飼い主に飛びついたり、探索に飢えている犬が、散歩中他の犬に飛びついたりするなどです。欲求が満たされたことで急激に上がったテンションが、飛びつきという行動を生み出している場合は、日頃から欲求不満のガス抜きをこまめにしておくことで、爆発的な一過性ハイテンションを抑制することができます。
 具体的には、犬の欲求を参考にしながら、食べ物や飲み物、快適な室温調整など基本的なことのほか、探索、追いかけ、ふれあい、遊びなど、犬にとって極めて重要な欲求を充足させるような生活習慣を考えてみましょう。

ステップ3: 犬が飛びつく状況を作る

 犬が飛びつく状況を再現します。ここからしつけのスタートですが、犬が中~大型犬の場合は、飼い主が転倒するという危険もあるため、付添い人がいた方が無難です。
行動の一貫性  犬が飛びつくという状況における態度は、家族全員が徹底します。犬が「構って!」と飛びついてきた際、家族の誰か1人でも「わかったよしよし」という具合になだめすかしてしまうと、犬は「飛びつくと飼い主さんが構ってくれる!」と学習し、しつけの効果が全て水の泡になるのです。
 ですから様々な状況における犬の飛びつきに関し、家族全員が事前に相談して、一貫した行動をとるよう取り決めておく必要があります。

ステップ4: 飛びつこうとする前にオスワリ

 まず、犬が飛びつこうとする前にオスワリを命じてみましょう。ステップ1で述べたように、日頃からオスワリの訓練をしている犬は、じっとすることと報酬とが強烈に結びついています。基本的な服従訓練ができている犬なら、このオスワリという命令を聞いただけで飛びつく行動をやめてくれるはずです。そして命令どおりにじっとしていたら、必ずごほうびを与えたりほめたりして、行動をより強固なものにしましょう。
カウンターコマンディング
 カウンターコマンディング(代替反応トレーニング)とは、望ましくない行動をとれないような他の行動を強化する手法のことです。たとえば飛びつく前にオスワリを命じて座った状態にさせておけば、飛びつくこと自体が不可能になる、などです。人間で言うとタバコをやめるため(望ましくない行動)、ガムを噛む(同時に成立しない行動)ようなものです。

ステップ5: 弱化で飛びつきを防ぐ

 全ての犬がオスワリの命令に素直に従ってくれるわけではありません。オスワリを命じられたにもかかわらずテンションのコントロールができず、依然として飛びつこうとする犬もいることでしょう。そうした犬に対しては、先述した弱化(行動の頻度を低下させること)を用います。
犬の飛びつき癖に対する弱化
  • タイムアウト(負の弱化)  まずは精神的な罰であるタイムアウトを用いてみましょう。「構う」というごほうびを取り除く(負)ことで、犬の行動をなくそうとする(弱化)ため「負の弱化」に相当します。
     具体的には、犬が命令を無視して飛びついてきた瞬間、心を鬼にして完全無視しましょう。ワンワン吠えようが寄りかかってこようが、あたかも犬がそこにいないかのように振舞います。
     中~大型犬でちょっかいが激しい場合は、飼い主が部屋から一時的に退場することも必要です。そして犬が落ち着きを取り戻したタイミングでごほうびを与えます。
     この対応をひたすら繰り返すことで、飛びつくと無視され、じっとしているといいことがあるという条件付けを形成するわけです。
  • サプライズ(正の弱化)  サプライズ(苦痛を与えることよりも驚かせることを主目的とした罰)を用いることも時に有効ですが、まずはタイムアウトを利用した負の弱化を徹底的に行うことをお勧めします。
     扱いが容易であること、タイミングを計りやすいこと、口を抑える効果があること、犬に対するストレスが少ないこと、屋外でも使用できることなど、様々な理由から、ヘッドカラー(下記参照)を軽く引くという方法が妥当でしょう。
     「飛びつきをやめた瞬間」を作り出しやすくなることで、必然的にごほうびを与えるタイミングも取りやすくなります。タイミングさえ間違わなければ、飛びつきをやめることとごほうびとがリンクし、問題行動の頻度が減っていきます。
     なお、犬に対してサプライズを含めた嫌悪刺激を与える際には多くの注意点、および相応のリスクがあります。用いる前には必ず犬への罰についてを熟読し、またできれば臨床行動学(問題行動を専門に扱う)の専門家に事前に相談することが望まれます。
ヘッドカラー
犬の引っ張り防止アイテム「ヘッドカラー」  ヘッドカラー(head collar)は、散歩時の引っ張り防止アイテムで具体的な商品としてはアメリカ製の「Gentle Leader」(ジェントルリーダー)やイギリス製の「Halti」(ハルティ)が有名です。
 犬がリードを強く引っ張ると、自然にマズルに圧力がかかり、適度な不快感が発生します。またヘッドカラーの与える圧力は、優位の犬が劣位の犬のマズルを噛んで押さえつけるという行為の代替となっている可能性もあり、犬に自然な服従心を養う効果も期待されます。 犬のお出かけ・お散歩グッズ

ステップ6: ごほうびの回数を減らす

 犬の飛びつく癖がなくなってきたら、今度はごほうびを与える回数を減らしていきましょう。常にごほうびを与えていると犬がごほうび自体に飽きてしまったり、肥満の原因になりかねません。毎回ごほうびを与える⇒2回に1回ごほうびを与える⇒3回に1回⇒4回に1回・・・と減らしてゆき、最終的には「いいこ」などのほめ言葉だけにします。
 また日頃から問題行動予防トレーニングを行っていると、再発予防になるでしょう。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。
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犬の飛びつく癖をしつけ直す~実演動画

 以下でご紹介するのはの犬の飛びつく癖を直す方法を解説したハウツー動画です。
犬の飛びつく癖
  • まずはオスワリを徹底  まずは犬のオスワリのしつけを徹底します。座った状態と飛びつくという行為は両立し得ないので、飛びつくことよりも座っているほうが楽しいと犬が感じてくれれば、自然と飛びつき行為がなくなるという寸法です(カウンターコマンディング)。 まずは犬にオスワリを徹底的にしつけ、飛びつきと両立しない行動を強化する(カウンターコマンディング)
  • 行動の一貫性  家族の全員が犬に対してオスワリができるようにしておきます。誰か一人でも犬の飛びつきを許してしまうと、それはしつけになるどころか逆に間欠強化になってしまいます。間欠強化とは犬にごほうび(この場合は飛びつくという楽しい行為)をランダムに与えることでなされる行動強化のことであり、一度記憶すると消えにくいという特徴を持っています。すなわち、癖が直りにくくなるということです。
  • 飛びついてきたら無視  犬がオスワリの命令に従わずに飛びついてきたら、無視しましょう。「構ってもらう」というごほうびを取り去る(負)ことで行動の頻度を下げる(弱化)ため負の弱化に相当します。犬に背を向けて「空気」のように扱ったり、短時間部屋の外から出るというのも効果的です。 飛びついてきたらタイムアウトをとり、「関心」という犬にとってのごほうびを取り去る
  • プルーフィング  犬がオスワリの指示に従うようになってきたら、時間、場所、ごほうびの与え方をランダム制に切り替えましょう。家の中では優等生でも外に出た途端飛びつき癖が再発するようでは、しつけ完了とはいえません。どんな状況でもコンスタントにオスワリができるようになるまで、シチュエーションに様々なバリエーションを持たせて、飛びつき抑制を繰り返し練習します。この過程をプルーフィングといいます。
元動画は⇒こちら
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