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犬の拾い食いをしつけ直す

 拾い食い(ひろいぐい)とは犬が飼い主の許可を得ずに勝手に落ちているものを食べてしまうことです。部屋の中で落としてしまった薬の錠剤や外に落ちている有毒物、他の動物の糞など、犬に食べて欲しくないものは多々ありますので、もし拾い食いが癖づいている場合は、そのしつけなおしが必須となります。

犬の拾い食いについて

犬が口にしてはいけないものを水際で予防するのが「おあずけ」  犬は人間と比べて胃腸が丈夫にできていますので、多少腐りかけたものなら食べても平気だと言われています。だからといって自分の犬が、道端に落ちている汚らしい食べかけのパンを口にしてしまうと、飼い主として気分が悪いですよね。その他、犬にとって危険な有毒植物、心無い人間が道端に仕掛けた毒物、あるいは他の動物の糞便など、口に入れることが望ましくないものは多々あります。ですから、飼い主が「よし」と認めたもの以外口に入れさせないしつけが、ぜひとも必要となってくるわけです。特にラブラドールレトリバーなど食べ物に対する執着心が極めて強く、誤飲誤食事故や胃捻転などを起こしやすい犬種にとっては極めて重要な課題となります。 犬にとって危険な毒物 犬にとって危険な有毒植物
 さて、犬が拾い食いをする状況や心理は色々ありますが、犬の拾い食いの原因を一言で言うと拾い食いをすることと不快が結びついていない、および拾い食いをやめることと快が結びついていないという点です。
 してほしい行動と快、してほしくない行動と不快とを上手に結び付けることができれば、すでに癖になってしまった悪習でも十分改善される可能性があります。飼い主としては辛抱強く犬のしつけ直しにチャレンジしてみましょう。
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犬の拾い食いをしつけ直す~基本方針

 犬の拾い食いをしつけ直すに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
食べ物が落ちていても拾い食いしない
してほしくない行動
落ちているものを勝手に拾い食いする
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬の拾い食いをしつけ直す場合を考えて見ましょう。
強化
「食べ物が落ちていても拾い食いしなかった」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「落ちているものを勝手に拾い食いした」瞬間に不快(罰)を与える
 犬の拾い食いのしつけに際しては強化の方が効果的です。
 嫌悪刺激を用いる方法はタイミングが難しいため、当サイトでは主に、拾い食いを諦めた瞬間にごほうびを与える「正の強化」をメイントレーニングとして進めていききたいと思います。
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犬の拾い食いをしつけ直す~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬の拾い食いをしつけ直すに当たっては、以下の3つのことを準備します。

準備1: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備2: 首輪とリードで犬を固定する

 首輪とリードを犬に取り付けてそれを柱など動かない場所に固定します。これは食べ物に釣られてがっつこうとする犬の動きを制限するためです。特に中~大型犬の場合は人の手だけでは制御できませんので、安定性のあるものにリードをくくりつけておきます。

準備3: 集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。気が散るような魅力的なおもちゃなどが視界にあると集中できずに学習効果が低下しますので、しつけの前には犬の気を引くものを一掃して理想的な環境を作っておきます。

しつけの実践

 犬の拾い食いに当たっては、以下の6ステップに沿って行います。

ステップ1: 犬が拾い食いする状況を作る

 まずは犬が拾い食いする状況を再現します。固定したリードに犬をつなぎ、犬の口が届かない床に大好きなおやつなどを転がしてみましょう。ここからしつけのスタートですが、犬の食事のしつけをまだマスターしていない場合は、まずそちらが先です。また、犬が自分のうんちを食べてしまう場合は状況再現が難しいため、食糞症をしつけ直すをご参照ください。

ステップ2: 犬のおうかがいを待つ

自力では解決できない問題に直面した犬は、最寄の人間に助けを求める~犬のおうかがい  犬がおやつを見つけて拾い食いしようとしたら、リードに邪魔されてなかなか届かないことに気づくはずです。するとたいていの犬は「どうしたらいいですか?」と最寄の人間におうかがいを立ててきます。この瞬間を見計らって、犬にごほうびを与えましょう。「飼い主におうかがいをたてること」とごほうびとを結びつけるオペラント条件付けで、ここまでは食事のしつけと一緒です。
 この動作を何度も繰り返しますが、犬にごほうびを与えるときは必ず飼い主の手からにしてください。これは、ごほうびを床においてしまうと「床に落ちているものを食べてもいい」という誤解の一因になってしまうからです。
犬のおうかがい
 2004年ヴィリャーニらの実験では、犬の場合、箱におやつが入っているにもかかわらず、鍵がかかってそをれを手に入れることができないとわかると、ほとんどわずか数秒の内に、一番近くにいる人間に「どうしたらいいですか?」とお伺いを立てるといいます。
 ラブラドールレトリバーなど食べ物への執着心が強い犬の場合は、犬がちゃんとおうかがいを立ててくれるまで鉄の意志をもって臨(のぞ)まなければならないでしょう。

ステップ3: 指示語と結びつける

犬がおうかがいを立てるため、飼い主を見上げる直前に「オアズケ!」などの指示語をかける  犬が飼い主におうかがいを立てるようになったら、指示語と動作を結び付けましょう。具体的には、犬の意識が床に落ちているおやつから飼い主に切り替わろうとするその瞬間に、「オアズケ!」など任意の指示語を発します。すると犬の頭の中では、「オアズケ」という音と拾い食いを諦めて飼い主の方を向くという動作がリンクしていきます。
 なお、犬に指示語を覚えさせるのは一種の古典的条件付けです。指示語と行動を効果的に記憶させる際は、「指示語→行動」の順で声を掛けるのが最適となります(延滞条件付け)。

ステップ4: リードの固定を外してみる

 犬が指示語とおうかがいの関連性を学習したら、リードの固定を外してみましょう。食べようと思えば食べられる状況の中で犬を床の食べ物に近づけ、再び「オアズケ!」と命じてみます。
 もし犬が落ちているおやつを無視して飼い主の方を向いてくれたら成功です。これは犬が「床に落ちているものは自分にとって関係の無いものだ」と、無関係性を学習してくれたことを意味しています。もし飼い主の指示を無視しておやつにがっつくようでしたら、まだしつけが足りません。もう一度前のステップに戻って床のものを無視するよう強化しましょう。
無関係性の学習
 無関係性の学習とは、ある特定の刺激が、自分にとって毒にも薬にもならないと記憶することです。たとえば、床におやつが落ちているにもかかわらず、一切それを食べることができないという経験を何度も繰り返した犬は、「床に落ちている食べ物=自分には関係のないどうでもよいもの」と学習するのです。
 一度こうした無関係性の学習が成立すると、思考パターンを元に戻すのが極めて困難なため、犬は以降、床に落ちているものには興味を示さなくなります。

ステップ5: ごほうびの回数を減らす

 犬の拾い食いがなくなってきたら、今度はごほうびを与える回数を減らしていきましょう。常にごほうびを与えていると犬がごほうび自体に飽きてしまったり、肥満の原因になりかねません。毎回ごほうびを与える⇒2回に1回ごほうびを与える⇒3回に1回⇒4回に1回・・・と減らしてゆき、最終的には「いいこ」などのほめ言葉だけにします。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。

ステップ6: 場所と時間を変えて行う

 いつでもどこでも飼い主の指示に従うのがしつけの最終目標です。今度は時間と場所を変えてやってみましょう。家の中はもちろんのこと、散歩の途中で信号待ちする時、公園の中など様々なシチュエーションで「オアズケ」を試してみます。
般化とプルーフィング
 般化(はんか)とは、異なる状況の中で、快不快の引き金となる共通刺激を見出すことです。たとえば、自宅、公園、友達の家、道路、ドッグランなど様々な場所で様々な人が「オアズケ」をしつけておくと、全ての状況に共通しているのが、唯一「オアズケ」というコマンドであることを犬は学習します。結果として、どこでどんな人が「オアズケ」と指示を出しても、犬は拾い食いを中断することができるようになるわけです。
 このように状況を変化させて犬に共通刺激を学習させることをプルーフィングといいます。プルーフィング不足していると、家の中では優等生でも、外に出て床がカーペットからアスファルトに変わった途端、再び拾い食いが再発するかもしれません。
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犬の拾い食いをしつけ直す~実演動画

 以下でご紹介するのは、犬がある特定のものに対して執着心を持たないようにする「おあずけ」のしつけ方を解説したハウツー動画です。犬が飼い主を無視してえさにがっつきに行ったときや、外で拾い食いしそうになった時「おあずけ!」(Leave it!)と声をかけるだけで、犬は対象への関心を失います。
犬のオアズケ
  • 食べ物に届かない状態にする  床などにおやつを置き、リードで制御して犬が届かないようにします。小型犬の場合は飼い主がリードを手で持ってもよいですが、中~大型犬の場合はたいてい力負けしてしまいますので、柱など動かないものに固定します。 リードで制御して犬が食べ物に届かないようセッティングする
  • おうかがいを待つ  自分ではどうしようもないと悟ったとき、ほとんどの犬は最寄の人間に対して「どうしたらいいですか?」、「どうにかしてもらえます?」といった具合にお伺いを立ててきます。この瞬間を狙ってごほうびを与えましょう。これは「飼い主に頼ること」とごほうびとを結びつけるオペラント条件付けと言えます。 おうかがいとごほうびとをリンクするオペラント条件付け
  • 指示語とリンクする  犬がおうかがいに慣れてきたら、指示語と動作をリンクします。犬が床に落ちているおやつから注意をそらし、飼い主とアイコンタクトをとろうとする直前、「オアズケ!」、「Leave it!」など事前に決めておいた指示語を発し、アイコンタクトしたらごほうびを与えてほめます。この動作を繰り返していくと、「オアズケ」という音声と注意を飼い主の方に転換することとを結び付けて覚えてくれます。
  • 誘惑を強める  犬がおうかがいを立てるようになったら、誘惑の度合いを強めてみましょう。たとえば犬の大好きなレバーやチーズなどを床においてみます。諦めて飼い主とアイコンタクトした瞬間、ごほうびを与え、「おいしいものは飼い主の手からでなければ食べられない」という記憶を刷り込みます。
     おやつの種類、行う時間や場所をランダムに設定し、繰り返しこうした過程を繰り返します。またごほうびを与え方も徐々にランダム制に切り替えていきましょう(間欠強化による記憶増強)。 おやつの種類、行う時間や場所をランダムに設定してオアズケの練習をする
元動画は⇒こちら
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