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犬の散歩のしつけ

 しつけの終わっていない犬を散歩に連れ出すことは大変危険です。車道への飛び出し、通行人への飛びつき、飼い主の引き倒しなど、周囲の人や犬に多大なる迷惑をかけてしまいます。飼い主はまず、リードを引っ張らずに犬が自然と足元を歩いてくれるようにしつけておかなければなりません。

散歩のしつけの重要性

 犬にとっての散歩は子供にとっての遠足のようにワクワクする楽しいものですので、できれば毎日やってあげたいものです。犬にとっても飼い主にとっても理想なのは、首輪やリードがない状態でも犬が飼い主の足元に寄り添い、付かず離れずの関係で歩くことです。 首輪もリードもない散歩が犬にとっても人にとっても理想  しかし現実世界では、まず法律でリードの使用が義務付けられていますし、また犬が絶対に飼い主の足元から離れないという100%の保証もありません。ですから日本国内に暮らしている限り、屋外で犬を散歩させるときは首輪もしくはハーネスを装着し、それらの装具に飼い主がリードを取り付けて動きをコントロールしながら行っていかなければならないのです。
 犬を首輪、ハーネス、リードといった装具に慣らすこと、屋外環境に慣らすこと、飼い主の足元を歩くこと、そうしたすべてのことが犬の散歩のしつけに含まれます。
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散歩グッズの選び方

 犬を散歩させる時に最低限必要な物は「首輪もしくはハーネス」「リード」「散歩札」「適切な服装」です。それぞれの詳しい種類や特徴は犬の散歩グッズで解説してありますのでご参照ください。ここでは数ある散歩グッズの中から、犬にとってベストな物を選ぶ時のヒントをご紹介します。

避けたい散歩グッズ

 犬の体の大きさにかかわらず避けなければならないのは、以下のようなグッズです。こうした製品は犬の体に対するストレスが著しく高いため、国によっては使用すること自体が動物虐待とみなされます。
  • チョークカラー
  • ハーフチョークカラー
  • プロングカラー
  • ショックカラー
  • ジャーク(※)
 最後に挙げた「ジャーク」(jerk)とは、飼い主がリードを素早く引っ張る動作のことです。こうした動作は犬の注意を自分に向けるときには便利ですが、構造的に弱い首元に大きな力をかけるため推奨されません。また、こうしたテクニックをしつけと称して用いているドッグトレーナーも推奨されません。

首輪とハーネスの比較

 散歩グッズはいろいろありますが、飼い主にとって悩みの種は首輪を装着するべきがハーネス(胴輪)を装着するべきかという難問です。考える時のポイントは「犬がリードを引っ張ってしまった場合、犬の体に対するストレスをいかに低く抑えるか」および「犬がリードを引っ張ってしまった場合、いかに体を抑制するか」という2点です。

犬へのストレスを減らす

 犬が全くリード引っ張ることがなかったら首輪でもハーネスでもどちらでも構いません。過去に行われた調査(「ハーネスは首輪よりも犬へのストレスが少ない」は本当か?)でも、「犬に引っ張り癖がない場合、首輪とハーネスが犬に対して与えるストレスに違いは無い」と報告されています。
 しかし実際は、どんなにしつけの行き届いた犬でも少しくらいはリードを引っ張るものです。結論から言うと、犬の首に優しいハーネスを選んだほうがストレスは低く抑えられます。過去数十年にわたって当たり前のように用いられている首輪ですが、その一方で非常に多くの弊害が報告されています。具体的には以下です。 犬の首元に対する負担はハーネスよりも首輪のほうが大きい 頚椎ヘルニアの危険性  犬の首輪が頚椎ヘルニアの原因になっている可能性を否定できません。
 フランス・パリ東大学とアルフォール国立獣医学校を中心としたチームは2002年1月から2016年1月の期間、フランス国内にある動物診療施設を受診したフレンチブルドッグ合計343頭を対象とし、この犬種で多い神経系疾患の種類を統計的に精査しました。その結果、343頭のうち45.5%に相当する156頭が椎間板疾患と診断され、そのうち41%もが頚椎ヘルニアだったといいます。中でも多いのが上部頚椎ヘルニアで、第一頚椎から第四頚椎までの間で発生するケースが頚椎ヘルニアの75%、ヘルニア全体の30.8%、神経系疾患全体の14%を占めるという異常な値だったとのこと。
 この異常な発症率の高さの背景にあるのは、体に比べて頭が大きいというフレンチブルがもつ身体的な特徴、および軟骨形成不全という遺伝的な特質だと考えられます。しかしそれだけではなく、首輪を用いて散歩するという習慣がヘルニアの発症率を高めている可能性も否定できません。 フレンチブルドッグに多い神経系の病気リスト
舌骨骨折の危険性  犬の散歩中に首輪(カラー)を通じて頚部にかかる圧力が、舌骨の骨折や脱臼を引き起こしている可能性が示されました。
 バージニア=メアリーランド・カレッジ・オブ・ベタリナリー・メディスンのチームは2012年から2016年の期間、大学付属の動物病院を受診した犬と猫を対象とし、首の前面にある小さな骨「舌骨」(ぜっこつ)がどの程度の頻度で障害(骨折と脱臼)を受けているかを統計的に調査しました。 犬の舌骨骨折は臨床症状を示さないことが多い その結果、犬293頭における数が9頭(3.1% | 骨折8+脱臼4)だったと言います。調査チームは、犬を散歩している途中に首輪を通して頚部にかかる圧力が、飼い主も知らない間に犬の舌骨障害を引き起こしているのではないかと推測しています。ジャーマンシェパードにおける受傷リスクが13.7倍と高いものだったことから、特に中~大型犬がリードを強く引っ張ることで発症するのではないかとも。 犬の首輪(カラー)が舌骨の骨折や脱臼を引き起こしている? 舌骨を骨折した犬ではまれに舌の出しっぱなしや嚥下困難が見られることも また2016年に行われた別の症例報告では、舌骨が折れた時の症状として「舌が出しっぱなしになる」、「食餌を飲み込めない」などが報告されています。たまに舌を垂らしたまま元に戻せないチワワなどの小型犬を目にすることがありますが、原因は首輪による舌骨の損傷かもしれません。だとすると中~大型犬だけでなく小型犬もやはり危険ということになります。
首絞めによる血流障害  首には頚動脈という太い血管が通っており、脳へ血液を送り込んでいます。この頚動脈に対する圧迫が原因と考えられる悪影響も幾つか報告されています。具体的には以下のようなものです。
首輪と血流障害のリスク
  • 眼球への影響26頭の合計51個の眼球を対象とし、首輪とハーネスが眼内圧に与える影響を比較した。その結果、首輪を装着している時にだけ眼内圧が顕著に高まった。角膜が弱かったり緑内障を抱えている犬においては、首輪の装着による眼内圧の上昇が悪影響を及ぼすものと推測されるため、ハーネスの使用が推奨される(→出典)。
  • 脳虚血犬に対して罰を与える際、チョークカラーを用いて首吊り状態にしたため、虚血に起因する重度の脳浮腫が起こった。犬は運動失調を示し始め、左にグルグル旋回した後、意識が混濁した。MRI検査の結果、脳内の複数箇所に病変が見出されたため、犬は安楽死を余儀なくされた(→出典)。
  • 首への影響400頭の犬のうち26.9%では首の障害が見られ、そのうち91%では「飼い主がリードを強く引っ張る」もしくは「犬自身がリードを強く引っ張る」という履歴を伴っていた(→出典)。
  • その他推測の域は出ないが、甲状腺機能低下症は首輪による甲状腺の慢性的な炎症が原因ではないか。また前足を病的に舐め続ける肢端舐性皮膚炎は、首の根元の神経が首輪によって障害を受けた結果ではないか(→出典)。
 上記したように、構造的に弱い首元に装着している首輪は、犬の首にある解剖学的な構造物に強いストレスを与え、短期的~長期的な障害をもたらしうると考えられます。ですから、犬がリードを引っ張ってしまった時のストレスを最小限に抑えるならハーネスを用いた方がよいでしょう。

犬への抑制力を高める

 犬の体に対するストレスを減らすだけならハーネスで構いません。しかし忘れてはならないのは、万が一犬が強い力でリードを引っ張ったとき、飼い主が犬の体をしっかり抑制しなければならないという点です。飼い主が犬の動きのコントロールできなくなると具体的には以下のようなトラブルに発展する可能性があります。
犬の暴走によるトラブル
  • 犬が車道に飛び出して交通事故に遭う
  • 飛び出した犬を避けようとして他人が交通事故を起こす
  • 車道に飛び出した犬に釣られて飼い主が交通事故に遭う
  • 犬が飛びついて他の人や犬に危害を加える
 上記したように、犬の体に対する抑制力が不十分だと犬のみならず、犬の周囲にいるすべての存在(飼い主・通行人・他人の犬)に危害を加えてしまう危険性があるのです。ですから引っ張り癖がなかなか治らないとか体が大きい犬の場合は、犬が力を出しやすい「バッククリップハーネス」ではなく、「フロントクリップハーネス」や「コントロールハーネス」など体に対する抑制力が強い特殊なハーネスを用いる必要があります。 犬用ハーネスの種類一覧

体の大きさに合わせた装具選び

 犬の装具を選ぶ時のポイントは「犬の体に対するストレスを低く抑える」と「万が一引っ張っられたときの抑制力を保つ」いう点であることがわかりました。では具体的にどのような装具を選べばよいのでしょうか?以下では、犬の体の大きさに応じた装具選びの一例をご紹介します。なお散歩グッズの詳しい解説は「犬の散歩グッズ」でまとめてありますのでご参照下さい。 犬の散歩グッズ

超小型犬

 超小型犬は成犬の体重が3kg未満の犬のことです。具体的にはこうした犬種などが含まれます。 成犬の体重が3kgに満たない超小型犬~チワワやヨーキーなど 室内でのしつけ時 バッククリップハーネス | ノーマルカラー
超小型犬は首が弱く、すぐに気管虚脱を起こしてしまいます。犬が強く引っ張っても首元に負担がかからないよう、基本的には小型犬用のハーネスを用いましょう。しかし犬がまだ子犬で体が小さい場合、あまりにも体が小さすぎてサイズ合うハーネスが売っていないこともあります。そうした場合はノーマルカラーで代用し、体が大きくなり次第ハーネスに切り替えます。
路上での散歩時 バッククリップハーネス
しつけが終了し、強く引っ張ることが無くなったらバッククリップハーネスに統一します。一部には「小型犬は骨格がきゃしゃだからハーネスよりも首輪の方が良い」と言う人もいますが、構造的に首より弱い部分はなく、体との接触面積が首輪よりも狭いハーネスはありません。

小型犬

 小型犬は成犬の体重が3~10kg未満の犬のことです。具体的にはこうした犬種などが含まれます。 成犬の体重が3~10kgの小型犬~ミニチュアダックスフントやパグなど 室内でのしつけ時 バッククリップハーネス
小型犬は体高が低いため、飼い主がリードを引っ張ったり犬が引っ張ると、首を真上に(人間で言うと真後ろに)引く形になり、かなり強く締まってしまいます。犬が強く引っ張っても首元に負担がかからないよう、基本的には小型犬用のバッククリップハーネスを用いましょう。子犬で体が小さい場合、パピー用(超小型犬用)のハーネスを用いるとぴったり合うことがあります。
路上での散歩時 バッククリップハーネス
しつけが終了し、強く引っ張ることが無くなったらバッククリップハーネスに統一します。

中型犬

 中型犬は成犬の体重が10~25kg未満の犬のことです。具体的にはこうした犬種こうした犬種などが含まれます。 成犬の体重が10~25kgの中型犬~ボーダーコリーやウェルシュコーギーなど 室内でのしつけ時 フロントクリップハーネス | ヘッドカラー
中型犬くらいになると引っ張る力が強いため、バッククリップハーネスだと飼い主が体ごと持っていかれる可能性があります。抑制力が強いフロントクリップハーネスを用いたほうがよいでしょう。ブルドッグのようにマズルが極端に短くなければヘッドカラーでも構いません。
路上での散歩時 バッククリップハーネス | フロントクリップハーネス
しつけが終了し、強く引っ張ることが無くなったらバッククリップハーネスに統一します。真新しいものを見たら興奮して突進してしまう癖がある犬の場合は、急にリードを強く引っ張ることを想定しフロントクリップハーネスのほうがよいでしょう。

大型犬

 大型犬は成犬の体重が25kg以上の犬のことです。具体的にはこうした犬種こうした犬種などが含まれます。 成犬の体重が25kg以上の大型犬~秋田犬やラブラドールレトリバー 室内でのしつけ時 フロントクリップハーネス | コントロールハーネス | ヘッドカラー
大型犬はかなり力が強く、本気で引っ張られると飼い主はたいてい転んででしまいます。ですからしつけの最中は抑制力が強いフロントクリップハーネスやコントロールハーネスを用いるようにします。大型犬の場合、ボクサーのような短頭種にも装着できるものがありますのでヘッドカラーでも構いません。
路上での散歩時 フロントクリップハーネス | コントロールハーネス | ヘッドカラー
しつけが終了して強く引っ張ることが無くなったとしても、大型犬は力が強いため、リードを強く引っ張ってさまざまなトラブルを招いてしまう危険性が大です。例えば見知らぬ犬と出会って興奮するとか、急な物音に驚いて走り出すといった状況が想定されます。飼い主は万が一に備え、しつけ時と同じフロントクリップハーネス、コントロールハーネス、ヘッドカラーを装着して犬に対する抑制力を保ったほうが無難でしょう。
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室内での散歩の練習

 犬を屋外に連れ出す前に、飼い主は家の中で事前トレーニングを行っておく必要があります。こうした予習をせずいきなり外に出てしまうと、「犬が車道に飛び出す」「犬型の犬に飛びかかって噛まれる」「犬が他人の足元に駆け寄って蹴られたり踏まれる」といったトラブルに巻き込まれる可能性があります。最悪のケースでは命を落とすこともありますので、散歩の事前トレーニングは絶対に必要なプロセスです。

室内練習の基本項目

 犬の散歩の室内トレーニングは、犬の年齢や体の大きさにかかわらず基本的には以下のような流れで進みます。
  • しつけ部屋を用意 犬の気が散らないよう、おもちゃや真新しい物が一切無い無味乾燥なエリアを用意します。退屈した犬は否応なく同じ部屋の中にいる飼い主に注目するようになり、しつけが効率化します。また飼い主はしつけの基本理論をマスターし、何をすべきで何をすべきでないかを一通り把握しておきます。犬のしつけの基本
  • アイコンタクトと来い 犬の名前を呼んで飼い主の方に注目させアイコンタクトを取ります。おやつなどで犬を引き寄せ、飼い主に近づいてきたらおやつを与えて褒めてあげます。犬のアイコンタクトのしつけ
  • おすわり 犬がアイコンタクトと「来い」ができるようになったら、おやつを犬の頭上に掲げるように持ち、腰が自然に降りるように誘導してあります。おすわりの体勢になったらおやつを与えて褒めてあげます。犬のオスワリのしつけ
  • 足先を触る 犬の前足を片方ずつ触り、じっとしていたらおやつを与えて褒めてあげます。同様に後ろ足も触ります。このしつけは散歩から帰って足をきれいに拭くときに必要になるものです。犬のボディコントロールのしつけ
  • 自分の右側に呼び寄せる おやつを右手に持ち、犬の名前を呼んで誘導します。犬が自分の右側に来たらおやつを与えて褒めてあげます。
  • 自分の左側に呼び寄せる おやつを左手に持ち、犬の名前を呼んで誘導します。犬が自分の左側に来たらおやつを与えて褒めてあげます。
  • 右側とツイテ 犬を自分の右側に誘導し、ちゃんと来れたらおやつを与える寸前に「ツイテ」といった指示語を聞かせ、指示語と行動との結びつきを強化します。犬のツイテのしつけ
  • 左側とヒール 犬を自分の左側に誘導し、ちゃんと来れたらおやつを与える寸前に「ヒール」といった指示語を聞かせ、指示語と行動との結びつきを強化します。犬のヒールのしつけ
  • ハーネス(首輪)の見た目に慣らす 犬にハーネス(首輪)を見せながらおやつを与えます。
  • ハーネス(首輪)の感触に慣らす ハーネス(首輪)で、犬の体を触り、じっとしていたらおやつを与えて褒めてあげます。慣れてきたら、実際に装着し、じっとしていたらおやつを与えて褒めてあげます。
  • リードの見た目に慣らす 犬にリードを見せながらおやつを与えます。
  • リードの感触に慣らす リードで、犬の体を触りじっとしていたらおやつを与えて褒めてあげます。
  • リードを装着する まず犬にハーネスを装着し、リードの先端についている金具(ナスカン)をハーネスに装着します。じっとしていたらおやつを与えて褒めてあげます。いったん金具を外し、再び金具を装着しじっとしていたらおやつを与えて褒めてあげます。リードをガジガジかじろうとしたら、口に入れる前に名前を呼んでアイコンタクトを求め、動作を中断したらおやつを与えて褒めてあげます。
  • リードを付けての「来い」 犬にハーネスとリードを装着し、実際に部屋の中を歩いてみます。犬は自分の足元に付いてきたらおやつを与えて褒めてあげます。自分勝手にウロウロと歩き回るようだったら、犬が自発的に足元に来るまで待ち、足もとに戻ってきたらおやつを与えて褒めてあげます。まったく戻ってくる気配がない場合は、リードをゆっくりと引っ張り(※ぐいっと強く引くジャークはダメ!)犬の注意を自分に向け、足元に来るように誘導します。リードが緩み犬が足元に戻ってきたらおやつを与えて褒めてあげます。犬のリーダーウォークのしつけ

子犬の散歩はいつから?

 1歳未満の子犬の散歩はいつから始めればよいのでしょうか?子犬の成長過程に合わせてしつけのスケジュールを組むと、一例としては以下のようなものがあります。ペットショップやブリーダーから子犬を購入した場合は、おおむね生後9週齢以降からスタートということになります。

生後3~5週齢

 子犬が生後3週齢になると、ようやく自力で立ち上がることができるようになります。基本的にはきょうだい犬とじゃれあい、母犬のお乳を吸い、疲れたら寝るといったサイクルの繰り返しです。足腰を鍛えるため、柔らかいクッションなどで軽いスロープなどを作り、その上を歩かせるようにします。バランス感覚が養われると同時に足腰が鍛えられるでしょう。ただし落下してしまう危険性があるため、階段や段差のあるソファなどには上らないように注意します。特にラブラドールレトリバーにおいては、この時期における階段の昇り降りが股異形成の発症に関わっている可能性が示されていますので要注意です(→出典)。

生後6~8週齢

 生後6~8は社会化期のピークです。この時期における最重要課題は、犬が将来的に出会うだろうさまざまな刺激にあらかじめ慣らしておくことです。町の騒音、他の犬の鳴き声、猫の声、車のクラクション、部屋の呼び鈴、電話の呼び出し音など、様々な音響刺激に慣らしておきましょう。動画共有サイトなどにある「街の喧騒」を音量を下げてBGMで流すという形でも構いません。見知らぬ人間に触れられる事にも慣らしておくため、知人や友人に頼んで家に来てもらい、犬をなでてもらいましょう。また1回目のワクチン接種もこの頃に行われます。 犬をいろいろな音に慣らす

9~11週齢

 社会化期のピークが終了し、外界に対する警戒心が徐々に出てくる頃です。刺激トレーニングを続けると同時に、この時期から前のセクションで解説した散歩の室内トレーニングを開始します。犬の集中力は1日10分程度しか持ちませんので、無理強いしないように注意します。1ステップに3日かけても十分間に合いますので全く慌てる必要はありません。
 例外はありますが、この頃に2回目のワクチン接種が行われます。犬の社会化を促すために開催される「パピークラス」(パピーパーティ)への参加条件が「2回目のワクチン接種を終えていること」の場合、ようやく参加することができます。家の近くで開催されている場合は考えてもよいでしょう。

生後12~16週齢

 この頃になると基本的な社会化と散歩の室内トレーニングを終えているはずです。狂犬病予防注射、3回目のワクチン接種とノミ、ダニ、フィラリア対策を終えたタイミングで実際に外に出ての散歩が可能になります。なお法律上、散歩する際は市区町村への登録証である「鑑札」および狂犬病予防注射の証明書である「注射済票」を装着する義務があります。済んでいない場合は子犬が生後90日を過ぎたタイミングで所属自治体に登録を済ませておきましょう。
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屋外での散歩の練習

 散歩の室内トレーニングを終え、ワクチン接種も終わり、いつでも外に出られるようになりました。しかし、いきなり外に出してしまうと真新しい刺激が多すぎて興奮してしまい、先に述べたような「道路に飛び出す」とか「すれちがった犬に飛びつく」とか「他の歩行者の足元にじゃれつく」といった状況に陥りかねません。特に散歩デビューする子犬にとっては、外の刺激に十分に慣らすための準備期間が必要となります。 Zak George's Dog Training rEvolution(画像出典)

練習場所を選ぶ

 犬を歩かせる場所としては、人通りの少ない舗装道路が無難でしょう。犬の散歩トレーニングを屋外で行う場合は、人通りや自動車の少ない舗装道路で 草地はクッション性があり足に優しい場所ですが、草の影に危険なものが落ちていても見つけるのが困難です。またいろいろな匂いが混じり合っていますので、嗅覚の動物である犬にとっては気が散ってしょうがないでしょう。さらに土壌にはクロストリジウムディフィシルや破傷風菌といった病原体が含まれている可能性もあるため、免疫系が不完全な子犬にとっては少々ハードルが高すぎです。舗装道路ならそういった危険性が低いため外の世界に不慣れな犬でも比較的安全に歩けるでしょう。ただし夏場はかなり熱くなるため、飼い主が手で触り温度を確かめてからにします。
 散歩の練習をするときは、人通りや車の往来が少ない時間帯を選ぶようにします。犬の散歩トレーニングを屋外で行う場合は、人通りや車の往来が少ない時間帯を選ぶ 人通りが多いと、犬の気が散って練習になりません。また突発的に動き出して人に蹴られたり踏まれたりしてしまう危険性もあります。さらに「なでてもいいですか?」という人が現れ、犬の頭に勝手に手を出してくるかもしれません。万が一犬が噛み付いてしまった場合、たとえ向うの勝手な行動だったとしても、飼い主が責任を問われてしまいます。車の往来が激しいと、動くものに気を奪われて集中力が途切れたり、最悪のケースでは車を追いかけてリードをぐいぐい引っ張ってしまいます。

散歩の練習手順

 散歩を練習する場所と時間帯が決まったら、犬をそこへ連れて行きます。飼い主は犬が大好きなおやつを取り出しやすいようウエストポーチなどに入れておきます。犬が小型犬で練習場所が家から近い場合は抱っこしたりクレートに入れて連れていっても構いません。リードにつないだ状態で連れて行く場合は、必ずショートリード(短めに持った状態)にし、犬が突発的に動いても車道や他の人に届かないようにします。
犬を屋外に連れ出したら、まずは犬に思う存分探索させてあげる  練習場所に着いたら、まず犬を外の世界に慣らしてあげましょう。家の中とは違い、外の世界には今まで触れたことのなかった刺激がたくさんあります。体を撫でる風、風に揺れる草、草地を跳ねるバッタや目の前を通り過ぎるトンボ、道路の匂いなど、最初のうちは気もそぞろでウロウロ歩きまわるかもしれません。まずはそうした刺激に触れさせ、思う存分探索させてあげます。
犬が外の環境に慣れてきたらアイコンタクトとおすわりを繰り返し練習  そのうち飽きて落ち着いていきますので、そのタイミングで室内トレーニングで予習しておいたステップを一通りやってみましょう。最も重要なのは「アイコンタクト(来い)」と「オスワリ」です。犬の名前を呼び、自分の方に注意を向けます。犬と目が合ったら「おすわり」の指示を出し、その場でおすわりの体勢を取らせましょう。うまくできたら必ずおやつを与えて褒めてあげます。この指示は犬が何かに気を取られて動こうとしない時や今にも走り出しそうな時、行動を中断するために必要となりますので繰り返し繰り返し練習します。
気が散る屋外環境でも飼い主の足元に寄り添って歩かせるのが目標  犬が外の環境に慣れてきたら歩く練習に入ります。右側に寄り添って歩くバージョンと左側に寄り添って歩くバージョンの両方をまんべんなくこなします。リードを引っ張らずに近づいてくるたびにおやつを与えて行動を強化してください。なお犬の集中力は10分程度です。おやつに対する執着心が薄れ始めたらいさぎよくその日のトレーニングを切り上げ、次の日に回すようにします。家に帰ったら足をきれいに拭いてあげましょう。

子犬の散歩量の目安

 散歩のしつけが終わったらいよいよ本格的な散歩デビューです。しかし子犬に適した1日の散歩量(時間や距離)はいったいどの程度なのでしょうか?1歳を過ぎた成犬に関してはイギリスの犬種協会である「ケネルクラブ」(Kennel Club)が大まかな散歩量の目安を示しています。一方、1歳未満の子犬に関しては散歩量に関する明確な基準がなく、「月齢×5分」など犬種ごとの体の大きさを完全に無視したとざっくりしたものしかありません。
 以下はケネルクラブが示している目安の量を元にした、子犬の月齢に応じた散歩量の目安です。小型犬と中型犬の体の成熟は生後12ヵ月、大型犬の体の成熟は生後18ヶ月で見積もっています。成犬の散歩に必要な時間と距離を参考にしながら、月齢ごとの散歩量の目安を推測していきます。
 たとえば小型犬であるチワワの場合、成犬の散歩量の目安が1日30分ですので、「小型犬・30分」のグラフを参考にします(例:6ヶ月齢で10分)。中型犬である柴犬の場合、成犬の散歩量の目安が1日1時間ですので「小~中型犬・1時間」のグラフを参考にします(例:9ヶ月齢で40分)。大型犬であるゴールデンレトリバーの場合、成犬の散歩量の目安が1日2時間ですので、「大型犬・2時間」のグラフを参考にします(例:12ヶ月齢で70分)。どれも大まかな目安に過ぎませんが「月齢×5分」よりはいくらかましでしょう。
小型犬・30分
成長期にある子犬の散歩量目安~超小型犬の場合
小~中型犬・1時間
成長期にある子犬の散歩量目安~小~中型犬の場合
中型犬・2時間
成長期にある子犬の散歩量目安~運動量の多い中型犬の場合
大型犬・1時間
成長期にある子犬の散歩量目安~運動量の少ない大型犬の場合
大型犬・2時間
成長期にある子犬の散歩量目安~運動量の多い大型犬の場合  犬の散歩のしつけが終わって慌てて外に出る前に、飼い主として知っておかなければならないことが山ほどあります。犬を散歩させる場所、時間帯、雨の日の散歩など、犬を安全に散歩させる時の基本知識に関しては、犬の散歩の基本をご参照ください。また犬の散歩にはさまざまなトラブルの種が眠っています。犬の飼い主として知っておかなければならない法律やマナーに関しては、犬の散歩のマナーをご参照ください。こうした知識の予習・復習を怠ると、犬や飼い主が大怪我を負ったり、トラブルに巻き込まれて裁判沙汰に発展する危険性が高まってしまいます。
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