トップ犬のしつけ方室内で必要となるしつけ犬の食事のしつけ

犬の食事のしつけ

 犬の食事のしつけとは、犬がエサを目の前にしても、飼い主が許可するまで待ての状態を保つことです。基本的に犬は食いしん坊ですので、多少いたんだものでも食べてしまおうとします。また、無節操(むせっそう)な食生活は人間と同様、肥満などの生活習慣病を引き起こしたりもしますので、飼い主のしつけが重要です。

犬の食事のしつけの必要性

犬の食事は、飼い主の合図でスタートするのが基本  食事のしつけには、犬の拾い食いを予防するという効果があります。
 例えば散歩中にゴミ集積所(しゅうせきじょ)を通りがかったとしましょう。ひょっとしたらカビたパンが落ちているかもしれません。犬は多少のカビや腐敗(ふはい)は気にしませんのでそのまま食べてしまう危険性があります。こうした時食事のしつけができていると、食べ物を目の前にしたときでも自主的に「待て」の状態になり、「食べていいですか?」と飼い主のほうにおうかがいを立てて来るようになりますので安心です。
 では具体的に犬の食事のしつけ方を見ていきましょう。
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犬の食事のしつけ~基本方針

 犬の食事のしつけに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
食べ物を目の前にしても待ての状態を保つこと
してほしくない行動
食べ物を目の前にしたら飼い主を無視して食いつくこと
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬に食事をしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「食べ物を目の前にしても待ての状態を保てた」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「食べ物を目の前にしたら飼い主を無視して食いついた」瞬間に不快(罰)を与える
 犬の食事のしつけに際しては強化、弱化の両方が効果的です。
 リードなどをうまく使えば、犬に対して効果的に嫌悪刺激を与えることができますので、犬に食事をしつける際は、食べ物を目の前にしても待ての状態を保てた瞬間に賞を与える「正の強化」をメイントレーニング、飼い主を無視して食いついた瞬間に罰を与える「正の弱化」をサブトレーニングとして進めていききたいと思います。
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犬の食事のしつけ~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬の食事のしつけにおいては、以下の3つのことを準備します。

準備1: 待て(マテ)をマスターする

 まずは待て(マテ)をマスターしましょう。具体的には待て(マテ)のしつけをご参照下さい。犬の食事のしつけとはつまり、「食べ物と言う強烈(きょうれつ)に気持ちをひきつけるものを目の前にしながらの”待て”」ですから、待ての発展形(はってんけい)といえます。

準備2: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備3: 首輪とリードで犬を固定する

 「正の弱化も効果的」と述べましたが、具体的には首輪とリードを犬に取り付けてそれを柱など動かない場所に固定します。食べ物を見つけて食いつこうとしたら首輪に締め付けられて苦しくなるという狙いです。この首輪とリードが飼い主が手を下すことなく犬に不快感を与えるいわゆる「天罰」になってくれるわけです。刺激を提示することで(正)、行動の頻度を減少させる(弱化)わけですから、オペラント条件付けの内「正の弱化」ということになります。

しつけの実践

 犬の食事のしつけを実践するに当たっては、以下の5ステップに沿って行います。

ステップ1: 犬の動きを制限する

 犬に首輪とリードを付けて、柱など固定できる場所に結び付けます。こうすることで犬の動きを制限します。

ステップ2: ギリギリの場所に食べ物を置く

エサを届かないぎりぎりの場所におき、犬があきらめて自発的にマテの状態になるのを期待する。  犬の動きを制限できたら、犬の口が届かないギリギリのところにエサを置いてしばらく様子を見てみましょう。犬は「今食べないと誰かに取られちゃう!」と常に焦った心理状態ですので我(われ)を忘れて食べ物に食いついてくるでしょう。しかしリードで固定されていますので、 食いつけば食いつくほど首が締まって苦しくなります。つまり我を忘れて食べ物に食いつくことに対して「天罰」が下るのです。
  この経験を繰り返すことで犬は「我を忘れて食べ物に食いついても疲れるだけで無駄だなぁ・・・」と学習していき、徐々にがっつくことを諦めるようになってきます(オペラント条件付けの内の「正の弱化」)。

ステップ3: おうかがいを待つ

 犬が疲れてきたら、「どうしたらいいの?」という顔で、近くにいる飼い主のほうを向いてくるはずです。その瞬間を見計らってごほうびを与えましょう。これを繰り返すことで、「目の前のご飯にがっつくよりも、飼い主の目を見たほうが簡単にごほうびが手に入る」と学習していきます。これは、「注意をご飯から飼い主に向けること」とごほうびとを結びつけるオペラント条件付けです。
犬のおうかがい
 2004年ヴィリャーニらの実験では、犬の場合、箱におやつが入っているにもかかわらず、鍵がかかってそをれを手に入れることができないとわかると、ほとんどわずか数秒の内に、一番近くにいる人間に「どうしたらいいですか?」とお伺いを立てるといいます。一方オオカミの場合、人間に馴れて一緒に暮らしているような個体でも、ヒントを求めに人間の顔を見ることはないとか。

ステップ34 待て(マテ)を実行する

エサにがっつくよりも、飼い主からエサをもらったほうが得であると思い込ませるのがポイント  犬が飼い主へのおうかがいに慣れてきたら、アイコンタクトしてきたタイミングで「待て(マテ)」の指示を出しましょう。練習どおりにじっとしていたらすかさず「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでて、ごほうびを与えます。「犬がエサに気をとられる→エサを無視して飼い主にアイコンタクトする→マテを命じる→指示通りにできたらごほうび」という手順を、流れるように行ってください。
 5回ほど待ての復習をしたら、今度はごほうびの代わりにじらせておいたエサを「よし!」などの解除語と共に与えます。犬は食べ物を目の前にしても、飼い主さんの目を見てじっと我慢していた方が疲れずにエサにありつくことができる!と学習していき、 自主的に待ての状態を保つようになります。

ステップ5: リードを外して行ってみる

 犬が食べ物を目の前にしても冷静を保ち、待ての状態になって飼い主の指示を待てるようになったら、今度はリードをはずして行ってみましょう。動きが制限されていない状態でも同じことができたら合格です。もし飼い主を無視して再びがっつくようでしたら、もう一度ステップ3に戻って行動の強化を図りましょう。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。
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犬の食事のしつけ~実演動画

 以下でご紹介するのは、犬がある特定のものに対して執着心を持たないようにする「おあずけ」のしつけ方を解説したハウツー動画です。犬が飼い主を無視してエサにがっつきに行ったときや、外で拾い食いしそうになった時「おあずけ!」(Leave it!)と声をかけるだけで、犬は対象への関心を失います。
犬の食事のしつけ
  • 食べ物に届かない状態にする  床などにおやつを置き、リードで制御して犬が届かないようにします。首や体を締め付けられて苦しくなりますが、これが天罰になってくれます。 がっつくことと天罰とをリンクするオペラント条件付け
  • おうかがいを待つ  自分ではどうしようもないと悟ったとき、ほとんどの犬は最寄の人間に対して「どうしたらいいですか?」、「どうにかしてもらえます?」といった具合にお伺いを立ててきます。この瞬間を狙ってごほうびを与えましょう。これは「飼い主に頼ること」とごほうびとを結びつけるオペラント条件付けと言えます。 おうかがいとごほうびとをリンクするオペラント条件付け
  • 誘惑を強める  犬がおうかがいを立てるようになったら、誘惑の度合いを強めてみましょう。たとえば犬の大好きなレバーやチーズなどを床においてみます。犬が飼い主を無視してがっつくようでしたら、再びリードを固定して天罰を与えましょう(無理に引っ張らないこと)。諦めて飼い主とアイコンタクトした瞬間、ごほうびを与えます。このようにして「おいしいものは飼い主の手からでなければ食べられない」という記憶を刷り込みます。これは拾い食い予防にも大変役立つしつけです。 誘惑の度合いを強めてみる
元動画は⇒こちら
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