トップ犬のしつけ方室内で必要となるしつけ犬のアイコンタクトのしつけ

犬のアイコンタクトのしつけ

 ペットを飼い主に注目させるアイコンタクトはまず最初に教えなければならない基本のしつけです。ペットの名前を呼んだらいつでもどこでも行動を中断し、飼い主の目に注目するようにしつけるのが最終目標(さいしゅうもくひょう)となります。

犬のアイコンタクトのしつけの必要性

飼い主の呼びかけに応じて犬が目を合わせるのがアイコンタクトです。  アイコンタクトには、犬を事故やアクシデントから遠ざけるという効果があります。
 たとえば飼っている犬が、走っている車を追いかけて道路に出そうになったとき、アイコンタクトしつけができていれば犬の行動を中断して事故に巻き込まれることもなくなります。あるいは犬がドッグランで興奮して他の犬を追い掛け回しそうになったときや、知らない人(飼い主の友人など)がやってきて、不安になって吠え立てたときなどにもこのしつけが効力を発揮(はっき)するでしょう。
 またアイコンタクトは飼い主と犬の上下関係をはっきりさせるという意味もあります。なぜなら犬には「リーダーは注目される存在/メンバーはリーダーに注目する存在」という暗黙(あんもく)の判断基準がありますので、アイコンタクトで犬が飼い主に注目する度に「飼い主=リーダー」という上下関係を犬が自然に学習してくれるのです。
 では具体的にアイコンタクトのしつけ方を見ていきましょう。
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犬のアイコンタクトのしつけ~基本方針

 犬のアイコンタクトのしつけに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
ペットの名前を呼んだらいつでもどこでも飼い主の目を見つめること
してほしくない行動
ペットの名前を呼んでも反応しないこと
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえてアイコンタクトをしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「名前を呼んだら飼い主の目を見つめる」という行動を取った瞬間に快(賞)を与える
弱化
「名前を呼んでも反応しないこと」と不快を結び付ける
 犬のアイコンタクトのしつけに際しては正の強化を基本方針として行います。
 たとえば「名前を呼んだ⇒反応しなかった⇒大きな物音で不快感を与えた」という形で正の弱化をしてしまうと、犬は「名前を呼ばれた⇒不快な大きな音がした」と学習してしまう危険性があります。これでは逆に名前を呼んだら犬が怖がってどこかに隠れてしまいます。
 ですから犬が誤解してしまうような正の弱化ではなく、飼い主の目を見つめた瞬間におやつなどの快を与えるという正の強化でアイコンタクトをしつけるのが基本方針となります。
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犬のアイコンタクトのしつけ~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬のアイコンタクトのしつけにおいては、以下の3つのことを準備します。

準備1: 犬の名前を決める

 まずは犬に最適な名前と命令を参考にしながら、犬の名前を決めましょう。
 犬の聴覚(ちょうかく)は母音(ぼいん=日本語ではアイウエオ)の聞き取りには向いていますが子音(しいん=日本語ではカ行、サ行、タ行・・・)の聞き取りには向いていません。「ネブガドネザル」など凝(こ)った名前をつけたとしても犬にとってはただ聞き取りづらいだけですので、ユニークかつシンプルな名前を選ぶようにします。
 また、既に犬の名前を決めてしまっている人もいるでしょうが、犬にとって名前とは「何かいいことが起こる前によく聞く音」という意味しかありません。人間の戸籍(こせき)のように一度決めてしまったらもう変えられないものではありませんので、状況に応じて名前を変えても一向に構いません。
無関係性の学習
 無関係性の学習とは、ある特定の刺激が、自分にとって毒にも薬にもならないと犬が記憶してしまうことです。たとえば、「ジョン!」と名前を呼んだのにごほうび(おやつ・なでる)を与えないで過ごしてきた家庭においては、犬が「ジョン」という音を自分とは無関係のどうでもよい情報として記憶している可能性があります。
 一度こうした無関係性の学習が成立してしまうと、元に戻すのが極めて困難なため、全く違う「デビッド」などの新しい名前をつけたほうが得策です。

準備2: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備3: 集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。気が散るような魅力的なおもちゃなどが視界にあると集中できずに学習効果が低下しますので、しつけの前には犬の気を引くものを一掃して理想的な環境を作っておきます。

しつけの実践

 犬のアイコンタクトのしつけを実践するに当たっては、以下の6ステップに沿って行います。

ステップ1: 犬の名前を呼びながらごほうび

犬にとって名前はごほうびの合図  まず犬の名前がごほうびの合図であることを覚えさせましょう。「ジョン!」のように名前をはっきりと発音しながらごほうびを与えます。これによって「名前=いいことがある」という結びつきが強化されます。これは中性刺激(この場合はジョンという名前)と快不快を結びつける古典的条件付けですので、必ず「名前→ごほうび」という順番で1秒以内に行います(延滞条件付け)。間違えて「ごほうび→名前」という順番で行ってしまうと、不思議なことに犬は名前を覚えてくれません(逆行条件付け)。
 こうした手順を何度も繰り返し、「名前=ごほうびの合図」という記憶をまずは犬の中に徹底的に形成します。
名前はごほうびの合図  犬の名前を呼んだ後には必ずごほうびが来るよう、家族全員が徹底してください。あるときは「ジョン!いいこだねぇ」とほめていたにもかかわらず、あるときは「ジョン!やめなさい!」という具合に叱りつけてしまうと、犬にとって「ジョン」という音声刺激が、ごほうびの合図なのか、それとも叱られる合図なのかがわからなくなってしまいます。

ステップ2: そっぽを向いている犬とアイコンタクト

そっぽを向いているタイミングで犬の名前を呼んでみるときの手順です。  犬が名前とごほうびの関係性を覚えてくれたら、今度は飼い主の目を見ることとごほうびを関連付けましょう。これは「目を見る」という行動と快不快とをリンクするオペラント条件付けです。
 まず犬を1秒以内に犬に手が届く距離に置きます。最初はあちこち行かないようにリードをつけておくと良いでしょう。犬が飼い主から目をそらし、そっぽを向いているタイミングを見計らって「ジョン!」などはっきりと犬の名前を一度だけ呼びます。
 飼い主の目を見つめたら、すかさず1秒以内に「いいこ」などのほめ言葉と同時にごほうびを与え、頭を軽くなでてあげます。タイミングが非常に重要ですので、ごほうびを素早く与えることができるように飼い主の側でも練習が必要です。
 気もそぞろでなかなか飼い主の方を向こうとしない時は何度も名前を連呼せず、何かの折に偶然飼い主の目を見つめるまでじっと待ちましょう(行動捕捉法)。飼い主と目が合ったその瞬間に、すかさず「いいこ」などのほめ言葉と同時にごほうびを与え、頭を軽くなでてあげます。
 このトレーニングによって「飼い主とアイコンタクトする=いいことがある」という結びつきが強化(きょうか)されます。名前を呼ばれたらすぐに飼い主とアイコンタクトをとることが、連続で5回できるようになったら次のステップに進んでみましょう。

ステップ3: 気もそぞろな犬とアイコンタクト

犬の気を飼い主からわざと引き離して見ましょう。  そっぽを向いた状態から飼い主とアイコンタクトをとることができるようになったら、今度はより魅力的なものにわざと視線をひきつけて同様のトレーニングを行います。具体的には、ごほうびを持った手を飼い主の体の横などに持っていきます。犬はごほうびに気をとられて視線が外れるでしょう。そのタイミングを見計らって「ジョン!」などはっきりと犬の名前を一度だけ呼びます。
気もそぞろな犬に声をかけ、ちゃんとアイコンタクトを取れたら成功です。  すぐに飼い主の目を見つめたら、すかさず1秒以内に「いいこ」などのほめ言葉と同時にごほうびを与え、頭を軽くなでてあげます。ごほうびに気をとられてなかなか飼い主の目を見ない時は、ステップ2に戻ってもう少し簡単な状況から再スタートします。
 魅力的なものの誘惑に負けず、飼い主とのアイコンタクトが連続で5回できるようになったら次のステップに進んで見ましょう。

ステップ4: とても気が散る場所でアイコンタクト

犬が夢中になるおもちゃなどを用意し、犬の気を飼い主から引き離して見ましょう。  次は犬にとってより一層気が散る環境でのアイコンタクト練習です。具体的には魅力的なおもちゃがたくさんある場所に犬を連れて行きましょう。犬はおもちゃなどに気を取られて飼い主から目線を外してしまいます。そのタイミングを見計らって「ジョン!」などはっきりと犬の名前を一度だけ呼びます。
 すぐに飼い主の目を見つめたら、すかさず1秒以内に「いいこ」などのほめ言葉と同時にごほうびを与え、頭を軽くなでてあげます。  

ステップ5: いろいろな場所でアイコンタクト

犬を外に連れて行き、視覚や聴覚にたくさんの”紛れ”を作り出します。  魅力的なものに囲まれてもその誘惑に負けず、しっかりと飼い主とアイコンタクトができるようになったら、いろいろと場所を変えてやってみましょう。
 外界には、他の犬の残した尿のにおい、道路に落ちている食べ物、散歩中の他の犬、自転車や自動車、 走り回る子供など、犬の注意をひきつける様々なものがあることでしょう。そんな中でも確実に飼い主の呼びかけに応えて アイコンタクトできるようになれば合格です。

ステップ6: ごほうびの回数を減らす

 常にごほうびを与えていると犬がごほうび自体に飽きてしまったり、肥満の原因になりかねません。そこでアイコンタクトができたら常にごほうびを与えるというスタイルから、2回に1回⇒3回に1回⇒4回に1回・・・という風に徐々に減らしていきましょう。最終的には「いいこ」というほめ言葉だけにします。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。
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犬のアイコンタクトのしつけ~実演動画

 以下でご紹介するのは、犬にアイコンタクトをしつける方法を解説したハウツー動画です。英語ですが解説は聞き流しても構いません。ポイントは、「名前→アイコンタクト→ごほうび」という一連の流れとタイミングを理解することです。動画内では名前(セサミ)のほか、電話の呼び出し音(プルルルル)、キッシングノイズ(チュパチュパ)、クリッカー音(カチッ)を利用していますが、共通する目標は「ある特定の音に対して犬の注意を引きつける」という一点です。
 なお犬の名前を呼ぶときは、定位反応を利用し、やや大きめの声を出すとよいでしょう。「定位反応」(ていいはんのう)とは、急な物音があったとき、その音源を確かめようとする動物全般に備わっている本能のことです。
アイコンタクトのしつけ方
元動画は⇒こちら
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