トップ犬のしつけ方屋外で必要となるしつけ犬を首輪とリードに慣らす

犬を首輪・胴輪(ハーネス)・リードに慣らす

 犬を散歩に連れ出すときには首輪、胴輪(ハーネス)、リードによって動きをコントロールしなければなりません。犬にとって散歩は必要不可欠な日課ですので、こうしたアイテムに慣らしておくこともまた必要不可欠になります。

首輪やリードに慣らす必要性

 犬の首輪(カラー)や胴輪(ハーネス)、およびそれらに取り付ける引き綱(リード)は散歩に連れ出す際に必ず必要になります。これは道徳やマナー上の問題ではなく法律上の義務です。
✅「狂犬病予防法」(第一章の第4条)により、犬の飼い主には飼い犬を市区町村に登録すること、および交付された鑑札と注射済票を犬に装着することが義務付けられています。こうした札を体内に埋め込むことはできませんので、装着するための首輪や胴輪(ハーネス)がどうしても必要になります。ちなみに鑑札や注射済票がない場合犬は捕獲の対象になり、飼い主が20万円以下の罰金に処せられる場合がありますので要注意です。
✅「動物愛護法」(7条6)では「動物が自己の所有に係るものであることを明らかにするための措置を講じるように努めなければならない」とされています。ですから飼い主は首輪を用いるにしても胴輪(ハーネス)を用いるにしても犬に迷子札を装着しなければなりません。迷子札がない状態で犬が逃げ出し、動物愛護センターや保健所に収容されてしまった場合、飼い主を見つけることができないまま公示期間が過ぎてそのまま殺処分になってしまう恐れがあります。ですから迷子札を装着するための首輪や胴輪(ハーネス)がどうしても必要になります。 犬を散歩に連れ出すときは首輪(胴輪・ハーネス)とリード、および各種の散歩札(鑑札・注射済票・迷子札)が必要 ✅「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」(動物愛護法を補足する形で定められている環境省告示)では「犬の所有者等は、犬を道路等屋外で運動させる場合には犬を制御できる者が原則として引き運動により行うこと」と定められています。つまり犬にリード(引き綱)を装着して動きをコントロールしなければならないという意味です。犬の散歩のマナーで詳しく解説しましたが、ノーリードの状態で犬がトラブルを起こしてしまった場合、飼い主が無罪放免になるということはほぼなく、多額の賠償金を支払わされることが多々あります。
 要するに日本国内に暮らしている限り、犬を連れて屋外を散歩させるときは各種の散歩札を装着するため首輪や胴輪(ハーネス)、およびそれらに装着するリードがどうしても必要になるのです。ではまず、犬をこうした散歩グッズに慣らすときの教え方やコツを見ていきましょう。
NEXT:しつけの基本方針

犬を首輪とリードに慣らす・基本方針

 首輪とリードに慣らす練習をするに際し、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
首輪とリードをつけても嫌がらずじっとしている
してほしくない行動
首輪とリードをつけると嫌がって取ろうとする
 してほしい行動と快(ごほうび・強化刺激)、してほしくない行動と不快(おしおき・嫌悪刺激)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬を首輪とリードに慣らせる場合を考えて見ましょう。
強化
「首輪とリードをつけても嫌がらなかった」瞬間に快を与える
弱化
「首輪とリードをつけたら嫌がって取ろうとした」瞬間に不快を与える
 犬を首輪とリードに慣らす際は強化の方が効果的です。
 たとえば、首輪を装着しようとしたら犬が嫌がって取ろうとしたとします。この時、「じっとしてなさい!」と怒鳴りながら衝動的に犬の頭を叩いてしまうと、犬は「リードが近付くと叩かれる!」と学習し、以降首輪を見ただけで逃げ出してしまいます。ですから犬を各種の散歩グッズに慣らす時は、首輪(胴輪)やリードを付けても興奮しなかった瞬間にごほうびを与える「正の強化」をメイントレーニングを基本方針としてしつけていきます。
NEXT:しつけの実践

犬を首輪とリードに慣らす・実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実際の訓練に入りましょう。まずはしつけに入る前に「犬のしつけの基本理論」で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」「一つの刺激と快不快を混在させないこと」「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」を念頭においてください。まだマスターしていない方は以下のページを読んで「すべきこと」と「すべきでないこと」が何であるかを把握しておきます。 犬のしつけの基本

しつけの準備

 実際のしつけに入る前に、以下のような準備を終わらせておきましょう。

集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。しつけの前には窓を閉じて外からの音を遮断し、テレビやラジオは消しましょう。気が散るようなおもちゃなどは全て片付け、犬の意識が否応なく飼い主の後に向くように無味乾燥なトレーニング環境を作ってしまいます。
 また犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。

ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(強化刺激)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつおやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • ほめる高い声で「よーし」や「いいこ」や「グッド」などの声をかけてあげます。言葉と同時に軽く一回なでてあげてもかまいません。ただしあまり激しく撫で回してしまうと犬が興奮しすぎて集中力がなくなってしまうため、軽くにとどめておきます。
  • おもちゃおもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。

グッズの選び方

 犬にはたくさんの種類がおり、体の大きさもさまざまです。残念ながらサイズにかかわらずどんな犬にも使える「万能首輪」のようなものはなく、散歩グッズを選ぶときはその犬の大きさや癖に応じて最適なものを選んでいかなければなりません。
 犬に付ける装具にはたくさんの種類がありますが、選ぶ時のポイントはシンプルで「犬に対する負担が少ない」および「引っ張られても十分に制御できる」という2点に集約されます。選び方に関しては「リーダーウォークに必要なグッズ」で詳しく解説してありますのでご参照ください。 リーダーウォークに必要なグッズ

首輪に慣らす

 首輪(カラー, collar)とは犬の首もとに巻きつけるベルト状の装具のことです。種類や特徴に関しては「犬の首輪」で詳しく解説してありますのでご参照ください。

首輪の見た目に慣らす

 犬に装着する首輪を選んだら、まずは見た目に慣らせてあげましょう。
 犬の目の前に首輪を置き、自由に匂いを嗅がせてあげます。「首輪を見せる→おやつを与える」という強化を繰り返して下さい。犬の頭の中では「首輪=おやつの合図」という結びつきができていきます。 【画像の元動画】How To Teach Your Dog To Enjoy Wearing A Collar 犬に首輪を装着する前に見た目に慣らせておく必要がある  ここで注意すべきは首輪に噛みついた瞬間にごほうびを与えないという点です。これをやってしまうと犬は「首輪に噛み付くとおやつをもらえる!」と間違って覚えてしまいます。また嫌がる犬の首根っこをつかまえて訓練を強要するのもNGです。これでは逆に首輪が嫌いになり逃げ出してしまいます。

首輪をくぐることに慣らす

 犬が首輪の見た目に慣れてきたら、今度は首を通す練習に移ります。
 ワンタッチタイプにしてもバックルタイプにしても、犬の頭が楽に通るぶかぶかの大きさに調整しておきます。もう片方の手におやつを持ち、犬の頭を輪の中に誘導してあげましょう。犬の頭が首輪を通った瞬間「いいこ」などのほめ言葉をかけ、おやつを与えます。こうすることで犬は「輪の中に頭を入れるといいことがある」と覚えていきます。犬におやつを与えたらすぐに首輪を外し、もう一度最初からやってみましょう。
首輪に鼻先を入れることとごほうびとを結びつけるオペラント条件付け  もし犬が首元を触られることに抵抗を示すような場合はボディコントロール(ハンドリング)のトレーニングが不十分だと考えられます。まずは「ボディコントロールのしつけ」からスタートしてみてください。犬が首元を触られることに慣れた段階で首輪のしつけを再スタートします。

首輪の感触に慣らす

 犬が輪の中に頭を通すことに慣れてきたら、今度は首輪の感触に慣らす練習に移ります。
 ワンタッチタイプでもバックルタイプでも、首輪の両端を結合しない状態で持ちます。輪は大きいままで結構です。犬の頭を首輪の中に誘導し、完全にくぐりきって首元に接触したタイミングでごほうびを与えます。終わったらいったん手を開いて首輪をリリースし、同じことを繰り返します。こうすることで犬は首元に首輪が触れることに慣れていきます。 首輪が首筋に触れることとごほうびとを結びつける古典的条件付け

首輪の装着に慣らす

 犬が首輪の感触に慣れてきたら、いよいよ首輪がずっと首元に装着されている状態に慣らせていきましょう。
 首輪の両端を結合しない状態で持ち、おやつで輪の中に犬の頭を誘導します。そのタイミングで犬におやつを与え、空いた手で首輪の両端を結合させましょう。ワンタッチタイプならシートベルトの様にカチッとロックをかけ、バックルタイプの場合はベルトのように尾錠を締めます。犬がじっとしていたら「いいこ」などのほめ言葉をかけおやつを与えましょう。こうすることで犬は首元にずっと首輪が乗っかっている状態に慣れていきます。 首輪を持続的に装着した状態とごほうびとを結びつける古典的条件付け  犬が装着している状態の首輪を触って軽く回し、そのたびごとにごほうびを与えましょう。散歩中に首輪がずれることが多々あります。事前に首輪の動きとごほうびとを結びつけておけば嫌がることもなくなります。

胴輪に慣らす・ベスト型

 ベスト型とは胴輪(ハーネス)の前方が首輪のような状態になっており、犬の頭を通して装着するタイプの胴輪のことです。このタイプの胴輪は基本的に首輪と同じ要領で慣らしていきます。種類や特徴に関しては「犬のハーネス」で詳しく解説してありますのでご参照ください。 ベスト型の胴輪では前方部分がセーターのネックように輪になっている

胴輪の見た目に慣らす

 まずはベスト型胴輪の見た目に慣らせる練習です。
 犬の目の前に胴輪(ハーネス)を置き、自由に匂いを嗅がせてあげます。「胴輪を見せる→おやつを与える」という強化を繰り返して下さい。犬の頭の中では「胴輪=おやつの合図」という結びつきができていきます。 【画像の元動画】How to train your dog to love his harness- dog training 犬にベスト型胴輪を装着する前に見た目に慣らせておく必要がある  ここで注意すべきは胴輪に噛みついた瞬間にごほうびを与えないという点です。これをやってしまうと犬は「胴輪に噛み付くとおやつをもらえる!」と間違って覚えてしまいます。また嫌がる犬の首根っこをつかまえて訓練を強要するのもNGです。これでは逆に胴輪が嫌いになり逃げ出してしまいます。

胴輪をくぐることに慣らす

 犬がベスト型胴輪の見た目に慣れてきたら、今度は首を通すことに慣らせていきます。
 片方の手で首輪部分を持ち、もう片方の手におやつを持って犬の頭を輪の中に誘導してあげましょう。犬の頭が輪を通った瞬間「いいこ」などのほめ言葉をかけ、おやつを与えます。こうすることで犬は「輪の中に頭を入れるといいことがある」と覚えていきます。犬におやつを与えたらすぐに胴輪を外し、もう一度最初からやってみましょう。 ベスト型胴輪に鼻先を入れることとごほうびとを結びつけるオペラント条件付け  もし犬が首元を触られることに抵抗を示すような場合はボディコントロール(ハンドリング)のトレーニングが不十分だと考えられます。まずは「ボディコントロールのしつけ」からスタートしてみてください。犬が首元を触られることに慣れた段階で胴輪のしつけを再スタートします。

胴輪の感触に慣らす

 犬が輪の中に頭を通すことに慣れてきたら、今度は胴輪の感触に慣らせる練習に移ります。
 犬の頭を胴輪(ハーネス)の中に誘導し、完全にくぐりきって首元に接触したタイミングでごほうびを与えましょう。終わったらいったん胴輪をリリースし、同じことを繰り返します。こうすることで犬は首元に胴輪が触れることに慣れていきます。 ベスト型胴輪が首筋に触れることとごほうびとを結びつける古典的条件付け

胴輪の装着に慣らす

 犬がベスト型胴輪の感触に慣れてきたら、いよいよ胴輪がずっと首元に装着されている状態に慣らせていきましょう。
 おやつで輪の中に犬の頭を誘導し、首元に装着します。そのタイミングで犬におやつを与え、空いた手で胴輪の留め具を結合させましょう。ほとんどはワンタッチタイプですので、シートベルトの様にカチッとロックをかけます。犬がじっとしていたら「いいこ」などのほめ言葉をかけおやつを与えましょう。こうすることで犬は首元と体にずっと胴輪が乗っかっている状態に慣れていきます。 ベスト型胴輪を持続的に装着した状態とごほうびとを結びつける古典的条件付け  犬が装着している状態の胴輪を触って軽く動かし、そのたびごとにごほうびを与えましょう。散歩中に胴輪がずれることが多々あります。事前に胴輪の動きとごほうびとを結びつけておけば嫌がることもなくなります。

胴輪に慣らす・ステップイン型

 ステップイン型とは床においた胴輪(ハーネス)の足輪部分に犬が乗っかり、そのまま上部で留めてしまうタイプの胴輪です。ベスト型のように首を通す必要がありません。種類や特徴に関しては「犬のハーネス」で詳しく解説してありますのでご参照ください。 ステップイン型のハーネスは半ズボンのように足を通して装着する

胴輪の見た目に慣らす

 ステップイン型の胴輪を選んだら、まずは見た目に慣らせる練習です。
 犬の目の前に胴輪(ハーネス)を置き、自由に匂いを嗅がせてあげます。「胴輪を見せる→おやつを与える」という強化を繰り返して下さい。犬の頭の中では「胴輪=おやつの合図」という結びつきができていきます。
 ここで注意すべきは胴輪に噛みついた瞬間にごほうびを与えないという点です。これをやってしまうと犬は「胴輪に噛み付くとおやつをもらえる!」と間違って覚えてしまいます。また嫌がる犬の首根っこをつかまえて訓練を強要するのもNGです。これでは逆に胴輪が嫌いになり、スムーズに足を通してくれません。

胴輪に足を乗せることに慣らす

 犬がステップイン型胴輪の見た目に慣れてきたら、今度は胴輪のストラップに足を乗せる練習に移ります。
 床に胴輪を置き、手に持ったごほうびで犬の前足がちょうど胴輪の足輪の部分に来るように誘導します。ぴたっとはまったら「いいこ」などと声をかけておやつを与えましょう。こうすることで犬は「足輪の中に足を乗せるといいことがある」と学習していきます。 【画像の元動画】How to Train your NEW PUPPY to Walk on Leash! ステップイン型胴輪に足を乗せることとごほうびとを結びつけるオペラント条件付け

胴輪に足を通すことに慣らす

 今度は足を実際に通すことに慣らせていきます。
 犬の前足が足輪の中に乗ったタイミングで、空いているほうの手で胴輪を持ち上げ軽く体に触れさせましょう。触れた瞬間「いいこ」などのほめ言葉をかけ、おやつを与えます。こうすることで犬は「胴輪が足をくぐって体に触れるといいことがある」と覚えていきます。 ステップイン型胴輪が体に触れることとごほうびとを結びつける古典的条件付け  犬におやつを与えたらすぐに胴輪を降ろしいったん犬と胴輪を離れた状態にします。今度は逆側の手でおやつをもって犬を誘導し、犬の足が足輪の中に入ったらさっきとは逆側の胴輪を持ち上げてみます。右側と左側をまんべんなく行い、触る回数も2回→3回・・・と徐々に増やしていきます。体に触れた瞬間、同じ要領でおやつを与えましょう。

胴輪の感触に慣らす

 犬が輪の中に足を通すことに慣れてきたら、今度は胴輪の感触に慣らせる練習です。
 犬の足を胴輪の中に誘導し、ストラップを持ち上げて体に触れさせます。そのタイミングでごほうび与え、空いたほうの手で逆側のストラップを持ち上げ留め具を体の上部で締めてしまいます。じっとしていたら「いいこ」などのほめ言葉をかけてあげましょう。終わったらいったん胴輪をリリースし、同じことを繰り返します。こうすることで犬は体に胴輪が触れることに慣れていきます。 ステップイン型が持続的に体に触れている状態とごほうびとを結びつける古典的条件付け  犬が装着している状態の胴輪を触って軽く動かし、そのたびごとにごほうびを与えましょう。散歩中に胴輪がずれることは多々あります。事前に胴輪の動きとごほうびとを結びつけておけば嫌がることもなくなります。

ヘッドカラーに慣らす

 ヘッドカラーとは軽い力で犬の動きをコントロールできるしつけ用首輪のことです。種類や特徴に関しては「犬の首輪」で詳しく解説してありますのでご参照ください。ヘッドカラーは首輪部分と口輪部分とから構成されており、首輪部分に関しては「首輪に慣らす」ですでに解説しましたので、ここでは口輪部分に慣らす方法を解説します。 ヘッドカラーは首輪部分と口輪部分で構成される

口輪の見た目に慣らす

 まずは見た目に慣らせる練習です。
 犬の目の前に口輪を置き、自由に匂いを嗅がせてあげます。「口輪を見せる→おやつを与える」という強化を繰り返して下さい。犬の頭の中では「口輪=おやつの合図」という結びつきができていきます。ここで注意すべきは口輪に噛みついた瞬間にごほうびを与えないという点です。これをやってしまうと犬は「口輪に噛み付くとおやつをもらえる!」と間違って覚えてしまいます。また嫌がる犬の首根っこをつかまえて訓練を強要するのもNGです。これでは逆に口輪が嫌いになり逃げ出してしまいます。

口輪をくぐることに慣らす

 犬が口輪の見た目に慣れてきたら、今度は鼻先を通す練習に移ります。
 片方の手で口輪をもち、もう片方の手におやつを持って犬の鼻先を輪の中に誘導してあげましょう。犬の鼻先が口輪を通った瞬間「いいこ」などのほめ言葉をかけ、おやつを与えます。こうすることで犬は「輪の中に鼻を入れるといいことがある」と覚えていきます。犬におやつを与えたらすぐに口輪を外し、もう一度最初からやってみましょう。 【画像の元動画】Gentle Leader Training/YouTube ヘッドカラーの口輪部分に鼻先を通すこととごほうびとを結びつけるオペラント条件付け

口輪の感触に慣らす

 犬が輪の中に鼻先を通すことに慣れてきたら、今度は口輪の感触に慣らせましょう。
 犬の鼻先を口輪の中に誘導し、完全にくぐりきってマズルに接触したタイミングでごほうびを与えます。終わったらいったん口輪をリリースし、同じことを繰り返します。こうすることで犬はマズルに口輪が触れることに慣れていきます。 ヘッドカラーの口輪部分がマズルに触れていることとごほうびとを結びつける古典的条件付け  もし犬が抵抗を示すような場合はボディコントロール(ハンドリング)のトレーニングが不十分だと考えられます。まずは「ボディコントロールのしつけ」からスタートし、特にマズルコントロールを重点的に行ってみてください。犬が鼻先や口元を触られることに慣れた段階で口輪のしつけを再スタートします。

口輪の装着に慣らす

 犬が口輪の感触に慣れてきたら、いよいよ口輪がずっとマズルに装着されている状態に慣らせていきましょう。
 おやつで輪の中に犬の鼻先を誘導します。そのタイミングで犬におやつを与え、空いた手で首輪の両端を結合させましょう。犬がじっとしていたら「いいこ」などのほめ言葉をかけおやつを与えます。こうすることで犬はマズルにずっと口輪が触れている状態に慣れていきます。 ヘッドカラーが持続的にマズルに触れていることとごほうびとを結びつける古典的条件付け  犬が装着している状態の口輪を触って軽く動かし、そのたびごとにごほうびを与えましょう。散歩中に口輪がずれることが多々あります。事前に口輪の動きとごほうびとを結びつけておけば嫌がることもなくなります。またここで述べた方法は、ヘッドカラーの首輪部分ではなく、咬傷事故を予防するときに装着する実際の口輪(マズル)に慣らせるときにも有効です。

リードに慣らす

 リードとは犬の動きをコントロールするために飼い主が握る引き綱のことです。種類や特徴に関しては「犬のリード」で詳しく解説してありますのでご参照ください。

リードの見た目に慣らす

 まずはリードの見た目に慣らせる練習です。
 犬の目の前にリードを置き、自由に匂いを嗅がせてあげます。「リードを見せる→おやつを与える」という強化を繰り返して下さい。犬の頭の中では「リード=おやつの合図」という結びつきができていきます。 【画像の元動画】How to Train your NEW PUPPY to Walk on Leash! リードの見た目とごほうびを結びつけ犬の恐怖心を緩和しておく  ここで注意すべきはリードに噛みついた瞬間にごほうびを与えないという点です。これをやってしまうと犬は「リードに噛み付くとおやつをもらえる!」と間違って覚えてしまいます。また嫌がる犬の首根っこをつかまえて訓練を強要するのもNGです。これでは逆にリードが嫌いになり逃げ出してしまいます。

リードの音に慣らす

 犬がリードの見た目に慣れたら、今度は音に慣らせる練習に移ります。
 リードの先端についている「ナスカン」と呼ばれる金具に迷子札、鑑札、注射済票を取り付け、リードを短く持って軽く音を鳴らしてみます。その直後に犬におやつを与えましょう。実際に屋外で行う散歩の途中は、犬の首元で同じような音が鳴ることがあります。事前に金属音に慣らせておけば、首元をしきりに気にしたり気が散るということもなくなるでしょう。

リードの感触に慣らす

 見た目や音に慣れてきたら、今度は実際にリードを取り付ける練習です。
 犬に首輪もしくは胴輪(ハーネス)を装着し、アルファベットの「D」の形をした金具にリードの先端についているナスカンを取り付けます。犬がじっとしていたら「いいこ」などのほめ言葉をかけおやつを与えます。おやつを与え終わったらすぐに金具を外し、同じプロセスを繰り返しましょう。こうすることで犬は「リードが近くに来るといいことがある」と学習していきます。 リードを金具に装着することとごほうびとを結びつける古典的条件付け

犬がリードを噛む場合

 リードは生き物のようにくねくね動くことから、犬の狩猟本能が刺激されてガジガジ噛んでしまうことがよくあります(リーシュバイト)。そんな時はリードをぎゅっと固定して動かないようにし、犬の鼻先におやつなどを持っていって気をそらします。リードが見せるランダムな動きや引っ張りがなくなると、犬は急激に飽きて自発的に口を離しますので、その瞬間を見計らっておやつを与えましょう。「噛まない方がいいことがある!」と学習していきます。 【画像の元動画】How To Stop PUPPY BITING on a Leash! 犬のリード噛みをやめさせるコツは、無理やり引っ張るのではなく逆に動かさないこと  ここで注意すべきは「離しなさい!」と甲高い声を出したり、握ったリードを左右に振ったり引っ張ったりしてはいけないという点です。声を出すと犬が「構ってくれた!」と勘違いして行動が助長されてしまいます。また飼い主がリードを動かしてしまうと、犬が綱引き遊びと勘違いして延々と行動をやめようとしなくなってしまいます。
 リードが面白くもおかしくない退屈なものであると思わせるため、握ったまま絶対に動かさないようにします。アイコンタクトオスワリをマスターしている場合は犬の問題行動予防にも挑戦してみましょう。
犬にとって散歩が天国になるか地獄になるかは装具選びにかかっています。「犬の散歩グッズ完全ガイド」を熟読し、もっとも体への負担が少ない首輪、胴輪、リードを厳選してください。