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犬の食糞症をしつけ直す

 犬の食糞症(しょくふんしょう)とは、読んで字のごとく自分や他の犬のウンチを食べてしまうことです。このセクションでは犬の食糞行動の原因を考察し、効果的と思われる解決策を考えていきたいと思います。

動物界における食糞行動いろいろ

 「ウンチを食べる」というおぞましい行為は、果たして犬特有のものなのでしょうか?動物界全体を見渡してみると、実はかなりの事例が観察されます。以下では色々な動物で見られる食糞行動とその行動理由についてまとめました。
動物界における食糞行動
  • フンコロガシ・ハエ 動物の糞を自分の食料にしたり、幼虫のエサにしたりします。
  • シロアリ 母アリの糞を食べることで腸の中に特殊な原生生物を取り入れると、植物に含まれるセルロースを分解できるようになります。
  • ブタ 草食動物の半消化状態の糞を食べ、残っていた栄養分を取り出します。
  • カピバラ・ウサギ・ハムスター 口に入れない通常の糞便とは別に、部分的に消化されたやわらかい糞塊は体外に排出されてすぐに再摂取されます。この糞には微生物が含まれ、腸の中で繁殖した微生物からなる発酵槽は、動物の体内でセルロースを分解してくれます。
  • ゾウ・パンダ・コアラ・カバ 幼少時に母親の糞や群れの中の他の個体の糞便を食べ、植物を消化するのに必要となるバクテリアを体内に取り込みます。生まれてすぐの彼らの腸内はまっさらで、食事をしても体内でうまく消化できません。
  • ハムスター・モルモット・チンチラ 自分の糞便を食べることで腸内バクテリアの作り出したビタミンBやKを再摂取していると考えられています。
  • ネコ 母猫は生まれた子猫の排泄物を食べますが、これは捕食者の嗅覚に触れないようにするためと、生活の場を衛生的に保つためと考えられます。
  • ヒト 【 医療の分野 】
     アラビア系の砂漠民族・ベドゥーインが、バクテリア性赤痢にかかった患者に対し、ラクダの糞を食べさせるという慣習があります。第二次世界大戦中、アフリカで赤痢に苦しんだドイツ軍兵士たちがこの民間療法を試したところ、一定の効果があったという記録もあるようです。
     近年ではクロストリジウム・ディフィシル感染症と呼ばれる病気にかかった患者に対し、便移植と呼ばれる治療法が施されることがあります。これはチューブや浣腸を通して健康な人の便を患者の体内に入れ、腸内細菌叢を正常化することを目的としていますが、口からウンチを食べるわけではありません。

    【 疾病の分野 】
     異食症(いしょくしょう, Pica disorder)という病気にかかった患者の中には、粘土や土を食べる者(Geophagy)やガラスを食べる者(Hyalophagia)、氷を食べる者(Pagophagia)や毛髪を食べる者(Trichophagia)などの他に、糞便を食べる者(Coprophagy)が報告されています。
 このように自然界においては意外なほどたくさん食糞という行動が見られ、どうやら犬特有の奇行というわけではないようです。食糞をする動物にはそれぞれもっともらしい理由があるようですが、では犬を食糞に駆り立てる要因とは、一体何なのでしょうか?次は犬の食糞行動の原因について考察していきたいと思います。
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犬の食糞症の原因

 犬はそもそも残飯あさりをして生きてきた種であるため、自分のウンチを食べることはその延長であると考える人もいます。しかし、ウンチを食べてしまう犬とそうでない犬がいる以上、食糞を「犬にとっては普通」としてしまうのは、いささか強引です。そこで、犬を食糞という異常行動に駆り立てていると思われる原因を、思いつく限り列挙していきます。

対策が不要と思われる食糞の原因

 犬の食糞行動の原因のうち、「本能に根ざした自然なもの」と思われるものがいくつかあります。
自然な食糞行動の原因
  • 子犬の食糞行動  まず、子犬はしばしば自分のウンチを口に入れてしまいますが、これはどちらかといえば自然な行動と言えます。生まれて間もない子犬は外界に対する好奇心が旺盛ですので、冒険の一環として足元に落ちている奇妙な匂いを放つ物を、思わず口に入れてしまうという行動は、十分に考えられます。
  • 母犬の食糞行動  また、母犬が子犬のウンチを食べるという行動も数多く観察されていますが、これも自然な行動です。犬や猫は、巣の中にある排泄物の匂いにつられて捕食者が近づいてこないよう、子のウンチを食べてしまうという本能をもっているのです。また母犬の食糞行動には、巣を衛生的に保つという二次的な意味もあるようです。ちなみに同様の目的で、母犬は自分の胎盤を食べてしまうこともあります。
 上記した通り、子犬、および母犬の食糞行動は本能に根ざした自然な行動であり、通常は放置しておけば自然と直るものです。このパターンの食糞に対して飼い主が干渉する必要はありませんが、子犬や母犬の糞便に寄生虫やウイルス等の危険因子が含まれていないことが大前提となります。もし安全であるという確証がない場合は、母犬や子犬が食糞行動をとる前に、すかさず糞を隠して処分することが必要です。

対策が必要と思われる食糞の原因

 子犬や母犬のように放置していれば自然に治るパターンの食糞がある一方、放置してしまうと半永久的に治らないと思われるパターンも数多くあります。2016年に行われた調査(→詳細)では、子犬でも母犬でもない普通の成犬を観察したところ、かなりの高確率で食糞に走ることが確認されました。こうした犬を放置してしまうと、恐らく一生涯食糞癖が治らないまま生きていくことになるでしょう。以下は食糞を引き起こす原因の一例です。
不自然な食糞行動の原因
  • 単調な食事に飽きた
  • エサの種類を変えた
  • 食事量が足りない
  • 食事量が多すぎる
  • 消化器系の異常や未発達
  • ビタミンBやK不足
  • 消化酵素不足
  • ストレス解消
  • 飼い主の気を引きたい
  • 飼い主に叱られたくないから隠す代わりに食べてしまう
  • 子犬の頃の生育環境
  • 自分のウンチを食べてくれた母犬の真似
  • ウンチを掃除している飼い主の真似
  • 母犬の食糞本能が惰性として残る
  • 薬や抗生物質を使ったことによる一時的な異常行動
  • 病気にかかった仲間を隠す
  • 認知症
 このように犬を食糞に駆り立てる要因は思った以上にたくさんあり、そう単純な問題ではないことが分かりました。次は、上記したさまざまな原因に対応した食糞行動対策を列挙していきたいと思います。
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原因別・食糞行動対策

 以下は原因別の食糞行動対策・解決策一覧です。試してみる順番に決まりはありませんが、食糞の原因として少しでも思い当たるものがある場合は、まずその原因に対応した解決策から試してみましょう。食糞行動をとる明確な原因が分からない場合は、とっつきやすいものから順番に実施していき、気長に問題行動が終息するのを待つしかありません。

単調な食事に飽きた

 犬は人間ほどグルメでも贅沢志向でもありませんが、毎日毎日同じ食事内容だと、いい加減飽きてしまう個体も中にはいます。ウンチを食べるのは、新たな刺激を求めているからかもしれません。
解決策  エサの種類を変えてみましょう。量販店で売っているような安いドッグフードではなく、普段食べないような少し高めのものを与えて見ます。 犬にドッグフードを与える

エサの種類を変えた

 今まで与えてきたのとは違うブランドのえさを与えたり、手作りフードに切り替えたりした場合、急激な食事内容の変化に内臓が付いていけず、食事を未消化のまま排便してしまうかもしれません。ウンチの匂いから「まだ食べられる!」と判断してしまうと、再び口に入れてしまう可能性があります。
解決策  エサを元に戻してみます。体内の消化吸収系が長年慣れ親しんだ食べ物に戻すことで、十分な栄養素を取り出せるかもしれません。ちなみに粗悪なドッグフードには得体の知れないものが入っている可能性もありますので、あまりにも安いものは敬遠するようにします。
 どうしてもフードを変更したい場合は、急激に全量替えるのではなく、3割程度の入れ替えからスタートしてみてください。 犬にドッグフードを与える

食事量が足りない

 体重や消費エネルギーに対して摂取エネルギー、すなわちエサの量が少ないと、ずっと小腹がすいた状態が続いてしまいます。ウンチを食べるのは、空腹をごまかすためかもしれません。
解決策  えさの量を増やしてみます。肥満鑑定の目安を参考にしながら、飼っている犬の体重と栄養状態を微調整します。また、給餌回数が1日1回の場合は、2回に分けて与えてみましょう。

食事量が多すぎる

 食事量が多いと、摂取した食事に未消化部分が残り、ウンチがおいしそうなにおいを放つ可能性があります。ウンチを食べるのは、犬なりの「もったいない精神」からかもしれません。
解決策  えさの量を減らしてみます。肥満鑑定の目安を参考にしながら、飼っている犬の体重と栄養状態を微調整します。

消化器系の異常や未発達

 食事量は適正でも、摂取した食事を消化吸収する能力に問題があると、結果的にえさの量が足りないという状況が発生します。ウンチを食べるのは、足りないエネルギーを補うためかもしれません。
解決策  獣医さんの診察を受け、血液検査の数値や寄生虫の有無を確認してみましょう。肝機能が不全だったり、膵外分泌不全だったり、甲状腺の機能が亢進していたり、消化器系の中に寄生虫がいるかもしれません。犬が病気を抱えている場合、いつもと変わらない食事量でも、ややカロリー不足という状況が体内で発生します。

ビタミンBやK不足

 ハムスターやモルモットのように、食事中に足りない何らかのビタミンやミネラルを補うために、ウンチを食べるという可能性も考えられます。
解決策  ビタミンを適度に含んだフードに切り替えましょう。量販店で売っている安物ではなく、栄養バランスを微調整したやや高めのものを与えてみます。手作りフードを与える場合は、ビタミンを多く含む食材を参考にしながら与えてみましょう。

消化酵素不足

 自分のウンチではなく、道端に落ちている他の犬や動物のウンチを食べてしまうような場合は、自分の体内には欠けている何らかの消化酵素を、外界から摂取して補おうとしている可能性もあります。
解決策  食糞行動に加え、歩き方がふらふらしていたりバランス感覚がおかしかったり、運動を嫌がったり、落ち着きがなかったり、物によくぶつかったり(視野の異常)、原因不明の発作に見舞われる、などの症状がある場合、獣医さんの診察を受けましょう。先天的に何らかの消化酵素が欠落している可能性があります。

ストレス解消

 散歩が足りずに運動不足だったり、遊びが足りずに常にさびしい心境を味わっている犬の場合、そのストレスをごまかすためにウンチを食べてしまうかもしれません。人間で言うと、「やけ食いで失恋の痛手を癒す」といったところでしょう。
解決策  散歩や遊びの量を増やしてあげましょう。心地よい疲労感があれば、退屈しのぎにウンチを食べることもなくなります。 犬の散歩について 犬の幸福とストレス

飼い主の気を引きたい

 「ウンチを食べたら飼い主の注意が自分に向いた」、という経験を記憶している場合、寂しさや退屈を解消するため、わざとウンチを食べて飼い主の注目を集めることがあります。
解決策  飼い犬がウンチを食べても無視しましょう。「自分に関心を向けてくれた!」という状況は犬にとってごほうびになってしまいます。しばらく無視を続けると、見返りがなくて食糞行動を自発的にやめるかもしれません。ウンチを食べるという行動がどうにもこうにも我慢ならない場合は、犬がウンチをした瞬間に取り上げ、いち早く処分しましょう。

飼い主に叱られたくない

 「ウンチを食べたらこっぴどく叱られた」という経験を記憶している場合、また怒られないよう、犯行現場を綺麗にする必要があります。その場合、隠すよりも食べたほうが早いと考え、証拠を隠滅するためにウンチを食べてしまう犬がいるかもしれません。
解決策  ウンチをトイレ以外の場所にしても叱らないようにしましょう。家族全員が行動を統一することが重要です。トイレの失敗をしても叱らず、そのかわり決められた場所でウンチができた場合はうんとほめてあげます。徐々にトイレの失敗もなくなり、食糞をする理由がなくなってきます。 犬のトイレのしつけ

子犬の頃の生育環境

 展示環境のよろしくないペットショップなどでは、子犬を狭いケージに閉じ込めて長時間放置するという場合がままあります。好奇心旺盛な子犬にとって退屈しのぎになるのは、目の前にあるウンチだけという環境の場合、その延長でウンチを食べてしまい、その行動が癖になってしまうということも考えられます。
解決策  マテアイコンタクトのしつけオアズケを完璧にしましょう。犬がウンチに近づいた瞬間、マテやアイコンタクトの指示を出し、飼い主に注意を向けるようにします。指示に従ったらとっておきのごほうびを与え、「ウンチなんかよりこっちのほうがいいや!」と犬に学習させることができれば成功です。ウンチに食糞防止剤を付けるという正の弱化と並行してもよいでしょう。

自分のウンチを食べてくれた母犬の真似

 母犬が子犬のウンチを食べて巣を衛生的に保つという行動は正常の範囲内でよく観察されます。子犬が母犬の食糞行動を見て記憶している場合、単純にその行動を真似してウンチを食べてしまうという可能性があります。
解決策  マテアイコンタクトのしつけオアズケを完璧にしましょう。犬がウンチに近づいた瞬間、マテやアイコンタクトの指示を出し、飼い主に注意を向けるようにします。指示に従ったらとっておきのごほうびを与え、「ウンチなんかよりこっちのほうがいいや!」と犬に学習させることができれば成功です。ウンチに食糞防止剤を付けるという正の弱化と並行してもよいでしょう。

ウンチを掃除している飼い主の真似

 飼い主がウンチの処理をしている様子を犬が観察して記憶している場合、単純に「ああ・・・ウンチは片付けるものなんだ!」と思い込み、飼い主のまねをしてウンチを処理してしまうということがあるかもしれません。ただしこの場合、ウンチの行き先はゴミ箱ではなく胃袋です。
解決策  マテアイコンタクトのしつけオアズケを完璧にしましょう。犬がウンチに近づいた瞬間、マテやアイコンタクトの指示を出し、飼い主に注意を向けるようにします。指示に従ったらとっておきのごほうびを与え、「ウンチなんかよりこっちのほうがいいや!」と犬に学習させることができれば成功です。ウンチに食糞防止剤を付けるという正の弱化と並行してもよいでしょう。

母犬の食糞本能が惰性として残る

 子犬を産んだばかりの母犬が子犬のウンチを食べるのは本能に根ざした行動ですが、子犬が独り立ちした後においてもこの行動が見られる場合は異常です。一度呼び覚まされた食糞本能がなかなか収まらず、いわゆる惰性としてこの行動が残っているのかもしれません。
解決策  マテアイコンタクトのしつけオアズケを完璧にしましょう。犬がウンチに近づいた瞬間、マテやアイコンタクトの指示を出し、飼い主に注意を向けるようにします。指示に従ったらとっておきのごほうびを与え、「ウンチなんかよりこっちのほうがいいや!」と犬に学習させることができれば成功です。ウンチに食糞防止剤を付けるという正の弱化と並行してもよいでしょう。

薬や抗生物質による異常行動

 何らかの理由で薬を投与されている場合、薬の副作用で一時的に異常行動を示すことがあります。その1パターンとして食糞が現れているのかもしれません。
解決策  投薬が一時的なものならば、食糞行動を放置してもよいでしょう。投薬治療の終了と同時に異常行動もなくなるはずです。もし食糞が生理的に許せないのであれば、犬がウンチをした瞬間に見えない場所へ隔離し、物理的に接触できないようにします。投薬が長期にわたる場合は、獣医さんに相談し、可能であれば薬の種類を変えてみましょう。

病気にかかった仲間を隠す

 犬が他の犬や猫などと同居しており、そのうちの1匹が病気にかかっている場合、病気にかかった動物のウンチを食べてしまうという行動がまれに観察されます。理由は、病気にかかっている仲間は体力が弱っており、外敵に襲われるとひとたまりもないため、ウンチの匂いを嗅ぎつけて捕食者が近づいてこないようにするためだと考えられます。
解決策  同居している犬や猫が病気にかかっている場合は、一時的に接触できないようにし、仲間が回復したタイミングで再び引き合わせてみます。一方を隔離するのが難しい場合は、病気のペットがウンチをした瞬間にすばやく片付け、物理的に接触できないようにします。

認知症

 犬が老境に入ると、人間と同様認知症に似た症状を呈することがよくあります。ウンチを食べていても、自分が何をしているのか理解していないという可能性も考えられます。
解決策  犬がウンチをした瞬間にすばやく後片付けをする習慣を付けましょう。認知症の進んだ犬に新たなしつけをするのは難しいため、犬とウンチの物理的な接触を断ったほうが効果的でしょう。 犬の老化
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