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犬の待てのしつけ

 待てとは、飼い主が命令し、その命令を解除するまで犬がじっと動かなくなる状態のことです。犬の望ましくない行動を抑制するときに多用するコマンドですので、全ての飼い主の必修科目と言えます。

犬の待てのしつけの必要性

飼い主がいなくても騒がないようにするのが待ての最終目標です。  例えば散歩中に買い物に立ち寄るとしましょう。その間犬を外に待たせておく状況が生まれるかもしれません。そんな時犬が不安になって大声で鳴き続けていたら、しつけができていないことを世間に知らしめてしまいますのでちょっと恥ずかしいですよね。また家の中で飼い主がお風呂などに入っているとします。犬が不安になってギャンギャン鳴いていたらご近所迷惑になります。こんなとき待てのしつけができているとトラブルを未然に防げます。
 では具体的に犬の待てのしつけ方を見ていきましょう。
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犬の待てのしつけ~基本方針

 犬の待てのしつけに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
マテの言葉で犬がじっと動かなくなり、解除するまでそのままでいること
してほしくない行動
マテの言葉をかけても犬が落ち着かずうろうろしたり、解除前に動いてしまうこと
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬に待てをしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「マテの言葉で犬が腰を落としてじっとしていた」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「マテの言葉をかけても犬がうろうろした」瞬間に不快(罰)を与える
 犬の待てのしつけに際しては強化が効果的です。
 嫌悪刺激を用いたしつけはタイミングが難しく、また犬が誤解する要素も多いため、当サイトではごほうびを提示して行動を促す正の強化を基本方針としたしつけ方について解説します。
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犬の待てのしつけ~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬の待てのしつけにおいては、以下の4つのことを準備します。

準備1: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備2: 指示語を統一する

 犬にマテを命令する際には指示語が必要です。この指示語を統一しないと犬は混乱します。一家の中でお父さんは「マテ!」、お母さんは「待ちなさい!」、息子は「動くな!」、娘は「ウェィト!」だったら犬は大混乱で何をして良いか分からなくなり、いじけてしまいます。このように指示する際に掛ける言葉は一つに絞ること、つまり「指示語を統一すること」は非常に重要なのです。
 指示語の候補としては、犬が聞き取りやすい「マテ」、「Stay」(ステイ)などがあります。ご家族で相談して統一してください。

準備3: 解除語を統一する

 命令する際に指示語を統一するのと同様に、命令を解除するときの解除語も統一します。解除がないと犬はいつまで命令に従っていればよいのか分からず、不安になるからです。
 解除語の候補としては犬が聞き取りやすい「よし」、「OK」などがあります。ご家族で相談して統一してください(ほめるときの言葉と重なってしまうことが多いので注意して決めてください。ほめ言葉=よし!、解除語=OK!などのように一度決めたら変えないこと)。

準備4: 集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。気が散るような魅力的なおもちゃなどが視界にあると集中できずに学習効果が低下しますので、しつけの前には犬の気を引くものを一掃して理想的な環境を作っておきます。

しつけの実践

 犬の待てのしつけを実践するに当たっては、以下の6ステップに沿って行います。

ステップ1: オスワリ(お座り)の状態にする

 犬に対して「オスワリ!」と指示を出します。 犬がお座りの状態になったらそこから待てのしつけのスタートです。 オスワリ(お座り)がまだできていないときはまずお座りのしつけから始めてください。

ステップ2: 犬から少し離れてみる

まずは、じっとしていることといいことを犬の頭の中でリンクさせる  お座りの状態になった犬から1歩だけ離れてみます。犬が動かずにじっとしていたらすかさず戻ってごほうびを与え「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでてあげます。次に2歩離れてみましょう。犬が動かずにじっとしていたらすかさず戻ってごほうびを与え「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでてあげます。同様に3歩⇒4歩・・・と離れる距離を伸ばしていきます。できたらその度にごほうびを与え「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでてあげましょう。
 これはじっとしていることとごほうびとを結びつけるオペラント条件付けであり、犬はじっとしていても飼い主さんが必ず戻ってきてくれて、おやつをくれるんだ!と学習し、徐々に待つことが苦痛ではなくなってきます。
 もし犬が動いてしまっても決して叱らないで下さい。「飼い主さんに近づこうとした。そうしたら怒られた。」と学習してしまうと、飼い主に近づくこと自体が恐怖になってしまいます。また「あ~もう!」とか余計な大声も出さないよう注意します。これは「飼い主さんが大声を出して喜んでくれた!もっと近づこう」という具合に、こちらの意図とは逆の学習が成立してしまう可能性があるためです。
閾値トレーニング
 閾値(いきち)トレーニングとは、犬が我慢できる限界地点を少しずつ延ばすトレーニング法です。「マテ」の場合、最初は1~2秒など極めて達成しやすい目標からスタートし、徐々に難易度を高めていきます。1秒からいきなり5分に飛び級すると犬がすねてしまいますので、あくまでも「少しずつ」をキーワードに進めていきましょう。

ステップ3: マテ状態と指示語を結びつける

待ての状態と「マテ」という音声情報を犬の中でリンクさせる  犬が待ての状態をある程度キープできるようになったら、今度はマテ状態と指示語を結び付けていきます。
  まず犬にお座りさせます。そこで飼い主は犬に向かって指示語(ここでは「マテ」を採用します)を1回だけ出します。それからステップ2と同様に犬から1歩離れてみます。犬が動かずにじっとしていたらすかさず戻ってごほうびを与え「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでてあげましょう。同様に「マテ!」の指示を出してから2歩⇒3歩⇒4歩・・・と離れる距離と時間を徐々に延ばしていきます。できたらその度にごほうびを与え「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでてあげましょう。
 こうすることで犬はじっとしていることがマテなんだ・・・。言われた通り動かなかったら飼い主さんが戻ってきておいしいものくれるんだね!と学習していきます。犬が途中で動いてしまっても余計な大声を出さず、無言で戻って再びお座りの姿勢にするところからリスタートしてください。
 なお、犬に指示語を覚えさせるのは一種の古典的条件付けです。指示語と行動を効果的に記憶させる際は、「指示語→行動」の順で声を掛けるのが最適となります(延滞条件付け)。

ステップ4: 解除語を教える

待て状態を解除する解除語を合わせて教え込みましょう。  犬がマテという指示語とマテ状態を覚えたら今度は解除語を教えましょう。ここでは「よし!」を解除語とします。
 まず上記したように犬にお座りさせ、「マテ!」と声をかけてから徐々に離れていきます。犬がじっとしていたら「よし!」と声をかけて腕を広げて犬を誘ってみましょう。こうすることで犬は「よし!」という音声的な情報と「飼い主さんのところに近づいていってもいい」という行動を結び付けて覚えます。これを繰り返すことで解除語を覚えさせましょう。

ステップ5: ごほうびをランダムにする

 犬が待つことに慣れてきたら、与えるごほうびと待ち時間をランダムに切り替えてみます。たとえば、「10秒待ったらごほうび」→「30秒待ったらごほうびなし」→「20秒待ったらごほうび」→「3分待ったらごほうび」→「1分待ったらごほうびなし」・・・などです。このように、ごほうびを与えるタイミングやマテの達成時間をバラバラにして強化を行うと、連続でごほうびを与えた場合に比べ、「じっと待つ」という報酬を得るための行為を長期的に持続するようになります。これが犬のしつけの基本理論で述べた間欠強化の応用です。
PREE
 PREEとは部分強化消去効果のことで、平たく言うと「報酬を間欠的に与えられていた場合、その報酬がなくなっても、報酬を得るための行動を長期にわたってとり続けること」です。たとえばランダムな報酬によってマテのしつけを施された犬は、たとえ報酬が得られなくても「いつかはもらえるはず!」という強い期待感を有しているため、かなり長時間のマテに耐えることができるようになります。

ステップ6: 場所と時間を変えて行う

 いつでもどこでも飼い主の指示に従うのがしつけの最終目標です。今度は時間と場所を変えてやってみましょう。散歩の途中で信号待ちする時、他の犬とすれ違う時、走っていく子供を追いかけそうになったときなど様々なシチュエーションで「待て」を試してみます。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。
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犬の待てのしつけ~実演動画

 以下でご紹介するのは、犬に「マテ」をしつける方法を解説したハウツー動画です。長時間動かないこと、飼い主が離れても動かないこと、気が散る環境でも動かないこと、という具合に、段階を追ってしつけていきます。
犬のマテのしつけ
  • まずはオスワリから  まずは犬をオスワリにします。立った状態だと飼い主の動きにつられて歩き出してしまいますので、なるべく動き出しにくいオスワリ、もしくはフセの状態からスタートします。 犬が即座に動き出せないようオスワリ体勢にする
  • 離れる距離を広げる  犬がオスワリ体勢になったら、少しずつ犬から遠ざかってみましょう。最初は1歩離れてごほうび、2歩離れてごほうびという具合に、かなり短い距離から始めます。じっとしていることとごほうびとを結びつけるオペラント条件付けです。犬が間違って動き出しても大きな声を出さないようにします。なぜなら、動くことと飼い主の関心を関連付けて覚えてしまう可能性があるためです。 犬から少しずつ離れてみる
  • 気を散らしてみる  犬が待つことに慣れてきたら、犬の目の前で気の散る動作をしたり、気の散るものを置いてみましょう。最初は小さな動きや些細なものからスタートします。犬が集中してマテを持続できたら、戻ってごほうびを与えます。その後、だんだんと動作を大きくしたり、楽しそうなものを犬の目の前にちらつかせて見ます。犬の目の前に気を散らすものを置いてみる
  • 時間を徐々に伸ばす  犬が待つ時間を徐々に延ばしていきましょう。犬の記憶を強化するため、ごほうびや待ち時間を合えてランダムにします。時には10秒、時には30秒、時には2分などです。犬が予測できないような形で行動を強化すると、覚えた行動を忘れにくくなります(間欠強化)。
  • 指示語とリンク  犬が完全に待つことを覚えたら、指示語と動作をリンクします。これは古典的条件付けですので、「マテ」という指示語を先に出すようにしましょう。
元動画は⇒こちら
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