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犬の無駄吠えをしつけ直す

 犬の行動矯正(こうどうきょうせい)の中でも、無駄吠え(むだぼえ)のしつけに関してはかなり悩んでいる方が多いようです。一戸建てでもそうですが、マンションなどの集合住宅においては近隣住人とのトラブルにもなりかねません。大きな鳴き声はたいていの人に生理的な不快感を与えますので、なるべく早く矯正したいものです。

犬の無駄吠えの原因

 犬の無駄吠えとは文字通り全く吠える必要のない状況で吠えること・飼い主が吠えてほしくない状況で吠えることです。犬にとって吠えるという行為はいたって普通の行為ですが、人間社会の中においては許容範囲を超えてしまうことが多々あります。そんなときは人間の都合で「無駄」吠えと表現され、矯正の対象となりますが、まずはその犬の無駄吠えの原因について考えてみましょう。
よくある犬の無駄吠えの原因
  • 欲求不満・要求構って・散歩に連れてって・遊びたい
  • 分離不安留守番・屋外につなぎっぱなし
  • 恐怖呼び鈴・雷・見知らぬ犬・来客
  • 縄張り意識敷地に誰か入ってきた・窓から誰かの姿が見えた
  • 痛み病気や怪我などで体のどこかが痛い
  • 認知症老化による脳の衰退
  • 社会的促進他の犬の吠え声に連られて
社会的促進
 社会的促進(しゃかいてきそくしん)とは、他の個体が反応している姿を見て、同じ反応パターンを身につけることです。たとえば草原で1頭の牛が草を食べ始めると、他の牛も一斉に食事を開始したり、1匹の犬にエサを与えると、次から次に他の犬も集まってくるなどです。
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犬の無駄吠えをしつけ直す~基本方針

 犬の無駄吠えをしつけ直すに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
吠えることが不必要な状況や望ましくない状況でおとなしくしていること
してほしくない行動
吠えることが不必要な状況や望ましくない状況で吠えること
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬の無駄吠えをしつけ直す場合を考えて見ましょう。
強化
「吠えることが不必要な状況や望ましくない状況でおとなしくしてた」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「吠えることが不必要な状況や望ましくない状況で吠えた」瞬間に不快(罰)を与える
 犬の無駄吠えをしつけ直す際は強化、弱化の両方が効果的です。
 原因により適宜方法は変わりますが、無駄吠えをしつけ直す際は無駄吠えをした瞬間に罰を与える、正の弱化、および無駄吠えをやめておとなしくなった瞬間に賞を与える、正の強化の両方をメイントレーニングとして進めていきます。
避けたい解決方法  無駄吠えを解決する方法として避けたい方法がいくつかあります。
 まずはショックカラー、もう一つが声帯切除手術です。前者は犬が吠えた瞬間に電流が流れて痛みを与える首輪で、後者は犬の声帯の一部に切れ目を入れて声が出にくくするというものです。これらはいずれも犬に対するストレスが大きく、また効果もまばらなためお勧めできません。
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要求による無駄吠え

 要求による無駄吠えとは、構ってほしい・散歩に連れてってほしい・遊びたいなど、何らかの欲求不満を解消するために吠えることです。飼い主の関心を得ようとするときに出る無駄吠えと言い換えてもいいでしょう。犬の要求による無駄吠えをしつけ直すには、幾つかの手法があります。

欲求不満の解消

犬の無駄吠えの原因として、まずは欲求不満を考慮する  犬が何かを要求しているということは、欲求が満たさされていない、すなわち欲求不満が根底にあると考えられます。まずは犬の欲求を熟読し、犬にとって必要な何らかの欲求が、不当に放置されていないかどうかを確認しましょう。ここで言う「不当」とは、本来満たされるべきものが満たされていないという意味です。
 犬の欲求には、栄養豊富なエサ、新鮮な水、適度な環境温度、清潔な寝床など生きていくうえで絶対必要なものから、散歩する、探索する、遊ぶ、触れ合うなど、精神衛生面で必要なものまでが含まれます。うまくいけば、こうした欲求を満たしてあげるだけで無駄吠えが収まることもあります。

フォーマットトレーニング

問題行動に走る犬に対して「気付け薬」として機能するのがフォーマットトレーニング  フォーマットトレーニングとは、犬の状態を初期化(フォーマット)するための基本トレーニングで、ここで言う「初期化」とはアイコンタクトオスワリマテのことを指します。
 食事、散歩、遊び、ふれあい、マッサージ、グルーミング、飼い主の関心など、犬にとって必要不可欠な刺激を与える前に、必ず犬をフォーマットするというのが、このトレーニングの基本です。
 日ごろからこのフォーマットトレーニングを行っておけば、犬の無駄吠えが発生したときに「オスワリ!」という指示を出しただけで、問題行動をストップさせることができるかもしれません。すなわち、迷走する犬を瞬時に正気に返らせる「気付け薬」として機能してくれるというわけです。
 具体的には問題行動予防トレーニングにまとめてありますのでをご参照ください。

負の弱化

 負の弱化とは、犬にとってのごほうびを取り除く(負)ことで、行動の頻度を下げる(弱化)というオペラント条件付けの一種です。犬の欲求を十分満たしているにもかかわらず、わがままや飼い主の関心を得るために無駄吠えを繰り返す犬もいます。 わがまま吠えに対しては、犬を無視するタイムアウトが効果的 そうした犬にしつけを施す際、この負の弱化を応用したタイムアウトが効果的だと思われます。
 タイムアウト(一時中断)とは犬に対する注目、ふれあい、関心を一切遮断し、一定期間「空気」のように扱うことです。わがまま吠えをしている犬にこのタイムアウトを適用すると、「飼い主の関心」というごほうびが取り除かれる形になり、それがそのまま罰の代わりになってくれます。罰の効果を高めるため、犬をクレートや飼い主とは別の部屋に閉じ込めてしまったり、飼い主自身が退室するという方法も効果的です。 関連動画⇒こちら
タイムアウトを用いた無駄吠えのしつけ
  • 犬が要求吠えをする  まず犬が要求吠えする状況を再現します。子犬の頃から甘やかされてきた犬は、吠えれば要求がかなうという思考パターンを持っていることがほとんどです。
  • タイムアウトの適用 犬が吠えたタイミングでタイムアウト発動  犬が吠えたことをきっかけにして、犬の存在を一切無視し、空気のように扱います。「関心」というごほうびを犬から取り除くとイメージしてください。この時、自分が犬に対してひどいことをしているという罪悪感から、どうしても犬に妥協してしまう人がいますが、全くの逆効果になりますので、心を鬼にする必要があります。
  • おとなしくなったらごほうび 犬が吠えるのをやめて落ち着いたタイミングでごほうび  犬が無駄吠えをやめておとなしくなった瞬間、犬へ関心を向けてごほうびやほめ言葉を与えましょう。犬は「おとなしくしていれば構ってくれる!」という具合に、吠えないことと報酬とを結びつけて学習してくれるはずです。この作業を何度も何度も根気よく繰り返します。これは関心という報酬を提示して(正)、おとなしくするという行動を起こりやすくする(強化)過程ですので、正の強化になります。負の弱化と表裏一体で用いると効果が倍増します。
  • プルーフィング  犬の吠え癖がある程度矯正されたら、時間、場所、ごほうびを与える回数などをランダムにしてしつけを繰り返します。これをプルーフィングといいますが、プルーフィングが不十分だと家の中ではおとなしくしているものの、友達の家に行った途端、無駄吠えが再発するという事態が起こりえます。

正の弱化

 正の弱化とは、犬がいやがる嫌悪刺激を提示する(正)ことで、行動の頻度を下げる(弱化)というオペラント条件付けの一種です。こちらに移る前に、まずはタイムアウトを用いた負の弱化を徹底的に行うことをお勧めします。
サプライズの目的は、まず犬の問題行動を強制的にストップさせ、ごほうびを与えるタイミングを作り出すこと  具体的にはサプライズを利用しますが、サプライズとは強烈な不快感を味わわせるのではなく、犬を驚かせて行動を強引に中断させる罰の一種です。従来の「天罰」(出所の分からない罰)が犬に苦痛を与えることに重点を置いていたのに対し、犬を驚かせてとりあえず目の前の行動をストップさせ、ごほうびを与えるタイミングを作り出すことに重点が置かれていることから、当サイト内ではサプライズと表現します。
 なお、サプライズを含めた罰を与える際には多くの注意点、および相応のリスクがあります。用いる前には必ず犬への罰についてを熟読し、またできれば臨床行動学(問題行動を専門に扱う)の専門家に事前に相談することが望まれます。
サプライズを用いた無駄吠えのしつけ
  • 犬が要求吠えをする  まず犬が要求吠えする状況を再現します。子犬の頃から甘やかされてきた犬は、吠えれば要求がかなうという思考パターンを持っていることがほとんどです。
  • サプライズを与える  犬が無駄吠えをしたら、その瞬間にすかさず用意していたサプライズ(苦痛を与えることよりも驚かせることを主目的とした罰)を与えます。扱いが容易であること、タイミングを計りやすいこと、口を抑える効果があること、犬に対するストレスが少ないこと、屋外でも使用できることなど、様々な理由から、ヘッドカラー(下記参照)を軽く引くという方法が妥当でしょう。
  • おとなしくなったらごほうび  犬がサプライズに驚いて無駄吠えをやめておとなしくなった瞬間、犬へ関心を向けてごほうびやほめ言葉を与えましょう。犬は徐々に吠えないことと報酬とを結びつけて学習していきます。この作業を何度も何度も根気よく繰り返します。
  • プルーフィング  犬の吠え癖がある程度矯正されたら、時間、場所、ごほうびを与える回数などをランダムにしてしつけを繰り返します。これをプルーフィングといいますが、プルーフィングが不十分だと家の中ではおとなしくしているものの、友達の家に言った途端、無駄吠えが再発するという事態が起こりえます。
ヘッドカラー
犬の引っ張り防止アイテム「ヘッドカラー」  ヘッドカラー(head collar)は、散歩時の引っ張り防止アイテムで具体的な商品としてはアメリカ製の「Gentle Leader」(ジェントルリーダー)やイギリス製の「Halti」(ハルティ)が有名です。
 犬がリードを強く引っ張ると、自然にマズルに圧力がかかり、適度な不快感が発生します。またヘッドカラーの与える圧力は、優位の犬が劣位の犬のマズルを噛んで押さえつけるという行為の代替となっている可能性もあり、犬に自然な服従心を養う効果も期待されます。 犬のお出かけ・お散歩グッズ

しつけの成功を阻む要素

 上では理想的なしつけ手順を解説しましたが、全ての犬がスムーズに矯正されるわけではありません。無駄吠えのしつけをする際、行動矯正の成功を阻む要素がいくつかあります。1つは「PREE」、そしてもう1つは「消去バースト」です。

PREE

たまに大当たりが出ると、やみつきになる~PREE(部分強化消去効果)  PREEとは部分強化消去効果のことで、平たく言うと「報酬を間欠的に与えられていた場合、その報酬がなくなっても、報酬を得るための行動を長期にわたってとり続けること」です。
 たとえば、子犬の頃から吠えることで飼い主の気を引いてきた犬は、間欠的に「関心」というごほうびを得てきたことになります。すなわち「吠える」という行動が間欠的な報酬によって強化されてきたことを意味します。こうした犬に染み付いた吠え癖は極めて強固なもので、不可能ではないにしても、矯正するには大変な努力を要します。
 このPREEに対して飼い主の側で気をつけるべきは、行動の一貫性、および鉄の意志です。犬の無駄吠えに根負けして、一度でも犬に関心を向けてしまうと、それは間欠的なごほうびになり、犬の行動を一層悪化させることになります。家族全員が1度の例外もなく確実にルールを守ることが極めて重要です。

消去バースト

今まで満たされていた欲求が不満になると、一時的に禁断症状が出る~消去バースト  消去バーストとは、一度癖になった行動を消そうとするとき、一時的に行動が通常より増えてしまう禁断症状のようなものです。
 犬にタイムアウトを適用したとき、思うように飼い主の気を引くことができない犬は、むきになって普段より激しく吠えてくることが予想されます。しかし飼い主は根負けして途中で路線変更してはいけません。「こんなにうるさいなら構ってあげたほうが楽だ!」と妥協してしまうと、それは犬に対する間欠的なごほうびになり、無駄吠えを一層悪化させることになります。
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恐怖・不安による無駄吠え

 恐怖・不安による無駄吠えとは、見知らぬものやトラウマに関連したものを見たり聞いたりすることをきっかけに吠え始めることです。犬の恐怖・不安による無駄吠えをしつけ直す際は、一例として以下のような手法があります。

恐怖・不安の解消

 犬が何かに対して恐怖心を抱き、それが吠えるという行為につながっている場合は、単純に恐怖の引き金を取り除くことで無駄吠えを解消することができます。具体的には犬の恐れを熟読し、犬にとって脅威となっているものが無いかどうか確認してみましょう。
 犬が怖がるものの代表格は、大きな物音、急な動き、カサカサ音の鳴るものなどです。人間からするとどうでもいいような些細なものが恐怖や不安の引き金になっていることもありますので、まずはこうした要素を環境の中から排除することが先決です。

拮抗条件付け

 拮抗条件付け(きっこうじょうけんづけ)とは、犬にとって不快の原因になっている刺激を、徐々に快のきっかけに転換していく過程のことです。人間で言うと、第一印象が最悪だった人と、知り合うに連れてだんだんと親しくなっていき、最終的には親友になるようなものとお考えください。 関連動画⇒こちら
拮抗条件付けを用いた無駄吠えのしつけ
  • 犬が吠える状況を作る  まず犬が恐怖・不安吠えする状況を再現します。ここでは一例として、犬が吠え出すきっかけを「来客」と設定してみます。誰かお友達に「来客」役をやってもらうとしつけがはかどるでしょう。いきなりドアを開けて全身を見せるのではなく、最初は少しだけドアを開けて軽く顔や手をのぞかせる程度にします。
  • 犬が吠えやむのを待つ 犬が鳴きやむのを待ち、鳴きやんだ瞬間にごほうびを与える  来客が家のドアを開けたことに気づき、不安を覚えた犬がいつも通り吠え始めるはずです。しかし永久に吠え続ける犬はいませんので、吠えやむ瞬間が来るのを待ちましょう。犬が疲労や息継ぎのために吠えやんだ瞬間をとらえ、飼い主は犬にごほうび(レバーやチーズなど普段与えないような豪華なもの)を与えます。犬が興奮してごほうびを受け付けないときは、「いいこ」などのほめ言葉でも構いません。飼い主が犬をほめたことをきっかけにして、来客には一端退場してもらいます。
     この過程は、吠えやむこととごほうびとを結びつけるオペラント条件付けです。
  • 繰り返し刺激を与える  一端退場した来客に再登場してもらいましょう。犬が再び吠え始めたら、また吠えやむ瞬間をじっと待ちます。そして吠えやんだ瞬間、ごほうびやほめ言葉を掛けてやり、犬に報酬を与えます。これを繰り返すことで、「吠えやむ→報酬」というリンクが強固になっていきます。
  • 来客をごほうびの合図にする  上記手順を繰り返していくと、犬はそのうち「ドアを開けて人が入ってくること」とごほうびとを結びつけて覚えるようになります。つまり、「クリッカーが鳴ったらごほうびをもらえる」と記憶するのと同様、「ドアが開いて人が顔をのぞかせるとごほうびがもらえる」という具合に記憶してくれるわけです。
     このように、最初は不安のきっかけだった「来客」という刺激を、徐々にごほうびの合図として書き換えていく作業が「拮抗条件付け」です。
  • 刺激を強めてみる  最初は顔や手だけをドアから出していましたが、徐々に犬に見せる範囲を広げていきます。つまり刺激を強めていくわけです。顔→足→上半身→上半身と片足→全身という具合に、徐々に刺激を強め、犬が吠えやんだ瞬簡にごほうびという手順をしつこく繰り返します。

系統的脱感作

 系統的脱感作(けいとうてきだつかんさ)とは、犬が苦手としているものを、刺激の弱いものから段階的に強めていき、徐々に慣らしていくというものです。人間で言うと、毎日少しずつ前屈ストレッチすることで、最終的には手の平が床につく状態まで持っていくようなものです。 関連動画⇒こちら
系統的脱感作による無駄吠えのしつけ
  • 犬が吠える状況を作る  まず犬が吠える状況を再現します。犬が吠えるきっかけはいろいろあると思いますが、ここでは「呼び鈴」を例にとって説明していきます。
  • 刺激を極限まで薄める  「呼び鈴」の音をICレコーダーや携帯電話などに録音し、自由に音量調整できるようにします。そして犬が反応を示さないぎりぎりの音に設定してみましょう。音を鳴らして犬がじっとしていたらごほうびを与えます。犬が興奮して吠え始めたら、もう少し音量を下げましょう。これは音とごほうびとを結びつける古典的条件付けです。
  • 刺激を徐々に強くする  犬が一定の音になれてきたら、少しずつ刺激を強めていきます。音量をやや上げて犬のリアクションを観察してみましょう。無駄吠えしなかったら、その瞬間にごほうびを与えます。
  • 刺激を最大にする  犬が強めの刺激に慣れてきたら、いよいよ最大限まで高めてみましょう。呼び鈴の場合は、録音したものではなく、実際の呼び鈴を鳴らしてみます。犬が吠えなければ大成功で、系統的脱感作が成立した証拠です。もし犬がまだ興奮して吠え立てるようでしたら、前のステップに戻ってもう一度音に慣らしましょう。

テクニックの併用

 拮抗条件付け、系統的脱感作について極めて簡単に解説しましたが、実際はこの2つのテクニックを併用する形で用いた方が効果的です。たとえば、雷の音に慣らす際、雷の音を小さいものから大きなものへと段階的に高めていく(系統的脱感作)と同時に、音を聞いた際はごほうびを与える(拮抗条件付け)などです。基本的なやり方さえ覚えておけば、人の手、猫、自転車、配達人、ビニール袋、呼び鈴、電話の音など、犬の無駄吠えを誘発する様々な刺激に対して応用が利きます。
拮抗条件付け&系統的脱感作
拮抗条件付け、系統的脱感作を併用した際のインフォグラフ  なお、犬が特定の音に反応して吠える場合は犬を音に慣らす、および犬が独りぼっちになることに対して不安を覚えて吠える場合は留守番のしつけでも解説していますので、合わせてご一読ください。
 また、一度は直ったと思われる吠え癖も、しつけを怠ると再発することがあります。これは「自発的回復」と呼ばれる現象で、簡単に言うと癖が戻ることです。ですから飼い主としてはランダムな時間間隔で犬のしつけをやり直し、一度成立した条件付けを強固にしておく必要があります。
自発的回復
 自発的回復(じはつてきかいふく)とは、一度は消えたはずの反応が再びぶり返してしまうことです。たとえるなら、毎日ギターを弾いて硬くなった指先が、しばらくギターを放置することでまた柔らかく戻ってしまうようなものです。
 犬の吠え癖が一度は直ったと思っても、定期的にしつけを行っていなければ、再び元の癖がぶり返してしまうことがあります。飼い主はこの自発的回復現象が起こらないよう、抜き打ちテストのような感覚で犬にしつけを行うことが必要です。
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その他の原因による無駄吠え

 無駄吠えの原因として代表的な要求、および恐怖・不安について言及しましたが、その他の原因によって引き起こされる無駄吠えについて、簡単に説明します。

痛みによる無駄吠え

 痛みによる無駄吠えは緊急事態と言っても過言ではありません。なぜなら、犬は本来痛みに強く、弱っている姿をめったに見せることがない動物だからです。これは自分が捕食される可能性を減らすために発達した能力だと考えられますが、そんな我慢強い犬が痛みで鳴くというのは、よほどのことです。ですから犬の無駄吠えの原因が病気や怪我による痛みだと思われる場合は、すぐに獣医さんに診てもらいます。
 犬の歩き方から骨折や捻挫、脱臼などの怪我を推測する場合は犬の歩き方チェック、声から推測する場合は犬の声から心を読む訓練、外からは見えない体内の病巣を推測する場合は犬のマッサージなどが参考になるでしょう。

認知症による無駄吠え

 認知症とは一度発達した脳細胞が減少し、かつてはできていた行動ができなくなってしまった状態を言い、認知症に伴う問題行動の一つとして無駄吠え・夜鳴きがあります。一つの目安としては、小型犬なら9~13歳、中型犬なら9~11歳、 大型犬なら7~10歳、 超大型犬なら6~9歳くらいから老化が始まるといわれますので、これらの時期を境に無駄吠えが増えた場合は、認知症の可能性を考慮します。詳しくは老犬の認知症にまとめましたのでご参照ください。

社会的促進による無駄吠え

 社会的促進とは、他の個体が反応している姿を見て、同じ反応パターンを身につけることです。たとえば、犬を多頭飼いしている場合、1頭吠え癖のある犬がいると、他の犬も釣られてワンワン吠え出すということがありえるわけです。
 これが社会的促進による無駄吠えですが、原因となっている犬のしつけを施せば、連鎖的に他の犬の癖も矯正される可能性があります。宴会芸の「リーダー探し」のように、誰がオリジナルなのかを探り当て、その犬から無駄吠えのしつけをしてみましょう。

縄張り意識による無駄吠え

 縄張り意識は野生のオオカミ、飼育オオカミ、野生のイヌ(野犬)の全てで観察されている生得的な感覚です。テリトリーとみなしている場所に見慣れない動物が侵入してくると、追い払うために威嚇として吠えることがあります。
 縄張り意識による犬の無駄吠えを軽減するには、まず犬の視界を変えてしまうという方法があります。たとえば室内犬の場合なら、窓にロールカーテンなどをつけることで見える景色に制限をつけるなどです。また、屋外犬の場合なら、犬小屋の位置を玄関から遠ざけることによって犬の視界を変えるなどの方法があります。これだけで犬の縄張り意識が軽減し、それに連動して無駄吠えが減ってくれるかもしれません。
環境操作
 環境操作(かんきょうそうさ)とは、犬の反応を引き起こしている環境刺激自体に働きかけることで、犬の行動を変化させることです。刺激制御(しげきせいぎょ)と同義で用いられることもあります。
 たとえばクマのぬいぐるみを見ると異常な攻撃性を示す犬の場合、ぬいぐるみ自体を家の中から一掃するなどです。人間で言うと、「間食」という行動を抑制するため、そもそも家の中にインスタントラーメンを買い置かないようにする、といった例が挙げられます。
 ただし縄張り意識の強い犬の場合、それと連動した攻撃性(配達人に噛み付くなど)が見られることもありますので、深刻と判断される場合は臨床行動学(動物の問題行動を扱う分野)の専門家に助言を求めたほうがよいでしょう。詳細は犬の攻撃行動をご参照ください。
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