トップ犬のしつけ方屋外で必要となるしつけ犬の出せのしつけ

犬の出せのしつけ

 出せとは、飼い主が命令すると同時に犬がくわえているものを離す行動のことです。 他人の服やズボンに噛(か)みついたまま離れなかったり、食べてはいけないような毒性の食品や植物に出くわしたときなど、このしつけをマスターしておくと大変役に立つでしょう。

犬の出せのしつけの必要性

犬に出せをしつけておくと、いざというとき危険なものを口から離してくれます。  例えば散歩中に不潔なゴミなどをくわえてしまったり、有毒植物(ゆうどくしょくぶつ)を口の中に入れてしまったときなどこの命令が必要になります。また家の中で新聞紙をくわえてしまったときや電気コードやスリッパをくわえてしまった時なども、出せのしつけができていると事故やトラブルを未然に予防することができます。
 では具体的に犬の出せのしつけ方を見ていきましょう。 犬にとって危険な毒物 犬にとって危険な有毒植物
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犬の出せのしつけ~基本方針

 犬の出せのしつけに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
ダセの言葉で犬がくわえている物を離すこと
してほしくない行動
ダセの言葉をかけても犬がくわえている物を離さないこと
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬に出せをしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「ダセの言葉で犬がくわえている物を離した」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「ダセの言葉をかけても犬がくわえている物を離さなかった」瞬間に不快(罰)を与える
 犬の出せのしつけに際しては弱化よりも強化の方が効果的です。
 嫌悪刺激を用いる方法はタイミングが難しく、また犬が誤解してしまう要素も多いため、当サイトではくわえている物を離した瞬間におやつなどの快を与えるという 正の強化で出せをしつけるのが基本方針となります。
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犬の出せのしつけ~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬の出せのしつけにおいては、以下の3つのことを準備します。

準備1: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備2: 指示語を統一する

 犬に出せを命令する際には指示語が必要です。この指示語を統一しないと犬は混乱します。一家の中でお父さんは「ダセ!」、お母さんは「出しなさい!」、息子は「離せ!」、娘は「リリース!」だったら犬は大混乱で何をして良いか分からなくなり、いじけてしまいます。このように指示する際に掛ける言葉は一つに絞ること、つまり「指示語を統一すること」は非常に重要なのです。
 指示語の候補としては、犬が聞き取りやすい「ダセ」、「ハナセ」、「Release(リリース)」などがあります。ご家族で相談して統一してください。

準備3: 集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。気が散るような魅力的なおもちゃなどが視界にあると集中できずに学習効果が低下しますので、しつけの前には犬の気を引くものを一掃して理想的な環境を作っておきます。

しつけの実践

 犬の出せのしつけを実践するに当たっては、以下の6ステップに沿って行います。

ステップ1: 犬に物をくわえさせる

 まず犬におもちゃなど気になるものをくわえさせます。この状態からくわえている物を離す「出せ」トレーニングの開始ですが、最初は犬の執着心がそれほど強くないものを用いた方がよいでしょう(飽きたおもちゃなど)。

ステップ2: 犬の鼻先でごほうびを見せる

犬にごほうびを与え、口にくわえているものを離すといいことがあると思わせます。  物をくわえている犬の鼻先に犬の大好きなごほうびをちらつかせて見ましょう。すると犬はくわえている物を離してごほうびを食べようとします。物を離した瞬間にごほうびを与え「いいこ」などのほめ言葉と同時に軽く一回なでてあげます。
  このトレーニングを繰り返すことで、犬に対して「離したくないけど・・・おいしいものくれるからいいや!」と学習させることがポイントです。行動対比を強調するため、与えるごほうびは犬がくわえているものよりも魅力的なものを選ぶようにしましょう。
行動対比
 行動対比(こうどうたいひ)とは、過去の経験と比較し、今目の前にあるごほうびが上か下かを判断することです。もらったごほうびが過去のものより上等なものだとやる気が増し、下等だとやる気が低下します。犬にダセをしつけるには、出したときにもらえるごほうびが、くわえているものよりも常に上である必要があります。報酬の勾配(差)が大きいほど、快感が強い方の行動が増します。

ステップ3: 動作と指示語を結びつける

口にくわえている物を離すという動作と、ダセという音声的な情報を犬の頭の中でうまくリンクします。  犬がすんなり物を口から離すようになったら、次に物をくわえている犬の鼻先に犬の大好きなごほうびをちらつかせて、犬が物を口から離す直前に指示語(ここでは「ダセ」を採用します)を出します。そしてすかさずごほうびを与え、「いいこ」などのほめ言葉と同時に軽く一回なでてあげます。こうすることで「口から物を離す」という行動と「ダセ」という音声的な情報が犬の頭にインプットされます。「ダセ→犬が口を開ける→ごほうび」という一連の手順を流れるように行ってください。
 なお、犬に指示語を覚えさせるのは一種の古典的条件付けです。指示語と行動を効果的に記憶させる際は、「指示語→行動」の順で声を掛けるのが最適となります(延滞条件付け)。

ステップ4: 指示語だけで行動を促す

 くわえている物を口から離す行動と「出せ」という指示語を犬が覚えたら、 次はごほうびを見せずに指示語だけでダセ行動を促して見ましょう。  犬が指示通りにくわえている物を出したら、すかさずごほうびを与え「いいこ」などのほめ言葉と同時に軽く一回なでてあげます。 「実際にごほうびは見えていなくても、”ダセ”という言葉の後には必ずおいしいものがもらえるぞ!」 と犬に覚えさせることがポイントです。 指示語を与えて「出す」という動作を引き出したら、すかさずごほうびを与えて行動を強化しましょう。

ステップ5: ごほうびの回数を減らす

 指示語だけで犬が出せ行動を取るようになったら、今度はごほうびを与える回数を減らしていきましょう。常にごほうびを与えていると犬がごほうび自体に飽きてしまったり、肥満の原因になりかねません。毎回ごほうびを与える⇒2回に1回ごほうびを与える⇒3回に1回⇒4回に1回・・・と減らしてゆき、最終的には「いいこ」などのほめ言葉だけにします。

ステップ6: 場所と時間を変えて行う

 いつでもどこでも飼い主の指示に従うのがしつけの最終目標です。今度は時間と場所を変えてやってみましょう。散歩の途中で信号待ちする時、他の犬とすれ違う時、走っていく子供を追いかけそうになったときなど様々なシチュエーションで「出せ」を試してみます。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。
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犬の出せのしつけ~実演動画

 以下でご紹介するのは、犬に出せをしつける方法を解説したハウツー動画です。
犬のダセのしつけ
  • 犬に何かをくわえさせる  まず犬に何かをくわえさせます。最初はそれほど執着していないものの方がやりやすいでしょう。たとえば遊び飽きたおもちゃなどです。 それほど執着していないものを犬にくわえさせる
  • ごほうびで釣る  犬の鼻先におやつを持っていき、犬の注意をひきつけます。犬がくわえているものに執着心を持たないよう、レバーやチーズなど、普段は与えないような少し贅沢なおやつを用いると、スムーズに離してくれます。くわえているものとごほうびとの間に、明瞭な格差を作るというわけです(報酬勾配)。 犬がくわえているものよりも魅力的なものを提示する
  • 口から離したらほめる  犬が口から物を離した瞬間にごほうびを与え、よくほめてあげましょう。「口から物を離す」こととごほうびとを結びつけるオペラント条件付けです。 犬が口をあけて物をリリースした直後にごほうびを与えてほめる(オペラント条件付け)
  • 指示語とリンクする  犬がスムーズに口をあけるようになったら、今度は指示語と開口動作をリンクしましょう。古典的条件付けの理論を応用し、犬が口をあける直前に「ハナセ!」や「ダセ!」などの指示語を出すのが理想です(延滞条件付け)。この動作を場所や時間を変えて繰り返し行います。また犬にくわえさせるものもより執着しやすいもの(新しいおもちゃなど)に変えていきましょう。
元動画は⇒こちら
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