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犬の歩き方チェック完全ガイド~ふらつく・遅い・立ち止まるは病気のサインかも

 犬の歩き方に現れる病気の徴候を一覧リストにしました。ただ漫然と歩くのではなく、飼い犬の歩くペースや呼吸の変化をよく観察しながら散歩してみましょう。

犬の正常な歩き方

 犬の歩き方が正常なのか異常なのかを判断するためには、まず体に異常がないときの歩き方を知っておかなければなりません。では、犬の正しい歩き方にはいったいどのような種類があり、どのような特徴を持っているのでしょうか?以下ではイラストや動画を用いて正常な犬の歩き方について解説します。

ウォーク

 ウォーク(walk)とは3本の足が地面に接している歩き方です。正常な歩き方のうち、ゆっくりした速さの「スローゲイト」(slow gait)に分類され、日本語での呼び方は「並足」(なみあし)です。 🐕イラスト・図:The DOG IN ACTION, Mcdowell Lyon 犬の正常な歩き方~ウォーク(walk)  「右後ろ足→右前足→左後ろ足→左前足・・・」というリズムで足を前方に繰り出していきます。地面の匂いをかぎながら散歩するときなど、ゆっくり進むときの典型的な歩き方です。

トロット

 トロット(Trot)とは2本の足が地面に接している歩き方です。正常な歩き方のうち、ゆっくりした速さの「スローゲイト」(slow gait)に分類され、日本語での呼び方は「速歩」(そくほ)です。 🐕イラスト・図:The DOG IN ACTION, Mcdowell Lyon 犬の正常な歩き方~トロット(Trot)  「右前足+左後ろ足→左前足+右後ろ足・・・」というリズムで交互に足を前方に繰り出していきます。後方に蹴り出した前足と前方に振り出した後ろ足がぶつかる「ニッキング」(nicking)という現象を避けるため、犬は後ろ足を内側、前足を外側に器用にずらしながら進みます。

フライングトロット

 フライングトロット(flying trot)の歩き方は基本的にトロットと同じです。違いは、後方に蹴り出した前足と前方に振り出した後ろ足が交差する瞬間、地面と接している足がなくなり、一瞬だけ宙に浮いた状態(サスペンション)になる点です。 📷写真出典:Canine Gait 犬の正常な歩き方の一種フライングトロット(flying trot)で見られるサスペンション  「フライング」と呼ばれるのはこのサスペンションがあるためで、日本語での呼び方は「飛行速歩」(ひこうそくほ)です。ジャーマンシェパードが得意な歩き方とされています。

ペース

 ペース(pace)とは体の同じ側にある前後2本の足が地面に接している歩き方です。正常な歩き方のうち、ゆっくりした速さの「スローゲイト」(slow gait)に分類され、日本語での呼び方は「側対歩」(そくたいほ)です。 📷写真出典:Canine Gait 犬の正常な歩き方~ペース(pace)  「右前足+右後ろ足→左前足+左後ろ足・・・」というリズムで交互に足を前方に繰り出していきます。人間で言うと、ガチガチに緊張した人で見られる「右手と右足が同時に前に出る」歩き方です。

アンブル

 アンブル(amble)とはウォークからトロットに移り変わるときに見られる歩き方です。正常な歩き方のうち、ゆっくりした速さの「スローゲイト」(slow gait)に分類されます。ペースの歩き方を基本としていますが、足が地面に接するタイミングと地面から離れるタイミングが「後ろ足→前足」という具合にほんの少しだけずれているのが特徴です。

キャンター

 キャンター(canter)とはトロットとギャロップ(後述)の中間に当たる歩き方です。正常な歩き方のうち、リズムの速い「ファストゲイト」(fast gait)に分類され、日本語での呼び方は「駆け足」(かけあし)です。 🐕イラスト・図:The DOG IN ACTION, Mcdowell Lyon 犬の正常な歩き方~キャンター(canter)  常に1~2本の足が地面に接しています。ソリ犬が長距離を走るときに用いられます。

ギャロップ

 ギャロップ(gallop)はキャンターの動きを基本にしています。違いは、前足を後方に蹴り出した勢いで一瞬だけ体が宙に浮く(サスペンション)という点です。この特徴から「シングルサスペンションギャロップ」とも呼ばれます。正常な歩き方のうち、リズムの速い「ファストゲイト」(fast gait)に分類されます。 🐕イラスト・図:The DOG IN ACTION, Mcdowell Lyon 犬の正常な歩き方~ギャロップ(gallop)  走っているときのサイクルを図示した上のイラストで言うと、13~15までの図が「サスペンション」に相当します。

ダブルサスペンションギャロップ

 ダブルサスペンションギャロップ(double suspention gallop)とは歩行の1サイクル中で体が2回宙に浮く歩き方(走り方)のことです。正常な歩き方のうち、リズムの速い「ファストゲイト」(fast gait)に分類され、日本語での呼び方は「襲歩」(しゅうほ)です。 🐕イラスト・図:The DOG IN ACTION, Mcdowell Lyon 犬の正常な歩き方~ダブルサスペンションギャロップ(double suspention gallop)  人間で言うと「跳び箱を連続で飛び続ける」状態と言えます。最初のジャンプは踏切板を両足で踏んだ直後(イラストで言うと3番)、2番目のジャンプは跳び箱の上面に両手を付いた直後(イラストで言うと6番)です。着地したその場所にまた跳び箱の踏切板があると考えれば判りやすいでしょう。休むことなく延々と跳び箱を飛び続ける状態が「ダブルサスペンションギャロップ」です。グレーハウンドを始めとしたレース犬が得意とされます。

動画でみる犬の正常な歩き方

 以下でご紹介するのは犬の歩き方や走り方を再現したアニメーション動画です。「ウォーク→アンブル→ペース→トロット→キャンター→ギャロップ」の順番で再生されます。 🎥元動画:Dog WalkCycle and RunCycle Reference
 以下でご紹介するのは犬の歩き方や走り方を再現した実写の動画です。「ウォーク→アンブル→ペース→トロット→フライングトロット→キャンター→ギャロップ」の順番で再生されます。 🎥元動画:Canine Gaits
正常な歩き方がわかったら異常な歩き方も知っておきましょう。
NEXT:異常歩行チェック

犬の異常な歩き方チェック

 犬の正常な歩き方を理解したら、逆におかしな歩き方もわかってきます。以下は犬の歩き方に現れる変化や異常と、それに関係する病気の一覧リストです。犬がいつものペースで歩けなかったり、いつもとは違うおかしな歩様(ほよう)を見せた場合は、何らかの疾患の可能性を疑い、場合によっては獣医さんに診てもらいます。

フラフラ歩く

 犬がフラフラしてまっすぐに歩けないという場合、ある特定の足に異常があるというよりはバランス感覚に影響を及ぼす全身性の異常が関わっている可能性があります。具体的には以下のような病気が考えられます。

脊髄障害による異常歩行

 頚部圧迫性脊髄症(Wobbler Syndrome)を発症したジャーマンシェパードの動画です。首の骨の中にある脊髄(頚髄)や脊髄から飛び出している神経根が何らかの理由で圧迫を受け、前足と後ろ足の両方に運動障害が発生してしまいます。大型~超大型犬で歩き方がおかしいという場合は念のため考慮に入れましょう。 🎥元動画:Bernese Mtn Dog with Wobbler Syndrome gait

小脳障害による異常歩行

 小脳性運動失調を発症したトイプードルの動画です。産まれて間もない子犬が変な動きを見せた場合は先天性の小脳低形成が疑われます。一方、この犬(6歳)のように成長してから発症した場合の原因はよくわかっていません。寒くもないのにブルブルと震え、足がガクガクしてまっすぐ立っていられなくなります。また無理に歩こうとすると横によろけたり転んだりします。 🎥元動画:Neurological Disease. Cerebellar Ataxia in an older poodle

前庭疾患による異常歩行

 前庭疾患を発症した小型犬の動画です。バランス感覚を司る前庭器官の不調により、頭が傾いてまっすぐ歩けなくなり、同じ場所をぐるぐる回っています。動画の投稿主は「人間用の抗生物質を投与して治った」と言っていますが、素人が勝手に診断を下して自己判断で投薬しては絶対にいけません。必ず獣医さんに相談してください。 🎥元動画:Dog with Vestibular disorder

歩くこと(運動)を嫌がる

 犬が歩くこと(運動)を嫌がる場合、筋骨格系以外の場所に原因があるかもしれません。例えば心臓が悪いため歩くと胸が苦しくなるとか、鼻腔狭窄や気管支炎で激しい運動をするとすぐに息切れするなどです。
 「歩くテンポが遅くなった」とか「散歩の途中で立ち止まる」という場合は以下のような病気が考えられます。

ものによくぶつかる

 犬がものによくぶつかるという場合、眼がよく見えていない可能性があります。具体的には以下のような病気が考えられます。

白内障による異常歩行

 白内障を発症したミニチュアピンシャーの動画です。目が見えないためか、しきりに床の匂いを嗅いで状況を把握しようとしています。足元にボールが転がってきても気づいていないようです。手術後に頭が上がったのは、嗅覚ではなく視覚で周囲の状況をとらえることができるようになった証拠でしょうか。 🎥元動画:Niko Before And After Cataract Surgery

片足を引きずるように歩く

 犬が片足を引きずるように歩く場合、全身に影響を及ぼす心血管系や内分泌系の病気よりも、筋骨格系の障害が強く疑われます。具体的に考えられるのは以下のような病気です。

膝蓋骨脱臼による異常歩行

 膝蓋骨脱臼を発症した小型犬の動画です。歩いている最中、右足をかばうように上げた結果、スキップするような足取りになっています。小型犬の飼い主は後ろ足のリズムにとりわけ注意を払いながら散歩をしたほうがよいでしょう。 🎥元動画:Luxating patella
 右後ろ足に膝蓋骨脱臼を発症したチワワの動画です。足の踏ん張りがきかず、時折「膝カックン」を受けたときのようにがくんと膝が折れて倒れそうになります。 🎥元動画:luxating patella
 左後ろ足に膝蓋骨脱臼を発症したマルチーズの動画です。体重を支えることができず、常に空中に浮かせた状態で立っています。無理に歩こうとするとケンケン状態になり、すぐへたりこんでしまいます。 🎥元動画:Lulu can't walk because of her Luxating Patella

股異形成による異常歩行

 股異形成(股関節形成不全)を発症したロットワイラーの動画です。19秒あたりで通称「バニーホップ」と呼ばれる奇妙な動きが見られます。これは股関節への荷重を避けようとして起こる動作です。縄跳びを跳ぶときのように両足が一瞬だけ宙に浮きます。 🎥元動画:Hip dysplasia
 股異形成を発症したパグの動画です。人間で言う「うさぎ跳び」のように、両足を同時に振り出す「バニーホップ」という奇妙な動きががはっきりと見て取れます。 🎥元動画:Hip Dysplasia in a pug puppy: bunny hopping gait

十字靭帯損傷による異常歩行

 左後ろ足の膝の中にある十字靭帯が断裂損傷したピットブルの動画です。体重を支えることができず完全に片足を引きずっています。膝に大きな力がかかる大型~超大型犬でよく発生しますので、歩行リズムがおかしいと感じたらすぐ動物病院を受診しましょう。 🎥元動画:Limp - Torn Cruciate Ligament In Dogs
 左後ろ足の十字靭帯に断裂損傷を抱えた犬の動画です。初期症状は「立っているときにブルブル震える」というもので、状態の悪化とともに完全に足を使わなくなってしまいました。痛みを避けるため、人間で言う「ケンケン」の状態で移動しています。 🎥元動画:Bailey Dog with Cruciate Ligament Rupture

下半身が動かない

 犬の上半身(前足)は動くけれども下半身(後ろ足)だけが動かないという場合、脳の障害や脊髄の障害が考えられます。具体的には以下のような病気です。
考えられる病気

低血糖症 | 椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアによる異常歩行

 胸腰部の椎間板ヘルニアが発生したジャックラッセルテリアの動画です。おそらく飛び出した髄核が脊髄全体を圧迫をしているため、左右両方の足が同時に動きにくくなっています。その結果、体重を支えきることができずへたりこんでしまいます。「犬が歩かない」という場合、疲れて駄々をこねているのではなく、筋骨格の病気が原因になっていることもありますので、強引に引っ張り回すのは厳禁です。 🎥元動画:Typical gait pattern that may be observed in a dog with thoracolumbar intervertebral disc disease
 椎間板ヘルニアを発症したビーグルの動画です。足先に力が入らないため、「ナックリング」が生じています。これは足指の背面を地面につけて体重を支えた状態のことです。 🎥元動画:Brodie the IVDD beagle walking

動作が鈍い・遅い

 犬の動作が鈍いとか遅いという場合、加齢による関節炎や内分泌系の疾患が考えられます。また単純に太り過ぎでも同様の症状が見られますので区別しなければなりません。具体的には以下のような病気が考えられます。

関節炎による異常歩行

 重度の関節炎を発症したパグの動画です。痛みのため関節の動きがぎくしゃくしており、まるで竹馬に乗っているかのような歩き方をしています。この犬の場合、肥満が症状の悪化に拍車をかけているようです。 🎥元動画:Dog with severe arthritis

お尻をこするように歩く

 犬がお尻をこするように歩く状態は「スクーティング」(scooting)などと呼ばれます。肛門やその周辺の組織に異常が発生しているときによく見られる変な歩き方で、具体的には以下のような病気が考えられます。
考えられる病気

肛門嚢炎

肛門嚢炎による異常歩行

 お尻を引きずりながら歩く、通称「スクーティング」と呼ばれる奇妙な歩き方を示しているピットブルの動画です。おもしろ動画でも何でもなく、「お尻に異常があるよ」という犬からの切実なメッセージです。肛門嚢を絞るなり動物病院に行くなりして適切なケアをしてあげましょう。 🎥元動画:My dog Morrison SCOOTING on the carpet like 7 times!
犬の体調不良は歩き方のほか呼吸からもわかります。
NEXT:異常呼吸チェック

呼吸の異常チェック

 散歩しているとき、犬の歩き方を観察すると同時に、犬の息遣いにも着目してみましょう。以下は犬の呼吸に現れる変化や異常と、それに関係する病気の一覧リストです。散歩をしている最中、犬の呼吸に何らかの変化が見られた場合は念のため疾患の可能性を考慮し、場合によっては獣医さんに診てもらいます。 犬の動作や習慣の変化や異常
呼吸に現れる体調不良
散歩中の犬が見せる歩き方や呼吸の仕方は健康のバロメーター。飼い主が責任持って毎日チェックする習慣をつけておきましょう!