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犬の胸膜炎~症状・原因から予防・治療法まで呼吸器の病気を知る

 犬の胸膜炎(きょうまくえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の胸膜炎の病態と症状

 犬の胸膜炎とは、胸の内部を覆っている胸膜と呼ばれる膜に炎症が発生した状態を言います。
 胸膜(きょうまく)とは、肺の外側、および胸腔の内側を覆っている膜のことで、内部には胸水(きょうすい)と呼ばれるわずかな潤滑液が含まれています。胸膜に炎症が起こった結果、膿がたまってしまった状態が「膿胸」(のうきょう)で、本来ごく少量しかない胸水が、がん細胞や細菌の刺激で増え、肺の一部が押しつぶされた状態が「胸水貯留」(きょうすいちょりゅう)です。ですから胸膜炎と膿胸、胸水貯留は、密接に連動した3病態と言えます。 胸膜の模式図  犬の胸膜炎の症状としては以下のようなものが挙げられます。よほどの重症でない限り、全く症状を見せないということも少なくありません。
犬の胸膜炎の主症状
  • 呼吸困難
  • 運動を嫌がる
  • 発熱

犬の胸膜炎の原因

 犬の胸膜炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の胸膜炎の主な原因
  • 感染症  ウイルスや細菌などに感染すると胸膜炎を引き起こすことがあります。犬の場合はイヌ伝染性肝炎に引き続いて発症することが多いようです。また胸に穴が開くなどの直接的な外傷から病原菌が侵入して発症するというパターンもあります。具体的には、猟犬やスポーツ犬など、障害物に勢いよく衝突する可能性のある犬や、他の犬とけんかをして胸のあたりを噛まれてしまった犬などです。外傷が原因の胸膜炎では、アクチノマイセス属、ノカルディア属、バクテロイデス属、コリネバクテリウム、大腸菌、レンサ球菌などが多く検出されるといいます。
  • ガン(悪性腫瘍)  ほかの部位にできたがんの転移によって胸膜炎が発生することがあります。感染症に比べると頻度はまれです。

犬の胸膜炎の治療

 犬の胸膜炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の胸膜炎の主な治療法
  • 基礎疾患の治療  別の疾病によって胸膜炎が引き起こされている場合は、まずそれらの基礎疾患への治療が施されます。原因菌を突き止める場合は、胸腔に針を刺して胸水を吸い取り、その中に含まれる病原体を調べます(胸腔穿刺)。病原体を特定できたら、それに最もよく効く薬がピンポイントで投与されます。
  • 対症療法  症状の軽減を目的とした治療が施されます。体内に液体がたまった場合は、針などを胸腔内に差し込んで除去します。胸水や膿が立て続けに溜まる場合は、連続的に排液を行う必要がありますので、経過観察を行いながら数週間の入院を必要とすることもしばしばです。