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ジステンパー~症状・原因から治療・予防法まで

 犬のジステンパーについて病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

ジステンパーの病態と症状

 犬のジステンパーとは、全世界に存在している犬ジステンパーウイルス(CDV)に感染することによって発症する感染症です。
 ニホンオオカミの絶滅の原因となった疾患(しっかん)として有名で、現在でもイヌの重要な感染症の1つに数えられています。イヌ科動物に対して高い感染性がありますが、ネコ科、イタチ科、アライグマ科、スカンク科、アザラシ科、ジャコウネコ科など、ほとんどの食肉目(しょくにくもく)の動物に感染します。2014年の末から2015年の初頭にかけ、中国陝西省の研究施設で飼育されていたジャイアントパンダが、ジステンパーに感染して次々と死んでしまった出来事は記憶に新しいでしょう。なお人間に感染することもありますが、麻疹(はしか)に対する免疫があれば症状が出ることはまずありません。
 鼻、のどから侵入したウイルスは、まずマクロファージによってリンパ節に運ばれ、そこで増殖します。1週間ほどで全身のリンパ節に広がったウイルスは、その後血液に乗って呼吸器、消化器、泌尿器、生殖器に拡散し、時に中枢神経系にまで広がります。このようにして発生する犬ジステンパーの主な症状は以下です。
ジステンパーの主症状
  • 感染から4~6日  発熱・食欲不振などかぜとよく似た症状
  • 感染から1週間~  元気が無くなる・結膜炎角膜炎・目やに・嘔吐・腹痛・下痢・血便・せき・くしゃみ・呼吸が荒くなる・鼻先の乾燥
  • 重症化した場合  体のいたるところがピクピクと律動的にけいれんするチック症状、下半身麻痺、てんかん様発作(倒れて泡を吹く)、無意味な暴走など、ジステンパー性神経症状

ジステンパーの原因

 犬のジステンパーの原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
ジステンパーの主な原因
  • 感染動物との接触  ジステンパーウイルスに感染した他のイヌのくしゃみ飛沫(ひまつ)を吸い込んだり、感染犬に直接的・間接的に接触することで鼻や口からウイルスが体内に侵入します。また、ウイルスの付着した食器や食べ物などを介しても間接的に感染することがあります。ちなみにCDVの生存期間は、体温で1時間、それよりやや低い室温で3時間程度です。

ジステンパーの治療

 犬のジステンパーの治療法としては、主に以下のようなものがあります。犬の免疫力が強い場合は、回復した後全くウイルスを排出しなくなりますが、免疫力が不十分な場合は、3ヶ月以内に約50%の確率で命を落としてしまいます。
ジステンパーの主な治療法
  • ワクチン接種  ジステンパーに対する有効な治療薬がないため、ワクチン接種が実質的な予防・治療法といえます。メリットとデメリットを獣医さんとよく話し合った上、お決めください。犬のワクチン接種
  • 二次感染予防  抗生物質などの薬で二次感染を防ぎます。二次感染とは、ウイルスや細菌の感染によって免疫力が低下し、他の細菌やウイルスの侵入を防ぎきれなくなってしまうことです。また他の健康な犬への感染を予防するため、感染犬は入院・隔離されます。