トップ犬のしつけ方室内で必要となるしつけ犬のハウスのしつけ

犬のハウスのしつけ

 ハウスとは、飼い主が命令すると、犬が自発的に決められた定位置(ていいち=ハウス)に移動することです。ハウスは犬が自由に動き回れなくする「檻」(おり)としての役割と同時に、犬に安心感を与える「自分の部屋」としての役割があります。

犬のハウスのしつけの必要性

 犬は本来、外界から遮蔽(しゃへい)され外敵(がいてき)や風雨(ふうう)から身を守りやすい場所を本能的に好みます。犬を狭いところに閉じ込めてかわいそう、と感じるかもしれませんが、犬の方では逆に安心しているようです。それは以下の研究結果からもうかがえます。 ドメスティック・ドッグ(第13章)
犬は狭いところが好き?
  • Hughes,Campbell,Kenneyらの研究(1989)  比較的大きなケージで飼育されても、犬はほとんど活動しない。
  • Neamand,Hite,Campbellらの研究(1988)  ケージの大きさを0.58~3.00平方メートルの範囲で広げても、犬の活動レベルに顕著な上昇は見られない。
  • Jeppesen,Pedersenの研究(1991)  イヌ科動物であるギンギツネの繁殖場でケージの中に巣箱を併設すると、キツネの恐怖心が軽減されて新奇な環境を探索しようとする行動が増えた。また血清コルチゾールのレベルが低下(ストレスレベルが低下)し、リンパ球数が上昇(免疫力が向上)した。
 このように、犬に対してただ広い空間を与えていればよいというわけではなく、むしろ落ち着ける狭い空間を部屋の一部に用意してあげたほうがよいようです。人間でも体育館のようなだだっ広い空間よりも、ある程度空間が限定された自分の部屋の方が安心できますが、それと同じ理屈かもしれません。犬にとって安心できる「自分の部屋」に相当するのが「ハウス」といえます。
 では具体的に犬のハウスのしつけ方を見ていきましょう。
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犬のハウスのしつけ~基本方針

 犬のハウスのしつけに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
命令したら、犬が自発的に所定の場所に移動すること
してほしくない行動
命令しても、犬が所定の場所に移動しないこと
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬にハウスをしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「命令したら、犬が自発的に所定の場所に移動した」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「命令しても、犬が所定の場所に移動しなかった」瞬間に不快(罰)を与える
 犬のハウスのしつけに際しては弱化よりも強化の方が効果的です。
 これは、「命令された⇒意味が分からなかったのでキョトンとした⇒大きな物音で不快感を与えた」という形でしつけをしてしまうと、犬は「命令された⇒不快な大きな音がした」と学習してしまう危険性がありるためです。これでは「ハウス!」と指示されること自体に恐怖を感じてしまい、いつまでたってもハウスを覚えることはできないでしょう。
 ですから犬が誤解してしまうようなしつけではなく、命令したら、犬が自発的に所定の場所に移動した瞬間におやつなどの快を与えるという 正の強化でハウスをしつけるのが基本方針となります。
望ましくないしつけ方  犬に首輪とリードを付け、力づくでハウスの中に引きずりいれる方法は望ましくありません。犬に不快感を与えてしまうと、「ハウスに入ること=不快」という条件付けが形成され、逆に入ってくれなくなります。人間で言うと、繁華街の客引きにしつこく勧誘されるようなものです。
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犬のハウスのしつけ~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬のハウスのしつけにおいては、以下の3つのことを準備します。

準備1: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備2: 指示語を統一する

 犬に「ハウス」を教えるには指示語が必要です。この指示語を統一しないと犬は混乱します。一家の中でお父さんは「入れ!」、お母さんは「おうち!」、息子は「中!」、娘は「ハウス!」だったら犬は大混乱で何をして良いか分からなくなり、いじけてしまいます。このように指示する際に掛ける言葉は一つに絞ること、つまり「指示語を統一すること」は非常に重要なのです。
 指示語の候補としては、犬が聞き取りやすい「入れ」、「House(ハウス)」などがあります。ご家族で相談して統一してください。

準備3: 所定の「ハウス」を決める

 犬が中にいてくつろげるハウスを決めましょう。室内犬の場合はペットショップなどに色々なタイプのハウス(檻を小型にしたケージや、上に取っ手が付いていてそのまま持ち運びできるクレートなど)が売っています。大きさとしては、ハウスの中で体の方向転換(ほうこうてんかん)ができる程度が理想です。あまり大きすぎるのは望ましくありません。なぜなら、余りに広いとハウスの一角を寝床(ねどこ)にし、他の一角をトイレにしてしまう危険性があるからです(特に子犬時代を狭いケージですごしてきた犬など)。これでは犬が不衛生(ふえいせい)になります。中には毛布やクッションなど、地面の冷たさを遮断(しゃだん)するものを敷いてあげましょう。 犬のハウス 犬のハウスとしては檻を小型化したケージや、取っ手がついて持ち運びもできるクレートなどがあります。
 また、屋外犬の場合は犬小屋(ケネル, kennel)を用意しますが、以下に示すような注意点があります。
犬小屋設置上の注意
  • 大きさは、中で体の方向転換ができ、ゆったりと寝そべることができる程度にする。
  • 犬小屋の床は必ず地面から離した「高床式」(たかゆかしき)にし、地面の湿気と冷気の侵入を防ぐ。
  • 犬小屋は家の中が見えるところに設置し、犬に安心感を与える。
  • 人や車など往来に面した場所への設置は避ける。人間で言えば頻繁に電車の通過する高架下に暮らすようなもの。
  • 夏は雑菌が繁殖して犬小屋が不衛生になりやすいので、頻繁に水洗いする
  • 冬は地面からの冷気が厳しいので毛布などを敷いてやる。
  • トイレと小屋は別々にする。
 一応注意点を列挙しましたが、犬は本来群れをなす社会的動物であり、人や他の動物と触れ合うことを本能的に求めています。屋外につなぎっぱなしにする飼育スタイルではなく、家の中に入れてあげることも一考して頂けると幸いです。 犬を庭や外で飼う 犬の欲求

しつけの実践

 犬のハウスのしつけを実践するに当たっては、以下の4ステップに沿って行います。

ステップ1: 犬をハウスにおびき寄せる

犬をハウスにおびき寄せる  まず犬の好きなおやつやおもちゃを鼻先に近づけ、興味を引きましょう。そのまま犬を誘導し、ハウスに足を踏み入れた直後にごほうびを与えます。犬は「この中に入るといいことがあるぞ!」と学習し、積極的にハウスの中に入ろうとする意欲が生まれます。
 これは行動と快不快とを結び付けて覚えさせるオペラント条件付けですので、ごほうびを与えるタイミングは犬がハウスに入った直後がベストです。できれば0.5秒以内を意識しながら行ってみてください。ごほうびと同時に「いいこ!」などのほめ言葉を掛けることも有効です。

ステップ2: ハウスに合わせて指示語を聞かせる

犬がハウスに入ったタイミングで指示語を聞かせる  次に犬がハウスに入る行動と「ハウス」という指示語を結び付けて覚えさせます。ステップ1と同様、犬をごほうびでハウスにおびき寄せます。犬がハウスに入る直前に、決めていた指示語(ここでは「ハウス」を採用します)をかけましょう。タイミングとしては「ハウスと指示→犬がハウスへ入る→ごほうび」という順で流れるように行います。犬は「この中に入ることが”ハウス”なのか!」と学習していき、「ハウス」という行動と、「ハウス」という音声的な情報が頭の中で結びついていくわけです。
 なお、犬に指示語を覚えさせるのは一種の古典的条件付けです。指示語と行動を効果的に記憶させる際は、「指示語→行動」の順で声を掛けるのが最適となります(延滞条件付け)。

ステップ3: 指示語だけでハウスを実行させる

 犬が行動と指示語を結び付けて覚えたら、今度はごほうびを見せず指示語だけでハウスへ誘導してみましょう。犬に向かって「ハウス!」と指示語を出します。犬が行動を覚えていて、自発的に所定のハウスに入ったら「いいこ!」などのほめ言葉と同時にごほうびを与えます。これを繰り返すことで「ハウスに入るといいことがある!」という正の強化が更に補強されます。
 もし犬がきょとんとしてリアクションを示さない場合は、指示語と行動の関連性がまだ不十分な証拠です。もう一度ステップ2に戻り、「指示語→行動」の順で繰り返し条件付けを行いましょう。 指示語だけでハウスを実行させる

ステップ4: ごほうびの回数を減らす

 指示語だけで犬がハウス行動を取るようになったら、今度はごほうびを与える回数を減らしていきましょう。常にごほうびを与えていると犬がごほうび自体に飽きてしまったり、肥満の原因になりかねません。毎回ごほうびを与える⇒2回に1回ごほうびを与える⇒3回に1回⇒4回に1回・・・と減らしてゆき、最終的には「いいこ」などのほめ言葉だけにします。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。
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犬のハウスのしつけ~実演動画

 以下でご紹介するのは犬をクレートに入らせるクレートトレーニングの方法を解説したハウツー動画です。サイト内では「ハウス」について解説しましたが、クレートやキャリーバッグなど、犬を特定の場所に入らせるというシチュエーションなら、全てに応用が利きます。
犬のクレートトレーニング
  • まずはクレートに慣らす  まずクレートに慣らします。好奇心旺盛な犬(ネオフィリア=新奇愛好)の場合は自分から率先して下調べしてくれますが、心配性な犬(ネオフォビア=新奇恐怖症)の場合、見知らぬものを見ただけで恐怖反応を示します。ですからまずクレートが何の害悪ももたらさないことを教えましょう。このとき、クレートの中にごほうびを入れると、恐怖心がうまく中和されます。 犬の警戒心を取り除くため、まずはクレートを自由に下調べさせる
  • 入った直後にごほうび  クレートに入るという行動とごほうびという快感をリンクします。オペラント条件付けですので、行動の0.5秒後にごほうびを与えるというタイミングがベストです。ですから入った瞬間にごほうびを与えるというイメージになります。これを繰り返していくと、犬は徐々に「クレートに入るといいことがある!」と記憶していきます。 入る行動とごほうびとのリンクを促す
  • 指示語を覚えさせる  指示語と行動とを結び付けます。これは古典的条件付けですので、指示語を出すのは行動の直前がベストです。ですから犬がクレートに入る直前に指示語をかけるというイメージになります。これを繰り返していくと、犬は指示語と動作の関連性を徐々に覚えてきます。 指示語と行動とのリンクを促す
  • 指示語だけで動作を促す  犬が指示語と動作の関連性を学んだら、指示語だけで犬の動作を誘発して見ましょう。
元動画は⇒こちら
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