趣味や慈善行為(じぜんこうい)で繁殖を手がける場合を除き、多くのブリーダーは生活費を稼ぐために犬の繁殖をしています。ではなるべく高値で犬を売って生活費を得るにはどうしたらよいでしょうか?それはなるべく犬種標準に近い犬を作り、血統書登録をして犬を売ることです。ペットショップでもブリーダーからの直買いでも、一般的に犬種標準に近い血統書付の犬が好まれます。結果として供給するブリーダーの側も顧客(こきゃく)の好みに合わせる必要があるのです。
このような背景を前提として、「近親交配と遺伝病」(きんしんこうはいといでんびょう)の問題が生じます。すなわち、犬種標準に近い外見を求めるあまり、親と子、兄弟姉妹同士の近親交配をして手っ取り早く犬種標準に近づけてしまうのです。
人間界での近親交配が多くの国で禁止されているのは、同義的な問題以前に「病気や身体的な欠陥など、生活に支障をきたす遺伝子が発現する危険性が高まる」ということを長い歴史の中の経験則(けいけんそく)として知っているからです。
しかし犬の場合はそうした暗黙の前提が無視されているようです。犬種固有の発現しやすい遺伝病がありますが、これは近親交配が原因ではないかと考えられています。
ゴールデンレトリーバーの股関節形成不全
- 金髪コッカースパニエルのジキルとハイド症候群(突然凶暴になる)
- バーニーズ・マウンテンドッグのスプリンガー凶暴性(同上)
- キャバリア・キングチャールズ・スパニエルの僧坊弁閉鎖不全症
利潤(りじゅん)を優先して犬の健康を後回しにしているブリーダーがいること、 「血統書付」で「犬種標準に近い」ということは外見を重視して近親交配されている可能性があること、
血統書とその犬が同一のものであるかどうかを確認するすべが消費者の側にはないこと等、犬を飼う側で気をつけるべき点は多々あります。
2008年8月、イギリスの放送局BBC1は 「Pedigree Dogs Exposed」(邦題/イギリス 犬たちの悲鳴 〜ブリーディングが引き起こす遺伝病)という、ショーのために飼育された一部の犬を追ったドキュメンタリーをテレビで放送しました。この番組がきっかけとなって、犬種標準を決定しているイギリスケンネルクラブへの批判が高まり、結果として「長期目標としてすべての血統基準の見直しを行う」という動きにまで発展しました。以下は番組の要約と実際の映像(英語)です。
具体的な遺伝病の問題として取り上げられているのは・・・
- キャバリア・キングチャールズ・スパニエルの脊髄空洞症や僧坊弁狭窄症
- てんかん発作のボクサー
- 脳脊髄膜に穴が空いたローデシアンリッヂバック
- 膝蓋骨脱臼と脊柱側わん症のパグ
- 呼吸器に問題を抱えるラサアプソ
- 顎の不正咬合が理想的とされるブルドッグ
- 関節炎を高確率で発祥するバセットハウンド
犬種維持に関わるケンネルクラブやブリーダーの問題としては・・・
- 犬種標準に合っていない子犬の「間引き」を奨励する
- 犬種を維持するために親子の近親交配を奨励する
- 近親交配の結果、遺伝病が高確率で発現するとわかっていても放置する
- 見た目の審査のみで健康テストを行わない犬種登録テスト
- 遺伝病をもつ親で交配を繰り返し、子孫に遺伝病を広めても悪びれないブリーダー
などが次々と登場します。
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