トップ犬のしつけ方屋外で必要となるしつけ犬の抱っこのしつけ

犬の抱っこのしつけ

 抱っことは、犬が飼い主の膝に乗り、飼い主がその犬を抱きしめる状態のことです。 主に小型犬専用のしつけですが、ペットと一緒にどこかに出かけたり旅行したりするときなどに、役に立ちそうなしつけですね。

犬の抱っこのしつけの必要性

抱っこのしつけは特に小型犬との生活で必要になります。  例えばお友達の家に遊びに言って帰るときや、犬を自転車のかごに乗せて移動するときなどにこの命令が使えます。また散歩中にしつけの行き届いていない大きくて攻撃的な犬とすれ違うことがあるかもしれません。そんな時にこのしつけができていると自分の犬を守ることができるでしょう。
 上記したように、「抱っこ」には犬の身の安全を確保するという重要な役割があります。しかしここで注意すべきは、「全ての犬が最初から抱っこを受け入れてくれるわけではない」という点です。2016年、ブリティッシュコロンビア大学の心理学者スタンレー・コレン氏が行った調査によると、人間に抱かれている犬のうち、なんと8割以上が不安のサインを見せていたといいます(→詳細)。下の写真はその一例です。「耳を垂らす」、「目の端に白目が見える」、「舌なめずりする」、「顔を背ける」といった不安の徴候を随所に見て取ることができるでしょう。人間に抱きしめられた時に犬が見せるカーミングシグナル  不安を感じている犬を無理に抱っこしようとすると、反射的に攻撃的になり、思わぬ咬傷事故につながってしまうということは想像に難くありません。そこで重要となってくるのが、「事前に抱っこに慣らしておく」というプロセスです。
 では具体的に犬の抱っこのしつけ方を見ていきましょう。
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犬の抱っこのしつけ~基本方針

 犬の抱っこのしつけに際して、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
ダッコの言葉で犬が飼い主の膝に乗ってくること
してほしくない行動
ダッコの言葉をかけても犬があちこちうろうろすること
 してほしい行動と快(ごほうび)、してほしくない行動と不快(おしおき)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬に抱っこをしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「ダッコの言葉で犬が飼い主の膝に乗ってきた」瞬間に快(賞)を与える
弱化
「ダッコの言葉をかけても犬があちこちうろうろした」瞬間に不快(罰)を与える
 犬の抱っこのしつけに際しては弱化よりも強化の方が効果的です。
 これは、「抱っこを命じられた⇒命令を無視した⇒大きな物音で不快感を与えた」という形で負の強化をしてしまうと、犬は「抱っこを命じられた⇒不快な大きな音がした」と学習してしまう危険性があるためです。これでは抱っこという指示語を聞いた途端、犬が怖がってどこかに逃げてしまいます。
 ですから犬が誤解してしまうような正の弱化ではなく、犬が飼い主の膝に乗ってきた瞬間におやつなどの快を与えるという正の強化で抱っこをしつけるのが基本方針となります。
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犬の抱っこのしつけ~実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずは犬のしつけの基本理論で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」、「一つの刺激と快不快を混在させないこと」、「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」、「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」、を念頭においてください。

しつけの準備

 犬の抱っこのしつけにおいては、以下の3つのことを準備します。

準備1: ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(賞)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつ おやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • おもちゃ おもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。
  • なでる なでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。
  

準備2: 指示語を統一する

 犬に抱っこを命令する際には指示語が必要です。この指示語を統一しないと犬は混乱します。一家の中でお父さんは「抱っこ!」、お母さんは「ほらここ!」、息子は「ヒザ!」、娘は「カモン!」だったら犬は大混乱で何をして良いか分からなくなり、いじけてしまいます。このように指示する際に掛ける言葉は一つに絞ること、つまり「指示語を統一すること」は非常に重要なのです。
 指示語の候補としては、犬が聞き取りやすい「ダッコ」、「knee(ニー)」などがあります。ご家族で相談して統一してください。

準備3: 集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。気が散るような魅力的なおもちゃなどが視界にあると集中できずに学習効果が低下しますので、しつけの前には犬の気を引くものを一掃して理想的な環境を作っておきます。

しつけの実践

 犬の抱っこのしつけを実践するに当たっては、以下の6ステップに沿って行います。

ステップ1: 手から犬にごほうびを与える

 ごほうびを手に持ち犬の鼻先に近づけて与えます。「飼い主の手にはいいものがある!」と印象付けましょう。ここからしつけのスタートです。

ステップ2: 犬を膝の上におびき寄せる

手に持ったごほうびに釣られ、犬は自然と飼い主の膝の上に乗ってくるようになります。  犬が飼い主の手に執着するようになったら、今度はその手を自分の膝に近づけてみましょう。犬はごほうびにつられて膝の上に乗ってきます(ルアートレーニング)。犬が膝の上に乗ったらごほうびを与えて軽く抱きしめ、「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでてあげます。この動作を5回くらい行い 「膝の上に乗るとおいしいものがもらえるんだ!」と学習させます。これは「膝に乗る」という動作とごほうびとを結びつけるオペラント条件付けです。

ステップ3: 行動と指示語を結びつける

 犬が「飼い主の膝の上に乗るといいことがある!」と学習したら、次は膝の上に乗るという行動と指示語(ここでは「ダッコ」を採用します)とを結び付けます。
 ごほうびで犬が飼い主の膝の上に乗る直前に「「ダッコ!」と指示語を出します。それからごほうびを与えて軽く抱きしめ、「いいこ」などのほめ言葉を掛けて軽く一回なでてあげます。このトレーニングを繰り返しましょう。犬の頭の中では膝の上に乗るという行動と「ダッコ」という音声的な情報が結びついていきます。
 なお、犬に指示語を覚えさせるのは一種の古典的条件付けです。指示語と行動を効果的に記憶させる際は、「指示語→行動」の順で声を掛けるのが最適となります(延滞条件付け)。 犬が膝の上に乗った瞬間、ダッコという音声情報を与えると、次第に両者が頭の中でリンクします。

ステップ4: 指示語だけで行動を促す

 飼い主の膝の上に乗るという行動と「ダッコ」という指示語を犬が覚えたら、次はごほうびを見せずに指示語だけでダッコ行動を促して見ましょう。犬が指示通りに飼い主の膝の上に乗ってきたら、すかさずごほうびを与えて軽く抱きしめ、「いいこ」などのほめ言葉と同時に軽く一回なでてあげます。「実際にごほうびは見えていなくても、”ダッコ”という言葉の後には必ずおいしいものがもらえるぞ!」と犬に覚えさせることがポイントです。 ダッコという音声情報からごほうびに対する期待感が高まり、自発的に行動をとるようになれば成功です。

ステップ5: ごほうびの回数を減らす

 指示語だけで犬が抱っこ行動を取るようになったら、今度はごほうびを与える回数を減らしていきましょう。常にごほうびを与えていると犬がごほうび自体に飽きてしまったり、肥満の原因になりかねません。毎回ごほうびを与える⇒2回に1回ごほうびを与える⇒3回に1回⇒4回に1回・・・と減らしてゆき、最終的には「いいこ」などのほめ言葉だけにします。

ステップ6: 場所と時間を変えて行う

 いつでもどこでも飼い主の指示に従うのがしつけの最終目標です。今度は時間と場所を変えてやってみましょう。散歩の途中で信号待ちする時、他の犬とすれ違う時、走っていく子供を追いかけそうになったときなど様々なシチュエーションで「抱っこ」を試してみます。
しつけをする上での注意  犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。
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