トップ犬のしつけ方室内で必要となるしつけ犬のアイコンタクト(おいで・来い)のしつけ

犬のアイコンタクト(おいで・来い)のしつけ

 ペットを飼い主に注目させるアイコンタクトはまず最初に教えなければならない基本のしつけです。ペットの名前を呼んだらいつでもどこでも行動を中断し、飼い主の目に注目するようにしつけるのが最終目標です。また飼い主の方を見ることと近くに来ることとはワンセットで行われることが多いため、「おいで」や「来い」のしつけも併せて行うことにします。

アイコンタクト(おいで・来い)の必要性

飼い主の呼びかけに応じて犬が目を合わせるのがアイコンタクトです。  アイコンタクトには、犬を事故やアクシデントから遠ざけるという効果があります。
 たとえば飼っている犬が、走っている車を追いかけて道路に出そうになったとき、アイコンタクトしつけができていれば犬の行動を中断して事故に巻き込まれることもなくなります。あるいは犬がドッグランで興奮して他の犬を追い掛け回しそうになったときや、知らない人(飼い主の友人など)がやってきて、不安になって吠え立てたときなどにもこのしつけが効力を発揮(はっき)するでしょう。犬と人間が見つめ合うと双方のオキシトシンレベルが上昇し絆が深まる  またアイコンタクトには犬と飼い主との信頼関係を強めるという重要な役割を担っています。2014年に行われた調査では、オキシトシンを犬に投与したところ、人の顔を見つめるという行動が増加し、この行動は逆に人間の尿中オキシトシン濃度を上昇させたと報告されています。「オキシトシン」とは「恋愛ホルモン」とか「愛情ホルモン」と呼ばれる化学物質の一種で、個体間の絆を形成する際に重要な役割を担っているホルモンです。また2017年、日本の麻布大学獣医学部が行った調査でも、犬にオキシトシンを投与したところ飼い主を見つめる行動が増え、尿中オキシトシンレベルに関しては犬のみならず飼い主の方も同時に上昇したと報告されています。
 要するに、犬と人間が見つめあうだけで両者の体内におけるオキシトシンレベルが上昇し、信頼関係が強くなる可能性があるのです。目と目で通じ合うという現象には、アイコンタクトとオキシトシンを介した科学的な裏付けがあるんですね。では具体的にアイコンタクトの教え方を見ていきましょう。
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アイコンタクト(おいで・来い)の基本方針

 アイコンタクトの練習をするに際し、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
ペットの名前を呼んだらいつでもどこでも飼い主の目を見つめて近づいて来ること
してほしくない行動
ペットの名前を呼んでも反応しないこと
 犬の名前を呼んだにも関わらずこちらを見てほしくないとか、自分のそばに来てほしくないという状況は、日常生活の中ではほぼ存在しません。ですから「アイコンタクトを取る」という行動と「飼い主の足元に来る」という行動はワンセットで教えるようにします。ただ単に犬の注意を引きたいときは、口笛、キッシングノイズ(口をすぼめて出すチュッチュッという音)、舌を鳴らすなど、名前とは全く別の音を用いるようにしてください。
 してほしい行動と快(ごほうび・強化刺激)、してほしくない行動と不快(おしおき・嫌悪刺激)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえてアイコンタクトをしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「名前を呼んだら飼い主の目を見つめて近くに来る」という行動を取った瞬間に快を与える
弱化
「名前を呼んでも反応しないこと」と不快を結び付ける
 犬のアイコンタクトのしつけに際しては正の強化を基本方針として行います。たとえば「名前を呼んだ→反応しなかった→大きな物音で不快感を与えた」という形で正の弱化をしてしまうと、犬は「名前を呼ばれた→不快な大きな音がした」と学習してしまう危険性があります。これでは逆に名前を呼んだら犬が怖がってどこかに隠れてしまいますね。
 ですから犬が誤解してしまうような正の弱化ではなく、飼い主の目を見つめた瞬間におやつなどの快を与えるという正の強化でアイコンタクト(おいで・来い)をしつけるのが基本方針となります。
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アイコンタクト(おいで・来い)の実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実際の訓練に入りましょう。まずはしつけに入る前に「犬のしつけの基本理論」で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」「一つの刺激と快不快を混在させないこと」「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」を念頭においてください。まだマスターしていない方は以下のページを読んで「すべきこと」と「すべきでないこと」が何であるかを把握しておきます。 犬のしつけの基本
アイコンタクトのしつけ・目次

犬の名前を決める

 まずは犬に最適な名前と命令を参考にしながら、犬の名前を決めましょう。
 犬の聴覚(ちょうかく)は母音(ぼいん=日本語ではアイウエオ)の聞き取りには向いていますが子音(しいん=日本語ではカ行、サ行、タ行・・・)の聞き取りには向いていません。「ネブガドネザル」など凝(こ)った名前をつけたとしても犬にとってはただ聞き取りづらいだけですので、ユニークかつシンプルな名前を選ぶようにします。
 また、既に犬の名前を決めてしまっている人もいるでしょうが、犬にとって名前とは「何かいいことが起こる前によく聞く音」という意味しかありません。人間の戸籍(こせき)のように一度決めてしまったらもう変えられないものではありませんので、状況に応じて名前を変えても一向に構いません。
無関係性の学習
 無関係性の学習とは、ある特定の刺激が、自分にとって毒にも薬にもならないと犬が記憶してしまうことです。たとえば、「ジョン!」と名前を呼んだのにごほうび(おやつ・なでる)を与えないで過ごしてきた家庭においては、犬が「ジョン」という音を自分とは無関係のどうでもよい情報として記憶している可能性があります。
 一度こうした無関係性の学習が成立してしまうと、元に戻すのが極めて困難なため、全く違う「デビッド」などの新しい名前をつけたほうが得策です。

ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(強化刺激)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつおやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。
  • おもちゃおもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。
  • なでるなでるときは軽く「よーし」や「いいこ」や「グッド」などのほめ言葉を決めておき、その言葉と同時に軽く一回なでてあげます。あまり激しく撫で回してしまうのは望ましくありません。第一に犬が興奮しすぎて集中力がなくなりますし、第二になでられることに慣れてしまって「なでる」という行為が犬にとって賞(快を与えるもの)でなくなってしまう危険性があるからです。

しつけエリアを作る

 犬の気が散らないようなトレーニングエリアを設けます。テレビやラジオを消し、窓を閉めて外からの騒音を遮断し、部屋の中に落ちてるおもちゃはすべて片付けましょう。このようにして無味乾燥な部屋を作っておくと、犬の注意が否応なく飼い主の方に向きやすくなります。
 なお犬は周囲の騒音があまりにもうるさい場合、耳からの情報入力自体をシャットアウトしてしまう可能性が示されています。詳しくは「犬が自分の名前を聞き取る能力」で解説してありますので時間ができたらお読みください。 【画像の元動画】Best way to teach a puppy to come when called (K9-1.com) 無味乾燥な部屋で犬の集中力を高める  部屋の環境が整ったら犬と一緒にトレーニングエリアに入ります。リードを付けた状態での訓練は「リーダーウォークのしつけ」で詳しく解説してありますので、ここではノーリードで構いません。
 犬は初めて接する環境に興味をひかれ、床の匂いをクンクン嗅ぎ回ったり部屋の中うろうろするかもしれません。しばらくの間は干渉せず勝手に行動させてあげましょう。どんな犬でも5~10分くらいすると周囲の環境に対する興味が薄れ、自然と探索行動をしなくなります。このタイミングを見計らってしつけをスタートします。

名前を呼びながらごほうび

 まず犬の食いつきがよいごほうびを手に持ち、犬の注意を引きます。この時点ではまだアイコンタクトは必要ありません。事前に決めておいた犬の名前をはっきりと1回発音し、1秒以内におやつを与えましょう。 【画像の元動画】How to Train your NEW PUPPY to Walk on Leash! まずは犬の名前と強化刺激(気持ちいいこと)を犬の頭の中でリンクする  注意すべきは、おやつを与えてから名前を呼ぶのではなく、名前を呼んだ後に与えるという点です。不思議なことに「ごほうび→名前」という順番にしてしまうと犬は名前を覚えてくれません(逆行条件付け)。また名前を呼んだのにおやつを与えないという思わせぶりもNGです。必ず「名前→ごほうび」という順番で1秒以内に行います(延滞条件付け)。これを繰り返すことにより、犬の頭の中では「名前」という聴覚的な情報とごほうびとが結びついていきます。これが中性刺激(この場合は犬の名前)と快不快を結びつける古典的条件付けです。

犬の気をそらしながら名前を呼ぶ

 犬が名前とごほうびとの関連性を覚えたら、指先でおやつを持ち犬の視線をわざと横にずらした状態で名前を呼んでみましょう。 【画像の元動画】How to Train your Puppy in 3 Minutes per Day - Eye Contact 飼い主とアイコンタクトをとるといいことがあると犬に覚え込ませる  目が合ったら1秒以内におやつを与え「いいこ」といって頭を軽くなでてあげます。魅力的なものの誘惑に負けず、飼い主とのアイコンタクトが連続で5回できるようになったら次のステップに進んでみましょう。

1m離れて名前を呼ぶ

 犬が名前とごほうびとの関連性を理解したら、今度は犬との間に1mくらいの間隔をあけて立ちます。犬がそっぽを向いていることを確認した上で、はっきりと一度だけ事前に決めておいた犬の名前を呼んであげましょう。犬が声に気づいて飼い主の顔を見上げた瞬間、1秒以内に用意していたおやつを与え頭を軽くなでてあげます。タイミングが非常に重要ですので、ごほうびを素早く与えることができるように飼い主の側でも練習が必要です。最初のうちはおやつを与えやすいよう膝をついた状態でも構いません。こうすることによって犬の頭の中では「飼い主の方を見上げる」という行為とごほうびとがリンクしていき、行動が強化されます。 【画像の元動画】How to Train your Puppy in 3 Minutes per Day - Eye Contact 飼い主とアイコンタクトをとるといいことがあると犬に覚え込ませる  終わったら横を向くなどしていったんアイコンタクトを外します。しばらく時間を置き、犬が再びそっぽを向いていることを確認した上ではっきりと名前を呼んでみましょう。おやつは見せないようにし、犬と目が合った瞬間、同じようにごほうびを与えてほめてあげます。なかなかこちらを見上げてくれないからといって、むやみやたらに名前を連呼しないでください。犬が聞き取りづらくなりますし、指示語としての機能がぶれてしまいます。
 名前を呼んでいるにもかかわらず、犬がなかなかこちらを向いてくれないような時は、まだ環境に馴染んでいないのかもしれません。いったん自由行動をさせ床の匂いを嗅ぐなど環境を思う存分探索させてあげましょう。環境に飽きたタイミングで再び名前を呼んでみます。
 名前を呼ばれたらすぐに飼い主とアイコンタクトをとることが、連続で5回できるようになったら次のステップに進んでみましょう。

2m離れて名前を呼ぶ

 犬が名前に反応して飼い主の方を見上げてくれるようになったら、犬との距離を2m程度に広げましょう。ステップ1と同じように、犬がそっぽを向いていることを確認した上で名前を1度だけはっきりと呼んであげます。犬がこちらを向いたらおやつを持った手を犬の目の高さまで下げ、足元に来るよう誘導してあげます。足元に来た瞬間、おやつを与えてほめてあげましょう。こうすることによって犬の頭の中では「飼い主の足元に近寄る」という行為とごほうびとがリンクしていき、行動が強化されます。 【画像の元動画】How to train Attention and Eye Contact! 飼い主に近づくといいことがあると犬に覚え込ませる  終わったら横を向くなどしていったんアイコンタクトを外します。しばらく時間を置き、犬が再びそっぽを向いていることを確認した上ではっきりと名前を呼んでみましょう。おやつは見せないようにし、自発的に足元に近づいたらおやつを与えてほめてあげます。なかなか近づいて来ないような場合は、おやつを持った手を犬の目の高さに下げ誘導してあげます。名前を連呼する必要はありません。
 名前を呼ばれたらすぐに飼い主とアイコンタクトをとり、足元に来ることが連続で5回できるようになったら次のステップに進んでみましょう。

いろいろな体勢で名前を呼ぶ

 名前を呼ばれた犬が飼い主の足元に近づくようになったら、今度は犬に対して体の側面を見せ、アイコンタクトを外しながら名前を呼んでみましょう。犬がぐるりと飼い主の正面に回り込み、自発的に顔を見上げてくれたらおやつを与えてほめてあげます。横を向いた状態で名前を呼んでも犬が来てくれるようになったら、今度は犬に対して背中を向けた状態で名前を呼んでみましょう。犬がぐるりと飼い主の正面に回り込み、自発的に顔を見上げてくれたらおやつを与えてほめてあげます。おやつを持った手をひらひらさせたり、名前の後に余計な言葉は付け加えないようにしましょう。 【画像の元動画】The FASTEST Way to Teach YOUR DOG to COME WHEN CALLED ANYWHERE! 飼い主はどんな体勢であっても、名前を呼んだら足元に来るように訓練する

気の散る環境で名前を呼ぶ

 名前を呼ばれた犬は、どんな状況であっても飼い主の方を振り向いて足元に近づいて来なければなりません。犬の気が散るような環境の中で名前を呼んでみましょう。例えば、部屋の中に「窓を開けてテレビやラジオをつける」「穴の開いた容器に匂いの強いおやつを入れる」「床におもちゃを置いてみる」といったバリエーションを設けてみます。犬の気を強く引くものがあっても、飼い主に呼ばれたらいつでもアイコンタクトを取り足元に近寄る練習を繰り返しましょう。

場所を変えて名前を呼ぶ

 犬が気の散る状況でもアイコンタクトを取り足元に来るようになったら、今度は部屋を変えてみましょう。ベッドルーム、キッチン、廊下などあらゆる場所で名前を呼び、アイコンタクトが確実にできるように繰り返し練習します。 【画像の元動画】The FASTEST Way to Teach YOUR DOG to COME WHEN CALLED ANYWHERE! 周囲の環境が変わっても、犬は名前を呼ばれたら飼い主の足元に来なければならない

ハンドシグナルを教える

 犬の耳が不自由な場合、言葉による指示語は通じませんので動作によるハンドシグナルを教えておく必要があります。またたとえ耳が不自由でなくても、非常にうるさい交通騒音の中で犬の注意を自分に向けたいことがあります。そういう状況でもハンドシグナルが必要になるでしょう。

犬の耳が不自由な場合

 先天的な疾患や老化などで犬の耳が不自由な場合、事前に決めておいたハンドシグナルを見せ、犬と目が合った瞬間におやつを与えてほめてあげます。こうすることで犬の中では「ハンドシグナル」という視覚的な情報とごほうびとがリンクしていきます。ハンドシグナルは生活の中で数千回~数万回も繰り返し用いるものです。行う飼い主が疲れず、なおかつ他の動作との紛れが少ないユニークなものを選ぶのがよいでしょう。例えば目と目の間に人差し指を置くなどです。 【画像の元動画】3 Things Your Dog MUST Know to Walk Nicely on Leash ハンドシグナルという視覚的情報とごほうびを犬の頭の中でリンクする  次に犬と2mぐらいの距離を置き、ハンドシグナルを見せてみます。犬がごほうびを期待して足元に近づいてきたらおやつ与えてほめてあげましょう。こうすることで犬の中では「飼い主に近づく」という行動とごほうびとがリンクしていきます。

犬の耳が不自由でない場合

 犬の耳が不自由でない場合は、まず「場所を変えて名前を呼ぶ」までの各ステップをマスターさせておきます。犬の中ではすでに「名前を呼ばれて飼い主と目が合って足元に近づくといいことがある」という記憶ができていまので、後は「ハンドシグナル」という視覚的な情報と「名前」という聴覚的な情報を結びつけるだけです。
 具体的には、犬の名前を呼ぶ直前に事前に決めておいたハンドシグナルを見せてあげます。例えば目と目の間に人差し指を置くなどです。タイミングは名前と同時ではなく「ハンドシグナル→名前」という順序で行って下さい。犬がアイコンタクトをとって足元に近づいてきたらおやつ与えてほめてあげます。 【画像の元動画】How to Teach ANY Dog to Walk Nicely on Leash! ハンドシグナルという視覚的情報を名前という聴覚的情報リンクする  犬が慣れてきたら、名前を呼ぶ時の声のボリュームを少しずつ下げていきましょう。いきなりささやき声にしてしまうと犬が何をしていいのかわからなくなりますので、あくまでも少しずつ声量を下げてください。最終的な目標は、名前を呼ばなくてもハンドシグナルを見ただけで犬がアイコンタクトを取り自分の足元に近づいてきてくれることです。こうした練習を事前に積んでおくと、ひどい騒音で飼い主の声が全く聞こえないような状況においても、ハンドシグナルを見せることで犬の注意を自分に向け、足元に引き寄せることができるようになります。

ごほうびを徐々に減らす

 犬の名前を呼んで足元に引き寄せるという行為は、犬との暮らしの中で数千回も数万回も行うものです。そのたびごとにおやつを与えていたら、犬が肥満に陥って不健康になってしまいます。ですから飼い主は「おやつ」というごほうびから「ほめる」というごほうびに緩やかにシフトしていかなければなりません。
 練習している最中は、犬がうまく出来るごとにおやつ与えて構いません。犬がアイコンタクトを覚え、確実にそばに近寄ってきてくれるようになったら、おやつを与える回数を「2回に1回→ 3回に1回→ 4回に1回・・・」といった具合に徐々に減らしていきます。最終的には「いいこ」などの褒め言葉だけで済ませるようにしましょう。ただし間欠強化の原理で犬の行動を強化するため、犬の大好きなとっておきのおやつをたまにランダムで与えるようにします。そうすることで犬は、まるで万馬券を当てた人のようにその行為に病み付きになり、いい意味でやめられなくなります。

アイコンタクト(おいで・来い)Q & A

 以下は犬のアイコンタクト(おいで・来い)についてよく聞かれる疑問や質問の一覧リストです。思い当たるものがあったら読んでみてください。何かしら解決のヒントがあるはずです。

しつけはいつから始めるのが良い?

散歩デビューする生後14週齢までにマスターしたいものです。

 多くの場合、ワクチン接種が終わって屋外で散歩ができるようになるのは生後14週齢以降です。それまでにはアイコンタクトおよびおいでのしつけを確実にマスターさせておきたいものです。
 しかしいきなり犬にリードをつけて屋外に出るのは大変危険ですので、アイコンタクトの練習環境を外に移す際は、室内での練習や室内でのリーダーウォークのしつけを確実に終わらせてからにします。 犬のリーダーウォークのしつけ

名前を呼んでも犬が来ません

家族間における指示語を統一しましょう。

 犬の名前(例えばジョン)の後に「おいで」という言葉を付け足したり、「ジョン!おいジョン!」などと名前を連呼する人がいますが、犬からすると「ジョン」がごほうびの合図なのか、それとも「ジョンオイデ」までがごほうびの合図なのかが分かりません。その結果、「ジョン」という呼びかけに応えなくなる可能性があります。犬の混乱を避けるため、名前だけを呼んだほうがわかりやすいでしょう。
 家族に飼われているなど犬が複数人と接するような状況においては、しつけに入る前にいったん家族会議を開き、指示語(この場合は名前)を統一して余計な言葉を付け足さないよう方針を一貫させておく必要があります。
 ただ単に犬の注意を引きたいときは、口笛、キッシングノイズ(口をすぼめて出すチュッチュッという音)、舌を鳴らすなど、名前とは全く別の音を用いるようにしてください。

アイコンタクトが苦手な犬はいる?

います。

 社会化期において人間と接する機会が少なかった犬においては警戒心が残り、他の犬や他の動物の目を凝視することを本能的に避けてしまうことがあります(視線嫌悪)。
 また日本の東京大学が行った遺伝子解析では、系統分岐的にオオカミに近い古代犬種(アフガンハウンド | 秋田犬 | サルーキ | 柴犬 | シベリアンハスキー)ほどアイコンタクトが苦手という結果が報告されています。さらにハンガリーにあるエトヴェシュ・ロラーンド大学が行った行動調査では、「協調的な犬種」「ミックス種」「社会性」「年齢」「短頭種」といった犬の属性がアイコンタクトの能力に影響を及ぼす可能性が示されています。
 遺伝的にオオカミに近く、社会性が低く、年齢が高く、長頭種の犬の場合、アイコンタクトをマスターするまでに平均よりも多くの時間と労力を必要とするかもしれません。 遺伝的に狼に近い犬種はアイコンタクトが苦手 アイコンタクトが得意な犬の特徴は?

急にできなくなりました…

名前を呼んだ後に不愉快な刺激は与えないでください。

 犬の名前を呼んだ後は、必ず犬にとって愉快な強化刺激が来なければなりません。名前を呼んだ後に叱りつけたり食べかけのエサを取り上げたりすると「名前を呼ばれると嫌なことがある!」と学習してしまい、せっかく覚えたしつけの内容がチャラになってしまいます。
 「犬が急に来なくなった」「逃げるようになった」「名前を呼ぶと後ずさりする」という話をよく聞きますが、原因の多くは上記したような名前の誤用です。そういう場合は潔く今まで使っていた犬の名前を放棄し、まったく別の名前をつけてしまいましょう。例えば今まで「ジョン」だったのを「ヘンリー」にするなどです。今後はまったく新しい音とごほうびとを犬の頭の中で再リンクしていく必要があります。
2022年に発表された調査では、犬のアイコンタクトの持続時間が認知症の度合いと連動している可能性が示されています。定期的に測定すると早期発見に役立つかもしれません。 アイコンタクトに現れる犬の認知症サイン