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犬のトイレの失敗をしつけ直す

 犬が教えたとおりにトイレをしてくれなかったり、今までうまくできていたのに急に失敗するようになると、飼い主としてはちょっと心配になりますよね。やみくもに叱ってもほとんど効果はありませんので、まずは原因を把握してそれに合わせた対策を考えていきましょう。

犬のトイレの失敗について

 犬のトイレの失敗(粗相)とは、今まで指定のトイレでおしっこやうんちをできていたものが、急にできなくなることです。 粗相とは一度マスターしたはずのおしっこやうんちを失敗してしまうこと  犬のトイレの失敗の原因としては、主に以下のようなものがあります。原因がわかっていないのに「コラッ!」と怒鳴りつけても、効果がないばかりか逆に粗相が悪化してしまう危険性があるため絶対にやってはいけません。
犬のトイレの失敗・原因
  • しつけ不足
  • 病気・怪我
  • トイレが気に食わない
  • 服従行動の一環として
  • 強い恐怖心
  • 過剰な興奮
  • 分離不安
  • マーキング
  • 関心を得るため
  • トイレの中での不快な体験
  • 高齢・老衰・認知症
 犬が粗相をしてしまう理由は様々で、状況や家庭によって少しずつ異なります。犬がどのパターンに当てはまるのかを見極めて適切な対策を練りましょう。
NEXT:よくない対処法

トイレの失敗・よくない対処法

 しつけに入る前に、まずやってはいけない対処法を知っておく必要があります。これは粗相の原因に関わらず、全ての状況において共通です。

粗相した犬を叱る

犬がおしっこやウンチの失敗をしても叱らないのが原則  トイレの失敗をした犬を叱るのはNGです。
 たとえばじゅうたんの上でおしっこをしている子犬に駆け寄り、「ダメッ!」と大声で叱ったとしましょう。すると子犬は「おしっこすると叱られる!」という具合に、場所ではなく排泄行為そのものと罰とを結び付けて覚えてしまうのです。その結果、飼い主に隠れておしっこやうんちをするようになり、トイレの失敗が増えるばかりでなく、最悪のケースでは証拠隠滅のためにうんちを食べてしまうかもしれません。これが「食糞症」です。
 このように、トイレの失敗をした犬を叱ることで改善にはつながりませんので、やってはいけない禁忌(きんき)となります。

粗相した犬に大声を出す

犬がおしっこやウンチの失敗をしても騒がないのが原則  トイレの失敗をした犬に向かって大声を出すのはNGです。
 たとえばじゅうたんの上でおしっこをしている子犬に駆け寄り、「あ~あ~!」と大声を出して嘆いたとします。すると子犬は「おしっこをすると構ってもらえる!」という具合に、排泄行為と飼い主の関心というごほうびを結びつけて覚えてしまうのです。その結果、退屈しのぎや寂しいときなど、飼い主の気を引くためわざとトイレ以外の場所で排泄をしてしまうかもしれません。
 犬のしつけの基本理論で詳しく解説したように、飼い主が注目して構ってあげること自体が、犬にとっての報酬になります。ですから、望ましくない方向に犬の行動を仕向けないよう、不用意な歓声(きゃ~!)、嘆息(あ~あ)、駆け寄り等の行動は、極力慎むようにします。

粗相した場所に鼻を押し付ける

 トイレを失敗した現場へ犬を連れて行き、排泄物に鼻を押し付けるという行為はNGです。
 日本国内では数十年前から、上記したような都市伝説的なトイレトレーニングが横行しており、ひどいときはペットシーツのパッケージに、「正しいしつけ方」と称してプリントされていた時期もあるようです。
 しかし犬の短期記憶能力回想能力でも詳しく解説したとおり、犬は数分前の出来事と現在与えられている罰の因果関係を結びつけることができません。また、仮に現行犯でつかまえたとしても、排泄物に鼻をくっつけるという行為自体が、犬にとっての罰になっていない可能性もあります。なぜなら、排泄物に鼻を近づけてクンクン嗅ぐことは、犬の生理的な行動の一つだからです。
 つまり「排泄物に鼻を押し付ける」という行為には全く意味が無いばかりか、下手をすると犬と飼い主の信頼関係を損なう危険性があるわけです。最近ではこうしたしつけ方を書籍の中で見ることはほとんどありませんが、万が一、伝言ゲーム的にこうした噂を聞いたことのある人は、安易な情報に流されないよう注意しましょう。
NEXT:しつけの実践

犬のトイレの失敗をしつけ直す・実践

しつけ不足でトイレを失敗する

 生後間もない子犬や、家について間もない成犬が粗相をしてしまった場合、それはおそらくただ単にトイレの位置を知らないだけです。「しつけ直す」前に「しつける」必要性があるため、以下のページを参考にして、まずは犬にトイレの位置を教え込みましょう。 犬のトイレのしつけ  また、床の匂いをかいだあとにおしっこをする場合は、そこに自分、もしくは同居犬のおしっこやうんちのにおいが残っている可能性があります。犬は前にトイレとして使ったのと同じ場所を再利用する習性がありますので、突き詰めて考えるとこれは飼い主の側の対応不足が粗相の一因です。ペット用の臭い消しなどを用いて、部屋の中からなるべく排泄の痕跡をなくすように努めましょう。 犬の消臭・衛生グッズ

病気や怪我でトイレを失敗する

 病気や怪我が原因でトイレの失敗をしてしまうことがあります。
 おしっこの回数や尿の量が異常に増える病気がありますので、尿道から出した排出物を参考にしながら、まずは可能性のある疾病を考慮します。よくあるのは膀胱炎などです。
 また、関節炎捻挫脱臼骨折などによる痛みが原因で、指定のトイレまで移動できないという可能性もあります。
 いずれにしても、まずは獣医さんの診察を受け、病気や怪我の治療することが最優先です。

トイレが気に食わないため失敗する

 トイレの微妙な変化が気に食わず、別の場所で排泄をしてしまうことがあります。
 たとえばトイレの近くにカサカサ音のなる上着など、犬が怖がるようなものがあったり、エアコンの風が微妙に当たるなど、人間からするとどうでもよい些細なものが、犬にとっての脅威になることがあります。犬の恐れを参考にしながら、犬に違和感を与えるような変化が無かったかどうかを確認してみましょう。
 また、引っ越しで家の様子ががらりと変わったときなども、トイレの失敗を誘発することがあります。この場合は、トイレの場所や取り囲む雰囲気を、なるべく前の家のものと近づけるようにしてみましょう。それでもだめな場合は、犬のトイレのしつけを参照しつつ、1からトイレトレーニングを再開します。
 なお、ただ単にトイレが汚いことが原因のこともあります。その場合、こまめにトイレを掃除して清潔を保つことが解決策であることは、言うまでもありません。
素材嗜好性
 素材嗜好性(そざいしこうせい)とは、排泄するときの足元の状態に対する好みのことです。
 子犬は3~5週齢までに排便反射を発達させ、母犬の刺激がなくても排泄ができるようになります。その後7.5~8.5週齢ごろから上記「素材嗜好性」を発達させるようになり、ある特定の素材や場所でのみ排泄をするように学習します。
 ペットシーツを急に新聞紙に変えたり、部屋の隅にあったトイレを逆側に移動したりすると、犬目線から見るとなんとなく気に食わず、結果としてトイレの失敗をしてしまうという訳です。

服従行動でおもらしする

 子犬、メス犬、自信のない犬、虐待経験のある犬などは、服従行動の一部としておもらししてしまうということがあります。
 服従行動(ふくじゅうこうどう)とは、優位とみなしている人や犬に対し、「自分はか弱い子犬です!どうか傷つけないでください…」とアピールすることです。具体的にはしっぽを足の間に挟んで仰向けになり、耳を下げて視線をそらしたりします。さらにエスカレートするとその体勢のままチョロッと少量のおしっこを出してしまいます。これは子犬が母犬に対して見せるしぐさそのものです。
 「反省の印」と解釈している人もいますが、どちらかといえば優位にある犬や飼い主のご機嫌を取ろうとするための行動ですので、あえて表現するならゴマすりションとなるでしょう。 服従行動を取った犬の典型的な姿勢~おしっこを伴うこともある  根本的に解決するためには、行動療法が効果的です。具体的にはペット用のオムツなどを一時的に装着し、犬に向かって手を伸ばす、目を見つめるなど、犬の服従行動をあえて誘発してみます。もし犬が服従行動を取ったら、その瞬間犬を放置して完全に無視しましょう。服従姿勢をとることと無視されるという精神的な罰が結びつき、徐々に仰向けにならなくなったら大成功です。この手順を繰り返し、だんだんとオムツをはずした状態に移行していきます。
 上記した方法がうまくいかない場合は「カウンターコマンディング」を試してみるのも良いでしょう。カウンターコマンディングとは両立できない行動をとらせることにより一方の行動を打ち消してしまうことです。例えば「仰向けになる」という行動と「お座りする」という行動を同時に行うことはできません。犬が何らかのきっかけで服従姿勢をとっておしっこをしそうになる直前、「お座り」と命じてみましょう。服従姿勢が中断されその結果としてのごますりションもなくなります。 犬のオスワリのしつけ  なお、もし犬の服従行動を誘発するのが「ベルトを犬に向かって振り上げる」など、かなり限定的な行動である場合は、そうした行動を犬の前で見せないという単純な心がけだけでも十分防止できます。当然のことながら、「怒鳴る」「叩く」「蹴る」といった体罰を飼い主がやってはいけませんし、「しつけ」と称して体罰を用いているドッグトレーナーも頼ってはいけません。犬が反省しているような顔を見せることがありますが、実際は反省しているのではなく恐怖を感じて縮こまっているだけです。

強い恐怖心でおもらしする

 強い恐怖心がおもらしを引き起こすことがあります。
 おしっこをもらしたときは尿失禁(にょうしっきん)、そしてうんちをもらしたときは遺糞症(いふんしょう)などと呼ばれます。いずれにしても、服従によるお漏らしとは違い、爆発的で大量であること、そして震える、尻込みする、耳を下げるなど、恐怖に伴う他のサインが見られることが特徴です。 恐怖心に駆られた犬の典型的な姿勢  解決策はまず、恐怖の対象を排除することです。犬の恐れを参考にしながら、一体何が犬の恐怖心をあおっているのかを探ってみます。人間には思いもよらないものが、犬にとっては脅威の対象となることもありますので要注意です。
 根本的な解決策は恐怖に対する脱感作(だつかんさ)です。脱感作とは、犬を激しく動揺させる刺激を、弱いものから段階的に強めていき、徐々に慣らしていくという手法のことです。特に雷を始めとする音の恐怖症に対する効果が認められており、うまくいけば恐怖による失禁等を予防することができます。「犬をいろいろな音に慣らす」を参考にしながら少しずつ犬を慣らしてみて下さい。
 なお当然のことながら、犬を叩いたり蹴飛ばしたりするといった体罰を行っている場合、人間の存在自体が恐怖の対象になります。飼い主がやってはいけませんし、「しつけ」と称して体罰を用いているドッグトレーナーも頼ってはいけません。犬をいろいろな音に慣らす

過剰な興奮でおもらしする

過剰な興奮が原因のうれしょん  興奮しすぎた犬が、勢い余っておもらししてしまうというパターンもあります。
 いわゆるうれション(英語:Excitement Pee)というやつですが、防止するためにはまず犬のストレスを溜めないことが重要です。具体的には犬の欲求を参考にしながら、犬がもっている生理的な欲求や行動欲求を理解し、何か足りないものは無いかどうか確認します。もし犬に対する配慮が足りず、何らかの欲求不満が前提としてある場合は、その欲求が満たされた瞬間の興奮がうれションになりやすくなります。たとえば、8時間留守番させられた後、飼い主がやっと帰ってきたという状況などです。
 食べる、飲む、最適な温度調整をするといった基本部分はもちろんのこと、探索する、追いかける、遊ぶ、触れ合うといった行動欲求をなるべく満足させるような生活習慣に切り替えてみましょう。具体的には、1日2食を3食に切り替えてみたり、出かける前に十分な量の散歩とスキンシップを図る、などです。こまめに犬の欲求をガス抜きしておけば、特定の状況における爆発的な興奮を抑えることができ、これがうれション防止になります。 犬の本能的な欲求を知り不満を解消する方法

分離不安でトイレを失敗する

分離不安が原因のトイレの失敗  愛着を抱いている人と別離状態にあることが、トイレの失敗の原因となることもあります。
 飼い主など、慣れ親しんだ人と離ればなれになったとき、異常に不安を覚える状態を分離不安(ぶんりふあん)といいます。飼い主が家にいるときは決してしないにもかかわらず、特定の人物が家にいないときだけ粗相をしてしまうような場合は、この分離不安がトイレの失敗を誘発していると考えられます。
 その場合、トイレのしつけをしても意味はなく、不安を解消してあげることが根本的な解決となります。具体的には犬の欲求を読んで分離不安を軽減したり、あるいは留守番のしつけで独りでいることに対する拮抗条件付け(苦痛の元を逆に快感の元に転換すること)を施すことが一助になるでしょう。分離不安に関しては「犬の留守番のしつけ」でも詳しく解説してありますのでご参照下さい。犬の留守番のしつけ

マーキングでおもらしする

オス犬・メス犬のマーキング  同性や異性に対するマーキングもまた、一種のトイレの失敗です。
 オス犬の場合、去勢を施していない個体に多く、ほとんどの場合は後足を上げて行います。去勢によって頻度は約1/3に減少するとも言われますが、マーキング行為が完全にはなくならないことから考え、ホルモンのほか、社会的要因や学習の関与を原因として指摘している研究者もいます。マーキングの意味としては、他のオス犬に対する優位性アピール、発情期のメスに対するセックスアピール、縄張りの主張、そして見知らぬ人や犬に対するカーミングシグナルなどが考えられます。 オス犬の去勢手術 足を上げておしっこをする
去勢とマーキング  B.ハートらの研究グループは、オス犬の去勢手術によって50%(10頭中5頭)の割合で尿マーキングが減少したと報告しています。うち1頭は2週間以内、残りの4頭は半年後に変化が見られたとのこと。また、去勢時の犬の年齢と効果との間に相関はなかったそうです。
 マーキングは、実はメス犬にも見られる行為です。メス犬の場合は後足を上げてするほか、しゃがみこんでおしっこをする場合もあります。メス犬がマーキングする意味は、他のメス犬に対する優位性アピール、そしてオス犬に対する発情期アピールなどです。メス犬のマーキングは発情期が過ぎると自然と収まりますので、あまり気にする必要はありません。 犬の交配  オス犬にしてもメス犬にしても、おしっこをしようと後足を上げたりしゃがみこんだ瞬間、水鉄砲などで驚かすという方法があります。罰を用いた弱化の一種ですが、タイミングさえ間違わなければ、うまくマーキングを予防できる可能性があります。ただし犬を驚かせるのは、犬が指定トイレ以外でおしっこをしようとしている瞬間だけにしてください。行動をうまく中断できたら本来のトイレに誘導してあげましょう。
 その他の方法としては、壁(ウォール)つきの大きめなトイレを用意するとか、犬がマーキングしそうな柱や壁のへりにあらかじめペットシーツを貼り付けておくといったものがあります。

関心を得るためトイレを失敗する

 飼い主の注意を引くためにわざとトイレの失敗をする犬がいます。
 たとえば、「しゃがみこんだら飼い主がやってきて外に連れ出してくれた」という記憶をもっている犬などは、外に行きたいがためにわざとおしっこをトイレ以外の場所ですることがあります。これは一例ですが、「トイレ以外の場所で排泄すること」と「飼い主の関心」という精神的ごほうびを結び付けて学習してしまっている犬の場合、わざと粗相をするというパターンがありうるわけです。
 解決策は、学習の消去です。つまり、粗相と飼い主の関心というリンクを断ち切ってしまうのです。具体的には、排泄行為に対して怒りたい気持ちをこらえ、じっと無視します。その後、犬が排泄場所から遠のいた瞬間を見計らって排泄物の処理をしましょう。
 逆に指定のトイレで排泄できた場合は、おやつを与えたりおもちゃで遊んであげるなどしてうんとごほうびを与えます。こうした態度を家族全員が一貫して根気よく行うことにより、犬は自分にとってどちらが得策かを自然と理解していくはずです。多少時間がかかりますが、ここは飼い主と犬との根競べと思って我慢しましょう。
トイレの失敗・正しい対処  もし犬がトイレ以外の場所に粗相をしてしまったら、しばらく時間を置き、犬をその場所から隔離(かくり)します。飼い主の姿が犬から見られない状況になったら、汚れた場所をタオルやペットシーツなど吸水性のあるもので拭いたり、うんちを取り除くなどします。そして忘れずに、その場所に消臭スプレーを掛けておきましょう。なぜなら犬は自分のおしっこやうんちの匂いのある場所に、再び用を足そうとする習性があるからです。この対処法は、家族全員が統一して行うようにします。
 また、犬が粗相を通して飼い主に求めているものが何なのかを考えてみることも重要です。散歩、遊び、新しいおもちゃ、他の犬とのふれあいなど、犬の欲求の中で満たされていないものがあると、その欲求不満の表明として粗相をすることがあります。下記リンク「犬の欲求」を参考にしながら、犬にストレスを与えていないかどうかを見直してみましょう。 犬の本能的な欲求を知り不満を解消する方法

トイレの中での不快な体験

 トイレの中での不快な体験がきっかけとなってトイレの失敗をするようになる犬がいます。
 不快な体験とは、例えばトイレを使っているときに火災報知器が鳴ってけたたましい音が部屋中に鳴り響いたとか、キッチンでお皿を落として「ガチャン!」と大きな音が鳴ったとか、うんちをしているときに子供がふざけて後ろから「ワッ!」と驚かせたなどです。こうした意図的もしくは偶発的なできごとを体験した犬は、「トイレ」という場所と不快感をリンクしてしまい「トイレは怖い!」と思うようになってしまいます。人間でも、トイレに入っているときに大きな地震が来て怖い思いをしたら、同じトイレを使うのが何となく嫌になりますが、だいたい同じようなものです。
 犬がトイレの失敗をするようになった直前、「不快な体験」に相当するような出来事がなかったかどうかを確かめてみましょう。もしあった場合は、トイレのしつけを一からリスタートする必要があります。それでもうまくいかない場合は、トイレトレー、トイレシーツ、トイレの場所を変え、不快感とリンクしている古いトイレのセッティングをすべてリセットしてしまいます。 犬のトイレのしつけ

避妊手術後にちょろっと漏れる

 メス犬の避妊手術が尿もれの原因になることがあります。歩いているだけでちょろっとおしっこが出てしまうこうした尿失禁は「尿道括約筋機能性尿失禁」(Urethral sphincter mechanism incompetence, USMI)と呼ばれます。
 おしっこの通り道を調整している尿道括約筋が機能不全に陥り、排尿を自律制御できなくなった状態のことですが、発症メカニズムに関してはよくわかっていません。尿失禁を発症するのは、一般的に手術の直後ではなく、子宮卵巣切除術から2~4年経ってからの方が多いといいます。量が多い場合はおむつやマナーパンツで対策を施したほうがよいかもしれません。
 成長した時の体重が25kg超になることが予想される中~大型犬に関しては、避妊手術を施すタイミングが尿失禁のリスクになりうるため注意が必要です。具体的には 早ければ早いほどリスクが低下するという関係性が指摘されています。詳しくは以下のページをご参照ください。 避妊手術後のメス犬で見られる尿失禁の原因

車の中でおもらしをする

 犬を車に乗せることが粗相の原因になることがあります。乗車前にしっかりとトイレを済ませておけば失敗の確率はぐんと減るでしょう。
 お漏らしの原因か慣れないドライブによる恐怖心や不安感である場合、日頃から車に乗せる訓練を行っておけば軽減することができます。
 犬を旅行に連れていくシチュエーションなど、長時間のドライブが必要でクレートに閉じ込めておくのが現実的でない場合もあるでしょう。そんな時はあらかじめ車の座席に使い捨てのタオルや防水シートを敷いておきます。またこまめに休憩を取って膀胱に溜まったおしっこを車の外で出してあげることも重要です。
 犬を車に乗せるしつけ方や、ドライブするときの注意点に関しては以下のページで詳しく解説してありますのでご参照ください。 犬と車に乗るときの安全ガイド

冬になると失敗が増える

 冬になって気温が下がると突然おしっこの失敗が増える犬がいます。人間と同じようにおしっこが近くなるとか、トイレの置いてある場所が寒いので行きたくないというのが主な原因です。また庭をトイレにしている場合、寒い屋外に出たくないのは当たり前です。こうした様々な状況が重なると、冬にだけ粗相の回数が増えるという現象が起こってしまいます。
 対策は部屋の中を暖かく温かくして、トイレのある付近まで温風が行き渡るようにすることです。人間で言う「便座を温める」のと同じですね。冬場にトイレに行くときの憂うつ感がそれだけでなくなってくれます。

老齢でトイレを失敗する

 老齢が原因でトイレを失敗することがよくあります。
 ご自分の飼われている犬が高齢になり、今までトイレに失敗することがなかったのにいきなり失敗の回数が増えてきたという場合は老化によるトイレの失敗とお考え下さい。「老境」の目安は小型犬なら9~13歳、中型犬なら9~11歳、大型犬なら7~10歳、超大型犬なら6~9歳です。
老犬がトイレの失敗をした場合は、まず真っ先に老化による記憶力の低下や痴呆の可能性を考慮します。  犬のトイレの失敗の原因が老化である場合、飼い主の側では以下のように対応します。まず、家を汚された生理的な不快感から、どうしても感情的になって犬を叱りたくなりますが、犬が嫌がらせでわざとやっているわけではないのでむやみに怒らずじっと我慢してあげましょう。学校で一番の成績をとりたくて頑張ったのに、思い通りの点数が取れないときもあるでしょう。そんな時に親から「どうして一番取れないの!ちゃんと勉強したの?!」と叱られたら切ないですよね?それと同じです。
 次に犬用のおむつを用意します。老化に伴って犬の膀胱(ぼうこう=おしっこをためておく体内の袋)は小さくなってたくさんのおしっこをためることができなるなってきます。また神経系の機能も低下しますので、「おしっこがたまった→おしっこを出せ」という指令が、脳と体の間ををうまく伝達しなくなっていきます。そうした理由によっておしっこをもらしてしまうことがありますので、犬用のおむつで粗相(そそう)を防止してあげましょう。詳しくは犬の認知症と問題行動でも解説してありますので、あわせてご参照ください。 犬の医療・介護グッズ NEXT:染みの掃除方法

おしっこ染みの掃除方法

 犬がおしっこの失敗をして部屋の中を汚してしまった時は、同じ場所で粗相をしてしまわないよう、きっちりと掃除をする必要があります。掃除する時のポイントは水分を拭き取ること、汚れ(着色)を取ること、そして臭いを消すことです。

おしっこの水分を取る

 犬が粗相をしたらなるべく素早くおしっこの水分を拭き取る必要があります。吸水性の高いキッチンペーパー、吸水タオルなどを使って出来る限り吸い取ってしまいましょう。
 繊維質のものに染み込んだ水分は重曹の粉をふりかけて吸い取らせるという方法もあります。またカーペットや絨毯の場合、水を吹きかけて汚れごと吸い取ってしまう「水掃除機」も有効です。

おしっこの汚れを取る

 汚れや着色を取る際は重曹、セスキ炭酸ソーダ、クエン酸などを用います。重曹スプレーやシミ抜きスプレーなどが市販されていますので活用しましょう。
 またペット用の消臭スプレーには多くの場合、塩素系漂白剤の主成分である次亜塩素酸が含まれていますので、除菌とともに多少の漂白効果が期待できます。色落ちが心配な場合は酸素系漂白剤である過酸化水素や過炭酸ナトリウムのほうが適していることもあります。
 シミ取り剤は自分で作ることもできます。使う材料はお湯(200cc)、食塩(スプーン1杯程度)、食器用洗剤(スプーン1杯程度)、消毒用アルコール(スプーン2杯程度)、ホワイトビネガー(50cc程度)です。上記材料をよくかき混ぜたらカーペットのシミ部分に染み込ませます。汚れが浮き上がったらきれいなタオルやスポンジでゴシゴシこすりましょう。 自作のシミ取り剤をカーペットの汚れに浸して汚れを浮かせる  ある程度汚れが落ちたら「重曹」(ベーキングソーダ)を軽くふりかけて水分を吸収させます。この間犬が近づかないようカバーなどをかけておいて下さい。水分が飛んだら重曹を掃除機で吸い取って完了です。ビネガーの匂いが残ってしまいますので、面倒でも重曹を使って水気と臭いを飛ばしたほうがよいと思います。 重曹に余分な水分と臭いを吸い込ませたら掃除機できれいに吸い取る
🚨危険なシミ取り剤  カーペットのシミを取る際は歯磨き粉やエッセンシャルオイルを使わないで下さい。犬が誤ってなめたり、足の裏に付いた成分を舐め取ってしまうと思わぬ体調不良を引き起こしてしまう危険性があります。

おしっこの臭いを取る

 おしっこの臭いを取ることは、同じ場所で粗相させないためにとても重要です。基本的には、臭いの元となる成分と消臭成分とが反応し、嗅覚を刺激しない全く別の成分に変えてしまうというものを選ぶようにします。
 ペット用ではない臭い消しの中には、ただ単に別の匂いでおしっこ臭を覆い隠してしまうだけのものもありますので要注意です。汗の匂いを香水で強引に隠した時のように、部屋の中が悪臭で満たされてしまいます。

場所別おしっこの掃除方法

 場所別の掃除の方法を簡単にご紹介します。吸水性の高い紙やタオル、粉末状の重曹、ペット用の除菌消臭スプレーは常に用意しておきます。

フローリング・床

✓掃除難易度:簡単
 犬が粗相した場所が防水性の高いリビングのフローリングや床である場合、速やかにおしっこを拭き取ってその場所を消臭します。多くの場合、臭いも汚れも残りません。ただし目地の部分に液体成分が残りやすいので、歯ブラシなどでしっかり擦り落とすようにします。

カーペット・絨毯

✓掃除難易度:中~難
 犬の粗相をした場所が吸水性の高いカーペットや絨毯である場合、おしっこを拭き取るだけでは不十分です。その場所に重曹の粉などをふりかけ繊維の中に染み込んだ水分を吸収させます。1~2時間して水分が重曹に移ったら取り除き、掃除機で綺麗に吸い取ってしまいましょう。なお粉は多少の水分を含んでいますので、掃除機のゴミ収集パックは一杯になっていなくても交換した方が安全です。そのまま放置すると悪臭や虫の原因になってしまいます。
 カーペットや絨毯に関しては水を吹きかけて汚れを落とす「水掃除機」を利用するという手もあります。
 カーペットや絨毯から水分と汚れがある程度取れたら、その場所にペット用消臭スプレーを吹きかけて除菌・消臭します。次亜塩素酸による色落ちが心配な場合は、事前に人目につかない場所にかけてテストしておきましょう。
 タイルカーペットの場合、1枚400~500円ですので、いっそのこと汚れた部分を交換してしまった方が良いかもしれません。

柱・壁

✓掃除難易度:中~難
 犬が粗相した場所が柱や壁などの木材の場合、すばやく掃除しなければなりません。
 手早く水分を拭き取って除菌消臭すれば汚れも臭いも残りませんが、粗相から時間が経ってしまうとおしっこの成分が木の繊維の中に染み込み、物理的に到達できないエリアに入り込んでしまいます。こうなると木を削り取るしかありません。
 犬がマーキングしやすい室内のコーナー部分には、あらかじめペットシーツを貼り付けておくといった対策が効果的です。

✓掃除難易度:難
 犬の粗相をした場所が畳の場合、水分や汚れを取ることも、臭いを取ることもかなり困難です。い草の隙間に染み込んだおしっこは物理的に除去することが難しいため、何よりも予防が重要となります。
 基本的にはカーペットや絨毯と同じ手順で掃除しますが、ある程度臭いが残ってしまうことは覚悟しなければなりません。
 予防策としては犬が和室に入れないようにするだとか、あらかじめ防水シートを敷いておくといった対策が効果的です。

ベッド・ソファ・布団

✓掃除難易度:難
 犬が粗相した場所が繊維製の寝具である場合、交換可能な部分は交換してしまいます。ベッドであればシーツ、ソファーであればクッションや座布団、布団であれば布団カバー、こたつであればこたつカバーなどです。
 捨てるのがもったいないという場合は、臭いが完全に消えるまで洗濯を繰り返します。一旦つけ置き洗いをして汚れや臭いがある程度取れてから洗濯機に入れるという手順でも良いでしょう。
 交換できない部分の繊維に染み込んだ水分は、タオルなどでおしっこを吸い取った後、重曹の粉末をかけて吸い取らせましょう。水分が取れたらペット用消臭スプレーで除菌・消臭します。
 寝具は総入れ替えするのが難しい場所ですので予防が大事です。寝室を立ち入り禁止にしたり、あらかじめ防水シートを敷くなどの対策が効果的です。
一度粗相が治っても、全く別の理由でぶり返してしまうことがあります。「しつけ直しの実践」を繰り返し読み、思い当たるフシがないかどうかをチェックしましょう。