トップ犬のしつけ方屋外で必要となるしつけ犬のお座りのしつけ

犬のお座りのしつけ

 お座りとは、飼い主が命令すると犬が腰を落として動かなくなる状態のことです。このしつけは犬の突発的な動きを防ぐブレーキであると同時に、いろいろな問題行動を予防してくれる見えない引き綱でもありますので、すべての飼い主が日常的に犬に教えておく必要があります。

お座りのしつけの必要性

 「お座り」とは、飼い主の指示を受けた犬がいつでもどこでも後ろ足をたたんで腰を下ろした状態になることです。
 お座りのしつけには犬の突発的な動きを抑制するブレーキとしての役割があります。例えば歩道を散歩中、向こうから歩いてきた初対面の犬に興奮し、駆け寄ってマウンティングをしかけてしまうかもしれません。あるいは公園を散歩中、目の前を横切った猫に興奮し、飼い主の制止を振り切って走り出してしまうかもしれません。そんな時、お座りのしつけができていれば後ろ足が折りたたまれてブレーキとなり、突発的な動きが取れなくなります。 「おすわり」の姿勢は犬の突発的な動きを抑制するブレーキ  またお座りには犬の問題行動を予防するという重要な役割があります。子犬とロープ遊びをしていると、興奮して飼い主の手を噛んでくることがあります。あるいは朝起きて犬とご対面すると、再会の喜びからテンションが上がって飼い主に飛びつき顔を舐めてくることがあります。さらに家の呼び鈴が鳴ると、犬が興奮してワンワンと吠えだし、ドアに向かって駆け寄っていくことがあります。
 こうしたあらゆる場面でお座りのしつけができていれば、犬の意識を「お座り」という指示語や行動に集中させ、興奮に任せてやろうとしていた今までの行動が自然と中断されます。「コラッ!」と大声を出すよりもはるかに効果的ですよね。
 このように犬のお座りには、犬の身の安全を守ると同時に、飼い主との共同生活でネックとなるさまざまな問題行動を予防するという重要な役割があるのです。それでは具体的に犬にお座りをしつける方法を見ていきましょう。
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犬のお座りのしつけ・基本方針

 お座りの訓練をするに際し、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
オスワリの言葉で犬が腰を落としてじっとしていること
してほしくない行動
オスワリの言葉をかけても犬が落ち着かずうろうろすること
 してほしい行動と快(ごほうび・強化刺激)、してほしくない行動と不快(おしおき・嫌悪刺激)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬にお座りをしつける場合を考えて見ましょう。
強化
「オスワリの言葉で犬が腰を落としてじっとしていた」瞬間に快を与える
弱化
「オスワリの言葉をかけても犬がうろうろした」瞬間に不快を与える
 犬のオスワリ(お座り)のしつけに際しては強化の方が効果的です。
 例えばお座りを指示したのに動こうとした犬の体を力ずくで抑えつけたとします。そうすると犬は「お座りを指示されると体を抑え込まれる!」と学習し、以後「オスワリ」という言葉を聞くたびに逃げていってしまうかもしれません。これでは、飼い主が目指していたこととは真逆ですね。ですからお座りをしつける際は、犬にとって心地よい刺激を提示することによって行動頻度を上げる正の強化を基本方針として行っていく必要があります。
NEXT:しつけの実践

犬のお座りのしつけ・実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずはしつけに入る前に「犬のしつけの基本理論」で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」「一つの刺激と快不快を混在させないこと」「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」を念頭においてください。まだマスターしていない方は以下のページを読んで「すべきこと」と「すべきでないこと」が何であるかを把握しておきます。 犬のしつけの基本

しつけの準備

 実際にお座りのしつけに入る前に、以下のような準備を終わらせておきましょう。

集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。しつけの前には窓を閉じて外からの音を遮断し、テレビやラジオは消しましょう。気が散るようなおもちゃなどは全て片付け、犬の意識が否応なく飼い主の方に向くように無味乾燥なトレーニング環境を作ってしまいます。また犬の足が滑ってしまわないよう、床にはカーペットやマットなどを敷いてください。
 犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよく練習を中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。

ごほうびを用意する

 犬をある特定の行動に対して積極的にさせるためには、何らかの快(強化刺激)を与える必要があります。以下は代表的な犬に対するごほうびです。
犬に対するごほうびいろいろ
  • おやつおやつをごほうびとして使う場合は犬がおいしいと感じるもの+カロリーの低いものを選ぶようにしましょう。与えるときは犬が満腹にならないよう、なるべく少量だけにします。
  • ほめる高い声で「よーし」や「いいこ」や「グッド」などの声をかけてあげます。言葉と同時に軽く一回なでてあげてもかまいません。ただしあまり激しくなで回してしまうと犬が興奮しすぎて集中力がなくなってしまうため、軽くにとどめておきます。
  • おもちゃおもちゃを選ぶときは、あらかじめ犬に何種類かのおもちゃを与えておいて一番のお気に入りを確かめておきます。ただし一度与えると回収するのが困難になるため、しつけセッションの最後に与えるようにします。

指示語を統一する

 犬が腰を落とした状態に仕向ける際には指示語が必要です。この指示語を統一しないと犬は混乱します。一家の中でお父さんは「スワレ!」、お母さんは「座りなさい!」、息子は「オスワリ!」、娘は「シットダウン!」だったら犬は大混乱で何をしてよいか分からなくなり、いじけてしまいます。このように指示する際に掛ける言葉は一つに絞ること、つまり「指示語を統一すること」は非常に重要なのです。
 指示語の候補としては、日本語では「オスワリ」、「スワレ」、英語では「Sit」(シット)などがあります。実際のしつけに入る前に必ず家族会議を開き、どれを用いるの決めておいてください。
実験神経症
 実験神経症(じっけんしんけいしょう)とは、両立しない2つの指示を出した際、犬が混乱をきたし、以後、学習した反応ができなくなってしまうことです。たとえば「シット」という言葉でオスワリを、「ダウン」という言葉でフセを学んだ犬に対し、「シットダウン」といった両立しないコマンドを同時に出してしまうと、両方の動作ができなくなってしまう危険性があります。こうした実験神経症が発生することを避ける意味でも、指示語の統一は重要です。

座る動作とごほうびをリンク

 犬と一緒にしつけエリアに入り、犬が容易に盗み食いできないよう指先でしっかりとごほうびを持ちます。犬の正面に立ち指先を犬の鼻の高さに掲げ、注意がしっかり向いてることを確認しましょう。リードにつなぐ必要はありません。 【画像の元動画】Teach a Puppy to Sit _ Teacher's Pet With Victoria Stilwellごほうびを指先に持って犬の注意を向けさせる  犬の意識を確認できたらゆっくりと指先を上に持ち上げ、腰が落ちるよう誘導してあげます。犬がおやつを食べようとして楽な姿勢を探し、自発的に腰を下ろしてくれたら成功です。そのタイミングで「いいこ」などと声をかけおやつを与えましょう。 おやつを犬の頭上に掲げると楽な姿勢を探して自発的にお座りの姿勢になる  終わったら新しいおやつを指先に持ち直し、少し場所を変えて犬のお座り姿勢をリセットします。犬がそっぽを向いているような場合は名前を呼ぶのではなく、口笛を吹いたり舌を鳴らすなどして注意をこちらに向けてください。犬の注意が向いたら再び正面に立ち、鼻先を指先で誘導して手を少しずつ上に移動し、犬の腰が自然に落ちるよう促します。後足を折りたたんで腰をおろしたらそのタイミングでおやつを与えてほめてあげましょう。 犬が後ろ足をたたんで腰を下ろした瞬間にごほうびを与える  犬がお座りの姿勢のままだったり寝そべってしまった場合は、名前を呼ぶのではなく、鼻先におやつを持っていって姿勢をリセットするよう誘導してあげます。
なぜ名前を呼ばない?
 犬の名前は「アイコンタクト取って足元に来る」という行為の指示語で、アイコンタクト(おいで)のしつけという別のページで解説してあります。お座りのしつけをしている最中に犬の名前を呼ぶと、アイコンタクト(おいで)のしつけとお座りのしつけがごちゃごちゃになり、犬が一体何に対してごほうびをもらってるのかが分からなくなってしまいます。ですから、ただ単に犬の気を引きたいときは名前とは全く無関係の音を出すようにしてください。
 指先を上げても犬がなかなかお座りの姿勢を取らないことがあります。よくあるのは、何とかおやつを食べようと手をベロベロ舐める、前足で腕を下げようとする、立ち上がってしまうなどです。しかし飼い主は犬からのこうしたプレッシャーに負けておやつを与えてはいけません。間違ったタイミングで与えてしまうと、「腕に前足をかけること」や「立ち上がること」という行動を強化することになり、いつまでたっても目標としているお座りができなくなってしまいます。 【画像の元動画】How to Teach your Puppy to Sit and Stay頭上のおやつを食べようとして犬は前足を出したり立ち上がったりする  犬がお座り以外のアクションを見せても決してあせらず、盗み食いされないようにじっと指先をホールドしましょう。犬はそのうち疲れてきますので、最も楽な姿勢を自発的に探しだします。座った姿勢が一番楽であると気づいた瞬間ごほうびを与え、ほめてあげましょう。これは「座る」という行為と強化刺激とを結びつけるオペラント条件付けです。
 鼻先においた指先を持ち上げたとき、お座りの姿勢を連続で5回取れるようになったら次のステップに進みます。

座る動作と指示語をリンク

 犬が「座るとごほうびをもらえる!」ことを学習したら、今度はその動作を事前に決めておいた指示語(言葉による合図)とリンクしましょう。ここでは「オスワリ」を例に取ります。
 犬の鼻先におやつをつまんだ手を持っていき、上に持ち上げてみましょう。犬が練習していた通り後ろ足をたたんで腰を下ろそうとした瞬間、「オスワリ」という言葉をかけ、実際に腰を下ろしたタイミングで「いいこ」などと言葉をかけておやつを与えましょう。終わったらいったん姿勢をリセットし、再び同じトレーニングを繰り返します。指示語を出すタイミングは「犬がお座りの姿勢を取ろうとした瞬間」であり、これより早すぎても遅すぎてもいけません。 【画像の元動画】How to Train a Dog to "sit"犬にお座りの指示語を出すタイミングは腰を下ろす寸前  5~10回ほどこのセッションを繰り返したら、今度は犬の鼻先に指先を持っていき、おやつを上に掲げる前に「オスワリ」という指示を出してみましょう。勘の良い犬の場合、もうこの時点で指示語を聞いただけで自発的にお座りの姿勢をとるようになります。お座りの姿勢を取った瞬間、ごほうびをあげてほめてあげましょう。犬が慣れてきたら、最終的にはおやつを手に持たない状態で「オスワリ」という指示を出してみます。犬が自発的にお座りしてくれたら大成功です。 動作の直前にオスワリという指示語を出すことによって聴覚的情報と動作を結びつけて学習してくれる  もしキョトンとしているような場合は、指示語と行動の結びつきがまだできていない証拠です。もう一度、「座るタイミングで指示語を出す」という練習を繰り返しましょう。

ハンドシグナルを教える

 犬の耳が不自由な場合、言葉による指示語は通じませんので動作によるハンドシグナル(ハンドサイン, ハンドジェスチャー)を教えておく必要があります。またたとえ耳が不自由でなくても、非常にうるさい交通騒音の中で犬の注意を自分に向けたいことがあります。そういう状況でもハンドシグナルが必要になるでしょう。

犬の耳が不自由な場合

 先天的な疾患や老化などで犬の耳が不自由な場合、座るという動作と何らかの視覚的なシグナルをリンクさせなければなりません。ここでは「腕を直角に曲げる」というジェスチャーを例に取ります。
 犬の鼻先におやつを持っていき、ゆっくりと持ち上げて犬が自発的に腰をおろすのを待ちます。お座りの姿勢を取れたらおやつ与えて軽くなでてあげましょう。ここまでは耳が聞こえる犬と同じ手順です。犬が手の動きに合わせてお座りの姿勢をとれるようになったら、手をちょっと持ち上げるだけでごほうびを予測し、自発的に腰を下ろすようになってきます。 【画像の元動画】How to Teach Your Dog to Sit _ Dog Training手を軽く持ち上げるだけで、犬はおやつをゲットするための行動を予測できるようになる  犬がこのレベルに達したら飼い主は、犬が手の動きを見て腰を下ろそうとした瞬間、事前に決めていたハンドシグナル「腕を直角に曲げる」を見せてみます。犬がお座りの姿勢を取ったらごほうびを与えて軽くなでてあげましょう。犬の中では「座る」という動作とハンドシグナルという視覚的な情報がだんだんと結び付いていきます。 犬が座る瞬間ハンドシグナルを見せる  5~10回ほど練習を繰り返したら、今度はおやつを手に持たない状態でハンドシグナルだけを見せてみましょう。犬がごほうびを期待して自発的にお座りの姿勢を取ったら大成功です。ハンドシグナルとお座りという動作が頭の中でリンクしていることを意味しています。
 もし犬がキョトンとしているようだったらまだトレーニングが足りません。もう一度前の段階に戻り「犬が腰を下ろそうとする瞬間ハンドシグナルを見せる」という行程を繰り返し行いましょう。犬がお座りの姿勢を取ったらごほうびを与えて軽くなでてあげます。 ハンドシグナルを見せただけで犬がお座りの姿勢を取ってくれたら成功  犬が5回連続でハンドシグナルに反応できるようになったら、今度は指示を出す腕を変えてみましょう。今まで右手を用いていた場合は左手を、左手を用いていた場合は右手を用いるようにします。また手のひらを開いてパーにした状態と握ってグーにした状態でも行うようにします。

犬の耳が不自由でない場合

 犬の耳が不自由でない場合は、まず「座る動作と指示語をリンク」までの各ステップをマスターさせておきます。犬の中ではすでに「オスワリ」という指示語と「座る」という動作が結びついていますので、後は「ハンドシグナル」という視覚的なジェスチャーと「オスワリ」という聴覚的な合図を結びつけるだけです。
 具体的には、「オスワリ」と指示語を出す直前に事前に決めておいたハンドシグナルを見せてあげます。例えば「腕を直角に曲げる」などです。出すタイミングは犬の学習が最も早くなるよう、指示語と同時ではなく「ハンドシグナル(手)→オスワリ(言葉)」という順序で行って下さい。犬がオスワリの姿勢を取ったらごほうびを与えて褒めてあげます。 【画像の元動画】How to Teach Your Dog to Sit _ Dog Trainingオスワリという聴覚的なシグナルと腕を直角に曲げるという視覚的なシグナルをリンクする  犬が慣れてきたら、指示語を出す時の声のボリュームを少しずつ下げていきましょう。いきなりささやき声にしてしまうと犬が何をしていいのかわからなくなりますので、あくまでも少しずつ声量を下げてください。最終的な目標は、指示語を出さなくてもハンドシグナルを見ただけで犬がお座りの姿勢を取ってくれることです。こうしたトレーニングを事前に積んでおくと、ひどい騒音で飼い主の声が全く聞こえないような状況においても、ハンドシグナルを見せることで犬の注意を自分に向け、お座りの姿勢をとらせることができるようになります。
 犬が5回連続でハンドシグナルに反応できるようになったら、今度は指示を出す腕を変えてみましょう。今まで右手を用いていた場合は左手を、左手を用いていた場合は右手を用いるようにします。また手のひらを開いてパーにした状態と握ってグーにした状態でも行うようにします。

犬の横で指示を出す

 お座りという指示は極めて使用頻度が高く、どんな時でもどんな場所でも犬は飼い主の指示に従わなければなりません。その事前トレーニングとして、飼い主が姿勢を変えて指示を出してみましょう。
 犬を自分の斜め45度横に誘導し「オスワリ」と言葉で指示を出してみます。犬が事前の練習通りにお座りの姿勢を取れたら成功です。犬が腰を下ろした瞬間にごほうびを与えてほめてあげましょう。5回連続でできるようになったら、今度は犬を自分の右横に誘導し、右半身を向けた状態で「オスワリ」と指示を出してみます。犬がお座りの姿勢を取れたらごほうびを与えてほめてあげましょう。キョトンとしているようなら、もう一度45度地点に戻してトレーニングを繰り返します。
 犬が十分に慣れたら、指示語ではなくハンドシグナルでも同じ練習を繰り返します。最終的な目標は「指示語」でも「ハンドシグナル」でも「斜め45度横」でも「真横」でも犬が指示通りにお座りの姿勢をとってくれることです。 お座りの指示を出す時の飼い主の角度を変えて練習する  犬を自分の右横に置いた状態でお座りが出来るようになったら、今度は左横に置いた状態で同様の練習をしてみましょう。自分の左側45度の地点に犬を誘導し「オスワリ」と指示を出してみます。これができるようになったら、犬に対して自分の左半身を向けた状態で指示を出してみます。最終的な目標は「指示語」でも「ハンドシグナル」でも「斜め45度横」でも「真横」でも犬が指示通りにお座りの姿勢をとってくれることです。
 日常生活の中では犬が飼い主の右横を歩くパターンと左横を歩くパターンとがあります。事前に上記したようなトレーニングを積んでおけば、犬は飼い主との位置関係にかかわらずお座りの指示に従うことができるようになるでしょう。

ごほうびを徐々に減らす

 犬にお座りの姿勢をとらせるという行為は、犬との暮らしの中で数千回も数万回も行うものです。そのたびごとにおやつを与えていたら、犬が肥満に陥って不健康になってしまいます。ですから飼い主は「おやつ」というごほうびから「ほめる」というごほうびに緩やかにシフトしていかなければなりません。
 練習している最中は、犬がうまく出来るごとにおやつ与えて構いません。犬がお座りを覚え、飼い主からの指示に従って確実に腰を下ろしてくれるようになったら、おやつを与える回数を「2回に1回→ 3回に1回→ 4回に1回・・・」といった具合に徐々に減らしていきます。最終的には「いいこ」などの褒め言葉だけで済ませるようにしましょう。ただし間欠強化の原理で犬の行動を強化するため、犬の大好きなとっておきのおやつをたまにランダムで与えるようにします。そうすることで犬は、まるで万馬券を当てた人のようにその行為に病み付きになり、いい意味でやめられなくなります。

気が散る環境でのお座り

 お座りは気が散らない静かな環境のみならず、たくさんの情報が洪水のように五感に押し寄せてくる環境においても確実に再現できなければなりません。犬の集中力を邪魔するような刺激を少しずつ増やし、しつけを完璧なものにしていきましょう。

室内環境を変えてのお座り

 まずは部屋の窓を開け、テレビをつけた状態でやってみましょう。耳に入ってくる情報が多い状態ですので犬の気が散りますし、飼い主の声も聞き取りにくい状況です。犬の集中力が下がってどうしようもないような場合は音量を下げても構いません。
 今までとは別の部屋でもやってみましょう。練習で使っていたしつけエリアを飛び出し、家の中にある廊下、キッチン、リビング、玄関など様々なエリアでお座りの指示を出してみます。周囲の景色や匂いが微妙に変わっても、犬は確実にお座りの姿勢を取らなければなりません。
 家庭内に複数人のメンバーがいるような場合は、今までしつけを行っていた人とは別の人に指示を出してもらいましょう。お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんなど、家族の誰が指示を出してもお座りができるようトレーニングしておきます。
 おもちゃがある状態で指示を出してみましょう。床におもちゃが落ちている状態は犬にとってとても気が散る状況です。こんな状況でも飼い主の指示に従ってお座りの姿勢をとれなければなりません。かなりハードルが高いため、アイコンタクト(おいで)のしつけと並行する形で行っていく必要があるでしょう。

屋外環境でのお座り

 犬を首輪やリードに慣らし、リーダーウォークのしつけが終わったら、屋外環境でもお座りをやってみましょう。なるべく犬の気が散らない静かな場所から始めるようにします。外の世界には空を飛ぶ鳩、吹き抜ける風、どこからか漂ってくるキンモクセイの匂い、散歩中の他の犬など、部屋の中とは比べ物にならないくらい多くの情報で溢れかえっています。そうした気が散る環境の中でも犬は飼い主の指示に従ってお座りを再現できなければなりません。
般化とプルーフィング
 般化(はんか)とは、異なる状況の中で、快不快の引き金となる共通刺激を見出すことです。たとえば、自宅、公園、友達の家、道路、ドッグランなど様々な場所で様々な人が「オスワリ」をしつけておくと、全ての状況に共通しているのが、唯一「オスワリ」というコマンドであることを犬は学習します。結果として、どこでどんな人が「オスワリ」と指示を出しても、犬はオスワリ姿勢をとることができるようになるわけです。
 このように状況を変化させて犬に共通刺激を学習させることをプルーフィングといいます。しつけ教室のに預けても、家に帰ってきた途端、元のやんちゃ坊主に戻ってしまうのは、プルーフィング不足が原因かもしれません。
NEXT:お座りQ & A集

犬のお座りQ & A

 以下は犬のお座りについてよく聞かれる疑問や質問の一覧リストです。思い当たるものがあったら読んでみてください。何かしら解決のヒントがあるはずです。

おすわりの訓練はいつから?

散歩デビューする前までに終わらせておきます。

 子犬のワクチン接種が終了して外に出られるようになるのは生後14週目以降ですので、おすわりの訓練は生後2~3ヶ月齢くらいか始めるようにします。犬をペットショップから迎えた場合(=生後50日齢以降)はすぐに始めるということになります。
 犬にとっての「お座り」は車にとってのブレーキです。突発的な動きを抑制する際に重要ですので、このしつけをマスターしていないのに屋外を散歩させるのは危険です。 子犬の散歩デビュー

おすわりをしなくなりました

体のどこかに痛みがあるのかもしれません。

 今までできていたのに急にお座りをしなくなったという場合、病気や怪我で体のどこかに痛みが発生している可能性を考慮します。具体的には「筋骨格系の病気」を見ながら、何か思い当たる節がないかどうかを確認しましょう。
 歩く時にふらつくだとか、体に触れると痛がるような場合は、どこかに怪我をしている可能性が大です。 犬の筋骨格系の病気

おすわりの途中で動きます

「待て」のしつけを別に時間を取って行いましょう。

 お座りを命じた犬が勝手に動くとか立ち上がるという場合、「待て」のしつけを別に行う必要があります。
 犬にとって「座る」という行為と「待つ」という行為は別物です。座った姿勢を維持させるためには、「指示があるまでじっと動かない」こととご褒美を結びつけて覚えさせる必要がありますので、「待て」のしつけは時間を別に取って行いましょう。詳しいやり方は「待てのしつけ方」で解説してありますので参考にしてください。 犬の待てのしつけ

犬がお尻を引きずっています

それは「スクーティング」と呼ばれる異常行動です。

 犬がお座りの姿勢を保ったままおしりを引きずるように動くことがあります。この奇妙な動作は「スクーティング」(scooting)と呼ばれ、肛門に何らかの異常があるサインとされています。
 以下でご紹介するのは、お尻を引きずりながら歩く、通称「スクーティング」と呼ばれる奇妙な歩き方を示しているピットブルの動画です。 元動画は⇒こちら
 肛門嚢に分泌液が溜まっていないか、肛門嚢炎を発症していないかどうかを確認しましょう。犬からの救難信号ですのでゲラゲラ笑っている場合ではありません。 犬の肛門嚢炎

犬の座り方が変です!

足の短い犬や太った犬はおかしい座り方をすることがあります。

 お座りの姿勢では、後ろ足をおなかの横に折りたたんで残りの体重を前足で支える形になります。しかし犬の中には、ちょうど人間で言う「横座り」(おねえ座り)のように両足を片方に投げ出し、少しだらしない座り方をするものがいます。

足が短い犬

 犬の後ろ足が短いと、足を完全に折りたたむ前におしりが地面についてしまい、途中で姿勢が崩れてしまいます。その結果が横座り(斜め座り)です。犬の「横座り」の原因~生まれつきの骨格による短足 これは骨格上、仕方のないことですので、ダックスフントやフレンチブルドッグといった足が短い犬種のだらしない座り方は大目に見てあげましょう。

犬が太りすぎ

 太った犬がおかしな座り方を見せることがあります。こちらの理由は、後ろ足を折りたたむ収納スペースが、肥満によるお腹の脂肪で邪魔されていることです。強引に座ろうとすると両方の後ろ足をかなり不自然に開く必要があるため、苦しいと感じた犬は右か左どちらかに腰を落とし横座りになります。 犬の「横座り」の原因~肥満による膝関節屈曲姿勢困難  こちらはダイエットによって解決が可能ですので、飼い主が責任持って摂取カロリーのコントロールをしてあげましょう。 犬のダイエットの基本

前足を片足だけあげます

いくつかの理由が考えられます。

 お座りをしている時に片方の前足をあげることがあります。多くの場合、手首をくるっと巻き込んでいるはずです。犬がこうした仕草を見せる時にはいくつかの理由が考えられますが、文脈によって全く意味が異なりますので、行動の前後に何があったのかを慎重に見極めるようにします。 おすわり姿勢を取りながら前足を片方だけ挙げる犬

痛み・怪我

 第1の理由は痛みや怪我です。肉球にトゲが刺さっていないでしょうか?直前にジャンプを伴う激しい運動はしなかったでしょうか?地面は熱すぎないでしょうか?前足に捻挫や火傷を抱えていると、痛みを軽減するため片方の足だけあげるという現象が起こります。
 急に片足だけあげるようになったという場合は怪我や病気の可能性を考慮しましょう。 犬の怪我と事故

不安によるカーミングシグナル

 第2の理由は不安です。犬のカーミングシグナルの中に「前足を上げる」というものがあります。これは狩猟犬であるポインターで顕著に見られる習性で、興奮した気持ちを鎮める効果があるとされています。
 見知らぬ犬に出会った、遠くから奇妙なサイレンが聞こえる、飼い主の声のトーンが不機嫌など、犬に対して何らかの不安を与えるような文脈がないかどうかを確認しましょう。 犬が前足を上げる

期待感によるフライング

 第3の理由は期待です。ごはんやおやつを目の前にして片方の前足だけが上がるという場合は、抑えきれない期待や興奮が前足に出てしまっているものと考えられます。人間で言うと「フライング」です。動いてはいけないとわかっているけれども動いてしまう状態であり、脳や体の異常というわけではありません。
 普段から「お手」によってご褒美をもらっている犬では一層出やすくなります。「前足を上げるとおやつをもらえる!」と記憶しているため、目の前にあるごはんやおやつが欲しいと思った時、反射的に前足が上がってしまうのです。
 飼い主の目を見つめながら興奮気味に前足をあげるという場合は、期待によるフライングの可能性が高いと考えてよいでしょう。

犬の前足が震えます

いくつかの可能性が考えられます。

 犬がお座りの姿勢をとっている最中、前足がプルプルと震えてしまうことがあります。いくつかの可能性が考えられますので原因別に詳しく見ていきましょう。

筋肉の未発達

 第1の理由は筋肉の未発達です。ゴールデンレトリバーグレートデンなどの大型犬種では、子犬の頃に前足の震えを見せることがあります。この震えは自分自身の体重を筋肉が支えきれていないことで起こるものです。またバランス感覚が未発達で前足を安定させることができないということも多少関係しています。
 多くの場合、震えは成長と共に消えますので基本的には様子見をします。不安な場合は動物病院を受診し、筋骨格系の異常がないかどうかを確認してください。特に前足の肘関節異形成の有無を念入りに調べるようにします。 犬の肘関節形成不全

怪我・中毒

 第2に考えられる理由は怪我や中毒の可能性です。前足に怪我があり痛みを感じている時、力が思うように入らずにプルプルと震えてしまうことがあります。また何らかの有毒物質を誤飲誤食した場合、筋肉や神経が障害を受けて震えが出てしまうことがあります。
 今まで何ともなかったのに、突然前足の震えが現れたという場合は、症状が現れる前の状況をよく思い出した上で、取り急ぎ動物病院を受診しましょう。 犬の怪我と事故

老齢・筋力の低下

 第3に考えられる理由は老化に伴う筋力の低下です。筋肉が弱くなり自分の体重を支えきれなくなると、人間の年配者と同じようにプルプルと震えることがあります。
 震えの症状が緩やかに現れたという場合は加齢現象の可能性を考慮しましょう。老化現象は小型犬なら9~13歳、中型犬なら9~11歳、大型犬なら7~10歳、超大型犬なら6~9歳くらいから始まるとされていますので目安として覚えておきます。 犬の老化について
お座りは基本中の基本です。ランダムでごほうびを与えて間欠強化を促し、「座る」という行為に対するモチベーションが下がらないようにしましょう。