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犬・猫のせり・オークション

 犬・猫のせり市とはいわゆるオークションのことで、1ヶ所にブリーダーとバイヤーなど数百の業者が集合し、出品された商品(犬や猫のこと)を複数業者間で競り落とすというものです。

犬・猫のせり市・オークションの現状

 犬・猫のせり市とはいわゆるオークションのことで、出品された商品(犬や猫のこと)を複数業者間で競り落とすというものです。平成20年6月に公正取引委員会事務総局が公表した「ペット(犬・猫)の取引における表示に関する実態調査報告書」によると、全国に少なくとも15のせり事業者が存在しており、そのうち株式会社が1社、有限会社が数社、その他は個人事業者とのこと。最大手ではプリペットなどが有名で、コンピューターによる最新の競りシステムを売りにしています。
犬・猫の流通経路
犬・猫の生産から仕入れ,販売までの流通経路の中におけるせり・オークションの位置づけ
 せり市(オークション)のビジネスモデルは、会場を提供する代わりに、入札に参加するブリーダーやペットショップのバイヤーから入会金(2~10万)、年会費(2~5万)、落札金額の手数料(5~8%)をもらうというものです。入札に参加する業者数は平均で300~400、大きいところでは1,000を超えるともいわれます。
 また、2008年度における犬の流通量に関しては、全国で約59万5,000頭が生産され、そのうちペットオークションへ55%(32万7,250頭)、通信販売・消費者へ25%(14万8,750頭)、小売業者へ17%(10万1,150頭)、卸売業者へ3%(1万7,850頭)が流れるという内訳になっており、日本国内で流通している犬の実に半数以上が、オークションを経由しているという計算になります。 犬を殺すのは誰か(朝日新聞出版)
ブリーダーの販路割合
2008年度における犬の流通量チャート
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病気蔓延の問題

 生産者(ブリーダー)から、半数以上の犬が流れ込んでいると推計されるせり市・オークション市場ですが、免疫力が十分でない生後5~8週齢の子犬たちを売買するという関係上、病気を持った個体が紛れ込んでしまうこともあります。

環境省による指摘

 環境省が公表している「移動販売・インターネット販売・オークション市場について」では、主に以下のような問題点が指摘されています。
犬猫オークションの問題点
  • トレーサビリティー  落札者に対して繁殖者情報が与えられないため、トレーサビリティー(追跡確認)の確保が困難な点。
  • 感染症  会場内で感染症にかかることがあり、感染症対策に特段の注意が必要な点。
  • 感染個体の流通  病気をもった状態の動物が売買され、後の店頭販売等においてその旨を購入希望者に十分な説明がなされないまま販売されるおそれがある点。
オークション会場では、病気が蔓延する危険性が常にある  こうした指摘は、オークション会場という特殊な環境が要因となり、子犬間で病気が蔓延してしまう可能性を危惧するものといえます。
 たとえば、ペットショップ大手のコジマでは、年間約2万頭の子犬を販売しており、その仕入れの7割をオークションに頼っているといいます。そして店頭に出すまでに1週間程度の待機期間を設けて健康管理を徹底しているとのこと。これはすなわち、感染症の潜伏期が終了するまで、買い付けた子犬たちがどんな病気を発症するかわからないということであり、オークションで買っている限り、ブリーダーの「健康優良児」という主張が本当かどうか確かめるすべがないことを意味しています。
 また、国民生活センターが公開している「ペット購入時のトラブルの実態と問題点」の中では、フレンチブルドッグを購入したが、持ち帰ったその日の夜から下痢・嘔吐を繰り返し、翌日近所の獣医師に診せると、パルボウイルス感染症と診断されたという事例も見られます。これは病気を持った子犬がオークション経由でペットショップの店頭に並び、実際に消費者の手元に渡ってから病気が発症してしまった最悪のケースと言えるでしょう。
トレーサビリティ
 トレーサビリティ(traceability)とは、物品の流通経路を生産段階から最終消費段階、あるいは廃棄段階まで追跡が可能な状態をいい、日本語では追跡可能性(ついせきかのうせい)とも言われる概念です。
 「ペットのトレーサビリティ」と言った場合には、一体誰が繁殖したのか、親犬はどういった血筋か、どういった環境で生まれたのかなどの情報を、消費者である飼い主が全て入手できる状態を言います。

病気を許してしまう管理体制

 病気持ちの子犬が流通したり、最悪のケースでは病気が蔓延してしまうという問題の背景には、以下に述べるようなオークション会場特有の管理体制と古くからの慣習があります。
オークションの管理体制
  • 出品者のチェック  オークション業者がブリーダーの全数実態調査をし、悪質なパピーミルや繁殖屋を排除するということは、現時点では行われていません。すなわち、動物取扱業の登録をし、入会金さえ払ってしまえば、良心的なブリーダーと悪徳パピーミルの境目がなくなってしまうということです。結果、病気の有無よりも在庫(子犬)を売りさばくことに重きを置いた低質な繁殖業者が入り込む余地が生まれてしまいます。
  • 出品動物の健康チェック  オークション会場に運ばれてきた子犬や子猫はまず、鑑定士と呼ばれる人が目視チェックをします。しかしこの「鑑定士」と呼ばれる人たちは獣医師ではない人が多く、また極めて短時間で行うため、病気をもった動物がオークション会場内に入り込む危険性が常にあります。
  • 隠蔽体質  せり市場には、病気や死亡などの問題があっても、それは生産者の責任ではなく、目利きをして購入した小売業者の責任になるという慣習があります。小売店側も、在庫数や予約された犬種などを円滑に仕入れしたい都合上、生産者側にクレームを入れないのが通例となっています。またオークションの業者も、会員の不利になる情報はなるべく開示しないのがならわしです。こうした三者三様の隠蔽体質が、悪徳業者排除の足かせになっています。
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子犬の販売日齢問題

 平成20年に環境省が行ったアンケート調査「犬猫幼齢動物の販売日齢について」では、オークション会場で売買される犬のうち40~44日齢が59%になっています。しかし40~44日齢は生後6~7週に相当し、これは子犬の性格を形成する上で極めて重要といわれる社会化期に重なるため、こうした重要な時期に母犬や兄弟姉妹犬から引き離し、環境の悪い中に連れ出してしまうことは、トラウマを形成して性格をゆがめてしまう可能性があると指摘されています。
せり市での子犬販売日齢
オークション会場における子犬の販売日齢比率
子犬の旬  オークション会場で40~44日齢の子犬が多く売買されるという事実は、「生後45日までが旬」という合言葉が存在する小売業界と連動する形で慣習化したものと思われます。すなわち、小売業者が店頭に45日齢の子犬を並べ、消費者に「かわいい~!」と叫ばせるためには、当然それよりも早い段階でどこからか子犬を仕入れておく必要があり、それが40~44日齢だということです。

子犬の社会化期

 社会化期における経験が性格形成にどのように影響するかについては、FoxとStelznerが1966年に行った嫌悪条件付け実験が示唆に富みます(「ドメスティック・ドッグ」チクサン出版社)。
 彼らはビーグルの子犬を使って人間が接触すると同時に電気ショックを与えるという、現代からすると非人道的とも思える実験を行いました。5週齢、8週齢、12週齢のときにそれぞれ実験を行った結果、子犬たちが精神的刺激や肉体的刺激に対して苦痛を過剰に感じる時期は、おおむね8週齢頃の短い期間であること、そして、この時期に受けたたった1つの不快な経験が長期にわたり、嫌悪効果や異常効果をもたらしうるという事実を突き止めました。
 また「ペット業界の舞台裏」(WEDGE Infinity)では、オークション会場の様子を以下のように描写しており、こうした経験が上記「たった1つの不快な経験」になる危険性を感じさせます。
 出陳業者は受付をし、場内へ商品を運び込み開場を待ちます。商品の子犬・子猫たちも産まれて初めて親兄弟から引き離され、空調もままならない場所でせまい箱に閉じ込められその時を待つのです。箱が開くと見知らぬ人間につかみ上げられ、口を開けられたり足を引っ張られたり、暫くの喧騒が終わるとまた箱に閉じ込められ再び待たされます。次に箱のふたが開くときは全く知らない場所、知らない人間の元へ着いた時です。

欧米各国の8週齢規制

 子犬を用いた実験結果や、「社会化期における不適切な環境が後の問題行動につながり、最終的には飼育放棄を増やす」という経験則から、欧米においては子犬の社会化期を重視した以下のような法律を整備しています。
欧米各国の8週齢規制
  • アメリカ合衆国・連邦法  最低生後8週間以上および離乳済みの犬猫でない限り商業目的のために輸送または仲介業者に渡されてはならず、または何者によっても商業目的のために輸送されてはならない(動物福祉法第13条)。
  • イギリス  犬の飼養業の許可を受けている者は許可を受けている愛玩動物店もしくは飼養業者に対して以外は生後8週間に達していない犬を販売してはならない(犬の飼養及び販売に関する1999年法)。
  • ドイツ  8週齢未満の子犬は、母犬から引き離してはならない。但し、犬の生命を救うためにやむを得ない場合を除く、その場合であっても引き離された子犬は8週齢までは一緒に育てなければならない(動物保護法犬に関する政令)。
  • フランス  犬・猫については8週齢を超えた動物のみが有償譲渡できる(農事法典L214-8条)。
  • オーストラリア・ニューサウスウェールズ州  生後8週間以下の子犬及び子猫は売りに出してはならない(動物福祉基準・愛玩動物店の動物犬猫に関する特別要件)。
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せり市・オークションへの法規制

 病気蔓延の問題、および日齢問題といった不安要素を受け、日本においても様々な法規制が敷かれるようになりました。

競りあっせん業者に対し

 2012年「動物取扱業者が遵守すべき細目の一部改正」が発表され、競りあっせん業者に対し以下のようなルールが新たに定められました。
競りあっせん業者への規制
  • 競りの実施に当たって、当該競りに付される動物を一時的に保管する場合には、顧客の動物を個々に保管するよう努めること。
  • 競りの実施に当たって、当該競りに付される動物を一時的に保管する場合には、当該動物が健康であることを目視又は相手方からの聴取により確認し、それまでの間、必要に応じて他の動物に接触させないようにすること。
  • 競りあっせん業者は、実施する競りに参加する事業者が動物の取引に関する法令に違反していないこと等を聴取し、違反が確認された場合には、競りに参加させないこと。
  • 競りにおける動物の取引状況について記録した台帳を調整し、これを5年間保管すること。
 このような改正が行われましたが、動物の健康状態は「目視又は相手方からの聴取により」という極めていい加減なやり方のままであり、またオークション参加者のよりわけは「法令に違反していないこと等を聴取」するという、形式的なものにとどまっています。こうした規制が競り市やオークション会場における悪徳業者の排斥につながると考えるには、相応の楽天思考が必要でしょう。

引渡し時期に関し

 従来、全国14のオークション業者が加盟して構成する全国ペットパーク流通協議会では「40日未満の生体はオークションへの出荷禁止」という通達を出しており、またオークション大手プリペットでは「出品生体は原則40日以上、ただしオークション当日が36日以上~40日未満については審査官の判断により出品できる」という自主規制を敷いてきました。
 しかし従来のこうした自主規制には十分な規制力がなく、ほぼ有名無実の状態だったことは否めません。こうした業界のぬるま湯体制に対し、2012年8月22日に開かれた民主党の環境部門会議で動物愛護法改正案が了承され、生後56日以下の子犬や子猫について、繁殖業者からペット販売業者への引き渡しが禁じられることが決定しました。
 2013年9月1日の法施行後3年間は「生後45日」、その後は「生後49日」とし、施行後5年以内に「生後56日」が適切かどうかを、環境省が改めて調査・検討するという流れになります。 動物の愛護及び管理に関する法律施行規則等の一部改正 ここが変わる!動物愛護法改正のポイント
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