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犬・猫の生産(繁殖業)~シリアスブリーダーと繁殖屋・パピーミルの違いは?

 犬や猫の生産とは、いわゆる繁殖のことです。法律上犬や猫は「命あるもの」という扱われ方をしますので、行政文書などでは物品に対して用いるような「生産」という言葉が当てられますが、一般人の感覚からすると奇異な感じがしますね。

犬・猫の生産者

犬や猫を繁殖するのがブリーダー(生産者)  犬や猫の生産者は通称ブリーダーと呼ばれ、2017(平成29)年度の環境省データでは日本全国で12,448件の業者が登録されています。
 ブリーダーは動物愛護管理法上、小売業者と同様に「販売」の登録が義務付けられているものの、公的な資格等ではなく、動物取扱業の登録をすれば誰でも始めることができる職業です。

犬猫生産(繁殖)の形態

 犬や猫の生産者は、基本的にはスタンダード(品種登録団体が決める、外見に関する取り決め)に添った形で犬や猫を繁殖させて子犬や子猫を増やし、それをオークション(せり市)、小売(ペットショップ・通信販売・移動販売)、消費者などに売ることで経営を維持します。平成13年度に環境省が行ったアンケート調査「犬・猫の調査結果」によると、犬・猫の生産に関わる形態は、主に以下のようなパターンに細分されます。
犬猫生産(繁殖)の形態
  • 専業繁殖者専業繁殖者とは販売を目的に多品種、多頭数、牧場での大規模繁殖を行っている業者で、全体の40~50%を占めると推計されています。犬・猫をせり市に出したり、自分で販売するためや繁殖犬として使用するために、せり市から仕入れることもあります。
  • ブリーダーブリーダーとは販売を目的に一犬種及び少犬種の繁殖を行っている業者で、全体の10~20%を占めると推計されています。せり市に出したり、希望者に直接販売したりしています。
  • ペットショップ経営兼繁殖者ペットショップ経営兼繁殖者は、自ら繁殖も手がけるペットショップのことで、全体の10~20%を占めると推計されています。犬・猫を店頭に出したり、せり市に出すこともあります。
  • 趣味的一般繁殖者趣味的一般繁殖者とは、希少犬種の繁殖を手がけたり、ドッグショーに出品することを目的に繁殖している一般人のことで、全体の10~20%を占めると推計されています。
  • その他

犬猫生産者の兼業パターン

 どれか一つの業態を専業的に行っている業者のほか、複数の業態にまたがる形で経営を行っているところも多いようです。34.3%を占める「生産+卸売+小売」とは、ブリーダーが直接消費者に犬猫を販売したり、ブリーダーとショップの仲介をしたりするという業態です。
犬猫生産者の兼業パターン
犬猫生産者の兼業パターン
  • 生産のみ=4.5%
  • 生産+卸売=5.4%
  • 卸売+小売=9.2%
  • 生産+小売=17.5%
  • 小売のみ=21.3%
  • 生産+卸売+小売=34.3%

犬の生産者・飼育頭数比率

 平成13年度に環境省が行ったアンケート調査「犬・猫の調査結果」によると、犬の生産を行っている取扱業者に対して飼育数を尋ねたところ、50頭以上が21.5%と最も多く、次いで10~20 頭未満(20.4%)、5~10頭未満(14.9%)となり、平均飼育数は36.3頭となっています。
犬の生産者・飼育頭数比率
動物生産者の飼育頭数(犬)
  • 5頭未満=7.5%
  • 5~10頭未満=14.9%
  • 10~20頭未満=20.4%
  • 20~30頭未満=10.5%
  • 30~40頭未満=10.0%
  • 40~50頭未満=6.0%
  • 50頭以上=21.5%
  • 無回答=9.2%

犬猫取扱業者・従業員の数

 同調査では犬・猫の取扱業者(生産・卸売・小売)に対して、店舗体制(支店展開)についても尋ねており、支店展開している業者は約1割であることが判明しています。また従業員総数に関しては0人(=自分一人で経営)が28.1%、2人が20.1%、1人が17.8%となっており、3人以下で75%超を占めていることが明らかになりました(平均は5.0人)。
犬猫取扱業者・従業員の数
犬猫生産者の従業員数
  • 0人=28.1%
  • 1人=17.8%
  • 2人=20.1%
  • 3人=10.9%
  • 4人=5.3%
  • 5人=3.6%
  • 6~9人=7.6%
  • 10人以上=6.7%

パピーミル問題

 少数犬種(多くは1犬種)だけに専念して繁殖を行い、遺伝病や社会化期にケアしながら健全な子犬を提供しようと努力している人たちをシリアスブリーダーと呼ぶのに対し、多くの犬種を1ヶ所に集め、まるで工場において機械部品を大量生産するかのように子犬を次々と繁殖させる人たちのことを、繁殖屋もしくはパピーミル(子犬工場の意)と呼び分けることもあります。以下の動画でご紹介するのは典型的な一例です。
【閲覧注意】犬の販売・繁殖施設
 以下でご紹介するのは地球生物会議ALIVEが公開しているパピーミルの動画です。一部ではこのような劣悪な環境で子犬たちを物のように「生産」しているブリーダーがいることも知っておく必要があります。 元動画は⇒こちら

5つの自由とは?

 パピーミルは、犬猫をケージに軟禁し、自分の利益のために動物の5つの自由をないがしろにしていることから、しばしば問題視されます。
 5つの自由とは、アニマルウェルフェアに早くから取り組んできたイギリスにおいて、家畜動物の福祉向上を目的として1960年代に定められた基本方針のことです。FAO(食糧農業機関)やWHO(世界保健機関)の委員会でもこの基準に沿ったガイドラインが採択されており、現在の国際的な福祉基準として浸透しています。 犬の幸せとストレス
動物の5つの自由
  • 飢えと渇きからの自由食べ物と飲み水は常に必要量が供給されていること
  • 不快からの自由休むまもなく妊娠と出産を繰り返すなどの無理強いをしないこと
  • 痛み・怪我・病気からの自由皮膚病や骨折などがあった状態で放置されないこと
  • 恐怖や苦悩からの自由1日中ケージの中に軟禁されないこと
  • 正常な行動を表出する自由遊んだり散歩したり、動物として必要な行動ニーズが満たされていること

少人数大規模管理

 平成13年度(2001年度)に環境省が行ったアンケート調査「犬・猫の調査結果」のデータによると、50頭以上の犬を飼育している生産業者は全体の21.5%と報告されています。果たしてこうした業者は、何人体制で現場を管理しているのでしょうか? 50頭以上を同時飼育している生産業者は、一体何人体制で現場を管理しているのか?  残念ながら生産業者のみの従業員数データはありませんでしたが、上記調査内で報告されていた犬・猫の取扱業者(生産・卸売・小売)の従業員数データを転用してみたいと思います。
 まず、従業員数が5人未満の犬・猫の取扱業者(生産・卸売・小売)の割合が86%であることがわかります。このデータから、生産業者(繁殖施設)のうち最大で86%は従業員数が5人未満であると仮定してみましょう。つまり繁殖施設が100ヶ所あった場合、そのうち86施設は従業員数が5人未満で運営しているということです。
 ここに「50頭以上の犬を扱っている生産者は21.5%」というデータを加えてみましょう。すると86ヶ所の21.5%に相当する18~19施設では50頭以上の犬を扱っているということになります。
 すなわち最悪のケースを想定すると、繁殖施設が100あった場合、そのうちの18~19施設では50頭以上の犬を従業員数が5人未満で運営しているということです。
 2017(平成29)年度の環境省データでは日本全国で12,448件の業者が登録されています。上記した「18.5%」という公式が真実に近いのだとすると、2,300の業者は少人数多頭管理というパピーミル予備軍だということになるでしょう。さらに従業員数に関して無回答だった約9%の中には、自身の管理体制にやましさを感じている業者が多少なりとも含まれていると考えられるため、上記数字はもう少し増えると予想されます。 散歩・グルーミング・遊び・排泄物の除去・寝床の清掃など、犬のニーズを少人数スタッフでこなすことは容易ではないはず。  この計算は大胆な仮説を伴っているため必ずしも正確とは言えませんが、もし50頭以上の犬を従業員数5人未満で飼育・管理しているのならば、それは容易なことではないはずです。生まれたばかりで長時間のケアを要する子犬たちの面倒を見つつ、50頭近くの繁殖犬の「5つの自由」(散歩・グルーミング・遊び・排泄物の除去・寝床の清掃などなど)を、5人以下で確保するとなると、そこには超人的な体力と気力が必要でしょう。
 さて、たった5~6人の人員で50頭以上の犬や猫の福祉を実現することは果たして可能なのでしょうか?例えば以下は、2018年に公開された福井県内の繁殖施設の動画です。この繁殖業者は狭い施設内に400頭を超える犬猫たちを軟禁し、「首根っこをつかんで持ち上げる」など虐待まがいの乱暴な扱いをしていました。
福井県坂井市のパピーミル
 2018年、福井県坂井市内にある動物繁殖施設が、約400頭の犬猫をたった2人で管理していたことから動物愛護管理法違反などの疑いで刑事告発されました。 元動画は⇒こちら
結局この事件は不可解な理由により不起訴処分になっています…。

ブリーダー崩壊

 以下は、パピーミルと思われるブリーダーが関わった(or 関与が疑われる)事件の抜粋です。これらはマスコミで報道されたものだけですが、潜在的にはまだまだ類似のパピーミル事件が全国で発生しているものと思われます。
 上記した「少人数による大規模管理体制」が、少なからず関わっているような気がしてなりません。 動物の遺棄・虐待事例等調査報告書(平成21年度) 動物の遺棄・虐待事例等調査報告書(平成25年度)
ブリーダーの関わった事件
  • 2005年・滋賀自宅敷地に犬13匹の死がいやフンを放置したうえ、飼っていた犬1匹にエサや水を十分与えず、重度の栄養失調状態にした疑いで、元ブリーダーで会社員の夫(34)と妻(32)を書類送検。
  • 2005年・大阪ペットショップから「敷地内に15匹の犬が捨てられている」と貝塚署に通報があった。同署は処分に困ったブリーダーが捨てた可能性があるとみて動物愛護管理法違反の疑いで調べている。
  • 2007年・京都27匹の犬を飼育していたが、約3週間、エサや水を与えなかったとして、ブリーダー兼タクシー運転手の男(53)を動物愛護法違反の疑いで逮捕。
  • 2008年・東京八王子市でチワワ計15匹が相次いで保護され、市保健所などは、ブリーダーかペット販売業者が捨てた可能性が高いとみて調べを進めている。
  • 2009年・福岡飼育していた犬に餌や水を与えず23匹を衰弱死させたとして、ブリーダーの男(49)を書類送検。
 また以下は、いわゆるブリーダー崩壊事例の一覧です。人員に対して管理している繁殖犬の数が多くなりすぎ、動物の福祉を著しく損なった環境で軟禁状態にしたあげく、最終的には飼育放棄するというのが基本的なパターンです。一部には、飼育放棄した動物たちを動物愛護センターや保健所に持ち込み、税金で殺処分させるという、呆れるばかりの構造がありました。 犬の殺処分の現状
ブリーダー崩壊事例
  • 2008年・九州大手のブリーダー犬舎が破産した末に夜逃げ。人気犬種50頭以上が、約2ヶ月に渡り、身動きのままならないゲージの中、水も餌も与えられず、自分の糞尿の上に座るしかない状態で放置される。
  • 2009年・茨城県阿見町元ブリーダーの夫婦(ともに75)と無職の長男(39)が、管理する犬64匹を健康管理をせずに放置。
  • 2009年・埼玉県鴻巣小型犬が54頭がキャリーの中に閉じ込められたまま放置される。
  • 2009年・北海道100頭以上の犬が、充分な食べ物も与えられず、糞尿垂れ流しの床で寝起きさせられる。
  • 2012年・愛媛県松山ブリーダーがチワワやポメラニアン、シーズーなどの小型犬65匹の引き取りを市に要請。経済的に困窮したブリーダーが餌が買えないなどの理由で市に引き取りを求めたという。
  • 2012年・北海道旭川ブリーダーがシーズー30頭の処分を市保健所に要請。
  • 2014年・愛知愛知県半田市の女性ブリーダーが、廃業に際して繁殖犬として飼っていた80匹を100万円で「引き取り業者」へ販売。業者は買い取った犬を木箱いっぱいに押し込んだが、トラックに積んで移動中、数匹を残して全ての犬が死亡。後処理に困った業者は栃木県内の河川敷などに70匹を超える死骸を遺棄した。
ブリーダー崩壊の現場
 以下でご紹介するのは、元ブリーダーがシーズー30頭を放棄した現場の動画です。「ブリーダー」といっても、動物取扱業登録、畜犬登録、狂犬病予防接種、ワクチン接種などを全て無視する極めて悪質な業者だったとのこと。 元動画は⇒こちら

緩い法規制

 パピーミルが横行したり、頻繁にブリーダー崩壊が起こる背景には、日本における法規制の緩さが一因としてあるものと思われます。
 イギリスでは「犬の繁殖に関する法律」(Breeding of Dogs Act, 1973)、および「犬の繁殖と販売に関する法律」(Breeding and Sales of Dogs(welfare) Act 1999)により、以下のように規定され、「繁殖屋」や「パピーミル」の数をなるべく減らそうとする姿勢が見られます。また2018年10月1日からは通称「ルーシー法」が施行され、「母犬を見せないと子犬を販売できない」「8週齢未満の子犬の販売禁止」「ライセンス番号を公開しない広告の禁止」などのルールが新たに加わりました。 「ルーシー法」(Lucy's Law)の背景にあるのはイギリス国内における子犬の違法売買
イギリスにおける繁殖法規
  • 年間5匹以上の動物を出産するブリーダー、および頭数にかかわらず動物を売ることを生業としているブリーダーは所属する地域の管理局から免許を取得すること
  • 繁殖・取引の正確な記録を保管すること
  • 12ヶ月に満たないメスに出産させないこと
  • 犬は生涯6回までしか出産はさせてはならないこと
  • 一度出産すると、12ヶ月経たないと次の出産はしてはならないこと
 イギリスのブリーダーが免許制であるのに対し、日本ではいまだ登録制となっています(平成18年6月, 改正動物愛護管理法)。その結果、動物取扱業の申請書を提出し、都道府県知事や政令市長の登録を受けさえすれば、誰でも比較的簡単にブリーダーになれてしまうというのが現状です。こうした法規制の緩さが、一部の悪徳業者の横行を許しているという図式は、間違いなくあるでしょう。 動物取扱業登録申請書
第一種動物取扱業
 業として、動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を行う場合は、業を始めるに当たって「第一種動物取扱業」の登録をしなくてはなりません(平成18年6月1日より)。インターネットなどを利用した代理販売やペットシッター、出張訓練などのように、動物または飼養施設がない場合も、規制の対象になります。
 動物取扱業を営む者は、事業所・業種ごとに都道府県知事または政令市の長の登録を受けなければなりません。また、動物の管理の方法や飼養施設の規模や構造などの基準を守ることが義務づけられています。動物愛護法をもっと知ろう!
 朝日新聞は2019年1月、都道府県や政令指定都市など合計103の自治体を対象としたアンケートを行い、第1種動物取扱業者の登録手続きに関する実態を調査しました。
 その結果、登録に際して運転免許証や登記簿謄本などで申請者の本人確認を義務づけている自治体は、全体の31%に相当する32自治体しかなかったといいます。こうしたずさんなシステムを反映してか、2011年には栃木県から業務停止命令を出されたはずの猫の販売業者が、偽名を使って再登録を行っていたことが発覚しています。
 さらに事業所ごとに置くことが義務付けられている「動物取扱責任者」に関しては、ペットショップなどで半年以上の実務経験を積むだけで資格要件を満たすことができます。しかし「実務」の内容は具体的に規定されておらず、ただひたすら店内の掃除をしていただけの人でも、動物の取扱いに関する最低限の知識があるとみなされてしまうのが現状です。
登録制度はあっても、個々の業者をチェックする十分な体制が整っていないのが現状。その結果、たくさんの劣悪業者がいまだに営業を続けています。
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