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犬の耳掃除のやり方

 犬で多く見られる外耳炎を予防するためには、飼い主による日頃からのチェックと耳掃除が欠かせません。犬種や体質に合わせて耳掃除、耳毛抜き、耳洗浄を行い、慢性化する前にきれいにしておきましょう。

なぜ犬に外耳炎が多い?

 犬の耳をケアしてあげる目的は「外耳炎の予防」という一言に集約されます。外耳炎(がいじえん)とは鼓膜から耳のヒラヒラに至るまでのエリアのどこかで炎症が起こることです。 犬の耳道と軽度の外耳炎を抱えた犬の耳道  2007年にアメリカで行われた疫学調査では、人間の外来患者のうち外耳炎と診断される割合は0.81%(8.1/1,000人)と報告されています(CDC, 2011)。また猫における診断率は2%程度と推定されています(Grano, 1980)。一方犬では、外来患犬のうち5~20%という極めて高い診断率が報告されており、日本のアニコム損保の保険請求データでも、すべての疾患の中で「外耳炎・外耳道炎」がトップ(69,679頭/年間平均診療費18,858円)に来ています(アニコム損保, 2016)。 解剖学的な要因により、犬では外耳炎が非常に発生しやすい  ではいったいなぜ、国や地域を問わずこれほど頻繁に犬の耳に外耳炎が起こってしまうのでしょうか?以下はその原因です。発症理由をしっかり理解しておくことが予防の第一歩になります。

 耳に傷がつくことで外耳炎に発展してしまうことがあります。例えば耳を蚊に刺されて後ろ足でカキカキしているうちに爪で引っ掻いてしまう、飼い主が綿棒でゴリゴリと犬の耳掃除を行ったり耳の毛を抜いているうちに上皮を傷つけてしまうなどです。まれなケースでは、交通事故に遭って1~3年してから外耳炎を発症するというものもあります。

他の疾患の波及

 外耳とは関係ない場所で起こった病気が耳に現れてしまうということがあります。例えばアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、薬疹、脂漏症、全身性エリテマトーデス、天疱瘡、ジステンパー、中耳炎などです。
 特に多いのが外耳炎がいったん治ったと思っても、中耳炎の炎症が外耳に波及して再び炎症を引き起こしてしまうというパターンです。急性外耳炎で中耳炎を併発している割合は16%であるのに対し、慢性外耳炎で中耳炎を併発している割合は88.9%だったという報告すらあります。

微生物の繁殖

 バクテリアやイーストが過剰に繁殖することで外耳炎を引き起こしてしまうことがあります。外耳炎を引き起こす細菌として特に重要なのは黄色ブドウ球菌(Staphylococcus intermedius)、イースト菌で重要なのはマラセチア(Malassezia canis)です。犬の耳道は長さ5~10cmと長く、また人間や猫にはない垂れ耳という形状があるため、どうしても通気や排水が悪くなってしまいます。また人間とは違って耳道がL字型に曲がっていることも一因です。 犬の耳・聴覚 犬の耳の解剖図

寄生虫

 耳の中に入ってきた寄生虫が外耳炎を引き起こすことがあります。犬で最も多いのは耳疥癬を引き起こす体長0.3mm~0.5mmのイヌミミヒゼンダニ(Otodectes cynotis)です。ダニがリンパや血液を吸い取る際に体内に残す唾液が炎症を引き起こします。その他の寄生虫としてはイヌニキビダニ、ヒメダニなどが報告されています。

異物

 耳の中に誤って入ってきた異物が外耳炎を引き起こすことがあります。例えば植物のノギ、土、自分自身の毛、水などです。耳をきれいにしようとして注ぎ込んだ洗浄液(イヤークリーナー)自体が炎症の原因になってしまうこともあります。

閉塞

 耳の穴を塞ぐようなあらゆる病気が外耳炎の原因になります。例えばシャーペイブルドッグブルテリアアメリカンコッカースパニエルイングリッシュコッカースパニエルで見られるような先天的な耳道の閉鎖、炎症による腫脹と内径の減少、腫瘍による閉塞などです。
 悪性腫瘍(がん)では扁平上皮がん、乳頭腫、皮脂腺腫、肥満細胞腫が多く、良性腫瘍では耳道腺の過形成、炎症性ポリープ、耳道腺嚢胞、皮脂腺の結節性過形成などが報告されています。
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犬の外耳炎予防

 前のセクションで解説したような様々な原因により、犬では人間や猫に比べて非常に外耳炎を発症しやすくなっています。ではいったいどうしたら犬の外耳炎を予防できるのでしょうか?おおまかな原因がわかったところで具体的な予防法について考えていきましょう。

傷の予防

 犬が自分の後ろ足で耳を引っ掻いた際に傷をつけてしまうことがありますので、あらかじめ爪をカットして鋭利な部分が残らないようやすりをかけておきましょう。 犬の爪のケア  また飼い主がよかれと思って犬の耳掃除を行い、綿棒で傷をつけてしまうことがあります。耳の汚れが気になる際は指にガーゼを巻き、見える範囲だけを軽く拭いてあげるようにしましょう。人間用のスプーン状の耳かきを使わないことはもちろんのこと、綿棒を使うのも控えたほうが賢明です。また外から見えない範囲にまで指を突っ込むのも小さな傷の原因になりますのでやめたほうがよいでしょう。詳しいやり方は当ページ内「耳掃除の仕方」をご参照下さい。

他の疾患の予防

 外耳とは関係ない場所で起こった病気が外耳炎の原因になっている場合は、耳にアプローチするよりも原因となっている元の疾患にアプローチする必要があります。何が一次疾患になっているかは自己判断で決めるのではなく、必ず獣医さんの診断を受けてください。素人判断で適当な対策を行っていると、改善するどころか逆に悪化してしまうことがあります。代表的な疾患はアトピー性皮膚炎食物アレルギー脂漏症中耳炎などですので、それぞれリンク先のページをご参照ください。

微生物の繁殖予防

 健康な犬の耳にも細菌やイーストは生息していますが、何らかの理由によって過剰繁殖してしまうと「日和見感染」(ひよりみかんせん)を起こし、外耳炎に発展してしまうことがあります。主な理由と対策は以下です。

垂れ耳

 立ち耳の場合、外界の湿度が56%のとき耳の中の湿度は80%程度になるとされています(Grono, 1970)。垂れ耳は閉め切った室内に相当しますので、空気の流れが悪くなってどうしてもこれより高くなってしまうでしょう。コッカースパニエルのように極端に耳が長い犬種においては耳に生えている飾り毛をカットし、なるべく軽くした方がよいと考えられます。歩いたり走ったりするたびに耳が上下動し、自然換気が促されるでしょう。 犬のトリミングのやり方  またコッカースパニエルに限らず垂れ耳犬を飼っている家庭においては、最低でも1日1回耳を持ち上げて中をチェックする習慣をつければ、炎症の早期発見につながると同時に空気の入れ替えにもなります。代表的な垂れ耳犬種は以下です。
代表的な垂れ耳犬種

耳の多毛

 プードルやエアデールテリアなど「長毛」「巻き毛」「飾り毛」という特徴を持った犬種では、耳の中の被毛が長く伸び換気や排水を悪化させてしまいます。定期的に耳毛を引き抜き適切な量に調整しておけば細菌の繁殖を防げるでしょう。詳しいやり方は当ページ内「耳毛の抜き方」をご参照下さい。

寄生虫予防

 病院で処方される寄生虫予防薬の中には、通常のダニやノミのほか、ミミヒゼンダニに有効なものもあります。定期的に投与しておけば予防につながるでしょう。まずは動物病院を受診し、耳に寄生虫がついていないかどうかをチェックして下さい。 犬の耳疥癬を引き起こす犬ミミヒゼンダニ  ミミヒゼンダニで厄介なのは、たった2~3匹でも炎症反応を引き起こして激しいかゆみを引き起こしてしまうという点です。動物病院の耳鏡検査では何も見つからなかったけれども、殺ダニ薬を投与して急に症状が改善したというケースでは、肉眼ではなかなか確認できないような場所にダニが潜んでいたのかもしれません。

異物予防

 人間の世界では「たんぽぽの綿毛が耳に入って中耳炎になった」といった都市伝説がありますが、動物の世界では紛れもない事実であり、耳の中に入り込んだ異物が外耳炎や中耳炎を引き起こしてしまいます。具体的には以下のようなものです。

植物のノギ

 ノギ(芒, awn)とはイネ科植物の先端にある棘状の部分のことです。耳に侵入する異物の中できわめて大きな割合を占めています。春から夏にかけて多くなり、大抵はどちらか一方の耳だけですが、両方の耳に同時に入るということもあります。 【写真元】Foxtail in Pet Ear - Pet Ear Care Center イネ科植物のノギ(芒, awn)は犬の耳異物混入症例の大部分を占める  予防法は雑草の生い茂った所を散歩しないと言うことです。地面の上を転げまわることも望ましくありません。もし犬が雑草と接触してしまったら、家に帰ってから耳の中をしっかりとチェックしてあげましょう。入ってすぐの段階なら耳毛に引っかかって取り出すことができるかもしれません。詳しいやり方は当ページ内「耳掃除の仕方」をご参照下さい。

土・砂埃

 公園の広場やドッグランなどで、犬が走り回ったり転げ回ったりすると、跳ね上がった土が耳の中に入ってしまうことがあります。100%予防することは難しいですが、犬が土、泥、砂埃と接触した日は耳の中をしっかりとチェックしてあげましょう。詳しいやり方は当ページ内「耳掃除の仕方」をご参照下さい。

自分自身の毛

 自然脱毛した耳の毛や飼い主が抜き取った(切り取った)毛の一部が耳の中に入り、炎症の原因になってしまうことがあります。抜け毛を予防する方法は定期的に脱毛してあげることです。詳しいやり方は当ページ内「耳毛の抜き方」をご参照下さい。

水の侵入予防

 耳の中に入り込んだ水が細菌やイーストの繁殖を促し、炎症につながってしまうことがあります。また耳の内側にある上皮組織が水でふやけてバリア機能を失い、細菌の繁殖を促すという側面もあります。人間で言う「スイマーの耳」をイメージすればわかりやすいでしょう。
 犬の耳に水が入ってしまう状況としては、雨の日に散歩をした、プールに入った、自宅やグルーミングサロンでシャワーを浴びたなどがあります。

雨の日の散歩

 雨の日の散歩は基本的に控えたいところですが、梅雨のシーズンになると毎日は雨ですので、そうも言ってられません。外に出るときは犬用の雨具などを着せてなるべく耳に水が入らないようにしましょう。詳しくは「犬の散歩の基本」をご参照ください。 犬の散歩の基本

プール・川

 夏の暑い日はペット用プールを用意して思いきり遊ばせてあげたいものです。また犬と一緒にキャンプに出かけたときなどは、川の中で水遊びをさせてあげたいものです。しかし、どちらの状況においても耳の中に水が入って外耳炎を引き起こしてしまうリスクがあることを覚えておかなければなりません。犬が水と接触したときは、飼い主がしっかりと耳の中をチェックし、指が届く範囲で余分な水分を拭き取るようにしましょう。詳しいやり方は当ページ内「耳掃除の仕方」をご参照下さい。

シャンプー

 自宅にしてもグルーミングサロンにしても、シャワーの水が耳の中に入らないよう注意しなければなりません。耳の中にコットンを詰めるという方法もありますが、コットン自体が水を吸収して逆に耳に水を導いてしまうこともありますので要注意です。水をかけるときは手で耳を覆い隠したほうがよいでしょう。詳しくは「犬のシャンプーのやり方」をご参照ください。 犬のシャンプーのやり方

洗浄液

 犬の耳を掃除する際に用いる洗浄液(イヤークリーナー)が耳の中に残り炎症を引き起こしてしまうことがあります。特に手作りの洗浄液を使った時などは望ましくない成分が混入してしまう危険性がありますので要注意です。耳洗浄は耳の汚れを取り除くと同時に外耳炎の原因にもなりうるという諸刃の剣です。詳しいやり方は当ページ内「耳洗浄の仕方」をご参照下さい。

耳道の閉塞予防

 鼓膜と外をつなぐ通り道(耳道)をふさぐ障害物としては、皮膚のシワ(シャーペイなど)、炎症による腫れ、良性悪性の腫瘍などがありますが、最も頻度が高いのは犬自身が分泌する耳垢(みみあか)です。耳の上皮には毛包や皮脂腺のほか耳道腺と呼ばれるアポクリン腺の一種が分布しており、前者からは皮脂、後者からは色素や耳垢が分泌され、耳の内側で上皮細胞の残骸などと混じり合っていわゆる「耳くそ」を形成します。これらの腺組織は鼓膜に近い水平耳道よりも出口に近い垂直耳道に多く分布しています。 犬の耳道内にたまった耳垢  通常であれば上皮角質層の移動とともに自然と耳の外に排出されますが、耳垢の量があまりにも多かったり耳毛によって通行が邪魔されるとうまく外に出られず、耳の中にとどまったままになってしまいます。この状態が「耳垢塞栓」(じこうそくせん)です。 【写真元】Impacted Pet Ear - Pet Ear Care Center 耳の奥で固まり取れなくなってしまった犬の耳垢  耳垢が耳道内にとどまっていると通気が悪くなって湿度が上昇し、細菌が繁殖して外耳炎を引き起こしやすくなります。ですから耳垢が多い個体においては定期的に耳洗浄を行って耳垢を取り除いてあげる必要があるでしょう。詳しいやり方は当ページ内「耳洗浄の仕方」をご参照下さい。
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犬の耳掃除の仕方

 犬の耳掃除とは、耳をチェックして黒ずみをふきとってあげることです。頻度は週に1回くらいを目安にします。

耳掃除に必要な道具

 用意するものは濡れティッシュや耳掃除シートだけで十分です。ティッシュやシートを指先に巻き付け、見える範囲を軽く拭き取ってあげましょう。ゴシゴシと強くこすると小さな傷ができて炎症の原因になってしまいますので軽くで構いません。
 綿棒は用いないようにしてください。犬が動いた時に鼓膜を傷つけてしまう危険性があると同時に、局所的な圧力が強すぎて皮膚の表面にミクロな傷を作ってしまいます。また消毒効果を期待してアルコールやエッセンシャルオイルを用いる必要もありません。中毒に陥ってしまう危険性があるので逆に使わないようにしてください。

嫌がる・暴れる犬の対処法

 耳を触ろうとすると嫌がったり暴れたりする犬がいます。頭の周辺を触られることを嫌がる状態は特に「ヘッドシャイ」(head-shy)と呼ばれますが、多くの場合このヘッドシャイの根底にあるのは「ハンドシャイ」(hand-shy)です。これは人間の手が近づくこと自体を恐れる状態を指します。
 人間の手に慣れていない子犬や、人の手で叩かれたことがある成犬では、まずハンドシャイを克服しておく必要があります。これは1日や2日でできることではありませんので、たっぷり1~2週間かけて行うようにして下さい。詳しいやり方は「ボディコントロールのしつけ」で解説してあります。耳だけでなく体のどこを触られても抵抗しないようにしつけておきましょう。 犬のボディコントロールのしつけ
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犬の耳毛の抜き方

 犬の耳毛抜きとは、耳のヒラヒラに生えた余計な被毛を抜き取ってあげることです。遺伝的に「飾り毛」をもった犬種では耳の中にまで毛が生えてしまい通気や排水を邪魔してしまいます。ですから飼い主が定期的にチェックし、あまりにも多いようであれば抜いてあげなければなりません。一度抜いてあげれば急に生えてくる事はありませんので、毛抜きの頻度は月1回を目安にします。動物病院に依頼したときの料金は500~2,000円程度です。以下では飾り毛をもった代表的な犬種をご紹介します。
代表的な飾り毛犬種

耳毛抜きに必要な道具

 犬の耳の毛を抜く際に必要なものは鉗子(かんし)です。ピンセットだとグリップが弱く力を入れている指も疲れてしまうため、先端に滑り止めのついた鉗子を用いるようにしてください。

耳毛抜きの手順

 まずは犬の耳を上に持ち上げて耳毛を露出しましょう。一度に大量の耳を引き抜くと犬が不快感を感じますし、毛包が傷ついて炎症を引き起こしてしまいます。基本的には少しずつつまんで引き抜くようにしてください。耳の奥まで鉗子を突っ込むと犬が急に動いたとき耳道を傷つけ、逆に炎症の原因になってしまいます。毛を抜くのは見える範囲だけで結構です。 【写真元】Dog Ear Plucking and Cleaning 犬の耳毛を抜くときには、少しずつゆっくり引き抜くのが基本  鉗子ではなく指で引き抜く時は、皮膚への刺激が強い脱毛パウダーを使うのではなく滑り止めの利いたゴム手袋を装着してください。指が耳に接触する形になりますので、犬がもぞもぞと動いてしまうかもしれません。また少しずつ抜くことができず、どうしても一度に大量の毛を引き抜いてしまいます。犬のストレスを減らすためにも、可能な限り鉗子を用いるようにしてください。
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犬の耳洗浄の仕方

 犬の耳洗浄とは、耳の中に洗浄液(イヤークリーナー)を流し込んで耳垢を取り除いてあげることです。特にウェットタイプの耳垢を出す犬においては、定期的に耳洗浄すると耳垢塞栓を予防できると考えられます。

犬の耳垢のタイプ

 2006年、日本の長崎大学の調査チームが行った大規模な遺伝子調査により、耳垢のドライとウェットを決定している遺伝子の候補が明らかになりました(Yoshiura, 2006)。具体的にはヒト16染色体上にある「ABCC11」という遺伝子の変異が関わっており、「AA」という遺伝子型の時にドライタイプ、「GA」と「GG」という遺伝子型の時にウェットタイプになるという常染色体優性遺伝だったそうです。そして同時に、この「ABCC11」に相当する遺伝子が犬にもあることが確認されました。つまりすべての犬が同じ耳垢を出すわけではなく、あるものはパサパサに乾いたドライタイプ、あるものはジトジトと湿ったウェットタイプの耳垢を出す可能性があるということです。 人間の耳垢にはドライタイプとウェットタイプとがある  ウェットタイプの耳垢を出す犬においては耳道腺から分泌された耳垢が塊になりやすいと考えられます。ちょうどパサパサに乾いた生の米ではおにぎりを作れないけれども、しっとり湿った炊き立てのお米ではおにぎりを作れるのと同じことです。1週間くらいですぐに耳が黒ずんでしまうようなウェットタイプの犬においては定期的に耳洗浄を行い、耳道の奥にたまりかけた耳垢を取り除いてあげたほうがよいでしょう。

洗浄前に必要なこと

 洗浄液を用いて耳を洗うときには、事前に動物病院を受診して耳の疾患がないことを確認しておきます。例えば外耳炎があるのに耳洗浄を行ってしまうと洗浄液に含まれている成分で炎症が悪化してしまうかもしれません。また鼓膜に穴があいているのに耳洗浄を行ってしまうと、穴を通じて洗浄液が中耳に入り込み中耳炎を引き起こしてしまうかもしれません。その他、耳疥癬耳腫瘍などが見つかることもありますので、必ず病院を受診して耳鼻咽喉系の病気がないことを確認しましょう。

耳洗浄に必要な道具

 洗浄液(イヤークリーナー)は動物病院で処方されたものや市販されているものを使います。犬の体や耳の周辺が濡れますのでタオルや乾いたティッシュ、コットンなどを用意しておきましょう。なお市販の洗浄液には多くの場合、耳垢溶解剤として「プロピレングリコール」が含まれています。これは大量に飲み込んでしまうと中毒に陥りますので、犬がなめてしまわないよう注意して下さい。
 飼い主の衣服も汚れる可能性がありますので、あらかじめ汚れても構わない服を着ておいたほうがよいでしょう。耳垢に黄色ブドウ球菌やシュードモナス属を含んでいることもありますので顔や手にうつらないよう十分注意します。
手作り洗浄液
 「オチック」などの市販商品は動物病院でも使われている洗浄液ですが、中に含まれている成分がどうしても不安な場合は、混じりけの少ない酢(ビネガー)を生理食塩水か蒸留水で薄めた2~2.5%酢酸溶液で代用するという方法もあります。抗菌効果と収れん効果があり、接触アレルギーが疑われる犬にも比較的安全に使用できるとされています(Nuttall, 2003)。くれぐれも「みりん」や「みりん風調味料」と間違わないようにして下さい。

耳洗浄の頻度

 犬の耳の中をチェックし、肉眼で確認できる範囲に黒ずみが見られたタイミングで耳掃除と同時に行うようにします。ただし耳洗浄自体が外耳炎の原因になることもありますので、週2回以上のペースでやらないほうが無難です。
 また耳垢には免疫グロブリンが含まれており抗菌バリアとしての機能を持っていることが確認されています(Huang, 1994)。黒ずみがないにもかかわらず過剰な耳洗浄を行うと、抗菌作用がなくなって逆に炎症を起こしやすくなってしまうかもしれません。肉眼で確認できる範囲に汚れが見られないような時は、むしろ洗浄を行わない方がよいでしょう。

耳洗浄を行う場所

 耳の中に洗浄液を入れると、ほとんどの犬は違和感から頭をぐるぐると高速で回転させます。その時に洗浄液が周囲に散らばりますので汚れてもよい場所でやるのがよいでしょう。部屋の中でバスタオルを敷いて行うとか、お風呂場で行うといった選択肢があります。

耳洗浄するときの注意

 1人が犬の頭を抑え、もう1人が洗浄液を注入するという具合に2人がかりで行うのがベターです。1人で行わざるを得ない時は、犬におとなしくしてもらわなければなりませんので、事前にボディコントロールのしつけをしっかりと終了しておきます。 犬のボディコントロールのしつけ

耳洗浄の手順

 洗浄液は犬が冷たさでびっくりしないよう室温程度に温めておきましょう。まずは犬の耳を持ち上げて耳の穴を露出します。ゆっくりと水平耳道が満杯になるくらい洗浄液を注ぎ込み、耳の付け根を指先でよくマッサージしましょう。耳道の内壁にこびりついた耳垢を落としているイメージです。 【写真元】How to clean your dog’s ears and recognise ear problems 水平耳道に洗浄液を注ぎ込み、耳の付け根をゆっくりとマッサージして耳垢を落とす  マッサージにより剥がれた耳垢は浮力によって洗浄液の上の方に浮かんできます。耳から指を離し犬が自発的に頭をぐるぐる振るのを待ちましょう。遠心力で洗浄液が周囲に飛ばされると同時に、浮かんでいた耳垢も周囲に放り出されます。 洗浄液で剥がれ落ちた耳垢をコットンなどで拭き取る  耳垢は耳道の内壁にも残っていますので、乾いたティッシュやガーゼで優しく拭き取ってあげます。見える範囲だけで構いません。べっとりと汚れが付くようであれば同じ手順をもう一度繰り返し、ティッシュやガーゼの汚れが目立たなくなるまで洗浄してあげます。

耳洗浄後の注意

 耳洗浄の副作用としては前庭症状ホルネル症候群、顔面神経麻痺、聴覚障害などが報告されています。症状が見られた場合は速やかに動物病院を受診し、使用していた洗浄液(イヤークリーナー)、洗浄の頻度、症状が出始めたタイミングなどについて獣医さんに伝えましょう。以下は基本的な耳のチェックポイントです。 犬の耳の異常・病気
犬の耳の異常と病気の関係
健康な犬の耳と異常を起こした耳の比較
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