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犬に必要な栄養素・完全ガイド~適正量から欠乏症(失調症)・過剰症まで

 人間に必要なのは、六大栄養素(ろくだいえいようそ)と呼ばれる「炭水化物(糖質)」「脂質」「たんぱく質」「ビタミン」「ミネラル(無機質)」「水」です。多く摂り過ぎたり少なすぎたりすると体調不良に陥りますので、それぞれの栄養素の特徴とともに適切な摂取量を抑えておきましょう。

犬と炭水化物(糖質)

 「炭水化物」(たんすいかぶつ)は「糖質」(とうしつ)とも呼ばれ、主として脳や筋肉に取り込まれてエネルギー源として活用されます。余った糖質(炭水化物)はインシュリンというホルモンの働きで脂肪細胞や筋肉細胞に蓄えられます。空腹時などは体内のタンパク質(筋肉)や脂質(脂肪)が分解され、糖質(グルコース)が合成されて利用されます。血中のグルコース濃度が慢性的に高くなりすぎた状態が糖尿病であり、逆に低くなりすぎた状態が低血糖です。
 炭水化物(糖質)のカロリーは1グラム/4キロカロリーで、砂糖・米・でんぷん・とうもろこし・イモ類などに多く含まれます。犬においては炭水化物の適正摂取量が定められていません。栄養学的には単糖・二糖・多糖に分類され、それぞれに以下のような物質が含まれますです。

単糖(たんとう)

 「単糖」とは、それ以上加水分解されない糖類のことです。種類としては、ブドウ糖とも呼ばれ、体内でエネルギー源になる「グルコース」、果糖とも呼ばれ、果物に多く含まれる「フルクトース」、その他グルコースほど甘くなく、またそれほど水にもとけない「ガラクトース」などがあります。
 単糖の中でも特にグルコースは、摂取した脂質やタンパク質などからも体内で合成され、脳や筋肉のエネルギー源になる重要な栄養素です。血中の糖濃度は人間と同様、主として脳内の視床下部(ししょうかぶ)という部分で自動調整されていますが、濃度が低いときはグルカゴンというホルモンの作用で体内の脂肪や筋肉を分解してグルコースを血中に補給し、逆に高すぎるときはインスリンというホルモンの作用で血中から脂肪細胞に中性脂肪(いわゆる肥満の原因である”ぜい肉”)という形で貯蔵されます。なお、血中のグルコース濃度が高い状態を「高血糖」、逆に低い状態を「低血糖」と呼びます。 犬の低血糖症

二糖(にとう)

 「二糖」とは、糖類の最小構成単位である単糖2分子が脱水縮合し、グリコシド結合を形成して1分子となった糖のことです。種類としては、ショ糖とも呼ばれ、砂糖などに含まれる「スクロース」(グルコース+フルクトース)、乳糖(にゅうとう)とも呼ばれ、牛乳などに含まれる「ラクトース」(グルコース+ガラクトース)、麦芽糖(ばくがとう)とも呼ばれ麦芽などに含まれる「マルトース」(グルコース+グルコース)などがあります。
 猫の舌は甘みを感じることができませんが、犬の舌は甘さに敏感です。この性質を利用し、苦い薬を飲ませるときガムシロップを混ぜてごまかすことがあります。

多糖(たとう)

 「多糖」とは、単糖分子がグリコシド結合によって多数重合した糖のことです。種類としては植物のグルコース貯蔵形態で、じゃがいもの根などに貯蔵される「デンプン」、動物のグルコース体内貯蔵形態で、筋グリコーゲンや肝グリコーゲンなどの形で貯蔵される「グリコーゲン」、動物が体内で消化できない多糖類の総称で、こんにゃくの「グルコマンナン」、こんぶの「アルギン酸ナトリウム」などに代表される「食物繊維」などが挙げられます。
 犬の唾液には、デンプンを分解する「アミラーゼ」という酵素が含まれていません。ですから人間のように、お米を噛んでいるうちに分解されて甘みが出てくるということはないでしょう。ドライペットフード生産で使われる「エクストルード加工処理」(押し出し成型)はデンプンをゼラチン化することによって、穀物中のデンプンの消化性を高めています。市販ペットフードに含まれるデンプンをすぐに消化できるのはそのためです。

食物繊維

 「繊維」(せんい, fiber)とは、グルコースがα結合ではなくβ結合した重合体の総称です。具体的にはセルロース、ペクチン、ヘミセルロースなどがあります。繊維がもつ最大の特徴は、犬の体内の酵素ではβ結合を切断できず、腸内にいる微生物の酵素だけが切断できるという点です。微生物によって分解された繊維は、さまざまな経路を経てピルビン酸という物質に代謝されます。そしてこのピルビン酸は短鎖脂肪酸に転換され、宿主である動物の腸管の健康を維持するための基となります。つまり腸内微生物は、動物の体内に住まわせてもらっている代わりに、腸の動きを活発にするという「家賃」を支払っているわけです。
繊維の働き
  • 消化管内の内容物の通過時間を調整する
  • 血中グルコースレベルを調節する
  • 腸管内のpHを減少させ、嫌気性の微生物の割合を増加させる
  • 微生物の短鎖脂肪酸、ビタミンK、ビオチン、二酸化炭素、メタンなどを産生を促す
  • 短鎖脂肪酸は結腸においてイオンや水分の吸収を促進する
  • 大腸粘膜の健康を維持する
 なお、微生物が生み出す短鎖脂肪酸(酪酸・プロピオン酸・酢酸など)は馬や牛といった草食動物にとってはエネルギーの75%を占めています。一方犬や猫にとってはエネルギー全体のわずか5%以下しか占めていません。この違いは、雑食である犬や肉食である猫の腸が短く、また食物の通過時間が速いため、微生物が繊維を分解するだけの十分な時間がないためです。腸の長さに関し、猫は体長の4倍、犬は6倍、ウサギは10倍、そして馬や牛では20倍程度と言われています。

犬とタンパク質

 「タンパク質」は主として筋肉やホルモンなど、アミノ酸を必要とする体内組織に変わります。炭水化物(糖質)、脂質からタンパク質は合成されませんので、外から食事として摂取する必要があります。タンパク質のカロリーは1グラム/4キロカロリーで、主な含有食品は肉の赤身部分・魚・大豆製品・卵白・牛乳・チーズなどです。最低摂取量に関しては、 NRC(全米研究評議会)が「理想体重1kgにつき1.6g以上」、AAHA(アメリカ動物病院協会)が「理想体重1kgにつき2.5g以上」と推奨しており、やや幅があるようです。

犬の必須アミノ酸

 タンパク質は体内で「アミノ酸」と呼ばれる物質に分解されます。このアミノ酸のうち、体内で合成できず食事として摂取する必要のあるものを「必須アミノ酸」(ひっすあみのさん)といい、犬では10種類、猫では11種類が確認されています。必須アミノ酸に関しては、AAFCO(米国飼料検査官協会)が最低摂取量を公開しています。基本的な作用と共にまとめましたので以下のページも合わせてご覧ください(下段の3項目を除いた全て)。 犬の必須アミノ酸
犬の必須アミノ酸
  • アルギニンアンモニアの生体内解毒を助け、免疫反応の活性化、細胞増殖促進し、コラーゲン生成促進などにより、創傷や褥瘡の治癒を促す。肉類、ナッツ、大豆、玄米、レーズン、エビ、牛乳などに多く含まれる
  • ヒスチジンヒスタミンなどの原料で、脂肪細胞からの脂肪の分解を促進 する。マグロなどに多く含まれる
  • イソロイシン俗に「筋肉をつくる」「疲労を抑える」といわれており、運動中の筋肉消耗の低減に一部で有効性が示唆されている。
  • ロイシン牛乳、ヨーグルト、海苔、和牛、鶏卵、食パン、大豆
  • リシンリシンが欠乏するとビタミンB群の1つ、ナイアシンの不足を招く。これによりペラグラ(ニコチン酸欠乏症候群)にかかることがある。クレソン、ホウレンソウなどに多く含まれる
  • メチオニン血液中のコレステロール値を下げ、活性酸素を取り除く作用がある。ホウレンソウ、グリーンピース、ニンニク、ある種のチーズ、トウモロコシ、ピスタチオ、カシューナッツ、インゲンマメ、豆腐、テンペ、肉類では鶏肉、牛肉、魚肉など大部分のものに含まれる。
  • フェニルアラニン脳内で神経伝達物質に変換される重要な必須アミノ酸
  • スレオニンカッテージチーズ、鶏肉、魚、肉、レンズマメ
  • トリプトファン肉、魚、豆、種子、ナッツ、豆乳や乳製品などに豊富に含まれる
  • バリンカッテージチーズ、魚、鶏肉、牛肉、ラッカセイ、ゴマ、レンズマメなどに多く含まれる
 これら必須アミノ酸をバランスよく含んだ食材はあまりないため、様々な食材を組み合わせて上手に摂取する必要があります。「動物性タンパク質=良質」という単純な話ではありません。

犬と脂質

 「脂質」は主として脳や筋肉に取り込まれてエネルギー源として活用されます。食事に含まれる脂質は、トリアシルグリセロール、リン脂質、コレステロール、コレステロールエステルなどです。余った脂質はインシュリンというホルモンの働きで脂肪細胞や筋肉細胞に蓄えられ、逆に空腹時は脂肪細胞に含まれる中性脂肪が分解され、糖質(グルコース)が合成されて利用されます。脂肪が蓄積する過程が肥満、逆に意識的に脂肪を減らす過程がダイエットです。脂質のカロリーは1グラム/9キロカロリーで、肉の脂身部分・バター・生クリーム・マヨネーズ・植物油・卵黄などに多く含まれています。
 犬の一日に必要な脂質の量に厳密な決まりはありませんが、カロリーが「9kcal/g」と高いので(炭水化物とタンパク質は、共に4kcal/g)、他の栄養素とのバランスを考えた上で摂取量を決めることが望まれます。

脂質の種類

 脂質は、栄養学上おおまかに「単純脂質」・「複合脂質」・「誘導脂質」の3種類に分けられます。このうち食事として摂取する機会が多いのは、単純脂質に属するトリアシルグリセロール、つまり「中性脂肪」でしょう(平たく言うと肉の”脂身”のことです)。中性脂肪は体内で分解され、脂肪酸(しぼうさん)とグリセリンに分かれます。さらに脂肪酸には、「飽和脂肪酸」(ほうわしぼうさん)と「不飽和脂肪酸」(ふほうわしぼうさん)があり、体内において多くの生理作用を示します。
脂肪酸の種類
  • 飽和脂肪酸飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)は畜産動物の肉に多く含まれ、常温で固体を維持します。病気との関連が示されいるため、人間でも過剰な摂取は推奨されていません。
  • 不飽和脂肪酸不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)は、植物や青魚の中に多く含まれ、常温でも液体のままです。1930年代の動物実験により、不飽和脂肪酸を欠くことで、皮膚障害、不妊などが引き起こされることが分かっています。ただし、過剰な摂取もまた健康を損なうことがあります。

犬の必須脂肪酸

 体内で他の脂肪酸から合成できないために、食事として摂取する必要がある脂肪酸を「必須脂肪酸」(ひっすしぼうさん)と呼びます。必須脂肪酸に関しては、AAFCO(米国飼料検査官協会)が最低摂取量を公開しています。基本的な作用と共にまとめましたので以下のページも合わせてご覧ください(下段の3項目)。 犬の必須脂肪酸
犬の必須脂肪酸
  • リノール酸エネルギーの利用と貯蔵、アラキドン酸の前駆物質。
  • αリノレン酸エネルギーの利用と貯蔵、エイコサペンタエン酸の前駆物質
  • EPAとDHAEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)共にエネルギーの利用と貯蔵、網膜や神経組織の発達、膜の流動性調節

犬とビタミン

 「ビタミン」は生物の生存や生育に必要となる微量な栄養素の総量です。脂に溶け、尿と共に排泄されないので過剰症がある「脂溶性ビタミン」と、水に溶け、尿と共に排泄されるので過剰症はほとんどない「水溶性ビタミン」とに分類されます。なおビタミンに関しては、AAFCO(米国飼料検査官協会)が最低摂取量を公開しています。基本的な作用や「欠乏症」、「過剰症」と共にまとめましたので以下のページも合わせてご覧ください。 犬に必要なビタミン一覧
脂溶性ビタミン一覧
  • ビタミンA皮膚や粘膜を丈夫に保ち、感染予防に効果がある。
  • ビタミンD腸管からのカルシウムの吸収を盛んにする。
  • ビタミンE血管壁を丈夫に保ち、動脈硬化を予防する。
水溶性ビタミン一覧
  • ビタミンB1糖質(炭水化物)をエネルギーに変える。
  • ビタミンB2体毛、皮膚、脂質の代謝を促進する。抗酸化作用。
  • ビタミンB6歯、皮膚の代謝を促進し胃酸の分泌を活性化する。
  • ビタミンB12ヘモグロビン、アミノ酸の生成を促進する。
  • ナイアシンニコチン酸とも呼ばれ、血管拡張作用と性ホルモンの合成に関与する。
  • 葉酸ビタミンMとも呼ばれ、DNAと赤血球の合成に関与する。
  • パントテン酸副腎皮質ホルモンの合成に関与する。
  • ビタミンCコラーゲンを生成し、カルシウムの代謝を促す。
 最後に挙げたビタミンCに関し、犬は体内で合成できるため、実は外部から摂取する必要がありません。逆にビタミンCが必要なのは、霊長類とモルモットと数種の魚類だけですので、私たち人間の方がマイナーの部類に入ります。ちなみに人間がグルコースからビタミンCを生成することができないのは、「L-グロノラクトンオキシダーゼ」と呼ばれる酵素が不足しているためです。

犬とミネラル

 「ミネラル」とは生体にとって欠かせない微量元素のことで、日本語では「無機質」(むきしつ)と呼ばれます。多すぎても少なすぎても体調不良に陥るため、摂取には慎重を要する栄養素です。なおミネラルに関しては、AAFCO(米国飼料検査官協会)が最低摂取量を公開しています。基本的な作用や「欠乏症」、「過剰症」と共にまとめましたので以下のページも合わせてご覧ください。 犬に必要なミネラル一覧
ミネラル(無機質)一覧
  • 鉄(Fe)ヘモグロビン中で酸素の運搬に役立つ
  • カルシウム(Ca)骨に沈着して骨格を形成する。
  • マグネシウム(Mg)カルシウムと共に筋肉の収縮を助ける。
  • リン(P)カルシウムと共に骨や歯を丈夫にする。
  • 亜鉛(Zn)酵素を活性化し、細胞分裂を正常に行わせる。
  • ナトリウム(Na)カリウムと共に血管の機能を正常に保つ。
  • カリウム(K)ナトリウムと共に血管の機能を正常に保つ。
  • ヨウ素(I)甲状腺ホルモンの成分となる。

犬と水

 人間は汗をかくことで体温調整を行うため、一日に1.5~2リットルの水分を体内から失います。一方犬はパンティング(あえぎ呼吸/panting)と呼ばれる方法で体温調整をしており、人間ほどは大量に水分を失うことはありません。しかしあえぎ呼吸に伴って蒸発する水分を補わないと、人間同様脱水症状(だっすいしょうじょう=体内の水分量が少なくなることで発症する、さまざまな症状)をおこしてしまいますので、特に夏場は飲み水が切れないよう注意が必要となります。 犬に必要な一日の水分量は、おおむね摂取カロリー数を「ml」に置き換えたものです。例えば1日の摂取カロリーが1,000kcalの犬の場合、およそ1,000ml(=1リットル)の水が必要ということになります。しかしこの数値は、犬の年齢、生活環境、運動の度合い、気温などによって左右されますので、あくまでも目安とお考えください。 犬が熱中症にかかった 犬との生活・夏の注意 水飲み容器の底に発生するピンクのシミ  ちなみに、水飲み容器を長時間放置しておくと、底にピンク色のシミのようなものが発生することがあります。お風呂場やトイレの便器でもおなじみのこのシミは、「セラチア」(Serratia marcescens)と呼ばれる細菌、もしくは「ロドトルラ」(Rhodotorula)と呼ばれる酵母の一種だと考えられます。害はほとんどありませんが、ひょっとすると鼻が敏感な犬や猫にとっては、忌避の原因になってしまうかもしれません。水は最低でも1日1回取り替え、容器の底をこまめに洗ってぬめりが残らないようにした方がよいでしょう。