犬の問題行動を助長する遺伝要因と環境要因~犬種のほか飼い主のワークスタイルも大きく影響
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犬の問題行動を助長する遺伝要因と環境要因

 8千頭近い犬を対象とした大規模な統計調査により、ある特定の問題行動を起こしやすい犬の特徴が明らかになりました(2016.8.29/オーストラリア)。

詳細

 調査を行ったのは、オーストラリア・クイーンズランド大学が中心となったチーム。2001年から2013年の期間、ブリスベンにあるペット動物行動クリニックを訪れた犬7,858頭のデータを統計的に精査した所、合計11,521個の問題行動が確認され、具体的に以下のような内訳になったといいます。
犬の問題行動と定義
  • 攻撃行動=2,928頭他の犬や人間、犬以外の動物に対して特に身体的な外傷を加えようとすること。毛を逆立てる、耳を立てる、吠える、テリトリーマーキングなども含む。
  • 無駄吠え=1,101頭高い声とピッチによる過剰な鳴き声で、人々に不快を感じさせること。
  • 不安行動=919頭危険に関連した刺激に対して感情的に反応すること。
  • 騒音恐怖=388頭雷や花火、爆発音といった不愉快な音に対し、感情的に反応すること。
  • 不適切な排泄=377頭人間にとって望ましくない場所におしっこやウンチをすること。マーキングも含む。
  • 恐怖症=313頭危険を及ぼすと考えられる何らかの刺激に対し、感情的に反応すること。
  • 破壊行動=295頭家屋や屋外にある所有物に望ましくない被害を与えること。
  • やんちゃ=186頭過剰な活動性と手に負えない振る舞い。
  • 脱走=178頭家や庭から逃げ出すこと。
  • 不服従=146頭飼い主のしつけに反応してくれないこと。
  • 関心を求める=80頭飼い主につきまとい、常に関心を集めようとすること。
  • しっぽ(影)追い=73頭自分のしっぽを追いかけながら、同じ場所をグルグルと回転すること。または、家や庭にある影を延々と追いかけ続けること。
  • 新しい環境への馴化=38頭新しい家に引っ越した際、犬が妙におとなしくなること。新しい犬や猫、その他の動物が家庭内に迎えられたような状況も含む。
  • 強迫的行動=37頭目的がないと思われる行動を延々と繰り返すこと。
  • 過活動性=31頭休むことなくせわしなく動き回ること。
  • 悲嘆に暮れる=30頭飼い主や親しい動物との別れに際し、塞ぎ込むこと。
  • 回転=30頭自分のしっぽ以外の物を追いかけて同じ場所をクルクル回ること。
  • 穴掘り=29頭庭などに飼い主が望まない穴を掘ること。
  • 吸い付き=28頭望ましくないものを口に入れて噛んだり吸ったりすること。自分の体も含む。
  • 食糞=27頭自分や他の動物の排泄物を食べてしまうこと。
  • 異食症=24頭栄養価のないものを食べてしまうこと。
  • 遠吠え=19頭大きな声で遠吠えすること。
行動クリニックを訪れた犬の問題行動TOP10  犬種に関しては、問題行動を起こしやすいものとそうでないものとが確認されました。具体的には以下です。数値はオッズ比で、数字が大きければ大きいほど、リスクが高いことを意味しています。
起こしやすい犬種TOP5
起こしにくい犬種TOP5
 また問題行動のうち、特に「無駄吠え」は犬種によって大きな影響を受けることが明らかになりました。具体的には以下で、数値はオッズ比です。
無駄吠えしやすい犬種
無駄吠えしやすい犬種のオッズ比(OR)一覧  犬種以外の性別、不妊手術の有無、飼い主の社会経済的ステイタスなども、何らかの形で犬の問題行動と関連していることが確認されました。中でも特に大きな影響を及ぼしていたのが「飼い主のワークスタイル」です。具体的には以下で、「20未満=家を空けるのは週20時間未満」、「不定期=勤務時間が一定でない」、「20~40=家を空けるのは週20時間以上~40時間未満」、「40~60=家を空けるのは週40時間以上~60時間未満」を意味します。また数値はオッズ比で、枠の色が濃ければ濃いほどリスクが高いことを意味しています。 飼い主のワークスタイルと犬の問題行動オッズ比(OR)一覧 An epidemiological analysis of dog behavior problems presented to an Australian behavior clinic, with associated risk factors

解説

 問題行動のリスクが高い犬種として挙げられたマスティフ、ジャーマンショートヘアードポインター、ベルジアンシェパードといった大型犬種は、日本国内での飼育頭数が極めて少ないため、データとしてはあまり参考になりません。日本で多く飼われているトイプードルミニチュアダックスフントチワワといった小型犬種が、もっとたくさん調査対象に含まれていたら、また違った結果になったと思われます。
 今回の調査で得られた大きな収穫の1つは、飼い主のワークスタイルが犬の問題行動に多大な影響を及ぼすという事実が判明したことです。犬はある程度の留守番はできるものの、やはり飼い主の姿が長時間見えないと、不安や恐怖から各種の問題行動につながってしまうものと推測されます。飼い主の不在によってほとんどすべての問題行動が助長されますが、特に「破壊行動」に関しては、家人の勤務体制が不定期だったり、週に20時間以上家を空けるようなワークスタイルの場合、発生リスクが20倍以上に高まるというから驚きです。
 犬は社会性の動物で、周囲に仲間がいないと本能的に不安を感じてしまうため、最低でも1人は家にいるという環境を作ってあげることが、何よりの問題行動予防策になるでしょう。なお「一人暮らしでも飼いやすい」などというペットショップの宣伝文句には何の根拠もありません。 犬の留守番のしつけ