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ダイズ(大豆)~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「ダイズ」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

ダイズの成分

 ダイズ(大豆, soy)は東アジア原産のマメ科の一年草。アジア圏では食用、世界的には飼料作物として広く栽培・利用されています。 ドッグフードの成分として用いられる「ダイズ」(大豆)  日本では「畑の肉」とも呼ばれ、「アミノ酸スコア」を始めとしてその栄養価が高く評価されています。大豆を原料とした食品としてはみそ、しょう油、豆腐、油揚げ、納豆、凍豆腐、豆乳、きなこ、枝豆などがおなじみですが、世界的に見ると食用での用途は1割にも達しません。他を圧倒しているのが「油製造用」で、使途のおよそ9割を占めています。次が家畜の飼料用ですが、数値はぐっと下がってわずか7%程度です。
 ドッグフードのラベルでは主に以下の様は表現として目にすることができます。
ダイズのラベル表記例
  • おから(豆類)
  • きなこ
  • こうや豆腐(粉末)
  • 全粒ひきわり大豆
  • 大豆
  • 大豆ミール
  • 脱脂大豆

ダイズは安全?危険?

 ダイズを犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはダイズに関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

消化性の低下

 ドッグフードに含まれている大豆の量があまりにも多いと消化性が低下してしまう可能性が指摘されています。
 8頭のメス犬(平均体重18.2kg)を対象とし、大豆ミールをさまざまな割合で含んだドッグフードを給餌して消化性がどのように変化するかが観察されました出典資料:Yamka, 2003。乾燥重量ベースのフード1kg中の含有量を151~461gに変化させたところ、大豆ミールの含有量が多いほど糞便の水分含量が減少し(389→265g)、逆に乾燥重量が増加した(49.8→131.4g)といいます。その他の変化は以下です。
大豆ミールと消化性の変化
  • 増加した項目回腸における乾燥物の通過量 | 大腸における乾燥物の消化性 | 糞便中への粗タンパク質排出量 | 回腸におけるタンパク質通過量 | 大腸における粗タンパク質の消化性
  • 減少した項目小腸における乾燥物の消化性 | 消化管全域における乾燥物の消化性 | 小腸における粗タンパク質の消化性
 こうした結果から調査チームは乾燥重量1kg中における大豆ミールの含有量が150gを超えると犬の消化性を悪化させると指摘しています。

トリプシンインヒビター

 トリプシンインヒビターとは、膵臓から分泌される消化酵素の一種「トリプシン」の働きを阻害する成分。加熱していない大豆にはトリプシンインヒビターが多く含まれているため、生のまま食べてしまうと消化不良になって下痢を起こしてしまいます。
 ラットを対象とした実験では、生の大豆を食べることで成長停滞や膵臓の肥大が起こることが確認されており、また膵臓癌との関係性も指摘されています。
 完全に乾燥させたダイズ種子1mg中のトリプシンインヒビター含有量は、19.59~118.68TIU/mg程度です(※TIU=国際単位)。加熱加工する過程でほとんどのインヒビターが失活しますので、高温高圧下で加工するでエクストルード製法で作られたドッグフードであれば消化不良を起こすことはないでしょう。

ダイズレクチン

 生の大豆にはレクチン(lectin)と呼ばれる成分が含まれています。この成分は細胞膜を構成する糖タンパク質や糖脂質の糖部分に結合することで、細胞凝集や細胞分裂の誘発などを引き起こすことが知られています。
 乾燥させていない状態のダイズ1mgに含まれるレクチンの量は0.105~9.038H.U./mg程度です(※H.U.=血球凝集性単位)。加熱加工する過程でほとんどのレクチンが失活しますので、高温高圧下で加工するでエクストルード製法で作られたドッグフードであれば消化不良を起こすことはないでしょう。

ダイズレシチン

 ダイズレクチンと非常に紛らわしいですが、大豆にはレシチン(lecithin)と呼ばれるリン脂質の一種も含まれています。犬においては生体内に大量に含まれており、また肝臓において自発的に生成されます。無毒性量(NOAEL)は体重1kg当たり1日5g超とかなり安全ですが、大量に与えたからと言って明白な健康増進効果が見られるわけでもありません。

大豆オリゴ糖

 大豆オリゴ糖とは、大豆に水を含ませて抽出される少糖類の総称です。具体的にはスタキオース、ラフィノース、ショ糖などのことを指し、大豆から油脂とタンパク質を除いた上で分離・精製されます。
 人間を対象とした調査では、慢性的な便秘患者20名(17~84歳)に大豆オリゴ糖を1日9g、4週間摂取させたところ、便秘の症状が改善したとされています。また臨床上健康な成人7名(21~52歳)を対象に大豆オリゴ糖の一種「マンニノトリオース」粉末を1日3g、7日間摂取させたところ、糞便中のビフィズス菌が増加し、クロストリジウム菌が減少したとも。
 上記したような変化が見られたことから、日本国内では特定保健用食品の成分として認められています。ラベルでは「大豆オリゴ糖が含まれておりビフィズス菌を増やして腸内の環境を良好に保つので、おなかの調子を整えます(1日摂取目安量 : 2~6g)」といった表現で目にすることができるでしょう。
 一方、犬を対象として大豆オリゴ糖を給餌試験をした調査はありませんので、犬における安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。

ダイズサポニン

 サポニン(saponin)とは植物界に広く分布する配糖体の一種。大豆の苦味成分として有名です。水溶液の状態では著しい起泡性をもち、溶血作用を示すとされています。
 日本では厚生労働省によって既存添加物の「乳化剤」として認可されています。成分の定義は「マメ科ダイズ(Glycine max MERRILL)の種子を粉砕し、水又はエタノールで抽出し、精製して得られたものである。主成分はサポニン(ソヤサポニン等)」です。
 使用基準は定められていませんが、ラットを対象とした調査結果から無毒性量は体重1kg当たり1日707~751mg程度と推計されています出典資料:医薬食品局食品安全部

イソフラボン

 イソフラボン(isoflavone)とは大豆、レッドクローバー、クズ、カンゾウなどのマメ科の植物に多く含まれているフラボノイドの一種。大豆に含まれるものは特に大豆イソフラボンと呼ばれます。
 犬においてはイソフラボンを体重1kg当たり1日50mgまで摂取して大丈夫という意見がある一方、長期的にはやはり内分泌系に影響をもたらすのではないかと指摘している研究班もあります。詳しくは以下のページでまとめてありますのでご参照ください。 犬に対する大豆イソフラボンの有害性と効果を教えて!

グリホサート

 グリホサート(glyphosate)は1970年代前半から世界中で使用されている除草剤の一種。商標名としては「ラウンドアップ(RoundUp)」などが有名です。
 アメリカにあるコーネル大学微生物学部のチームが行った調査によると、ドッグフードには高い確率でグリホサートが含まれていると言います 。含有量はフードに含まれるタンパク質や脂質とは無関係でしたが粗繊維の含有量と連動していることが明らかになりました。このことからグリホサートは植物原料由来だと推測されています。
 グリホサート耐性の大豆からほぼ100%の確率でグリホサートやその代謝産物であるAMPA(アミノメチルホスホン酸)が検出されるといいますので、ドッグフードに使用されている大豆が「遺伝子組換え」タイプである場合、汚染されている可能性を考慮した方がよいでしょう。詳しくは以下のページにまとめてありますのでご参照ください。 農薬「グリホサート」によるドッグフード汚染の実態

グレインフリーとの関係

 2018年7月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は一般的に「グレインフリー」と名の付くドッグフードと、拡張型心筋症との間に因果関係があるかもしれないとの警告を出しました。グレインフリーとは、フードの原料からとうもろこしや小麦と言ったメジャーな穀類を意図的に除外したドッグフードのことです。
 健康志向ブームを受けて年々人気を増していますが、メジャーな穀類の代わりに用いられているマイナーなタンパク源が タウリン欠乏症を通じて犬の拡張型心筋症を引き起こしているのではないかと疑われています。そして心筋症を発症した犬が食べていたフードには「ダイズ」が多く含まれていたと言います。現在も調査中で断定的なことは言えませんが、念のため頭の片隅に置いておいた方が良いでしょう。
 グレインフリーと心筋症との関係性については以下のページでも詳しく解説してありますのでご参照ください。 グレインフリーのドッグフードと犬の拡張型心筋症の関係 グレインフリーのドッグフードはやはり犬の心臓に悪い? 【2019年2月のFDA報告】グレインフリーのドッグフードと拡張型心筋症との関係性
節分の豆まきで使った大豆はしっかり片付けましょう。生のまま大量に食べるとおなかをこわす危険性があります。