トップ愛犬家の基本動物愛護法をもっと知ろう改正動物愛護法・2013年施行版

【改正動物愛護法の解説】2012年公布・2013年施行部分

 「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」が平成25年9月1日から施行されています。通称は「改正動物愛護法」です。新設された「第一種動物取扱業者」、および「第二種動物取扱業者」を中心に、とりわけ重要な部分だけを抜粋して解説します。

第一種動物取扱業者

 改正動物愛護管理法により、これまでの「動物取扱業者」は、「第一種動物取扱業者」 に名称が変更になり、様々な義務が課せられるようになりました。

第一種動物取扱業者とは?

 「第一種動物取扱業者」とは、営利目的で動物の販売、保管、貸し出し、訓練、展示、競りなどを行う人のことで、具体的には以下のような業種を指します。 動物取扱業者の規則
動物取扱業者・具体例
  • 販売ペットショップ・卸売業者・ブリーダー
  • 保管ペットホテル・ペットシッター・ペット預かりサービス
  • 貸し出しペットレンタル・モデル犬・モデル猫
  • 訓練ドッグトレーナー・出張訓練士
  • 展示動物園・水族館・サーカス・ドッグパーク・猫カフェ・乗馬施設・アニマルセラピー業者
  • 競りあっせん動物オークション

第一種動物取扱業者の義務

 動物取扱業の中でも、特に売買には様々な段階があります。具体的には生産(繁殖)、オークション、販売、購入などですが、その全てに様々な問題が付いて回ります。以下で述べる「第一種動物取扱業者の義務」の目的は、こうした各種の問題を、なるべく事前に防ぐことです。

感染性の疾病の予防

 動物に感染性の疾病がまん延しないよう、日常的な健康状態の確認、獣医師による診察、ワクチン等の接種が義務付けられました。
背景にある問題  利益優先のブリーダーである「パピーミル」が劣悪な環境で子犬を繁殖させ、パルボウイルスを保有した子犬をオークション会場に持ち込み、感染を広げるなど。

緊急時の受け渡し先

 営業を続けることが困難になったとき、動物の行き先が困らないよう、あらかじめ、譲渡先等について決めておくことが義務付けられました。
背景にある問題  経営不振に陥ったウサギカフェの経営者が、ウサギを保健所に持ち込んで殺処分を行政に丸投げするなど。

販売時の情報提供

 動物を販売する場合は、購入者に対してあらかじめ、その動物の現状を直接見せることが義務付けられました。また同時に、その動物の特徴や適切な飼養方法等について、「対面で文書を用いて」説明することも規定されています。
背景にある問題  インターネットを通じて購入した犬が、到着した翌日に熱を出し、そのまま死んでしまった。獣医の話によると感染症にかかっていたとのこと。販売者に連絡しようと思ったが、電話もメールもつながらないなど。

犬猫等販売業者の限定義務

 ペットの生体市場において70%以上を占める「犬猫の販売」に関しては、付随する様々な問題を予防するため、特別な規則が設けられました。「第一種動物取扱業者」の中でも特に、ペットショップやブリーダーなど、犬や猫の販売業に携わるものが対象となります。

犬猫等健康安全計画の提出

 これから新たに「第一種動物取扱業者」として登録するものは、都道府県等に対し、登録手続の際に「犬猫等健康安全計画」を提出することが義務付けられました。従来の「動物取扱業」登録者は、2013年11月30日までに提出しなければなりません。
 具体的な記載内容は以下。
犬猫等健康安全計画
  • 犬猫の管理体制、健康状態に対する確認の頻度や記録方法。かかりつけ獣医師の氏名や連絡先
  • 販売が困難になったり、繁殖に適さなくなった犬や猫の取扱い。具体的な譲渡先や、愛護団体との連携方法
  • 生後56日に満たない犬や猫の取扱方法
  • 飼養施設の管理方法。何人体制で管理しているのかなど
  • ワクチン接種やマイクロチップ装着の実施方法
  • 具体的な繁殖回数や幼齢・高齢期の繁殖制限
  • 繁殖に係る獣医師立会いや健康診断等(繁殖を行う場合)
  • 幼齢の犬猫に配慮した展示方法(展示を行う場合)

飼養状況の記載

 犬猫の販売業者は、犬猫の飼養状況について帳簿に記載し、保存することが義務付けられました。帳簿に記載する内容は以下11項目で、保存期間は5年間です。
犬猫の飼養状況・帳簿記載
  • 品種等
  • 繁殖者名等
  • 生年月日
  • 所有日
  • 購入先
  • 販売日
  • 販売先
  • 販売先が法令に違反していないことの確認状況
  • 販売担当者名
  • 対面説明等の実施状況等
  • 死亡した場合には死亡日及び死亡原因

所有状況の報告

 犬猫の販売業者は、毎年5月30日までに、登録を受けた都道府県等に対して以下4項目を報告する義務があります。報告の内容は「前年度」が対象です。
犬猫の所有状況の報告
  • 年度当初の犬猫の所有数
  • 月ごとに新たに所有した犬猫の所有数
  • 月ごとに販売等した犬猫の数、または死亡した数
  • 年度末の犬猫の所有数

販売日齢の規制

 生後56日(8週齢)に満たない犬猫の販売、引き渡し、展示が禁止されます。ただし、「2016年8月31日までは生後45日を期限とする」という条件付です。
背景にある問題  犬や猫の性格を形成する上で重要な「社会化期」を適正な環境で過ごさなかった幼獣が、後に問題行動を起こし、飼い主による飼育放棄の確率を高めてしまうこと。ちなみに犬の社会化期は生後3~12週、猫のそれは生後2~7週。

獣医師との連携

 犬猫の販売業者は、子犬や子猫、繁殖用の犬猫の健康を確保するため、かかりつけの獣医師と連携し、定期的に診察を受けることが義務付けられました。
背景にある問題  動物の福祉よりも自分たちの利益を優先する悪徳繁殖業者が、繁殖犬を狭いケージに閉じ込め、年に2回の出産を体力が続くまで行うなど。

犬猫の終生飼養

 犬猫の販売業者は、販売できなかった犬猫を終生飼養することが義務付けられました。これには第三者の里親を見つける努力をすることまでが含まれます。また、都道府県の動物愛護センターや保健所は、悪質な業者からの引取りを拒否することもできるようになりました。
背景にある問題  悪徳繁殖業者が、用済みになった繁殖犬(猫)を、行政に丸投げして殺処分させるなど。あるいは、経営の行き詰まったブリーダーが、飼育していた犬猫を保健所に持ち込むなど(ブリーダー崩壊)。

第二種動物取扱業者

 改正動物愛護管理法により、新たに「第二種動物取扱業」が設けられました。
 これは、「非営利の活動であっても、飼養施設を有し、一定頭数以上の動物の取扱いをする者」のことです。「一定頭数」の具体的な数字は以下で、「取扱い」とは譲渡・展示・訓練等を指します。 動物取扱業者編
第二種動物取扱業・一定頭数
  • 3頭以上馬・牛・ダチョウ等の大型の哺乳類、鳥類、特定動物
  • 10頭以上犬・猫・うさぎ等の中型の哺乳類・鳥類又は爬虫類
  • 50頭以上ハムスターなどそれ以外の動物
 第二種動物取扱業者に対しては、「飼養する動物の適正な飼養を確保するため、施設に必要な設備を設けること」、「脱走を防止すること」、「清潔な飼育環境を確保すること」、「騒音など近隣住民の迷惑を防止すること」などが義務付けられました。なお、不適切と判断された場合は、都道府県から勧告や命令が下されることもあります。
 上で示した「一定頭数」以上飼育していても、「取扱い」(譲渡・展示・訓練など)を行わない場合は、基本的に対象外です。しかし悪質な「アニマルホーダー」を予防するため、都道府県知事にはそうした飼育者に対して勧告する権限が与えられており(第3章・4節)、また地方自治体によっては独自の届出制度を設けているところもあります(新潟市など)。
アニマルホーダー
 「アニマルホーダー」(animal hoarder)とは、「アニマルコレクター」(animal collector)とも呼ばれ、飼育環境が整っていないにもかかわらず、次から次へと動物を招き入れ、劣悪な環境で多頭飼育する人のことです。一般的な特徴は以下。 ペットロスと獣医療(チクサン出版社, P19)
  • 能力に関係なくたくさんの動物を飼いたがる
  • 動物への愛はあるが、責任感がない
  • 動物の福祉を省みない
  • 獣医師や他の人間のアドバイスを受け入れない
  • 動物の譲渡を頑なに拒む
  • 常習性が高い
無節操に動物を多頭飼育する、通称「アニマルホーダー」(アニマルコレクター)  平成23年暮れ、新潟市内の競売物件の住宅で53匹のアメリカンショートヘアが飼育されている事実が発覚しました。猫が劣悪な環境で飼われていたことから多頭飼育の問題が浮上し、その結果、市は犬や猫を10匹以上飼育する場合、市への届け出を義務付ける「市動物愛護管理条例」を新たに制定しました。