トップ愛犬家の基本動物愛護法をもっと知ろう改正動物愛護法・2012年施行版

【改正動物愛護法の解説】2012年公布および施行部分

 2012年1月20日(金)、「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令等」が環境省自然環境局総務課・動物愛護管理室より公布されました。2012年6月1日から施行されています。

用語解説

 まずは法律の条文内に登場する専門用語に関する解説です。
動物愛護法・用語解説
  • 施行規則動物の愛護及び管理に関する法律施行規則、の略称
  • 夜間後8時から午前8時までの間
  • 競りあっせん業者オークションをはじめ、動物の売買のあっせんを会場を設けて競りの方法により行う事業者
  • 取扱業者細目動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目、の略称
  • 施行規則第8条販売業者の契約時説明義務=1:品種等、2:性成熟時の標準体重、標準体長、その他の大きさに関する情報、3:平均寿命その他の飼養期間に関する情報、4:飼養又は保管に適した飼養施設の構造及び規模、5:適切な給餌及び給水の方法、6:適切な運動及び休養の方法、7:主な人と動物の共通感染症その他動物がかかるおそれの高い疾病の種類及びその予防法、8:不妊又は去勢の措置の方法及びその費用、9:みだりな繁殖を制限するための措置、10:遺棄の禁止その他動物関連法令の規制内容、11:性別の判定結果、12:生年月日、13:不妊又は去勢の措置の実施状況、14:生産地等、15:所有者の氏名、16:病歴、ワクチンの接種状況、17:親及び同腹子にかかる遺伝性疾患の発生状況、18:その他適正な飼養又は保管に必要な事項

動物の展示・販売に関する改正

 正式には動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部改正といい、動物の展示、および販売に際するルール改正です。

犬及びねこの夜間展示規制関係

  • 動物取扱業のうち販売業者、展示業者、貸出業者が犬及びねこの展示を行う場合には、午前8時から午後8時までの間に行うこと。
  • 販売業者、展示業者、貸出業者が午後8時から午前8時までの間に営業する場合には、犬及びねこの飼養施設を他の場所と区分する等飼養施設内に顧客・見学者等が立ち入らないようにすること。
  • 動物取扱業者の登録時・更新時の申請事項に「営業時間」を追加する。
 大きく変更されたのは、今まで時間制限が無かった動物の展示時間が、午前8時から午後8時までの12時間に制限されたことでしょう。一部の終日営業ペットショップが、動物の健康を軽視しているという観点から導入されました。今後、午後8時以降にペットショップの店頭で動物の姿を見かけることはなくなるはずです。

動物の競りあっせん業者に関して

  • 実施した競りにおいて売買が行われる際に、販売業者により施行規則第8条に定められた販売に係る説明(生年月日、病歴等)が行われていることを確認すること。
  • 実施した競りにおいて売買された動物について、施行規則第8条に定められた販売時の説明に係る文書の写しを販売業者から受け取り、これを5年間保存すること。
  • 動物取扱業の登録に当たり、配置が必要である動物を取り扱う職員の実務経験として所要の実務経験を定める。
 競りあっせん業者とは主としてオークション会場の主催者を指します。ペットのオークション会場は全国で18ヶ所、小規模なものを含めると20ヶ所あり、ブリーダーの半数以上が販路として依存しているというのが現実です。ブリーダーの中には劣悪な環境でただただ乱繁殖を繰り返す、いわゆるパピーミルのような悪徳業者もいます。施行規則第8条の18項目に及ぶ説明義務を強化することにより、少しでも質の悪いブリーダーをふるいにかけることが、今改正の主眼といえるでしょう。

動物取扱業者に関する改正

 正式には動物取扱業者が遵守すべき細目の一部改正といい、動物の販売業者(ペットショップなど)、貸出業者(ペットレンタルなど)及び展示業者(猫カフェなど)などが遵守(じゅんしゅ)すべき規則が明記されています。

犬及びねこの夜間展示規制関係

  • 販売業者、貸出業者及び展示業者が夜間に営業する場合には、飼養施設内に顧客等が立ち入ること等により犬又はねこの休息が妨げられないようにすること。
  • 販売業者、貸出業者及び展示業者は、夜間に犬又はねこを顧客と接触させ、又は譲り渡し、若しくは引き渡さないようにすること。
  • 長時間連続して犬又はねこの展示を行う場合には、その途中において、展示を行わない時間を設けること。
  • 販売業者が夜間に、犬及びねこ以外の動物を展示する場合には、明るさの抑制等の飼養環境の管理に配慮すること。
 深夜営業や24時間営業をしている業者は、動物に無理強いしているのではないか、という観点から、今まで野放しだった営業時間、および営業方法に、若干の制約が加えられました。条文中の夜間は先述したとおり、午後8時から午前8時までの間を指します。

競りあっせん業者に関して

  • 競りの実施に当たって、当該競りに付される動物を一時的に保管する場合には、顧客の動物を個々に保管するよう努めること。
  • 競りの実施に当たって、当該競りに付される動物を一時的に保管する場合には、当該動物が健康であることを目視又は相手方からの聴取により確認し、それまでの間、必要に応じて他の動物に接触させないようにすること。
  • 競りあっせん業者は、実施する競りに参加する事業者が動物の取引に関する法令に違反していないこと等を聴取し、違反が確認された場合には、競りに参加させないこと。
  • 競りにおける動物の取引状況について記録した台帳を調整し、これを5年間保管すること。
 日本におけるペット動物たちの主要販売ルートであるペットオークションに関する規定です。病気を持った子犬や子猫がオークション会場に紛れ込み、病気を蔓延させるといった事例が過去にありました。こうした先例から、オークション会場には健康な動物だけを持ち込みましょう、というルールが改めて設けられたわけです。しかし条文にあるように、目視又は相手方からの聴取によりという極めていい加減なやり方は、依然残ったままのようです。

例外措置について

 正式には動物の愛護及び管理に関する法律施行規則の一部を改正する省令の一部を改正する省令という長たらしい名称です。2012年5月21日(月)に環境省から追加公布されました。
追加改正部分
午後8時から午後10時までの間に、成猫(1歳以上のねこ)を、休息ができる設備に自由に移動できる状態で展示する場合は、平成26年5月31日までの間は、当該成猫に関して、改正省令等のうち夜間展示規制に関する部分を適用しない。
 要するに午前8時から午後8時までの夜間展示規制に関し、猫カフェだけ例外措置をとるということを明記した省令です。猫カフェ業界から「猫は本来夜行性。夜の8時で展示を打ち切るのは猫の習性に反するから、もうすこし延長してほしい」という要望に応え、追加で公布されました。平たく言うと猫カフェで猫を展示する場合に限り、午後10時まで展示期限を延長していいですよ。ただしこれは平成26年5月31日までの暫定措置ですということになります。

ペット販売業者への引渡し

 2012年、8月22日に開かれた民主党の環境部門会議で動物愛護法改正案が了承され、生後56日以下の子犬や子猫について、繁殖業者からペット販売業者への引き渡しが禁じられる見通しになりました。
 当改正案は、親から早期に引き離すと社会性が身につかず、問題行動が多発して飼い主が飼育放棄する、という犬猫殺処分の一因を減らすことを目的としています。自民、公明、国民の生活が第一との4党実務者レベルではすでに合意され、今後、各党の正式な了承を経て、今国会で成立する見込みです。法施行後の3年間は「生後45日」、その後は「生後49日」とし、施行後5年以内に「生後56日」が適切かどうかを、環境省が改めて調査・検討するという流れになります。
 ペット販売業者にとって生後45日から60日くらいが売り時の旬といわます。日齢が進めば進むほど子犬や子猫は大きくなり、母性本能をくすぐるようなかわいらしさが徐々に薄れていくため、販売業者はなるべく早く動物を仕入れて店頭に並べたいところです。しかし上記した通り、動物の性格を形成する上で重要な社会化期とバッティングし、将来的に攻撃性や人見知りなど、問題となるような性格の遠因となる可能性も、一部の研究では示唆されています。
 販売業者への引渡し時期と殺処分数の増減を、明確に関連付けることは難しいかもしれません。しかし「夏休みで長期の旅行に出かけるからペットを保健所へ連れて行く」人や、「しつけの仕方がわからず、無駄吠えのひどいミニチュアダックスを捨ててしまう」人の背景に、ただ単にかわいらしい容姿に惹かれただけの衝動買いがあるならば、ペットを店頭に並べる時期を遅らせることには、十分意味があるでしょう。 犬の殺処分について 子犬の社会化期