トップ愛犬家の基本動物愛護法をもっと知ろう都道府県等の措置

第4章~都道府県等の措置

 第4章の「都道府県等の措置」では、犬猫を取り扱う業者や犬猫の飼い主に対し、都道府県が持っている権限について定めています。具体例を交えて詳しく見ていきましょう。
🚨2019年公布版に関してはまだ施行されていないため内容に反映されていません。変更・新設された部分に関しては取り急ぎ「改正法・2019年公布版」でご確認ください。

犬および猫の引き取り

 「犬および猫の引き取り」に関しては、第35条で定められています。

犬および猫の引き取りその1

 都道府県等は、犬または猫の引き取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。(※)ただし、犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の理由が無いと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。
 (※)以降は、2013年9月1日に施行された「改正動物愛護管理法」により新設された部分です。ペットショップなど、犬猫を販売する業者が、在庫となった動物を行政に丸投げしようとする場合、都道府県の判断でその引取りを拒否することができるようになりました。

犬および猫の引き取りその4

 都道府県知事等は、第一項本文の規定により引取りを行った犬または猫について、殺処分がなくなることを目指して、所有者がいると推測されるものについてはその所有者を発見し、当該所有者に返還するよう努めるとともに、所有者がいないと推測されるもの、所有者から引取りを求められたものまたは所有者の発見ができないものについては、その飼養を希望するものを募集し、当該希望するものに譲り渡すよう努めるものとする。
 2013年9月1日に施行された「改正動物愛護管理法」により新設された部分です。殺処分数をなるべく減らすため、犬や猫の返還、譲渡事業に、より一層の力を入れることを定めています。
 現在、行政が引き取った犬猫の殺処分率や返還・譲渡率には、地方自治体によって大きなばらつきがあります。こうしたばらつきが生まれる理由は、各自治体が「殺処分撲滅」と言う大きな目標に対して抱く情熱に、温度差があるためです。このたびの改正では、自治体ごとの成績に落差が生まれないよう、なすべき努力義務が成文化されました。

犬および猫の繁殖制限

 「犬および猫の繁殖制限」に関しては、第37条で定められています。
 犬または猫の所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼養を受ける機会を与えることが困難となるようなおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。
 飼育環境が整っていないにもかかわらず、むやみに繁殖するのはやめましょうという意味です。地方自治体によっては、野良猫の去勢・避妊手術に対して助成金を設定しているところがあります。こうした取り組みも、むやみな繁殖や、その結果としての殺処分増加に対する予防策の一環と言えるでしょう。
 以下は、各都道府県における助成金の有無一覧です。 犬・猫の引取り等手数料及び不妊・去勢手術助成金 犬の不妊手術

動物愛護推進員

 「動物愛護推進員」に関しては、第38条で定められています。イギリスやアメリカでは動物虐待防止協会(SPCA)のメンバーにある程度の捜査権が与えられており、「アニマルポリス」と呼ばれることもあります。一方日本国内における動物愛護推進員は「緑のおばさん」と同じ程度の権限しか与えられていません。平たく言うと、ルール違反者を注意するだけということです。動物虐待が疑われるケースがあったとしても、容疑者の家の中に入って事実を確認することはできませんし、動物虐待者を個人的に告発・起訴することもありません。

動物愛護推進員その1

 都道府県知事等は、地域における犬猫等の動物の愛護の推進に熱意と識見を有する者の内から、動物愛護推進員を移植することができる。
 第3章・第5節・第34条で定める「動物愛護担当職員」が、「地方公共団体の職員であって獣医師等動物の適正な使用及び保管に関し専門的な知識を有する者」と規定されているのに対し、「動物愛護推進員」にこうした条件はありません。

動物愛護推進員その2

 動物愛護推進員は、次に掲げる活動を行う。
  • 犬猫等の動物の愛護と適正な使用の重要性について住民の理解を深めること。
  • 住民に対し、その求めに応じて、犬猫等の動物がみだりに繁殖することを防止するための生殖を不能にする手術その他の措置に関する必要な助言をすること。
  • 犬猫等の動物の所有者に対し、その求めに応じて、これらの動物に適正な飼養を受ける機会を与えるために譲渡の斡旋その他の必要な支援をすること。
  • 犬猫等の動物の愛護と適正な使用の推進のために、国または都道府県等が行う施策に必要な協力をすること。
  • 災害時において、国または都道府県等が行う犬猫等の動物の避難、保護等に関する施策に必要な協力をすること。

動物愛護推進員その3

 都道府県等、動物の愛護を目的とする一般社団法人または一般財団法人、獣医師の団体その他の動物の愛護と適正な飼養について普及啓発を行っている団体等は、当該都道府県等における動物愛護推進員の委嘱の推進、動物愛護推進員の活動に対する支援等に関し、必要な協議を行うための協議会を組織することができる。
 具体例としては「熊本市・動物愛護推進協議会」が有名です。同協議会は、2002年、市が動物愛護団体や市獣医師会、ペット販売業者などに呼びかけて設立。通称「熊本方式」と呼ばれる方法論で、市内における殺処分数を0にまで減らした功績があります。