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「ボーダーコリー衰弱症候群」(BCC)の発症原因に関する詳細な調査

 運動によって誘発され、暑さによって増悪する謎の病気「ボーダーコリー衰弱症候群」の発症原因に関する詳細な調査が行われました(2016.8.30/アメリカ)。

詳細

 「ボーダーコリー衰弱症候群」(Border Collie Collapse, BCC)は、ボーダーコリーを始めとする牧羊犬が、激しい運動をした後に突然フラフラになり、立っていられなくなる謎の病気。「運動誘発性衰弱」、「運動誘発性高体温症」、「ストレス発作」、「ワブルズ」(wobbles)など様々な別名がありますが、すべてに共通しているのは「運動によって誘発される」という点と「暑さによって増悪する」という点です。その他の基礎知識は以下。
ボーダーコリー衰弱症候群(BCC)
  • 症状運動開始から5~15分で始まり、方向感覚と眼の焦点の喪失、精神作用の遅延から、「歩く時に前足を必要以上に高く上げる」といった異常行動へ進展し、最終的には体重を支えきれずにどちらか一方に倒れ込む。衰弱症状は5~30分間続くものの、熱中症のように数時間から数日間体調不良を引きずるということはない。
  • 原因基本的な原因は不明。これまで北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアなどで報告例があり、作業犬として働いている牧羊犬や、アジリティやフライボールに参加している競技犬に多いとされる。またペット犬でも、フェッチ(取って来い)運動を反復的に行った後に発症することが知られている。
  • 好発犬種ボーダーコリーオーストラリアンキャトルドッグ、オーストラリアンケルピー、オーストラリアンシェパードビアデッドコリーコリー。ボーダーコリーに関しては、特に作業犬ラインで好発する。
元動画は⇒こちら
 ミネソタ州立大学、サスカチュワン大学、カリフォルニア大学による共同調査チームは、謎の多い「ボーダーコリー衰弱症候群」の原因を解明するため、犬に課す運動量を統一した上で比較実験を行いました。調査に参加したのは、臨床上健康な16頭のボーダーコリーと、BCCを患う13頭のボーダーコリー。健康な16頭のうち11頭、BCC13頭のうち6頭には「ボールを用いた取って来い運動」を、そして残りの犬たちには「羊追い」をさせたところ、12頭で精神作用の異常や歩行異常が現れたといいます。そしてそれらは全てBCC犬だったとも。
 その後、全ての犬に対し直腸温度、心拍数、動脈血のpH、血液中の酸素量(PaO2)、重炭酸塩濃度、筋電図検査、バイオプシーを行いましたが、両グループ間に明白な違いは見い出せませんでした。さらに遺伝子検査により、高体温症に関連している「V547A」という遺伝子や、ラブラドールレトリバーの衰弱症候群に関連している「dynamin-1」という遺伝子を調べたものの、変異は見つからなかっといいます。
 こうしたデータから調査チームは、何らかの形で遺伝が関わっている可能性が疑われるが、現時点でボーダーコリー衰弱症候群の明確な原因はわからないという結論に至りました。 Border Collie Collapse Evaluation of Dogs with Border Collie Collapse, Including Response to Two Standardized Strenuous Exercise Protocols

解説

 ボーダーコリーを飼っていて「足元がふらつく」とか「歩き方がおかしい」といった症状に出くわした場合、「ボーダーコリー衰弱症候群」(BCC)のほか「セロイドリポフスチン症」(CL症)や「熱中症」といった疾患の可能性を考慮する必要があります。
 「セロイドリポフスチン症」(CL症)はボーダーコリーで多く見られる遺伝的疾患の一種です。1歳以降に発症し、進行性の運動障害、認知障害、視力障害を主な症状とします。「方向感覚を失う」など「ボーダーコリー衰弱症候群」(BCC)と似たような症状示しますが、BCCの症状は一時的であり、30分ほど安静にしていれば、まるで何事もなかったかのように元気になります。一方CL症の方は、年齢を重ねるごとに徐々に悪化し、脳細胞に蓄積したセロイドリポフスチン様物質のせいで最終的には死に至ります。
 BCCは決して致死的な病気ではありませんが、日中の激しい運動は全く別のルートを通じて犬の命を危険にさらすことがあります。それは「熱中症」です。ボーダーコリーは非常に活発な犬種で、わずか10分間の運動でも体温が41.7℃にまで急上昇するといいます。ですから、暑い環境であまりにも長時間運動させてしまうと、体内にたまった熱を十分に放出することができず、動けなくなってしまう危険があるのです。 フライングディスクなどの激しい運動はボーダーコリー衰弱症候群のリスクを高める  ボーダーコリーを飼ってる方は、犬に運動障害が見られた場合「CL症」、「BCC」、「熱中症」の可能性を念頭に置きつつ、適宜獣医さんに相談する必要があります。ただし「BCC」に関しては、獣医さんでも知らないことが多く、全く別の診断名がつけられることがあります。また、仮に正しく診断されたとしても、原因がよくわかっていないので確実な治療法も存在していません。「激しい運動を避ける」とか「暑い時の散歩を止める」といった予防策を徹底することが間接的な治療になります。上で紹介した動画などを見て、典型的な症状を覚えておけば早期発見に役立つでしょう。 ボーダーコリー 犬が熱中症にかかった