トップ犬の文化犬ぞりについて

犬ぞりを楽しめるツアー

 以下でご紹介するのは、国内で楽しめる犬ぞりツアーの一覧です。諸事情でサービスが中止になっていることもありますので、必ず事前に電話等でご確認ください。なお、ボックスの開閉にはJavaScriptが必要です。
  1. アウトライダー~北海道紋別郡

  2. マッシングワークス~北海道河東郡

  3. 北海道アドベンチャーツアーズ~北海道空知郡

  4. どんころ野外学校~北海道空知郡

  5. ルスツリゾート~北海道虻田郡

  6. ムーンライトレディース~北海道上川郡

  7. 水上高原リゾート~群馬県利根郡

犬ぞり体験動画
 以下でご紹介するのは、北海道旭川における犬ぞり体験を収めた動画です。 元動画は→こちら

犬ぞりに用いられる犬種

 以下でご紹介するのは、犬ぞりに用いられる犬、通称「そり犬」(sled dog)のうち、代表的な犬種です。

アラスカンハスキー

 アラスカンハスキー(Alaskan Husky)は、最もよく見られるそり犬で、体重は18~34キロ程度です。
 非常に多くの犬種が交じり合っており、一例としてはアナトリアンシェパードドッググレーハウンド、オオカミなどが挙げられます。
 短距離タイプと長距離タイプに分けられ、前者にはポインターサルーキが大きく影響し、また後者にはアラスカンマラミュートシベリアンハスキーが大きく影響していると考えられています。 アラスカンハスキー(Alaskan Husky)

アラスカンマラミュート

 アラスカンマラミュート(Alaskan Malamute)は、体重36~54キロの中型犬で、厚い被毛を特徴としています。スピードに関してはあまり期待できませんが、持久力と牽引力においては他の犬を圧倒しています。そのため、長距離の移動や重い荷物を抱えての移動において大活躍する犬種です。 アラスカンマラミュート(Alaskan Malamute)

カナディアンエスキモードッグ

 カナディアンエスキモードッグ(Canadian Eskimo Dog)は、30~40キロ程度の中型犬で、「エスキモーハスキー」、もしくは「キミック」と呼ばれることもあります。その身体能力は高く、一説では1匹で45~80キロの重量を引きながら、24~110キロメートル近くを移動することができるそうです。現在でも、カナダ北部に暮らすイヌイットたちが、アザラシやジャコウウシ、ホッキョクグマなどを狩る際に用いることがあります。 カナディアンエスキモードッグ(Canadian Eskimo Dog)

チヌーク

 チヌーク(Chinook)は、1900年代初頭、ニューハンプシャー州において作出された犬種です。元になった犬としては、マスティフジャーマンシェパード、グリーンランドハスキー、ベルジアンシェパードなどが挙げられます。現在はニューハンプシャー州の州犬に指定されており、2013年にはAKCによって「ワーキンググループ」に分類されました。ちなみに「チヌーク」の元々の意味は、イヌイット語で「温かい冬の風」のことです。 チヌーク(Chinook)

グリーンランドドッグ

 グリーンランドドッグ(Greenland Dog)はグリーンランド原産の犬種で、体が大きく、スピードと言う点では劣りますが、大変優れた持久力を持っています。この犬種は、現在でもグリーンランドに3万頭余りが生息しており、スノーモービルを抑え、冬場の主要な移動手段として活躍しています。 グリーンランドドッグ(Greenland Dog)

サモエド

 サモエド(Samoyed)は、シベリアのサモエド族が、トナカイを統率したり、そりを引くために作出した犬種です。被毛は白くふわふわで唇が黒く、口角を上げた表情は「サモエドスマイル」とも呼ばれます。探検家のアムンセンが、南極への初遠征でそり犬として採用したことでも有名です。 サモエド(Samoyed)

シベリアンハスキー

 シベリアンハスキー(Siberian Husky)は、シベリアを原産とする体重18~27キロ程度の中型犬です。元々は、アジア北東部に暮らすチュクチ族が、重い荷物を引いたり長距離を移動するために作出したと言われています。ゴールドラッシュを契機にアラスカへと輸出され、その後アメリカやカナダにも広まりました。 シベリアンハスキー(Siberian Husky)

樺太犬

 樺太犬(からふとけん)は、アイヌやニブフなどの先住民族が、そり犬や猟犬として利用することを目的に、樺太や千島列島で作り出した犬種です。日本では南極探検隊に同行したことで有名で、中でもタロとジロのお話は、誰もが一度は耳にしたことがあるでしょう。
タロとジロとは?
 1957年、南極地域を観測する目的で派遣された第一次越冬隊に、そり犬として22頭の犬が同行した。しかし隊は第二次越冬に失敗し、連れてきた犬たちを南極の東オングル島にある昭和基地に置き去りにしたまま帰国することを余儀なくされる。
 1年後、第三次越冬隊が昭和基地へ戻ってきたとき、残された犬の内、タロとジロの2頭だけが生き延びていた。国立科学博物館に展示されている樺太犬「ジロ」の剥製
 樺太犬は昭和40年代くらいまで、北海道を中心に使役犬として働いていました。しかし、社会全体の近代化や種の野犬化、及びエキノコックス病の蔓延などが影響し、1970年代頃にはほぼ絶滅してしまったと言われています。

犬ぞりの基礎知識

 以下では、犬ぞりに関する基本的な知識について解説していきます。

そりのタイプ

 犬がハーネス(胴輪)を介して引っ張る「そり」には、主に以下のようなタイプがあります。どのタイプのそりが選ばれるかは、目的次第です。
代表的なそりのタイプ
  • バスケット型そりバスケット型そりは、カナダ北部に暮らすイヌイット族に古くから伝わるそりです。そりを操縦するマッシャーは、雪面と接する左右の「ランナー」の上に立ち、犬たちをコントロールします。マッシャーの前にある、所々に隙間が空いたカゴ型の空間は、人や物資を乗せるためのものです。バスケット型そりは重量が軽いため、後述するトボガンそりよりも使い勝手が良く、またレースにも向いていると言われています。 バスケット型そりは軽く、操作性に優れる
  • トボガンそりトボガンそり(Toboggan Sled)は、カナダのエスキモーや北米のインディアンなどが伝統的に用いるそりです。 バスケット型そりのカゴがランナーから浮いた状態で固定されているのに対し、トボガンそりは直接乗っているというのが特徴です。こうした構造的特徴のおかげで重心が下がり、安定して物を運ぶことができますが、代償としてやや操縦性が低下します。深くてサラサラした雪面に適しているそりです。 トボガンそりは、積載重量が重い反面、操縦性は劣る
  • レースそりレースそりとは、犬ぞりレースに用いられるそり全般のことを指す広い言葉です。「マッシャー、食料、ケガをしたそり犬の全てを運ぶことができる」という条件さえ満たしていれば、基本的にどのようなタイプのそりでもOKですが、重量が軽いという点から、バスケット型の方が好まれる傾向にあります。近年は、カゴの中央に隙間を作り、マッシャーがまたぐようにして乗り込む「Trail Dagger」など、個性あふれるデザインも誕生しています。
  • 観光そり観光そりとは、犬ぞりに観光客を乗せるときに用いられるそりのことです。積載重量が重い点から、普通はトボガンそりが用いられますが、観光客自らがマッシャーとなって犬ぞりを体験するようなツアーでは、操縦しやすいバスケット型が用いられることもあります。
    Trails.com Arktic Koirareet

そり犬のつなぎ方

 そりを引かせる犬のつなぎ方には、大きく分けて2通りあります。一つは「タンデムタイプ」、そしてもう一つは「ファンタイプ」です。
そり犬のつなぎ方2種
  • タンデムタイプ「タンデムタイプ」(tandem hitch)は「ラインタイプ」とも呼ばれ、そり犬たちを一直線につなぐタイプです。森の中など、険しい地形を走るときに適しています。ちなみに「タンデム」(tandem)とは、「縦に並んだ状態」という意味です。 そり犬のつなぎ方その1~タンデムタイプ
  • ファンタイプ「ファンタイプ」(fan hitch)はカナダ北部のイヌイットに古くから伝わるタイプで、そり犬たちを扇形につなぎます。開けた地形を走るときに適しています。ちなみに「ファン」(fan)とは、「扇」という意味です。 そり犬のつなぎ方その2~ファンタイプ

そり犬の役割

 以下でご紹介するのは、タンデムタイプで直列につないだときの、そり犬の役割分担です。全ての犬はだいたいが同じ大きさで、同じペースで走ることを要求されます。 そり犬の役割~リード・ポイント・チーム・ホイール
  • リードドッグ「リードドッグ」(lead dog)は、先頭を走る犬のことです。20世紀の中ごろまではたいていは1頭でしたが、近年では2頭が主流になってきています。そりの操縦者であるマッシャーに対して忠実で賢く、他の犬よりも勇敢で直観力に優れていることが求められます。
  • ポイントドッグ「ポイントドッグ」(point dog)は、「スイングドッグ」(swing dog)とも呼ばれ、リードドッグのすぐ後ろを走る犬のことです。チーム全体の方向付けをするという役割を担っています。強壮で足が速く、チームをぐいぐい導く能力が求められます。
  • チームドッグ「チームドッグ」(team dog)は、ポイントドッグとホイールドッグに挟まれる形で走る犬のことです。チーム全体の牽引力を高める役割を担っていますが、6頭引きの場合は割愛されます。
  • ホイールドッグ「ホイールドッグ」(wheel dog)は、そりに最も近いポジションを走る犬のことです。体力があり、そりの操縦者であるマッシャーとも他の犬とも協調性があることが求められます。

マッシャーの仕事

 「マッシャー」(musher)とは、犬に人や物を運ばせる「マッシング」(mushing)を行う人のことを指します。犬が引っ張る対象はカート、カーゴ、スクーター、スキーヤーなど様々ですが、狭義では「雪面、もしくは地面の上でそりを引くこと」を指します。
 そりに乗ったマッシャーが犬をコントロールする際に用いるコマンドとしては、主に以下のようなものがあります。用いる指示語に関してはマッシャーによってまちまちですが、指示する内容は、どこの国においてもほぼ同じです。Mush for the Rush
そり犬への主な指示語
  • Mush→ 進め
  • Gee→ 右に曲がれ
  • Haw→ 左に曲がれ
  • Whao→ 止まれ
  • On by→ まっすぐ進め
  • Pick it up→ 加速しろ
  • Line out→ 並んで待て
  • Hold up→ じっとしていろ

犬ぞりの歴史

犬ぞりは、大昔から人々の生活を支えてきた  犬ぞりの起源は古く、およそ30,000~35,000年前のモンゴルではすでに存在していたと考えられています。BC1,000年頃になると居住地域が北極圏に近くなり、犬ぞりの役割はますます大きくなっていきました。
 こうした経緯によって誕生した犬ぞりは、シベリア・カナダ・アラスカなど、寒冷な高緯度地域において、スノーモービルが実用化されるまで主要な移動手段として活躍しました。その理由としては、そり犬は寒さに強く持久力に優れ、また粗食に耐える上に人間によく従い、さらには緊急時に人間や他の犬の食糧にもなることなどが挙げられます。かつての犬ぞりの存在感を示す事例しては、ジフテリア用の血清を、ネナナからノームまで1,085キロメートル輸送した1925セラムランが余りにも有名です。 南極探検におけるロアールアムンセンと犬ぞりチーム  そり犬はまた、氷の割れ目を避ける判断に優れていたため、北極や南極地方の探検にも多く用いられてきた歴史があります。例えばノルウェーの探検家であるロアール・アムンセンは、初めて南極点に到達した人物であると同時に、初めて南極に犬ぞりを持ち込んだ人物としても知られています。また映画「南極物語」で有名になったタロとジロは、日本の南極地域観測隊・第一次越冬隊のそり犬でした。
 現在は、アラスカ、カナダ、グリーンランドなど、一部の地域ではまだ現役で人間の生活を支えていますが、その他の地域では、「犬ぞりレース」や「犬ぞり体験」など、観光用のアトラクションとして用いられる機会が増えています。特に有名なのは、アラスカで行われる長距離犬ぞりレース、「アイディタロッド」(Iditarod)や「ユコンクエスト」(Yukon Quest)などです。 Sled dog Stardancer Historical Freight Dogs

現代における犬ぞり

 最初の犬ぞりレースは1800年代の中ごろに開催されたと考えられます。記録に残っているものとしては1886年に開催された、ミネソタ州のウィンターカーニバルの催し物が有名で、このイベントは今日でも続いています。

犬ぞりレースの誕生

犬ぞりレースの先駆けとも言える「All Alaska Sweepstakes」  1900年代に入ると、アラスカとユコン(カナダ最西部の州)におけるゴールドラッシュに伴い、アメリカ大陸北部における犬ぞりレースが、世界的な注目を集めるようになりした。ルールを伴う最初の公式な犬ぞりレースの記録は、1908年に遡ります。ノームからキャンドルまでの往復、およそ408マイル(656キロ)を走破するという「All Alaska Sweepstakes」がそれです。このレースにおける優勝者の記録は119時間15分12秒でしたが、犬ぞりレースはそれからわずか数年で熱狂的な人気を獲得し、わずか2年後の1910年に開催された同レースでは、74時間14分37秒という驚異的な記録が打ち出され、これはいまだに破られていません。
1920~30年代は、犬ぞりレースの全盛期  1920年代に入りゴールドラッシュが下火になると、鉱夫たちの帰郷と共に犬ぞりレースはニューイングランド(アメリカ合衆国北東部の6州を合わせた地方)へと持ち込まれます。1920~30年代は、犬ぞりレースの全盛期といってよいでしょう。スポンサーが付いたことによりプロの犬ぞりレース師が誕生し、北アメリカにおいて数々のレースが開催されました。メディアもこうしたレースの模様をこぞって報道したことから人気が高まり、1932年のプラシド冬季オリンピックでは、犬ぞりレースがデモンストレーションとして採用されたくらいです。
 近年では1992年、犬ぞりレースをオリンピックの正式種目として認知してもらおうと、「International Federation of Sleddog Sports」が設立されています。また1994年のディズニー映画「Iron Will」は、1917年に開催されたウィニーペグ(Winnipeg)からセントポール(Saint Paul)までの犬ぞりレースを題材としています。 Sled dog racing IFSS

日本国内における犬ぞり大会

 以下でご紹介するのは日本国内において定期的に開催されている犬ぞり大会の一覧リストです。開催が中止になっている年もあります。
  • 全国犬ぞり稚内大会映画「南極物語」に出演したタロとジロが稚内市に贈られたことがきっかけで開催されるようになった犬ぞり大会。「犬たちの甲子園」と呼ばれる。
    全国犬ぞり稚内大会
  • マッシャーズチャンピオンシップ in 岩手山毎年1月下旬に、岩手県八幡平市の岩手山で開催される犬ぞり大会。
    MC in 岩手山
  • えにわ犬ぞり大会北海道恵庭市にある「えこりん村」が不定期に開催している犬ぞり大会。
    えにわ犬ぞり大会
  • なよろ犬ぞり大会北海道名寄市で開催される犬ぞり大会。2011年からは中止が多い。
    なよろ犬ぞり大会

世界的に有名な短距離レース

 以下でご紹介するのは世界的に有名な犬ぞりレースのうち「短距離」に属するものの一覧リストです。List of sled dog races
  • American Dog Derbyアメリカ国内では最も古い歴史を持つ犬ぞりレース。
  • Baltic Winter Cupバルト海沿岸のエストニア、ラトビア、リトアニアの3つの国からなるバルト三国で開催される犬ぞりレース。コースには、雪面のほかむき出しの地面も含まれる。
  • ADVANCE Sled Dog Challengeオーストラリア国内では唯一、雪面において行われる犬ぞりレース。毎年、ディナー・プレインで開催される。
  • Tok Dog Mushers Association Race of Championsアラスカのトクにおいて50年以上の歴史を持つ犬ぞりレース。
  • Western Alaska Championship Sled Dog Raceアラスカのディリンガムで開催される、3日制の犬ぞりレース。
  • Caledonia Classic Dog Sled Racesカナダのフォートセントジェームズで開催される、3日制の犬ぞりレース。

世界的に有名な中距離レース

 以下でご紹介するのは世界的に有名な犬ぞりレースのうち「中距離」に属するものの一覧リストです。List of sled dog races
  • Can-Am Crownメーン州のフォートケントで開催される、250マイル(402キロ)の犬ぞりレース。
  • Copper Basin 300アラスカのルイーズ湖で開催競れる300マイル(483キロ)の犬ぞりレース。
  • Gin Gin 200アラスカのパクソンで開催される、200マイル(322キロ)の犬ぞりレース。
  • Pirenaピレネー山脈を西から東に横断する犬ぞりレース。
  • Tustumena 200アラスカのクラムガルチをスタート地点とする、200マイル(322キロ)の犬ぞりレース。
  • U.P. 200ミシガン州マーケットで開催される240マイル(386キロ)の犬ぞりレース。
  • Sandwich Dog Sled Racesニューハンプシャー州のサンドウィッチで開催される、25マイル(40キロ)と40マイル(64キロ)の犬ぞりレース。

世界的に有名な長距離レース

 以下でご紹介するのは世界的に有名な犬ぞりレースのうち「長距離」に属するものの一覧リストです。List of sled dog races
  • All-Alaska Sweepstakes世界で最初に行われた、ルールに則った犬ぞりレース。現在は不定期開催。
  • Femundlopetノルウェイで開催される犬ぞりレース。400キロ部門と600キロ部門がある。
  • Beringiaロシアのカムチャッカで開催される、950キロの犬ぞりレース。
  • Finnmarkslopetノルウェイのアルタをスタート地点とする1,000キロの犬ぞりレース。
  • Iditarod Trail Sled Dog Raceアラスカのウィロウからノームまでの1,200キロを走破する犬ぞりレース。
  • John Beargrease Sled Dog Marathonミネソタ州のダルースをスタート地点とする400キロの犬ぞりレース。
  • La Grande Odysseeフランスのポルトデュソレイユからオートモーリエンヌを結ぶ900キロの犬ぞりレース。
  • Vindelalvsdragetスウェーデンで開催される400キロの犬ぞりレース。
  • Yukon Questアラスカのフェアバンクスからユーコン準州のホワイトホースを往復する、1,000キロの犬ぞりレース。