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レンズ豆(ヒラマメ)~安全性と危険性から適正量まで

 ドッグフードのラベルに記された「レンズ豆(ヒラマメ)」。この原料の成分から安全性と危険性までを詳しく解説します。そもそも犬に与えて大丈夫なのでしょうか?また何のために含まれ、犬の健康にどのような作用があるのでしょうか?
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

レンズ豆(ヒラマメ)の成分

 レンズ豆(lentil)は西アジア原産の、マメ科ヒラマメ属一年草。ヒラマメとも呼ばれます。色が多彩で、黒、茶、オレンジ、グリーン、黄などがあります。 ドッグフードの成分として用いられる「レンズ豆(ヒラマメ)」  主要栽培国はカナダとインドで、日本では栽培されていません。インドの一部ではレンズ豆を用いたカレーが主食に近い地位を占めており、ライスやロティ(全粒粉を使った無発酵パン)とともに食されます。タンパク質を豊富に含んでおり、カロリー当たりの蛋白含有量では大豆についで豆類中2位です。

レンズ豆(ヒラマメ)は安全?危険?

 レンズ豆(ヒラマメ)を犬に与えても大丈夫なのでしょうか?もし大丈夫だとするとどのくらいの量が適切なのでしょうか?以下でご紹介するのはレンズ豆(ヒラマメ)に関して報告されている安全性もしくは危険性に関する情報です。

トリプシンインヒビター

 トリプシンインヒビターとは、膵臓から分泌される消化酵素の一種「トリプシン」の働きを阻害する成分。加熱していないレンズ豆にはトリプシンインヒビターが多く含まれているため、生のまま食べてしまうと消化不良になって下痢を起こしてしまいます。
 一方、エクストルード製法に代表される加熱製法によってこうした成分の作用を弱めれば、反芻動物以外の家畜動物に与えてもそれほど消化不良を起こさないとされています。

フィチン酸

 フィチン酸(phytic acid)は植物の種子などに多く存在するリンの貯蔵形態。イノシトール六リン酸とも呼ばれます。日本では厚生労働省によって既存添加物として認可されており、酸味料や製造用剤として利用されています。定義は「イネ科イネの種子より得られた米ぬか又はイネ科トウモロコシの種子より、室温時水又は酸性水溶液で抽出し、精製して得られたもの」です。
 フィチン酸は金属イオンと強く結合する性質を持っていることから、ミネラル(特に鉄や亜鉛)の摂取量が極端に少ない場合、生体内での利用が損なわれる可能性があります。ラットにおける半数致死量(LD50)は経口摂取の場合で5mg/kg超です。
 ウシを始めとする反芻動物は、腸内細菌がもつフィターゼと呼ばれる酵素のおかげでフィチン酸を分解することができるので、中に含まれるリンを効率的に利用できます。犬はこの酵素をもっていないため、摂取したフィチン酸は腸管を素通りして排泄されるだけです。

グレインフリーとの関係

 2018年7月、アメリカ食品医薬品局(FDA)は一般的に「グレインフリー」と名の付くドッグフードと、拡張型心筋症との間に因果関係があるかもしれないとの警告を出しました。グレインフリーとは、フードの原料からとうもろこしや小麦と言ったメジャーな穀類を意図的に除外したドッグフードのことです。
 健康志向ブームを受けて年々人気を増していますが、メジャーな穀類の代わりに用いられているマイナーなタンパク源がタウリン欠乏症を通じて犬の拡張型心筋症を引き起こしているのではないかと疑われています。そして心筋症を発症した犬が食べていたフードには「レンズ豆」が多く含まれていたと言います。現在も調査中で断定的なことは言えませんが、念のため頭の片隅に置いておいた方が良いでしょう。
 グレイフリーと心筋症との関係性については以下のページでも詳しく解説してありますのでご参照ください。 グレインフリーのドッグフードと犬の拡張型心筋症の関係 グレインフリーのドッグフードはやはり犬の心臓に悪い? 【2019年2月のFDA報告】グレインフリーのドッグフードと拡張型心筋症との関係性
犬におけるレンズ豆(ヒラマメ)の安全性、危険性、および適正量に関してはよくわかっていません。心筋症との因果関係がはっきりするまでは、大量に与えないほうが安全でしょう。