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老犬ホームの選び方・完全ガイド~基礎知識から優良店のチェック方法まで

 老犬ホームの基礎知識から優良店のチェック方法まで詳しく解説します。ペットホテルや引き取り屋との違いや、具体的なサービの内容を見ていきましょう!

老犬ホームとは何か?

 「老犬ホーム」とは年老いた犬を有料で預かったり譲り受けたりして介護をする施設のことです。老犬の夜鳴きや徘徊がひどい時のほか、飼い主の病気や老衰で飼育が困難になったときなどに利用されます。その他の基本的な疑問質問を以下にまとめました。 老犬ホームは犬を預かったり譲り受けたりして介護する施設

登録や資格は必要か?

第一種動物取扱業の「譲受飼養業」という届け出をする必要があります。

 「譲受飼養業」の定義は「有償で動物を譲り受けて飼養を行うこと」です。都道府県知事または政令市の長の登録を受けなければなりません。

どのくらいの数があるのか?

2018年4月の時点における「譲受飼養業」の登録業者数は138となっています。

 以下のグラフで示したように2014年からの5年間で業者の数が4倍近くに増えています。 2014~2018年における「譲受飼養業」の登録数推移グラフ  現在日本国内に存在している「老犬ホーム」の中には、ペットホテルが少なからず含まれています。ペットホテルは第一種動物取扱業の「保管」として登録されていますので、「老犬ホーム」と名乗っているペットホテルも含めると、上記した譲受飼養業者の数よりもっと多くなるでしょう。

施設の最低基準はあるのか?

法律で定められた数値基準はありません。業界の自主規制に任されています。

 環境省では「第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目」が規定されており、業者がクリアすべき項目が定められています。しかしケージの大きさなどに関して具体的な数値基準がないというのが現状です。

料金はいくら?

業者によってまちまちです。一般的には入所金、治療予備費、預かり料金から構成されています。

 「入所金」とは施設に入るに当たって一律でかかる料金のことです。「治療予備費」とは預かったペットに万が一のことがあった場合、治療費などに当てられる一時金のようなものです。「預かり料金」とは預かり期間に応じてかかる介護料金のことです。

預かり期間はどのくらい?

預かり期間の単位は業者によってバラバラです。

 短いものでは数時間、長いものでは一生涯(※この場合預かりではなく譲受)に及びます。その中間では1週間、1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月といった預かり期間が多く見られます。ペットホテル兼用の場合は短め、老犬ホーム専用の場合は長めというのが一つの目安です。

利用条件はあるのか?

入所に当たって利用条件が設けられていることがあります。

 入所に当たっては年齢制限が設けられていることがあります。例えば犬なら10歳以上、猫なら13歳以上などです。さらに終身一括プランで預ける場合は「13歳以上」など、より最低年齢基準が上がるのが通例です。その他、人に対して攻撃性を示す犬や感染性の病気にかかっている犬は受け入れを拒否されることがあります。施設の大きさや人員により体重制限を設けている所もありますので、どんな犬でも受け入れてくれるわけではありません。

サービス内容は?

老犬の健康や体調に合わせたサービスを受けられます。

 一般的なサービス内容は「散歩・運動」「体のケア」「食餌」「就寝管理」です。本来飼い主が行うべき老犬の介護を施設のスタッフが代わりに行ってくれます。

ペットホテルとの違いは?

法律上は違う登録が必要ですが、実際の線引きは曖昧です。

 老犬ホームの本来の登録は第一種動物取扱業の「譲受飼養業」です。しかし同じく第一種動物取扱業の「保管」との線引きが曖昧なためペットホテルも介護分野に参入できるのが現状です。ちなみに前者の定義は「有償で動物を譲り受けて飼養を行うこと」(=犬を生涯に渡って介護するというニュアンス)、後者の定義は「保管を目的に顧客の動物を預かる業」(=一時的に介護するというニュアンス)というものです。ペットホテルが年齢制限を撤廃して老犬を受け入れるようになれば、形の上では「老犬ホーム」になります。

ペットシッターとの違いは?

世話をする人が飼い主の自宅まで来てくれるという点です。

 ペットシッターの法律上の区分は第一種動物取扱業の「保管」です。「譲受飼養業」である老犬ホームでは犬を施設に譲渡して世話をしてもらいますが、ペットシッターの場合はスタッフが自宅にやってきて犬の世話をしてくれます。近年は介護に特化したペットシッターサービスを提供している施設もあります。

引き取り屋との違いは?

引き取り屋の明確な定義はありませんが、しいて言えばサービスのクオリティです。

 犬や猫を終生預かる業者の中には「引き取り屋」と呼ばれる人たちがいます。明白な定義はありませんが、ただ単に預かった犬をケージに軟禁し、十分なケアも散歩も行わず「介護」ではなく「飼い殺し」にしている業者を呼ぶことが多いようです。
犬の長寿化に伴って増えてきた老犬ホーム。次は選び方を見てみましょう!
↓NEXT:老犬ホームの選び方

老犬ホームの選び方

 急速に数を増やしている老犬ホーム。どのような基準で選べばよいのでしょうか?以下では老犬ホームを選ぶ際のヒントとチェックする方法について解説します。

利用するタイミング

 老犬ホームを利用するタイミングとして多いのは以下です。
  • 集合住宅で犬の夜鳴きに対する苦情が来た
  • シモの世話がしんどい
  • 犬の病気や怪我で生活全般の介助が必要になった
  • 睡眠時間が削られて飼い主が体調不良に陥った
  • 仕事などで世話の時間をとれない
  • 急な転勤や引越しで飼育が困難になった
  • 災害で家屋を失ってしまった
  • 急に犬アレルギーを発症した
  • 里親を探したが高齢犬なので敬遠された
  • 飼い主が病気で長期入院した
  • 飼い主が年老いて施設に入居することになった
  • 飼い主が死亡して家族に世話が託された
 犬の側にきっかけがあることもあれば、飼い主の側にきっかけがあることもあります。施設によっては、「預けたあとは知らん」という無責任な態度の飼い主を断るところもあります。

場所・立地のチェック

 施設の場所は自宅から近い場所にある方が望ましいと考えられます。
 施設に預けたとはいっても、老犬ホームはいわゆる「姥捨て山」ではありません。飼い主が頻繁に施設を訪れ、犬の様子をチェックするのが通例です。どのような交通機関を使うにしても、自宅から近いに越した事は無いでしょう。また犬が危篤状態に陥り臨終が近いという連絡を受けたとき、すぐに駆けつけることができるというのも大きなメリットです。犬の死に目に会えないという状況はペットロスの大きな要因として数えられていますから。

医療体制のチェック

 最寄りの動物病院がどこかをチェックします。あまりにも移動に時間がかかる場合、犬を連れていくにしても獣医師に来てもらうにしても、間に合わないという事態が生じてしまいます。その他、定期的な健康診断や予防接種の内容を把握しておきます。

設備のチェック

 犬が寝起きする場所、運動する場所、休憩する場所などを重点的にチェックしましょう。

寝起きする場所・ケージ

 アメリカ合衆国農務省(USDA)が設定しているガイドラインでは、犬の収容スペースに必要最低限の空間を「(体長+15cm)×(体長+15cm)×(頭の高さ+15cm)」としています。これはちょうど、壁に触れることなく体を自由に方向転換できる程度の広さです。また老犬ホーム協会に加盟している施設の場合、1頭当たりの最低限の広さが1.6平方mと規定されていますので、1つの目安になるでしょう。寝返りも打てないような狭いケージの中に閉じ込めているような施設は避けた方が無難です。 アメリカ合衆国農務省(USDA)が定める犬に必要な収容空間最低値  防音設備や空調設備が完備されているかを併せてチェックします。防音がしっかりしていないと、他の犬の声で睡眠不足に陥ってしまうかもしれません。空調がしっかりしていないと、熱中症低体温症に陥りやすくなります。老犬は体温調整が苦手なため、温度管理はとりわけ重要です。 犬の体温調整・暑いとき 犬の体温調整・寒いとき

運動する場所

 運動する場所が室内の場合、部屋が犬の足腰に配慮されているかどうかをチェックします。やたらと段差が多かったり、掃除のしやすさを優先してつるつるに滑るフローリングを採用している施設はあまり良心的とは言えません。
 運動する場所が屋外の場合は地面をチェックします。ドッグラン併設型施設なら芝や土がしっかりと手入れされているか、うんちがそのままになっていないか、穴ボコが放置されていないかなどを見ましょう。施設の外に散歩に出る場合は散歩ルートを確認し、危険がないことをチェックします。

サービス

 老犬ホームにおけるサービスは「散歩・運動」「ケア」「食餌」「就寝」などがあります。以下のようなをチェックしましょう。
散歩・運動のチェック
  • 歩行が困難な犬に介助がつくか?
  • 1人のスタッフが何頭の犬を管理する?
  • 散歩装具は何を使うのか?
ケアのチェック
  • ブラッシングマッサージなどのスキンシップがあるか?
  • 寝たきりの要介護犬に床ずれの予防や手当てが行われるか?
  • 持病がある犬のための投薬サービスはあるか?
食餌のチェック
  • 手作り食なのか市販フードなのか?
  • 介護の必要な犬が食べ物を吐き戻さないよう世話をしてくれるか?
  • チューブ給餌はできるか?
就寝のチェック
  • 監視カメラで寝ている様子をチェックしているか?
  • 常勤スタッフがいて排泄の介助、おむつ交換、徘徊などに対応できるか?
  • 夜鳴きがひどい犬に添い寝してくれるか?

スタッフのチェック

 施設で犬の世話にあたるスタッフの中には、民間資格である「老犬介護士」「愛犬飼育管理士」「小動物介護士」などを有している人もいます。国家資格ではありませんが、「3時間の講習を受けただけです」とか、自宅の隅にケージを置いて「我流でやってます」と言われるよりはいくらか安心できるでしょう。
 監視カメラ付きの24時間体制がとられているかどうかも併せてチェックします。カメラがあれば犬の変化に迅速に対応できると同時に、スタッフによる虐待まがいの行為を抑止することもできます。

運営会社のチェック

 施設の運営会社をよく調べてみることは有意義です。
 例えば生体販売系ペットショップを運営しているかもしれません。そしてその店の評判を調べてみると、動物の扱い方や保管の仕方に問題があるとの声が多く聞かれるかもしれません。もしこういう施設に出くわした場合、「老犬に対する扱いだけはまとも」と想定するのは楽天的すぎです。入所を決める前に、運営会社が動物に対してどのようなスタンスを持っているかは精査しておく必要があります。

老犬ホーム協会への加盟のチェック

 2018年、京都の業者が中心となり業界団体「老犬ホーム協会」が設立されました。設立の目的は、悪徳業者が参入して「老犬ホーム」という業態自体の信頼性を損なうことを予防することです。具体的には以下のような最低基準を合格ラインとして設定しています。
老犬ホーム協会認定基準
  • 1頭当たりの飼養スペースは1.6平方m以上
  • 健康状態に合わせた食事管理をする
  • 空調や防音施設を整備する
  • 職員1人の管理頭数が15頭を超えない
  • 飼い主からの訪問や面会要求に応じる
 協会に加盟しているという時点で分かる事は、施設が一定基準をクリアしている事、および運営者にサービスのクオリティに関する意識があることです。非加盟施設にこうした意識がないとは言いませんが、優良店を目指しているというスタンスが見て取れるのは大きなポイントでしょう。なお加盟施設は2018年12月時点で5店舗であり、経営破綻した場合に備えて預かり犬の飼育料も積み立てています。
 一方、協会に加盟していない業者の場合、基準はまちまちです。環境省が定める基準では具体的な数値基準がありません。その結果、ペットショップの片隅にケージを置いただけで「老犬ホーム」を名乗っている引き取り屋まがいの悪質な店舗もあります。
環境省の基準は「ケージ等は、個々の動物が自然な姿勢で立ち上がる、横たわる、羽ばたく等の日常的な動作を容易に行うための十分な広さ及び空間を有すること」といった漠然としたものにとどまっています(出典第一種動物取扱業者が遵守すべき動物の管理の方法等の細目)。

口コミのチェック

 老犬ホームのデータベースである「老犬ケア」の中には、「利用者の声」という形で口コミを公開している施設があります。こうした生の情報は利用者にしかわからない事ですのである程度役に立つでしょう。ただし「よかった」とか「お世話になりました」といったコメントはあるものの、具体的に何が良かったのかまでは漠然としてわからないことがあります。
 なおこのサイトに登録されている施設は、すべて運営スタッフが直接取材を行い、設備、衛生状態、スタッフのレベル、経営者の人柄までを丹念に調査しているとのこと。しかしその辺の情報は実際に施設を見学して初めて分かる部分です。聞きづての情報ではなく、入所の前に必ず自分自身の目で下見は済ませておきましょう。またネット上で「おすすめ記事」を見かけた際は、一体何を根拠にして他人に勧めているのかもチェックしたほうがよさそうです。

料金・価格のチェック

 老犬ホームの料金はおおむね入所金、治療予備費、預かり料金で構成されます。他の施設と比べてあまりにも安いところは要注意です。いわゆる「引き取り屋」かもしれません。
老犬ホームの費用一覧
  • 入所金「入所金」とは施設に入るに当たって一律でかかる料金のことで、都心にあったり「高級」を謳っている施設で多く見られます。
  • 治療予備費「治療予備費」とは預かったペットが病気にかかった時、取り急ぎ治療費に当てられる一時金のようなものです。不動産で言う「敷金」に近いもので、契約終了時に残金は返金されます。設定している施設はそう多くありません。
  • 預かり料金「預かり料金」とは預かり期間に応じてかかる介護料金のことで、ほぼすべての施設が設定しています。多くの場合「小型犬」「中型犬」「大型犬」「超大型犬」ごとに料金設定があり、預かり期間に応じて料金が増減します。一生涯に渡って介護を行う終生プランの場合は、厳密な意味では譲受飼養業の「譲渡料金」になるでしょう。
  • その他「医療費」とは病気の治療やワクチン接種にかかった費用のことです。介護が必要な犬への食事、排泄介助、投薬に対して「介護費」を設けているところもあります。犬や猫が死亡した場合、どのような返金規定があるのかも事前にお確かめ下さい。
なおペットには介護保険がないため、現時点では全額負担です。
↓NEXT:老犬ホームの裏側

老犬ホームに絡むトラブルや問題

 老犬ホームにまつわるトラブルや問題もちらほら聞かれます。業界団体「老犬ホーム協会」が設立されたきっかけも、国民生活センターに多数の苦情が寄せられたことでした。では具体的にどのような問題があるのでしょうか?

老老介護と飼育放棄

 年老いた飼い主による犬の飼育放棄が近年問題になっています。
 東京都福祉保健局は高齢者による飼育放棄が増加したことを受け、2016年に急遽「ペットと暮らすシニア世代の方へ」というパンフレットを作成・公開するという事態に陥りました。また「介護疲れ」を理由に、動物病院に犬の安楽死を依頼する高齢者がいるというのも現状です。 東京都が高齢者によるペット飼育放棄に歯止め  老犬ホームという受け皿ができたことにより、上記したような飼育放棄や安楽死の数が減ってくれるものと期待されます。
 しかしペットフード協会の統計データ「平成30年・全国犬猫飼育実態調査」によると、飼い主が高齢になりペットを飼えなくなった場合のペット受入施設の提供サービスを利用している人の割合は、60代で「1.8%」、70代で「3.4%」となっています。残りの90%以上の高齢者に万が一のことがあった場合、残された犬たちはどうなるのでしょうか?また年齢や気質(攻撃的)のため老犬ホームへの入所を断られてしまった犬たちはどうなるのでしょうか?

老犬ホーム内での動物虐待

 人間の老人を対象とした介護施設ではしばしばスタッフによる虐待問題がニュースに取り上げられます。老犬ホームにおいて同様の事件が起こらないとは言い切れません。
 老犬ホームの多くは「人に対して攻撃的な犬はお受けできません」という条件を設けています。こうした条件はスタッフの安全を確保すると同時に、噛まれたスタッフによる報復的な虐待を防ぐという意味があるでしょう。
 施設にモニタリングカメラが設置されているかどうかはとても重要です。カメラは犬たちの様子をモニタリングするだけでなく、スタッフの様子もモニタリングしてくれます。カメラがあることにより、密室内で起こりがちな虐待行為が予防されやすくなるでしょう。

悪徳業者の参入

 世の中には「引き取り屋」という業種があります。「老犬ホーム」とも「ペットホテル」とも呼ばない理由は、犬たちを管理する環境が劣悪だからです。法律上は第一種動物取扱業のはずですが登録すら怪しく、その営業形態は目も当てられません。こうした悪徳業者が「老犬ホーム」を名乗り、業界全体の信頼性を損なうことが危惧されています。
 サービスを利用する側も、「引き取り屋」と老犬ホームやペットホテルを混同しないよう気をつける必要があります。  業者を選ぶ際は必ず施設を自分自身の目で確かめるようにして下さい。もし見せてくれないような場合は、その時点で引き取り屋の可能性が大です。2009年、数千円~数十万円の料金を取って犬を引き取り、終生面倒を見ると言いつつ駐車場や山林に遺棄していたNPOが動物愛護法違反で刑事告発された事件を覚えている方も多いのではないでしょうか?このNPOも返還要求や犬との面会はおろか、施設の見学すら拒否していました。ゾッとしますね。
その他のチェック項目に関しては老犬ホームの選び方で詳しく解説してあります。もう一度読み直しましょう!