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犬の顔から心を読む訓練~耳・口元・目の変化から気持ちを察しよう!

 犬の顔から、考えていることや感情を読み取るための基礎知識と訓練方法です。普段なかなか着目しない犬の顔というものを意識的に観察していると、今まで見えていなかったペットの気持ちが見えてくるかもしれません。 犬語の話し方(文春文庫)

犬の口から心を読む訓練

 顔に表れる犬のメッセージの中で、最も視覚的に分かりやすいのが口です。以下では、口が作り出す表情とその意味について一覧でまとめました。
犬の口の形とその意味
  • 口が緩んで軽く開き、舌がわずかにのぞいたり下の歯より少し外に垂れている 緩んで軽く開いた口 幸せでのんびりした気分だ/何の心配もない顎の周辺についている咀嚼筋がリラックスし、口が自然と開きます。人間で言うと、晩ご飯を食べ終えてぼーっとテレビを見ているときのような心境に近いでしょう。さらに口角が目いっぱい引かれ、ちょうど人間が笑っているような表情を見せるのは、本当に穏やかな心境のときです。
  • 口を閉じ舌も歯も出していない 真一文字に結んで舌も歯も出していない口 面白そうだな/あれは何だろう?耳や頭を前方に傾け、何かに注目しているときによく見られる表情です。口を閉じているのは、あわよくば臭いをかいでやろうと、鼻から息を吸う準備を整えているからかもしれません。
  • 口は閉じ気味のまま、唇をめくり挙げて歯の一部をのぞかせる歯の一部を見せた状態の口 何かムカつくなぁ・・・/目障りだ!本格的な怒りを表明する前の段階で、軽いうなり声を伴うこともあります。人間で言うと舌打ちするような心境に近いでしょう。
  • 唇がめくれ上がって歯茎と犬歯が見え、鼻の上にシワがよっている歯を見せて鼻の上に明瞭なしわが出た状態 あっちに行け!/痛い目に遭うぞ! 武器である犬歯を見せることで相手を脅し、不要な争いを避けようとするときの表情です。鼻の上に寄ったしわは、ちょうど逆ハの字になりますが、これは人間が怒ったときの眉毛の形に似ているため、予備知識が無くても「怒っているぞ!」というメッセージが伝わってきますね。
  • 唇がめくれ上がって犬歯以外の全ての歯、および前歯の上の歯茎まで見せ、鼻の上にはっきりとしたシワがよっている犬歯を含めた全ての歯をむき出しにし、鼻の上のしわも明瞭な状態 消えうせろ!まさに一触即発の状態で、怒りが頂点に達しているときの表情です。万が一、犬をこのレベルまで怒らせてしまった場合は、背中を見せて逃げると追いかけてくる可能性がありますので、ゆっくりと横を向いて静かにその場から去りましょう。

犬の耳から心を読む訓練

 犬の耳は、その傾け方によってさまざまな感情を伝達します。ラブラドールレトリバーなど垂れ耳の犬では耳から感情を読み取ることは難しくなりますが、以下ではジャーマンシェパードなど立ち耳の犬をモデルとした、教科書的な耳の読み方をご紹介します。なお、生後に断耳された犬は、生まれつき立ち耳の犬に比べて耳を動かす能力が劣るため、適切なコミュニケーションをとることができないとする意見もあります。 犬の断耳
犬の耳の形とその意味
  • ピンと直立させる・やや前方に傾ける あれは何だ?直立させた耳は興味や好奇心を表す驚いたり興味を抱いたときに出る形で、対象から出る音をよく聞こうとする気持ちを表します。小首をかしげるしぐさを伴うときは、好奇心と同時に「なんだか面白そうだ!」というわくわく感を抱いていることを意味し、口を閉じて鼻に意識を集中しているときは「なんだかよく分からないなぁ」と対象をいぶかしむ気持ちを表します。
  • 頭につくように両耳をピッタリと後ろに寝かせる 怖いなぁ/争う気はありません後ろに寝かせた耳は恐怖心や服従心を表す恐怖心や服従心を抱いているときに出る耳の形です。耳をたたむという行為には、自分の体を小さく見せることで相手に対する敵対心が無いことを伝える効果があります。歯をむき出していなければ友好の合図になりますが、歯をむき出して鼻の上にしわができているようなときは、相手に対する服従心と攻撃心とが入り混じった、複雑な心境を表します。
  • 両耳を左右に広げつつ後方に引く 気に入らない/さあどうしようV字型の耳は中途半端な心境を表す前から見ると、耳がちょうど「V」の字型になるように広げた状態で、好きと嫌いの入り混じったあいまいな感情や、恐怖と怒りの入り混じったどっちつかずの感情を抱いているときに出やすい耳の形です。ぴんと立てるほどの自信はないけれども、完全に寝かせてしまうほどの服従心もない、といったところでしょう。
  • 耳を前に突き出したり後ろに引いたりする 今、考えているところです不安感や服従心を抱いているときに出やすい耳の形です。相手に対する接し方を思案しているときなどに見られます。人間で言うと、敬語の中に時折「ため口」を混ぜ込むような感じに近いでしょう。

犬の目から心を読む訓練

 犬の瞳孔が開いているときは、「なんか面白そうだな」という具合に興味や好奇心をかきたてられた心境を表します。逆に瞳孔が狭まっているときは、「つまんないなぁ・・」という具合に退屈を感じているときによく出ます。その他、犬の目つきや視線に表れる心境を以下にまとめます。
犬の目つき・視線とその意味
  • まっすぐ相手を見つめる 何か文句あるのか?/俺の方が強いんだでしゃばるな!まっすぐに相手を見据えるのは、多くの場合威嚇や優位性の表現です。人間で行った実験では、赤信号で止まった車の運転手や図書館の学生を、実験者がじっと凝視すると、通常よりもそそくさとその場を立ち去るそうです。このように「相手をじっと見据える」という行為には、人間の世界でも犬の世界でも、相手に威嚇や敵意を伝えるという意味があります。犬の視線による警告を無視し、相手を見つめ返してしまうと急に攻撃に転じることがありますので要注意です。なお、飼い主に対して行うアイコンタクトは全く別で、こちらは「どうしたらいいですか?」というお伺いの意味が強くなります。
     以下でご紹介するのは、2頭の犬が互いに見詰め合っている状況をとらえた動画です。一方の視線に気づいた他方の犬が、じっと見つめ返してしまいます。その結果・・・。 元動画は→こちら
  • 視線をそらせる 面倒は起こしたくありません/敵意はありませんので視線をそらせるという行為は、凝視とは逆に相手に服従心を表したり不要な争いを避けたいという願望を伝えます。詳しくは犬のカーミングシグナルのうちの犬が顔や視線をそらすをご参照ください。なお、ただ単にキョロキョロと辺りを見回しているときは、退屈な心境の表れです。
  • まばたきする 退屈だなぁ・・/あなたと争う気はありません興味津々のときは目を見開き、対象をよく見ようとするのに対し、寝そべっている状態でしきりにまばたきをしているような場合は、退屈な気持ちを表します。また、他の犬と視線を合わせた後でまばたきをした場合は、軽い服従心を示します。「降参です!」という完全な服従というよりは、「はいはい、あんたが大将です。」といった譲歩に近い服従心です。