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犬のノミ皮膚炎~症状・原因から治療・予防法まで

 犬のノミ皮膚炎について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬のノミ皮膚炎の病態と症状

 犬のノミ皮膚炎とは、ノミの唾液によって患部が赤くなったりかゆくなったりする状態を言います。
ノミ皮膚炎の原因となるネコノミ(Ctenocephalides felis)  皮膚上にノミがいるかどうかは、「1~2ミリ程度の褐色の虫を視認できること」「濡れたティッシュなどで被毛をふき取ると、じわっと赤いしみが広がるような糞(フリーダート)が被毛中に確認できること」「0.5ミリほどの米粒を小さくしたような卵が視認できること」などで判定します。しかし、犬が自分自身で患部を掻いたり舐めたりするため、症状があるにもかかわらず、ノミの本体を見つけることができないこともしばしばです。
 ノミ皮膚炎を引き起こしているものは、主として体内の免疫系によるアレルギー反応です。「アレルギー」とは、免疫反応が激しすぎて、本来守るべき生体に害を及ぼしてしまう状態のことで、アレルギーを引き起こす原因物質は「アレルゲン」(抗原)と呼ばれます。ノミ皮膚炎におけるアレルゲンは、ノミの唾液(Cte f1)と糞です。これらの物質中には、アレルゲンの卵とでも言うべき低分子「ハプテン」のほか、血管を拡張する「ヒスタミン」に似た物質が含まれており、侵入した場所に痛みやかゆみを引き起こします。

ノミによる主な症状

 ノミ皮膚炎の主な症状は以下です。アレルゲンとの接触から15~30分程度で現れる「I型アレルギー」と、アレルゲンとの接触から数時間以上かけて緩やかに現れる「IV型アレルギー」の両方が関わっているため、ノミに噛まれてから症状が出るまでの時間には個体差があります。好発部位はお尻、しっぽの付け根、後ろ足にかけての「フリートライアングル」(Flea Triangle)と呼ばれる部分です。
ノミ皮膚炎の主症状
犬のノミ皮膚炎
  • 小さな発疹
  • 局所的な脱毛
  • かゆみ
  • 貧血(重症)

ノミが多い時期・季節

 犬に食いつくノミの数を季節別で見ると、夏の中旬から秋にかけて多くなるようです。
 1996年9月から2004年8月の期間、アメリカ・ジョージア州にあるブロック郡で犬を対象としたノミの保有率調査が行われました(Lance A.Durden, 2005)。犬の体から採取された合計2,518匹のうち、最も構成比率が大きかったネコノミ、イヌノミ、ヒトノミの3種に関しては夏の終わりから秋にかけてピークが見られたといいます。 ノミが犬に食いつきやすい季節は夏から秋にかけて  また2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院でノミの保有率調査が行われました(Farkas, 2009)。ノミの保有が確認された犬319頭(14.1%)を調べたところ、感染率は8月(夏の終わり頃)が最高で27.1%、5月(春の終わり頃)が最低で5.4%だったといいます。
 さらに2003年7月から2004年6月の期間、ドイツ国内3地域にある12の動物病院でノミの保有率調査が行われました(W.Beck, 2006)。その結果、99頭(5.13%)の犬で感染が確認され、7月~10月が最多、11月~5月が最低を記録したといいます。ただし季節ごとの際は統計的に有意ではないと判断されました。
 アメリカとヨーロッパではずいぶんと距離が離れていますが、夏の中旬(7月)から秋(10月)にかけて多くなるという傾向は共通のようですので、日本でも同様の傾向があるものと推測されます。飛んで火の中に入る夏の虫がいる一方、犬の被毛の中に入ってしまう虫もいるようです。

ノミの見つけ方

 ノミを見つけるときの最も簡単な方法は犬が後ろ足で耳などを「カキカキ」している姿を確認するというものです。しかし症状が出る前の段階で見つけることができればそれに越したことはありません。具体的には以下のような方法があります。

寝床・ベッドをチェックする

 犬の体に食らいついたノミが寝ている間に落下し、寝床やベッドにとどまっていることがあります。犬が頻繁に使う場所にコロコロをかけてみましょう。生きた成虫や成虫の死骸がくっついてきたら感染確定です。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。また細くて白っぽいものがうねうねと動いている場合は幼虫かもしれません。気味が悪いので早急に駆除しましょう。 【写真元】Larval Flea in dog bed ノミの幼虫は茶色い成虫とは違って白っぽい色合いをしている  一方、まるで粉コーヒーのような黒~焦げ茶色のカスが付いてきた場合は、単なるゴミなのかそれともノミの糞なのかを判別しなければなりません。取れたカスを軽く湿らせてみましょう。溶けて赤茶色に変色した場合はノミの糞である可能性が大です。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。

犬の体表面をチェックする

 犬の被毛をかき分け、ノミの成虫やフリーダート(糞)がないかどうかを確認してみましょう。ちょこまかと動き回る0.5~2mmほどの茶色い虫がいた場合はノミです!その他の部位にも生息しているはずですので、殺ノミ薬を投与してとっとと退場してもらいましょう。 【写真元】Fleas, how to find and identify on dogs and cats ノミが寄生している場合、体表面をちょこまかと動き回る姿を肉眼で確認できる  黒っぽい被毛の犬では見えませんが、白~クリーム色の犬の場合、毛の中にインスタントコーヒーのような黒っぽいカスが付着していることがあります。ティッシュを濡らしてそのカスを取ってみましょう。紙の上で溶けて赤茶色に変色した場合はノミの糞かもしれません。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。

ノミ取りコームをかける

 まず床に白っぽい紙を敷き、中性洗剤を溶かした水をカップラーメンの容器などに入れて用意しておきます。次に紙の上に犬を立たせ、クシ目の粗い「ノミ取りコーム」を使って被毛をブラッシングしてみましょう。コームの間にノミの死骸や生きている成虫が挟まった場合は、中性洗剤溶液の中にコームごと入れて溺死させます。 【写真元】How to Check for Fleas on your Dog or Cat 黒っぽいカスが水に溶けて赤黒く変色したらノミの糞(フリーダート)の可能性が高い  コームの間にインスタントコーヒーのような黒っぽいカスがついてきた場合は、いったん紙の上に置き、水で軽く湿らせてみましょう。溶けて赤茶色に変色した場合は「フリーダート」と呼ばれるノミの糞です。動物病院などで殺ノミ薬を処方してもらいましょう。 犬のブラッシングのやり方

犬のノミ皮膚炎の原因

 犬に寄生して皮膚炎を引き起こすノミにはたくさんの種類があります。2001年、ドイツ国内にある625の動物病院を受診した犬のうちノミの保有が確認された294頭を調べたところ、合計795匹が確認され、具体的には以下の種類が含まれていたといいます(Vissel, 2001)。
犬に寄生するノミの種類
  • イヌノミ(Ctenocephalides canis)
  • ネコノミ(Ctenocephalides felis)
  • ヒトノミ(Pulex irritans)
  • ハリネズミノミ(Archaeopsylla erinacei)
  • キツネノミ(Chaetopsylla globiceps)
  • キタネズミノミ(Nosopsyllus fasciatus)
  • ヨーロッパアナグマノミ(Paraceras melis)
  • よくわからないノミ(Hystrichopsylla talpae)

犬に多いノミの種類は?

 上記したように、犬に寄生するノミにはたくさんの種類があります。ノミごとに好物としている動物種があることは確かですが、絶対その動物にしか食いつかないというわけではありません。犬に食いつきやすいノミを多い順に並べるとネコノミ、イヌノミ、ヒトノミとなります。 犬に寄生することが多いネコノミ、イヌノミ、ヒトノミの外観比較写真  1996年9月から2004年8月の期間、アメリカ・ジョージア州のブロック郡で犬を対象としたノミの保有率調査が行われました(Lance A.Durden, 2005)。その結果、8種2,518匹が採取され、多い順にネコノミ(オス389+メス1,148)、イヌノミ(オス250+メス285)、ヒトノミ(オス106+メス213)、ニワトリフトノミ(オス3+メス89)という内訳だったといいます。 犬に食いつくノミとしては国や地域を問わずネコノミが多い  また2005年、イギリス国内にある31の動物病院で犬のノミ保有率調査が行われました(Bond, 2007)。その結果、合計2,653頭のうち6.82%でノミ感染が確認されたといいます。回収されたノミの種類はネコノミが圧倒的に多く93.2%(313匹)、イヌノミはわずか5匹だけだったとのこと。
 さらにスペイン国内79ヶ所で744頭の犬を対象としたノミの保有率調査が行われました(Gracia, 2007)。その結果、ネコノミが88.02%、イヌノミが10.38%、ヒトノミが1.47%、ニワトリスナノミが0.13%という内訳だったそうです。
 上記したように、国や地域が変わっても犬に寄生しやすいのは「ネコノミ」であるようです。犬なのになぜかネコノミに好かれるんですね。

ネコノミのライフサイクル

 犬に寄生するノミとして代表的なのは「ネコノミ」(Ctenocephalides felis)です。このノミは体長が1~3ミリで平べったく、赤褐色をしています。「ネコノミ」という名前がついていますが猫だけに取りつくわけではなく、犬やその他の動物にも寄生し、また人間の膝から下の部分に噛み付いたりすることもあります。ネコノミの一般的なライフサイクルは以下です。 Understanding the Flea Life Cycle
ネコノミのライフサイクル
ネコノミのライフサイクル:卵~幼虫~さなぎ~成虫
  • 環境中における割合は約50%で、生息期間は2日~2週間。砂粒よりも小さく白い。動物が動くと地面に落ちて広がる。湿度と温度が適切になった時を見計らって生まれる。
  • 幼虫環境中における割合は約35%で、生息期間は5~20日。光を嫌う性質があるため、被毛やじゅうたんの奥の方に入り込む。成虫の排出した糞(フリーダート)に含まれる血液成分を栄養とする。
  • さなぎ環境中における割合は約10%で、生息期間は数日~数週間。ただし条件が合わなければ数か月~数年眠り続けることもある。表面がべたべたしているので被毛やじゅうたんについて落ちないようになっている。また化学物質からも守られている。動物の温度や振動、二酸化炭素濃度を感知して孵化する。
  • 成虫環境中における割合は約5%。生まれて数時間するとすぐに血液を吸い始め、数日で産卵する。卵の数は1日40個に及ぶこともある。最も好む環境は、湿度70%、気温21~30℃程度。
 このネコノミは、宿主となる動物の血を吸うだけではなく、病原菌を媒介することでも有名です。代表的なものはバルトネラ(猫ひっかき病)、発疹熱、瓜実条虫、ライム病ボレリアなどです。

ノミの感染リスク

 すべての犬が等しくノミに食われるわけではありません。被毛の長さのほか、暮らしている環境が感染リスクを高めたり低めたりします。では一体どのような生活環境が犬の「食われやすさ」に影響を及ぼしているのでしょうか?

郊外での生活

 「郊外に暮らしていること」がノミの感染リスクになっている可能性があります。
 2005年12月から2006年11月の期間、ハンガリーにある13の動物病院でノミの保有率調査が行われました(Farkas, 2009)。その結果、都会における保有率が12.0%(161/1,343頭)だったのに対し、郊外における保有率が 20.2%(387/1,924頭)と大きな開きを見せたといいます。飼い主の51.4%は過去一年間以上予防薬を使用しておらず、郊外での使用率は都会の1/5程度だったとのこと。さらに環境中からノミを除去しようとする努力はほとんどなされていなかったそうです。

屋外での活動

 「屋外にいる時間が長い」犬の場合、ノミが体に付着する危険が高まってしまうかもしれません。
 2005年2月~2006年にかけ、イタリア南部にある4つの動物病院でノミの保有率調査が行われました(Rinaldi, 2007)。その結果、1,376頭のうち246頭(17.9%)で保有が確認され、感染リスクとして「同居動物(犬や猫)がいる」「使役目的(猟犬や番犬)が定まっている」「野良犬である」ことが危険因子として浮上してきたといいます。基本的にノミの感染は年中観察されたものの、とりわけ6~10月に多かったとのこと。

高い気温

 外の気温が高くなるとノミの動きも活発になるようです。
 スペイン国内79ヶ所で744頭の犬を対象としたノミの保有率調査が行われました(Gracia, 2007)。ネコノミに限ってみると「一戸建て>アパート」「他のペットとの同居」「年の平均気温が高い」ことが感染リスクで、イヌノミに限ってみると「郊外>都心」「暖かい季節」「年の平均気温が低い」「年間降水量が少ない」ことが感染リスクになっていたとのこと。さらにイラン国内3地域で83頭の犬から407匹のノミ5種が採取されました(Tavassoli, 2010)。感染リスクを調査したところ、気候が温暖で降雨量が多い地域で多く見られたといいます。またノミは2月と3月を除いて年中見られ、最高が8月の24.7%、最低が1月の1.7%だったとも。

ノミのジャンプ力対決!

 2010年、フランスのトゥルーズにある国立獣医大学のチームがネコノミとイヌノミを用いたオリンピックを開催しました(Cadiergues, 2010)。主な結果は以下です。
幅跳び対決
  • ネコノミ19.9±9.1cm | 最低が2cm | 最高が48cm
  • イヌノミ30.4±9.1cm | 最低が3cm | 最高が50cm
高跳び(垂直跳び)対決
  • ネコノミ→13.2cm
  • イヌノミ→15.5cm
 上記したように、ジャンプ力に関しては幅跳びにしても高跳びにしてもイヌノミの方が一枚上手のようです。

犬のノミ皮膚炎の治療

 犬のノミ皮膚炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。

ノミ皮膚炎の治療・予防法

 以下は犬がノミ皮膚炎にかかってしまったときに優先的に行うべき治療法、および再発を防ぐための予防法です。

対症療法

 まずは症状の軽減を目的とした治療が施されます。アレルギー反応を軽減する抗アレルギー薬や、かゆみを抑える抗掻痒薬(こうそうようやく)などが投与されます。

ノミの駆除

 ノミを殺す各種の薬剤が投与されます。錠剤タイプもありますが、簡便さから近年は滴下式(スポットタイプ)の薬が多用されます。ノミは通年性でどの季節にも見られますが、夏から秋にかけて多くなる傾向がありますので、特にこの時期は予防を忘れないよう注意しましょう。なお犬用の薬剤として用いられている「ペルメトリン」と呼ばれる成分を猫に使用してはいけません。この成分は犬に対しては毒性を発揮しないものの、誤って猫に用いてしまうと最悪のケースでは死んでしまいます。 猫のペルメトリン中毒(姉妹サイト) 犬の寄生虫対策・完全ガイド

生活環境からノミを駆除する

 「ネコノミのライフサイクル」で解説した通り、環境中における成虫の割合は、わずか5%程度にすぎません。ですから成虫を殺すだけではダメで、卵、幼虫、さなぎといった他の様態にあるノミもまた、環境中から一掃する必要があります。そのため、「掃除機をまめに掛ける」「掃除機のごみパックをすぐに交換する」「シーツや布製品をこまめに洗濯する」といった日々の努力が必要となります。
 また屋外で過ごす時間の長さや使役目的(番犬や猟犬)が感染リスクを高めるという可能性が指摘されています。番犬として1年中庭につなぎっぱなしにしているとノミに食われやすくなりますので、できれば室内飼いに切り替え、それができない場合は犬小屋の清掃とノミ駆除薬の投与をしっかり行うようにします。

ノミ駆除薬の選び方

 ノミ駆除薬(殺ノミ薬)の有効成分には非常に多くの種類があり、それらを投与する方法にも薬剤を体表に垂らす「滴下式」と、薬剤を口から投与する「経口式」があります。2016年に行われた実験的な調査では、どちらの方法でも投与後24時間で犬に寄生していたノミの駆除に成功しています(獣医畜産新報, 2016, P262)。しかしより細かく見ていくと、両者の間には若干の違いがあるようです。
滴下投与型の殺ノミ薬
  • 特徴体の表面に薬剤をたらすタイプのノミ駆除薬です。犬の体に取り付いたノミは体表面に付着した有毒成分と接触することで死滅します。
  • メリットノミが吸血を行う前に駆除できる可能性が高い | 血液の喪失や吸血部位の皮膚炎が無い | ノミの体液が注入されないため、アレルギーを発症しない | ノミに刺されないため病原体が媒介されない
  • デメリット効き目が現れるまでに時間がかかる | 体の部位によって効果にばらつきがある | シャンプーによって効果が減少する
経口投与型の殺ノミ薬
  • 特徴口に入れて飲み込ませるタイプのノミ駆除薬です。犬の体に取り付いたノミは吸い取った血液に含まれる有毒成分によって死滅します。
  • メリット早く効く | 体の部位にかかわらず、安定した効果を示す | シャンプーしても効果が減らない
  • デメリット血液の喪失や吸血による皮膚炎 | ノミの体液によるアレルギー反応 | 病原体が媒介される可能性
 ノミ駆除薬には動物病院で処方される「要指示薬」とデパートのペット用品コーナーやペットグッズストアなどで売られている市販薬とがあります。市販薬のほうが安くて入手しやすいですが、副作用が心配だったり効果に疑問があるような場合は、犬をちゃんと動物病院についれていき、診察を受けた上で処方されたノミ駆除薬を投与したほうがよいでしょう。費用の目安に関しては以下のページをご参照ください。 犬を飼い始めてから毎年必要な年間費用 犬の寄生虫対策・完全ガイド

避けたいノミ駆除法

 仮にノミ駆除薬で体についた成虫を駆除したとしても、卵やさなぎといったノミの温床を環境中から完全に除去するのは容易ではありません。もし一気に解決してくれる方法があれば、すぐにでも飛びつきたくなるでしょう。しかし安全性の観点から、いくら魅力的に見えても控えたほうがよい解決策がいくつかあります。具体的には以下です。
避けたい方法
  • ノミ取り首輪殺ノミ成分を含有した首輪がありますが、犬が首輪に対して炎症を起こしたり、また首輪のかけらを誤飲してしまう危険性があります。
  • エアロゾルスプレー効果が希薄で、また噴霧するときの音を犬が怖がってしまいます。
  • 殺ノミスプレー空気中に噴霧した成分が水槽に入らないように注意が必要です。また壁や家具についた成分を、犬が口に入れないよう十分注意する必要がありますので、あまりお勧めできません。
  • 発煙式殺ノミ製品発煙を行った部屋の表面についた成分を、犬が舐めてしまう可能性を否定できません。使用する場合は、犬が近づかない狭い空間に限定した方がよいでしょう。
  • ノミよけ製品ハーブやユーカリオイルといった、ノミを寄せ付けない効果を謳(うた)った製品は、医薬品ほどの効果をもっていません。また独特の匂いを犬が嫌う可能性もあります。なお高濃度のティーツリーオイルは、皮膚に塗ったり飲ませたりすると中毒症状を引き起こしますので使用は厳禁です。
 犬のノミ感染を予防する上で最も重要なのは「飼い主の危機意識」です。
 2005年、イギリス国内にある31の動物病院で行われた調査では、ノミを保有していた犬の飼い主のうちおよそ半数はノミの感染に気づいていなかったといいます。またハンガリーにある13の動物病院で行われた調査では、ノミに感染していた犬の飼い主のうち51.4%が過去1年間以上予防薬を使用していなかったとのこと。さらに郊外居住者の使用率は都会の1/5程度で、生活環境中からノミを除去しようとする努力をほとんどしていなかったそうです。その結果、都心部におけるノミの保有率が12.0%(161/1,343)だったのに対し、郊外における保有率は20.2%(387/1,924)と大きな開きが出ました。
 こうした事例から考えると、ノミを保有しているはずがないという根拠のない思い込みを捨て、特にノミが多くなる夏から秋にかけてはしっかりと予防薬によってノミの感染を防いであげることが重要であるようです。
駆虫薬の効果、安全性、副作用に関しては「犬の寄生虫対策・完全ガイド」にまとめてあります。