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オス犬の前立腺炎~症状・原因から治療・予防法まで

 オス犬の前立腺炎(ぜんりつせんえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の前立腺炎の病態と症状

 犬の前立腺炎とは、前立腺に細菌が感染し、激しい痛みを伴う炎症を引き起こしてしまった状態を言います。
 前立腺(ぜんりつせん)とは、膀胱の真下にあり、尿道を取り囲むかたちで存在しているオスにのみある生殖器です。主な働きは前立腺液を分泌し、精嚢(せいのう)から分泌された精嚢液を、精巣で作られた精子と混合して精液を作ること、および射精時における収縮や尿の排泄を補助することなどです。 人の前立腺の位置・模式図  前立腺炎には「急性」と「慢性」があります。急性前立腺炎は多くの場合前立腺肥大を基礎としており、下にある尿道から各種の細菌・真菌・マイコプラズマが上行して炎症を起こし、痛みや発熱を伴うやや激しい症状を引き起こします。また前立腺膿瘍につながりやすいのもこちらです。一方、慢性前立腺炎は急性期のような目立った症状は見せず、炎症副産物の前立腺液への混入や不妊といった、あまり目立たない徴候のみを示します。また膿瘍につながることもありません。
 以下は、「急性前立腺炎」における主な症状です。ほとんどのケースでは前立腺肥大を基礎としているため、必然的に5歳以上の未去勢犬において多く発症します。
前立腺炎の主症状
  • 尿が出にくい
  • 発熱
  • 嘔吐
  • 食欲不振
  • ぐったりして元気がない
  • 下腹部の痛み(触られるのを嫌がる)
  • 尿のにごり
  • 尿のにおいがきつくなる
  • 血尿
  • 前立腺膿瘍
  • 膀胱炎

犬の前立腺炎の原因

 犬の前立腺炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
前立腺炎の主な原因
  • 細菌感染 前立腺炎は細菌が前立腺内に侵入することで発症します。ほとんどの場合は下についている尿道からの上行性感染であり、原因菌として多いのは大腸菌、ブドウ球菌、ストレプトコッカス、プロテウス属、クレブシエラ・ニューモニエ、エンテロバクター属、ヘモフィラス属、シュードモナス属、パスツレラなどです。まれなケースとしては、他所の病原体が血液に乗ってたどり着くというものもあります。
  • 医原性 何らかの治療の結果として偶発的に前立腺炎が引き起こされてしまうことがあり、こうした発症パターンを「医原性」と言います。具体的には、陰嚢に針を刺す手技や尿道カテーテル挿入によって、誤って細菌が入り込んでしまうなどです。

犬の前立腺炎の治療

 犬の前立腺炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
前立腺炎の主な治療法
  • 投薬治療  前立腺に感染している細菌を特定し、最も効果があると思われる抗生物質や抗菌薬を投与します。
  • 去勢 去勢によって男性ホルモン(テストステロン)の分泌が抑制されると、前立腺が退縮して炎症が起こらなくなります。再発予防のための最も効果的な治療法です。オス犬の去勢手術
  • 前立腺退縮薬 何らかの事情で犬の去勢を望まない場合は、手術の代わりに前立腺の退縮を促す薬を投与することがあります。