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ドッグフードに含まれるでん粉一覧リスト

 ドッグフードに含まれている「でん粉」とは単糖が9つ以上組み合わさってできる多糖類の一種。ドライフードに30~60%、ウェットフードに30%程度含まれている炭水化物の多くはでん粉です。ペットフードで「でん粉類」と言った場合は、でん粉の原料となる植物およびそこから加工されたすべてのものが含まれます。
成分含有製品 ドッグフードにどのような成分が含まれているかを具体的に知りたい場合は「ドッグフード製品・大辞典」をご覧ください。原材料と添加物を一覧リスト化してまとめてあります。

でん粉とは?

 「でん粉」とは単糖が9つ以上組み合わさってできる多糖類の一種。植物内に蓄積される「アミロペクチン」や動物の体内に蓄積される「グリコーゲン」などがあります。特徴は、小腸の酵素によって単糖(グルコース)や二糖(マルトース)に分解されるという点です。 芋でん粉

でん粉の種類

 ドッグフードに用いられるでん粉には、米やもち米から精製された米でん粉やもち米でん粉、とうもろこしやワキシーコーン(品種名)から精製されたコーンスターチ、タピオカから精製されたタピオカ(キャッサバ)スターチ、馬鈴薯から精製されたポテトスターチ(いもでん粉)、小麦から精製された小麦でん粉などがあります。一般的なラベル表記例は以下です。
ドッグフードラベルでよく見かけるでん粉類の表記例
  • ポテトスターチ
  • ポテトでん粉
  • タピオカでん粉等
  • タピオカα化でん粉
  • 加工でん粉

タピオカ

 タピオカとは、キャッサバの根を細かく砕いたキャッサバ粉からでん粉だけを抽出したもののことです。食品の増粘剤として用いられる機会が多く、いわゆる「モチモチした食感」を作り出します。 タピオカの原料となるキャッサバの根  人間向けの食べ物としては平べったいフレーク、細長いスティック、丸いパールといった形に加工されて提供されます。一方、ペットフードに混ぜて用いられるのはパウダー状のタピオカです。

α化でん粉

 α化(アルファ化)とはでん粉に水を加えて加熱することででん粉分子の規則性を崩し、ねばねばの糊状にすることです。「糊化」(こか)とも呼ばれます。いったんα化したでん粉を急速乾燥させるなどして得られた粉末が「α化でん粉」であり、最大の特徴は加熱しなくても水にスムーズに溶けるという点です。この特性を応用して製造・販売されているのが災害時用の備蓄食で、水やお湯を入れるだけで短時間で柔らかいお米に戻ります。

加工でん粉

 加工でん粉とは天然でん粉を改良したでん粉の総称です。人間用の食品では、物理的および酵素的に処理したタイプは「食品」、処理されていないタイプは「食品添加物」として扱われ、表記の際のルールが変わります。詳しくは増粘安定剤の「加工でん粉」を参考にしてください。

犬におけるでん粉の消化性

 でん粉の消化性は一様ではなく、でん粉の源となる食材、加工粉砕の仕方、加熱の度合いなどによって大きく変動します。
 消化率を最も高めるのがゼラチン化です。これはでん粉を含んだ食物を熱したり水で調理することででん粉結晶を水に溶かし、水和化させる工程を指します。ペットフードの生産工程で用いられるエクストルード加熱(押出成形)の目的は、でん粉をゼラチン化して消化率をアップさせることです。
 ドッグフードにお米やキャッサバ粉由来のでん粉が多く含まれている場合、食後30分以内の血糖値やインシュリン反応が高くなりやすいかもしれません。
 サンパウロ州立大学の調査チームは36頭の犬(平均3歳 | 12.5kg)を対象とし、異なる6つのでん粉に関する消化率の検証を行いました(Carciofi, 2008)。キャッサバ粉(キャッサバの根を細かく粉砕したもの)、米、とうもろこし、ソルガム(モロコシ属)、ヒラマメ、エンドウマメを犬に給餌したところ、すべてにおいて98%以上という高い消化率が確認されたと言います。とりわけ消化が良かったのはキャッサバ粉(99.4%)と米(99.3%)でした。
犬のでん粉消化性比較
犬におけるさまざまな材料由来のでん粉消化性一覧グラフ
  • キャッサバ=99.4%
  • 米=99.3%
  • コーン=99.1%
  • ソルガム=99.1%
  • ヒラマメ=98.8%
  • エンドウマメ=98.7%
 食後30分以内の血糖値とインシュリンに関しては米、とうもろこし、キャッサバ粉が高い値を示したのに対し、30分以後ではソルガム、ヒラマメ、エンドウマメが高い値を示しました。こうした消化率の違いを生み出しているものは、原料となった食材の化学的な組成、でん粉粒子の構造、食物繊維のクオリティなどだと考えられています。
製造過程で適切なゼラチン化が行われていれば、でん粉の原料にかかわらず100%に近い消化率を得られます。ただしすべての犬種で同様の消化率が見られるとは限りません。
 アメリカ・ハーバード大学・人間進化生物学の研究チームは、食事内容が犬の遺伝子に与えた影響を検証するため、系統発生的に異なる6犬種の遺伝子を調査しました。その結果、デンプンの消化に関わる酵素アミラーゼを作り出す「AMY2B」遺伝子に犬種間で格差が見られたと言います。具体的にはシャーペイペキニーズではコピーナンバーが多くてでん粉の消化が得意であるのに対し、柴犬秋田犬シベリアンハスキーアラスカンマラミュートではコピーナンバーが少なくてやや苦手というものでした。
 こうした結果から調査チームは、農耕の開始とともに人間の食生活が肉食中心から雑食へとシフトしたのに合わせ、人間に寄り添うように進化してきた犬もまた、雑食に適応したのではないかと推測しています。 太古の犬の繁殖基準は「穀物をガツガツ食べること」
異なる種に属する動物が、同じ問題に対して同じ解決法で対処した結果、同じ特質を獲得する現象を「収斂進化」といいます。「AMY2B」遺伝子のコピーナンバー増加とでん粉食への適応は、人と犬との間で生じた収斂進化の一種だと考えられています。