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犬の拾い食いをしつけ直す

 拾い食い(ひろいぐい)とは犬が飼い主の許可を得ずに勝手に落ちているものを食べてしまうことです。部屋の中で落としてしまった薬の錠剤や外に落ちている有毒物、他の動物の糞など、犬に食べて欲しくないものは多々ありますので、もし拾い食いが癖づいている場合は、そのしつけなおしが必須となります。

拾い食いの危険性

 犬の拾い食いのしつけとは、飼い主の命令に応じて犬が対象物から素早く目線や鼻先をそらす事です。このしつけは誤食事故を防止する上でとても重要です。
 犬が食事のしつけを終えている場合、フードボールに入った食べ物を目の前にして食欲を我慢し、飼い主に対して「食べてもいいですか?」とおうかがいを立てることには慣れています。しかし犬が飼い主と家の外を散歩中、目の前においしそうなソーセージが落ちていたらどうでしょう?家の中でもなければフードボールにも入っていないため、「別に飼い主の許可は必要ないや!」と解釈し、パクッと食べてしまうかもしれません。 家の外には犬にとって危険なものがたくさん落ちている  落ちていたのが本当にソーセージならばまだマシですが、怖いのは毒物の誤食事故です。屋外には飼い主が想像している以上にたくさんの危険物が落ちています。例えば以下は2015年以降に起こった屋外における誤食事故のほんの一部です。
屋外における犬の誤食事故
  • 南アフリカ・2015年犬の「キラ」が観葉植物のソテツを誤食して中毒死。有害成分はサイカシンとβメチルアミノLアラニン。
  • コロラド州・2015年デンヴァーのラリマー郡で、ドクゼリの誤食による犬の死亡事故が発生。
  • オーストラリア・2016年ジャーナリスト、リサ・ウィルキンソンの飼い犬「マギー」が庭にいたナメクジを誤食して肺虫に感染し、後ろ足が麻痺。
  • イギリス・2016年ハスキーの「リカ」が散歩中に毒キノコの一種「テングダケ」を誤食し一時危篤状態に陥る。
  • イギリス・2016年ハルのイーストパークを散歩中、落ちていた大麻を誤食した「マックス」が完全にラリる。
  • ニューヨーク州・2016年電話会社の作業員が民家の裏庭に置き忘れていった電話線を犬が誤食し、2度の輸血を受けるも死亡。
  • マサチューセッツ州・2017年アンドーバーの路上に落ちていたタバコのパッケージを誤食した犬の「ゾーイ」がフェンタニル中毒に陥る。
  • オーストラリア・2017年メルボルンにあるフットボール場を散歩していた犬の「ユリ」が、人間のうんちを誤食し、中に含まれていたマリファナを摂取して体調不良に陥る。
  • イギリス・2017年ガーンジーに暮らすスパニエルの「メイシー」と「タリー」がトウゴマの誤食で死亡。有毒成分は「リチン」で特に種子に豊富。
  • イギリス・2017年ゴミ箱を漁ってカビの生えたパンを食べた「デクスター」が多臓器不全で死亡。
 上記したように屋外には飼い主が想像もつかないような危険なものが落ちており、犬が間違って食べてしまった場合、時として死んでしまうことすらあるのです。
 さらに悪質な例では、何者かが意図的に食べ物に毒物を混入し、公共の場に放置するという毒餌(どくえ)事件というものがあります。例えば以下は日本国内で実際に起こった毒餌事件の一例です。詳しくは、犬の散歩のマナーでも解説してあります。
日本国内における毒餌事件
  • 1996年・東京 世田谷区にある駒沢オリンピック公園周辺で、散歩中の犬が原因不明の神経中毒症状を1頭が死亡、1頭が危篤状態に陥った。
  • 2001年・岡山 倉敷市にある公園内で、散歩中の犬2頭が草むらに落ちていた殺虫剤入りのちくわを食べ2頭ともその日のうちに死んだ。
  • 2002年・埼玉 さいたま市の路上を散歩していた犬が道路脇に落ちていたものを拾い食いし、約40m歩いた後に、けいれん発作を起こして死亡した。
  • 2007年・大阪 摂津市のさくら公園内で青い粉がかかったライスが新聞紙の上に置かれていた。これを食べた犬2頭が死んだほか、同公園内やその周辺で猫や鳩の死骸も確認された。
  • 2008年・三重男性が桑名市の内堀公園で犬を散歩させていたところ、釣り糸のついたはんぺんが置かれていることに気づいた。片付けようとしたところ、別の場所に置かれていたはんぺんを犬が食べてしまい、付いていた釣り針とはんぺんを飲み込んでしまった。
 このように屋外には犬が口にしてはいけないものがたくさんあります。落ちているものが危険なのかどうかは犬には判断できませんので、飼い主が目で確認して犬を危険物から遠ざけてあげなければいけません。
 さらに拾い食いのしつけを日ごろから行い、飼い主の命令に応じて匂いを嗅いでいる対象物から意識をそらす訓練を積んでおけば、より誤食事故に巻き込まれるリスクを下げることができるでしょう。それでは具体的に、犬に拾い食いをやめさせる方法を見ていきましょう。

拾い食いのしつけ直し・基本方針

 犬の拾い食いをやめさせるに際し、飼い主はまず以下のことを念頭に置きます。
してほしい行動
食べ物が落ちていても拾い食いしない
してほしくない行動
落ちているものを勝手に拾い食いする
 してほしい行動と快(ごほうび・強化刺激)、してほしくない行動と不快(おしおき・嫌悪刺激)を結びつけるのがしつけの基本であり、前者を強化、 後者を弱化と呼ぶことは犬のしつけの基本理論で述べました。これを踏まえて犬の拾い食いをしつけ直す場合を考えて見ましょう。
強化
「食べ物が落ちていても拾い食いしなかった」瞬間に快を与える
弱化
「落ちているものを勝手に拾い食いした」瞬間に不快を与える
 犬の拾い食いのしつけに際しては強化の方が効果的です。
 例えば匂いを嗅ぐことに夢中になって飼い主の呼びかけに応えない犬を叩いたとしましょう。そうすると犬は「何かに興味を抱くと叩かれる!」「飼い主に呼ばれると叩かれる!」と学習し、それ以降、飼い主の近くで鼻を使って周囲の環境を探索することが怖くなってしまいます。犬にとっての散歩と屋外環境の探索は、人間にとってのアミューズメントパークのようにワクワクする娯楽です。ビクビクしながら歩かせるのはかわいそうですよね。
 ですから犬の拾い食いをしつけなおす際は、正しい行動に対してごほうびを与えて伸ばしてあげる正の強化が基本方針となります。

拾い食いのしつけ直し・実践

 基本方針を理解したところで、いよいよ実践に入りましょう。まずはしつけに入る前に「犬のしつけの基本理論」で述べた大原則、「犬をじらせておくこと」「一つの刺激と快不快を混在させないこと」「ごほうびと罰のタイミングを間違えないこと」「しつけ方針に家族全員が一貫性を持たせること」を念頭においてください。まだマスターしていない方は以下のページを読んで「すべきこと」と「すべきでないこと」が何であるかを把握しておきます。 犬のしつけの基本

しつけの準備

 実際に拾い食いのしつけ直しに入る前に、以下のような準備を終わらせておきましょう。

集中できる環境を作る

 一つのことを覚えるには集中力が大切です。しつけの前には窓を閉じて外からの音を遮断し、テレビやラジオは消しましょう。気が散るようなおもちゃなどは全て片付け、犬の意識が否応なく飼い主の後に向くように無味乾燥な環境を作ってしまいます。
 また犬の集中力は10分~15分ほどです。集中力がなくなってきたらいさぎよくしつけを中断してその日の夜や翌日に改めて再開しましょう。飼い主がしつけを焦って犬の感情を無視して強引に行ってしまうと、しつけ自体が犬にとっての苦痛になってしまいます。

ごほうびを用意する

 拾い食いのしつけにおいては、低質なおやつと上質なおやつの2種類を用意しておきます。あらかじめ犬のリアクションを観察し、がっつきのよいものとそうでもないものを見分けておきましょう。またカロリーは少なめなものを選ぶようにします。

首輪とリードに慣らす

 拾い食いのしつけにおいては、床に落ちたおやつに向かって突進する犬を何とかして抑えこまなければなりません。蹴飛ばしたりレスリングのように抑え込むのはもってのほかですので、あらかじめ首輪(胴輪)とリードにならせておきましょう。なお犬の体の大きさに合わせて最もストレスの少ない装具の種類は変わります。「体の大きさに合わせた装具選び」を参考にしながらベストなものを選んで下さい。 体の大きさに合わせた装具選び

おとりのおやつを用意する

 まずは道端に何かが落ちているという状況を部屋の中で再現します。部屋の中をきれいにし、目立つ場所におやつを1つ落としておきます。フードボールは使わないでください。犬にリードをつけて短めに持ち、まるで散歩しているようにその部屋の中に誘導してあげましょう。犬はおやつの匂いに気づいて近づいていくはずです。この時飼い主は、犬がおやつを食べてしまわないようしっかりリードを握っておきます。ただし大きな声を出したりがつんと強く引っ張らないでください。 【画像の元動画】How to teach 'leave it'- without intimidation Dog training tutorial 床や地面に落ちているものを食べようとしてもリードが邪魔する状態を作る  リードに邪魔されてこれ以上進めないと分かった犬は、そのうち諦めて飼い主のところに戻ってくるはずです。そのタイミングで「いいこ」とほめてごほうびを与えましょう。この時のごほうびは床に落としたものよりも上質なものを用いて下さい。犬の頭の中では、匂いを嗅ぐのを諦めて飼い主の足もとに戻ることと上質なごほうびとが結びついていきます。 自分では解決できない問題に直面した犬は近くにいる人間に助けを求める

諦めることと指示語をリンク

 犬が「飼い主の元に戻るといいことがある」と覚えたら、今度は戻るという行動と指示語とを結びつけていきます。
 前のステップでやったように、おやつを床に1つ落としておき、リードを短く持って犬を室内に誘導します。犬はおやつに惹かれて匂いを嗅ぎにいくでしょうが、リードが邪魔で口が届きません。そのうち犬は諦めて鼻先をおやつからそらす瞬間が来ます。その瞬間を見計らい、事前に決めておいた指示語を聞かせてあげましょう。何でもよいですが、他の言葉とまぎらわしくならないようここでは英語の「リービット」(Leave it!=ほっときなさい)を例に取ります。その他にも「ノータッチ」(No touch!)「ドンタッチ」(Don't touch!)などがありますので、好きなものを選んでください。 【画像の元動画】How to teach 'leave it'- without intimidation Dog training tutorial 犬が床に落ちているものから注意を逸した瞬間「リービット」などの指示語を発する  言葉をかけるのは鼻先がおやつからずれた瞬間です。その直後、「いいこ」と声をかけて落ちているおやつよりも上質なおやつを与えましょう。こうすることで犬の頭の中では、対象物を諦めて飼い主の元に戻るという行動と、指示語という聴覚的な情報とが少しずつ結びついていきます。

ノーリードでやってみる

 犬が指示語を覚えたら、今度はノーリードでやってみましょう。床の上におやつを1つ落としておき、ノーリードの状態で犬を誘導します。犬はおやつに惹かれて近づいていくかもしれません。鼻先をおやつに近づけた瞬間を見計らい、前のステップで練習しておいた指示語「リービット」をはっきりと聞こえるように1度だけ発してみましょう。犬がハッと気づいて飼い主の元に戻ってきてくれたら大成功です。「いいこ」とほめてごほうびを与えましょう。 【画像の元動画】The safety leave it! - clicker dog training 「リービット」という指示語に反応して犬が行動を中断してくれたら成功  指示語を出したにもかかわらず、犬が無視して床に落ちていたおやつを食べてしまうことがあります。そんなときは「あ~もう!」とか変な声を出さず、前のステップに戻ってもう一度リードをつけ直し、指示語と行動との結びつきを強めます。

おとりの数を増やす

 犬が指示語に従って落ちているものを無視できるようになったら、今度はより気が散る環境下で練習してみましょう。今まで床に落としていたおやつの数を2つ→3つ→4つ・・・という具合に増やしていきます。1日で1つ増やすぐらいのスローペースでも一向に構いません。ゲーム感覚で楽しみながらしつけを進めてください。

おとりの質を高める

 犬がおとりとして使っているおやつの数に慣れてきたら、今度はおやつの質を高めてみましょう。今まで床に落としていたおやつのグレードをアップし、犬が大好きなものに切り替えてみます。練習通り「リービット」の指示語に反応して注意をこちらに向けてくれたら大成功です。しかし数による誘惑よりも質による誘惑の方が犬にとってクリアするのが難しいかもしれません。
 2016年、オーストリア・ウィーン大学の調査チームは、16頭の犬たち(平均年齢6.01歳)を対象として衝動を自発的に抑え込む「抑制性コントロール」に関する実験を行いました。
 「今すぐゲットできる低質なおやつを我慢できたら上質のおやつをゲットできる」と「今すぐゲットできる1つのおやつを我慢できたら5つのおやつをゲットできる」というシチュエーションを設けて犬の我慢強さを調べた所、前者の平均我慢時間が35.6秒だったのに対し、後者の時間が82.9秒と大きな開きを見せたといいます。この格差はつまり「犬は量よりも質による誘惑に弱い」ということを意味しています。 犬はごほうびの量よりも質による誘惑に弱い 質の良いおやつと量が多いおやつがあった場合、犬は質の良いおやつを選ぶ可能性が高い  床に落ちているおやつが上質のものである場合、たとえ飼い主の手元にそれほど上質ではないおやつが100個あったとしても、犬は誘惑に負けて床に落ちているおやつを食べてしまうかもしれません。ですから拾い食いのしつけをするときは、飼い主の手から与えるごほうびを常に「とびきり上質なもの」に設定しておいた方がよいでしょう。

外に出てやってみる

 家の中でのトレーニングが終わったら、今度は実際に外に出て練習してみましょう。散歩ルートの中にはアスファルトにこびりついたガム、標識の根元にかかった他の犬のおしっこ、ごみ集積場のビニール袋から滴っている得体の知れないソースなど、犬の鼻を惹きつけるいろいろなものが落ちています。
 そうした汚らしいものに犬が鼻先をつっこむたびに、「リービット」と命令を出してみます。屋外環境は騒音が多いため、少し大きめの声を出した方がよいかもしれません。犬が練習通り鼻先を対象物からずらしてくれたら成功です。「いいこ」などと誉めてあげましょう。

おやつの回数を減らす

 常にごほうびを与えていると犬が肥満に陥ってしまうかもしれませんので、少しずつごほうび与える回数を減らしていきます。「2回に1回→ 3回に1回→ 4回に1回・・・」といった具合に徐々に減らしていき、最終的には「いいこ」などのほめ言葉だけで済ませるようにしましょう。ただし間欠強化の原理で犬の行動を強化するため、犬の大好きなとっておきのおやつをたまにランダムで与えるようにします。そうすることで犬は、まるで万馬券を当てた人のようにその行為に病み付きになり、いい意味でやめられなくなります。

リービットゲーム

 リービットゲームとは、床や地面に落ちているものを飼い主の許可なく食べてはいけないという基本ルールを、犬にしっかりと教え込ませるためのトレーニングです。
 まず部屋の中に犬を誘導し、きれいに掃除しておいた床の上に犬が大好きなおやつを1つおきます。最初のうち、犬は食べようとして鼻先を近づけると思います。犬がおやつに近づいた瞬間「ア、ア!」といったNRM(※ごほうびが与えられないことの合図)を発し、手で覆い隠してしまいましょう。これはクイズ番組で言う「ブブー!」というブザー音です。 【画像の元動画】How to Train a Dog to Leave it犬が勝手に床に落ちているものを食べようとしたら報酬を取り去る  おやつをゲットできなかった犬は不服そうに飼い主の顔を見返してきます。その瞬間、「リービット」と声をかけ、もう一方の手に持っていたおやつを与えましょう。これはクイズ番組で言う「ピンポン!」というチャイムの音です。 犬が床に落ちているものを諦めて飼い主の方を向いてくれた瞬間に報酬を与える  このゲームにより、犬は2つの事を学習します。
リービットゲームの学習効果
  • 床に落ちているおやつを食べようとすると逆に遠ざかる
  • 匂いがしてもじっと我慢していたらおやつをもらえる
 前者はごほうびを取り去ることで行動頻度を下げる「負の弱化」、後者はごほうびを与えることで行動頻度を上げる「正の強化」です。このゲームを繰り返すことにより、犬は床に落ちているものを食べることに消極的になり、いい匂いがしてもじっと我慢することに積極的になっていきます。
 日ごろからこのゲームを行なっておくと、「床や地面に落ちているものを勝手に食べてはいけない」という基本ルールが犬の記憶に深く染み込んでいきます。ゲームを行う場所をいろいろ変えて日常的に練習しておきましょう。
無関係性の学習
 無関係性の学習とは、ある特定の刺激が、自分にとって毒にも薬にもならないと記憶することです。たとえば、床におやつが落ちているにもかかわらず、一切それを食べることができないという経験を何度も繰り返した犬は、「床に落ちている食べ物=自分には関係のないどうでもよいもの」と学習するのです。
 一度こうした無関係性の学習が成立すると、思考パターンを元に戻すのが極めて困難なため、犬は以降、床に落ちているものには興味を示さなくなります。

犬の拾い食いQ & A

 以下は犬の拾い食いについてよく聞かれる疑問や質問の一覧リストです。思い当たるものがあったら読んでみてください。何かしら解決のヒントがあるはずです。

犬はなぜ拾い食いをするのか?

元々はスカベンジャーだからです。

 祖先である狼から分岐して以来、犬は数万年にわたって人間と共に暮らしてきました。人間と共同生活することの大きなメリットは、食べ残しやゴミを漁ることで効率的に餌を見つけることができるという点です。こうした暮らし方は「スカベンジャー」(腐肉食・残飯あさり)などと呼ばれます。
 人間との長い共同生活の中で、犬の遺伝子にはスカベンジャーとしての食習慣が根付いてしまったため、多少腐ったものでも平気で食べるようになりました。人間よりもはるかに嗅覚が良いにもかかわらず、腐ったものに嫌悪感を示さない理由はここにあります。

口輪は拾い食いに効果的?

根本的な解決にはならず、季節によっては危険です。

 犬の拾い食いを防ぐために必要なことは、「何かを食べる前には必ず飼い主の許可を得なければいけない」と覚えさせることです。口輪をはめることによって拾い食いを予防できるかもしれませんが、上記した基本ルールを覚えていなければ根本的な解決にはつながらず、遅かれ早かれ誤食事故が起こるでしょう。
 また市販されている拾い食い防止グッズの中には、犬の呼吸を妨げてしまうものもあります。犬は口を開けて激しく呼吸する「パンティング」によって体温調整していますので、口輪をはめた状態で暑い夏場に散歩をすると、最悪のケースでは熱中症にかかって死亡してしまいます。 犬の熱中症対策

犬を叩くのは効果的?

人間の手を怖がるようになります。

 犬の拾い食いをストップさせるために頭を叩く人がいますが、こうした体罰を繰り返していると犬は人間の手の存在を怖がるようになります。その結果、頭を撫でようと差し出してきた人の手に反射的に噛み付いてしまうかもしれません。犬の拾い食いを防ぎたいなら、リードで制御するだけで十分です。
 飼い主が叩いてはいけませんし、しつけや訓練と称してこうした体罰を容認しているドッグトレーナーに預けてもいけません。

散歩中に気をつけることは?

飼い主が常に道路の状態をチェックするようにします。

 散歩ルートには様々な物が落ちています。犬が散歩中に誤食しやすい危険物としては「ガム」「石」「犬や猫の糞」「タバコの吸い殻」「落ち葉」などが挙げられるでしょう。
 飼い主がスマホを見ながらだらだらと犬の散歩をしていると、上記したような危険物に気付かず犬がパクッと拾い食いしてしまうかもしれません。拾い食いのしつけをマスターし、なおかつ飼い主が道端に落ちているものに気を配っていれば、誤食事故の可能性をかなり減らすことができます。 犬の散歩の基本

骨を飲み込んでしまいました…

場合によっては開腹手術が必要です。

 犬が誤飲誤食してしまうアイテムの中で多いのが骨です。フランスにあるヴェテリネール・フレジ総合病院の外科医療チームが、2004年から2014年までの間に「食道内異物」と診断された全ての犬を調べた所、全部で95ケースが見つかり、異物として最も多かったのは「骨」(63ケース | 66%)だったといいます。 犬の食道下部異物に対する胃切開アプローチ法 犬は骨が大好きだが、砕けたかけらによる異物誤飲の危険性が高い  散歩の途中、ゴミ捨て場にチキンの骨が落ちているかもしれません。家の中では、昨夜食べたフライドチキンの骨がゴミ箱の中に残っているかもしれません。嗅覚が鋭い犬から隠し通すことは不可能ですので、犬が近づいて拾い食いしないようとりわけ気をつけましょう。最悪のケースでは手術によってお腹を開く羽目になります。

犬が何を食べたかわかりません…

取り急ぎ動物病院を受診しましょう。

 犬が自発的に吐き戻した場合は、誤食したものを確認した上で動物病院を受診しましょう。薬品を飲み込んでしまった場合は、たとえ吐き出したとしても体内に成分が残っているかもしれません。場合によっては胃洗浄や催吐(薬で吐かせること)が必要になりますのでしばらくは症状を見守ります。
 犬が何も吐かない場合は、エックス線を撮って胃の内容物を確認する必要があります。判別できるものとできないものがありますので、下痢や血便といった犬の症状をモニタリングする必要があります。 犬が異物を飲み込んだ

犬が石ころを拾い食いします

それは異食症と呼ばれる病気かもしれません。

 異食症(いしょくしょう, pica)とは、全く栄養成分が含まれていないものをなぜか食べようとする病気のことです。 犬の中には道端に落ちている石ころを飲み込んでしまうものがいます。  強迫神経症(OCD)の一種かもしれませんが多くの場合原因不明です。犬が散歩中に石を食べてしまうという場合、胃袋に溜まった石ころを取り出すため病院での開腹手術が必要となりますので、何より予防が肝心になります。
犬が口に入れたものをなかなか放さないことがあります。あらかじめ「出せのしつけ」を終えているとスムーズに口を開けてくれるでしょう。