ハーネスの種類と運動制限能力
調査を行ったのはイギリス王立獣医科大学のチーム。9頭の中~大型犬を対象とし、「装具をつけていない」「非拘束型ハーネスを装着」「拘束型ハーネスを装着」という三つの状態を設定した上で、「ウォーク」(並足)と「トロット」(速歩)時にどの程度前足の動きが制限されるかをコンピューターを用いて解析しました。
調査で実際に用いられた非拘束型ハーネスは「Trixie Fusion(ストラップ幅25mm)」、拘束型ハーネスは「Easy Walk(ストラップ幅25mm)」という商品です。 その結果、それぞれの状態において以下のような違いが見られたと言います。数字は肩関節が作る運動可動域のことで、数字が小さいほど制限を受けてる(=可動域角度が小さい)ことを意味しています。また「+5kg」というのは、装着時の状況をよりリアルに近づけるため、後方に5kgの力で引っ張りながら運動してもらったときの状態です。
M Pilar Lafuente, Laura Provis, Emily Anne Schmalz, Veterinary Record 2019, doi: 10.1136/vr.104946
調査で実際に用いられた非拘束型ハーネスは「Trixie Fusion(ストラップ幅25mm)」、拘束型ハーネスは「Easy Walk(ストラップ幅25mm)」という商品です。 その結果、それぞれの状態において以下のような違いが見られたと言います。数字は肩関節が作る運動可動域のことで、数字が小さいほど制限を受けてる(=可動域角度が小さい)ことを意味しています。また「+5kg」というのは、装着時の状況をよりリアルに近づけるため、後方に5kgの力で引っ張りながら運動してもらったときの状態です。
ハーネス並足時の可動域
ハーネス速足時の可動域
今回の調査でわかったことをまとめると以下のようになります。
ハーネスによる運動制限
- 種類にかかわらずハーネスは前肢可動域を制限する
- ウエイトの有無で前肢可動域はそれほど変わらない
- 非拘束型ハーネスはウォーク時の前肢可動域を4.73°制限する
- 非拘束型ハーネスはトロット時の前肢可動域を9.31°制限する
- 拘束型ハーネスはウォーク時の前肢可動域を2.16°制限する
- 拘束型ハーネスはトロット時の前肢可動域を4.92°制限する
- 総じて拘束型ハーネスよりも非拘束型ハーネスの方が運動制限力が強い
M Pilar Lafuente, Laura Provis, Emily Anne Schmalz, Veterinary Record 2019, doi: 10.1136/vr.104946
「犬の動きを制限しない」は言い過ぎ
ハーネスを装着していない時に比べ、ハーネスを装着している時には肩関節の動きが制限されていました。この拘束力はハーネスの種類によって変わりませんでしたので、ハーネスが前足の動きを制限するということは普遍的な事実のようです。
奇妙なのは「犬の動きを制限しない」と銘打って売り出されている非拘束型ハーネスの方が、「犬の動きを効率的に制限する」として売り出されている拘束型ハーネスよりも 強い拘束力を発揮した点です。それぞれの発売元がどのような調査に基づいて上記したような宣伝文句を使っているのかはわかりませんが、ひょっとするとちゃんとした分析を行っておらず「理論上は」というレベルなのかもしれません。あるいは実験の便宜上、拘束型ハーネスのD鐶を胸元から背中に移動したため、想定されている拘束力が発揮されなかった可能性もあります。
ウェイトの有無によって前足の運動制限はさほど大きな影響を受けませんでした。このことから、後方に引っ張る力よりも、犬の骨格とハーネスの形状によって拘束力が生み出されているのではないかと考えられています。いずれにしても「ハーネスは犬の動きを制限しない」というのは少し言い過ぎでしょう。
奇妙なのは「犬の動きを制限しない」と銘打って売り出されている非拘束型ハーネスの方が、「犬の動きを効率的に制限する」として売り出されている拘束型ハーネスよりも 強い拘束力を発揮した点です。それぞれの発売元がどのような調査に基づいて上記したような宣伝文句を使っているのかはわかりませんが、ひょっとするとちゃんとした分析を行っておらず「理論上は」というレベルなのかもしれません。あるいは実験の便宜上、拘束型ハーネスのD鐶を胸元から背中に移動したため、想定されている拘束力が発揮されなかった可能性もあります。
ウェイトの有無によって前足の運動制限はさほど大きな影響を受けませんでした。このことから、後方に引っ張る力よりも、犬の骨格とハーネスの形状によって拘束力が生み出されているのではないかと考えられています。いずれにしても「ハーネスは犬の動きを制限しない」というのは少し言い過ぎでしょう。
ハーネスへの過信は禁物
散歩する時の装具選びは重要です。首輪を装着すると舌骨や頸椎への負担が増え、また頸動静脈を圧迫することによる脳圧の亢進で緑内障が悪化するとされています。
かといって首輪もリードも装着せず、私有地やドッグラン以外の場所を自由に散歩させることは法律や条例違反になってしまいます。
必然的に残る選択肢が「ハーネス」ということになりますが、今回の調査により拘束型だろうと非拘束型だろうと、大なり小なり犬の肩関節を拘束し、前足の正常な動きを制限することが明らかになりました。
一般的にハーネスは人道的な装具とされていますが、長時間の装着で皮膚の血流が悪化して床ずれ(褥瘡)が発生したり、腱炎が発生する可能性が指摘されていますので過信は禁物です。 ハーネスの拘束力は「ウォーク」よりも歩行速度の早い「トロット」時において大きくなるようです。犬と一緒にジョギングする習慣がある人は、犬の歩き方をとりわけこまめにチェックし、異常の徴候をいち早く発見するようにしたほうが良いでしょう。具体的なチェック方法は以下のページにまとめてありますのでご参照ください。
かといって首輪もリードも装着せず、私有地やドッグラン以外の場所を自由に散歩させることは法律や条例違反になってしまいます。
必然的に残る選択肢が「ハーネス」ということになりますが、今回の調査により拘束型だろうと非拘束型だろうと、大なり小なり犬の肩関節を拘束し、前足の正常な動きを制限することが明らかになりました。
一般的にハーネスは人道的な装具とされていますが、長時間の装着で皮膚の血流が悪化して床ずれ(褥瘡)が発生したり、腱炎が発生する可能性が指摘されていますので過信は禁物です。 ハーネスの拘束力は「ウォーク」よりも歩行速度の早い「トロット」時において大きくなるようです。犬と一緒にジョギングする習慣がある人は、犬の歩き方をとりわけこまめにチェックし、異常の徴候をいち早く発見するようにしたほうが良いでしょう。具体的なチェック方法は以下のページにまとめてありますのでご参照ください。