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犬向けノミ・ダニ駆除製品「プラク-ティック®」の効果と副作用

犬のノミ・ダニの駆除と予防を目的として販売されている「プラク-ティック®」。含まれている成分の効果から副作用までを論文と出典付きで詳しく解説します。

プラク-ティック®とは?

 「プラク-ティック®」はピリプロール(pyriprole)を有効成分とする犬向けのノミ・マダニ駆除製品。日本国内ではスポットオン(滴下投与式)が動物医薬品として認可されています。なお真ん中にある横棒は音を伸ばして発音する長音符ではなくハイフンです。

ピリプロールの効果

 ピリプロールはフェニールピラゾール系に属する殺虫・殺ダニ剤の一種。ノミやダニの神経末端にあるリガンド開口型のクロライドチャンネルの中でも、特に抑制調節に関与しているGABA受容体に作用し、塩素イオンの流れをブロックすることで中枢神経系の混乱を招いて殺虫効果を示します。 ピリプロールの分子構造
 はっきりとした作用機序は解明されていませんが、おそらく同じフェニールピラゾール系に属するフィプロニル(fipronil)と同じメカニズムを通じて害虫に対する特異的な結合能を発揮するものと推測されています。ノミに対しては投与から24時間以内、ダニに対しては48時間以内に駆除が完了し、効果はともに4週間ほど持続します。

ピリプロールの代謝

 滴下投与後、ピリプロールはおよそ24時間で皮膚表面にある皮脂層を伝って全身に広がります。また皮脂腺自体にも入り込み、皮脂の分泌とともにゆるやかに体表面に放出されるようになります。有効成分は皮膚上で作用しますので、犬の被毛の長さと効果には関係がありません。
 生物学的利用能はおよそ50%で、投与から3週間後でも30~45%がほとんど代謝を受けない形で皮膚や被毛上に残るとされています。犬の体重1kg当たり1分間で31mLが代謝され、主な代謝産物であるスルホンおよびスルホキシドは55~59%が便中へ、12~20%が尿中へ排泄されます出典資料:EMA factsheet)

ピリプロールの毒性・副作用

 ピリプロールを大量に体内に取り込んだときに引き起こされる副作用に関しては、動物種によって少し違うようです。

ラットにおける毒性・副作用

 ラットを対象としたピリプロールの毒性調査では、下垂体と甲状腺の調節バランスを乱して甲状腺ホルモン(T3・T4・TSH)の体内濃度を変動させると同時に、代謝を担う肝臓の重量増加や肝細胞肥大を引き起こすとされています。また甲状腺に関してはろ胞細胞過形成や腫瘍の発生と明白な因果関係があると見られています。ラットを対象とした毒性試験から導き出されたNOEL(何の影響も見られない最大投与量)は以下です。単位は「体重1kg当たり1日」で示してあります出典資料:EMA factsheet)
ピリプロールのNOEL(ラット)
  • 28日間経口投与→0.3mg
  • 13週間経口投与→0.1mg
  • 28日間経皮吸収→60mg

犬における毒性・副作用

 犬においては甲状腺や肝臓よりも神経系に影響が出やすいようです。推奨の1倍、2倍、10倍量を単回滴下投与した毒性試験では、10倍量グループで筋硬直、ひきつけ発作、足元のふらつき、虚弱などの副作用が引き起こされたといいます。また投与3日後からは一部の犬で嘔吐と食欲不振が見られたとも。食欲不振を除き、これらの副作用は48時間以内に自然回復したそうです。
 推奨の1倍、3倍、5倍量を月1回のペースで6ヶ月に渡って反復滴下投与した毒性試験では、3倍量グループにおいて投与直後に協調性不全やふらつきが見られたものの3時間ほどで回復したといいます。5倍量グループでは同様の副作用が見られなかったものの、一部で振戦、運動失調、パンティング(荒い呼吸)、ひきつけが見られ、これらの副作用は18時間以内に自然回復したそうです。
 その他、変異原性、発生毒性、皮膚感作性(アレルギーを引き起こす)、光毒性(成分と光が反応して有害反応を招く)、免疫毒性は確認されていません。げっ歯類では甲状腺腫と因果関係があるとされていますが、人間や犬に対する影響はないだろうと見られています。ラットを対象とした催奇形性に関する毒性試験では、妊娠中の母親におけるNOELが体重1kg当たり1日4mg、母体内の胎子におけるNOELが8mgと見積もられています出典資料:EMA factsheet)
 製品の添付文書に明記されている副作用としては、被毛では変色、脱毛、ごわつき、皮膚ではそう痒、発赤が挙げられます。また誤って経口投与した場合はけいれん、振戦、運動失調、呼吸異常などの神経症状が引き起こされる危険性があり、死亡を含めた重篤な症状につながった例もあったとのこと。
 日本国内の動物医薬品データベースではプラク-ティック®による死亡例を含めた副作用事例がかなり報告されています。2007年に承認されてから10年以上経過しているためそれなりの事例蓄積は致し方ないとは言え、単一の有効成分しか含んでいない割にはやや多いなという印象を受けます。

プラク-ティック®

 「プラク-ティック®」はピリプロールを有効成分とする犬向けのノミマダニ駆除剤。滴下投与式で、犬の被毛や皮膚に含まれるピリプロールと害虫が直接的に接触することによって駆虫効果が発揮されます。作用機序の性質上、ノミやマダニが犬の血を吸うこと自体を防ぐ効果まではなく、製品の添付文書では害虫が媒介するその他の病気の予防までは保証できないと明記されています。 プラク-ティック® プラク-ティックのパッケージ外観

プラク-ティック®の使い方

  • いつから使える?使用条件は3ヶ月齢以降、体重は2kg以上とされています。
  • 使用頻度は?効果が6週間であることから1~1.5ヶ月に1回くらいのペースでの使用が望ましいとされています。
  • 使用期間は?ノミは通年性で生息していますので1年中使用することが望ましいとされています。
  • 料金は?動物病院、犬の体の大きさ(体重)、体重に連動したピペットのサイズ、使用頻度によって合計費用は変動しますが、病院で処方される1本の料金はSサイズなら800~1,100円程度、XLサイズなら1,400~1,500円程度です。なお通信販売自体は違法ではないものの、当製品は動物用医薬品ですので獣医師による診察と処方が理想とされます。
  • 付け方は? 犬の肩甲骨間の被毛をかき分け、使い切りのピペットを皮膚に直接滴下して使います。大きいサイズの場合は滴下部位を2ヶ所に分けても構いません。
  • 使用量は? 製品1mL中に含まれるピリプロールの量は125mgです。有効最低量は、体重1kg当たり12.5mgとされており、犬の体重に合わせて以下のような使用基準が設けられています。なお体重が50kg以上ある場合は一番大きい5.0mLピペット(XL)ともう1つ別の1サイズを体重に合わせて与えます。
    ✓2kg~4.5未満→0.45mL(S)
    ✓4.5kg~11kg未満→1.1mL(M)
    ✓11kg~22kg未満→2.2mL(L)
    ✓22kg~50kg未満→5.0mL(XL)
  • 使用上の注意は?使用する際の注意点は「用法(3ヶ月齢以降)や用量(体重1kg当たり12.5mg)を厳守すること」「獣医師の指示とともに与えること」「猫やウサギなど犬以外には使用しないこと」「使用期限が過ぎたものを使わない」などです。滴下前は皮膚と被毛がよく乾いていることを確認すること、滴下後は乾くまで触らないこと、水浴びは8時間以降、お風呂やシャンプーは24時間以降にすることが指示されています。また病み上がりで弱っている犬、妊娠中や出産後のメス犬には投与しないよう明記されています。

プラク-ティック®の効果

 以下はノミとダニに対する「プラク-ティック®」(ピリプロール)の駆虫効果を検証した調査結果です。

ネコノミへの即効性

 64頭の犬たちを未吸血のネコノミ100匹に曝露した上でランダムで2つのグループに分け、一方にだけピリプロール(12%溶液/1kgにつき0.1mL)を滴下投与しました。さらに投与を受けた32頭を4つのグループに分け、投与から12→24→36→48時間後における即効駆除率を検証しました。その結果、12時間後における駆除率が96.5%だった以外、すべての評価ポイントにおいて99.9以上の駆除率が確認されたといいます出典資料:Barnett, 2008)

ネコノミへの効果持続期間

 24頭の犬たちをランダムで18頭と6頭からなる2つのグループに分け、18頭にだけピリプロール(12%溶液/1kgにつき0.1mL)を滴下投与し、投与から11→18→26→39→46→53日目のタイミングで腰のあたりに1000匹のネコノミを寄生させました。そして寄生から3日が経過したタイミングでノミの体表生存数を確認したところ、57日目を除くすべての評価ポイントにおいて90%超の駆除率が確認されたといいます。
 また床にカーペットが敷かれているネコノミが繁殖しやすい実験環境を用意し、16頭の犬たちをランダムで2つのグループに分け、一方にだけピリプロール(12%溶液/1kgにつき0.1mL)を1ヶ月間隔で合計2回滴下投与して環境内で生活してもらいました。50匹のネコノミに1→7→14日目のタイミングで曝露した上で、複数のタイムポイントで体表生存数をカウントしたところ、60日間に渡る実験期間中における駆除率はどれも100%だったといいます出典資料:Barnett, 2008)

ネコノミの成長阻害効果

 24頭の犬たちをランダムで18頭と6頭からなる2つのグループに分け、一方にだけピリプロール(12%溶液/1kgにつき0.1mL)を滴下投与し、およそ2ヶ月に及ぶ投薬試験中に設けられた12のタイムポイントで、犬の体表や寝床から最低300個のネコノミの卵を採取したところ、投与グループにおいては42日目までに採取された卵は1個もなかったといいます。また投与から56日目(8週目)までの虫卵減少率は90%超だったとも。
 さらに犬の体からフケ、便、被毛を100mg採取し、50匹のネコノミ幼虫に接触させたところ、滴下投与から30日以内における成虫への成長阻害効果は68.9~93.5%でしたが、数値にはばらつきがあり、時間の経過とともに効果が薄れることが確認されました出典資料:Barnett, 2008)

マダニの駆除効果

 16頭の犬たちをランダムで2つのグループに分け、一方にだけピリプロール(1kgにつき12.5mg)を滴下投与し、1ヶ月間に渡ってマダニ(I.ricinus)に対する駆除効果を検証しました。さまざまなタイミングで未吸血のマダニ50匹に曝露し、曝露から48時間が経過した時点における体表生存数を確認したところ、すべてのチェックポイントにおいて駆除率が100%だったといいます。また同じデザインでクリイロコイタマダニ(R.sanguineus)の試験を行ったときの駆除率は100%、アミメカクマダニ(D.reticulatus)の試験を行ったときの駆除率は98.9%だったとも出典資料:Schuele, 2008)
 別の調査では、30日間の駆除効果に関しシカダニ(I.scapularis)が96%、アメリカイヌカクマダニ(D.variabilis)とローンスターティックダニ(A.americanum)が90%超と報告されています出典資料:EPA datasheet)
ノミ皮膚炎」「マダニ症」もよくご確認ください。皮膚症状だけでなく、寄生虫が保有する細菌やウイルスが重大な感染症を引き起こす危険性もあります。