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犬の舐性皮膚炎~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の舐性皮膚炎(しせいひふえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の舐性皮膚炎の病態と症状

 犬の舐性皮膚炎とは、皮膚の同じ箇所を繰り返し舐め続けることで炎症を起こしてしまった状態を言います。 犬の舐性皮膚炎~前足を繰り返し舐めることで毛が抜け落ち、皮下組織が露出している  犬の舐性皮膚炎の症状としては以下のようなものが挙げられます。多くの場合、口が届きやすい前足の甲が対象となるため、「肢端舐性皮膚炎」(したんしせいひふえん)と呼ばれますが、前足の上面(人間でいう前腕)、太ももの裏、肘、足の甲といった部分が標的となることもあります。
舐性皮膚炎の主症状
  • 犬が執拗に同じ場所を舐め続ける
  • 脱毛
  • 皮膚の炎症
  • 皮がめくれる
  • 骨が露出する

犬の舐性皮膚炎の原因

 犬の舐性皮膚炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
舐性皮膚炎の主な原因
  • 皮膚への刺激 虫刺され接触性アレルギー食物アレルギーアトピー性皮膚炎、怪我、かゆみ、痛みといった何らかの刺激が皮膚に加わり、ペロペロと舐めているうちに止められなくなってしまうというケースがあります。
  • ストレス  外につなぎっぱなしにしている、散歩に連れて行かない、留守番ばかりさせている、同居犬との折り合いが悪いなど、犬にとってストレスになるようなことがあると、人間が貧乏ゆすりをするように、同じ行動を繰り返してしまうということがあります。重症の場合は強迫神経症(きょうはくしんけいしょう)という精神病の一種とみなされることもあります。
  • 脳の疾患  脳内に何らかの病変があると、ある一つの行動に対して抑制が効かなくなるということもあります。古い脳と言われる「大脳辺縁系」のうち、基底神経節や尾状核の異常が関係しているとされていますが、いまだに詳しい因果関係は分かっていません。
  • 甲状腺の疾患 特に黒色のラブラドールレトリバーでは、甲状腺機能低下症が発症原因の一つとして考えられています。

犬の舐性皮膚炎の治療

 犬の舐性皮膚炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。一般的に予後はあまりよくありません。
舐性皮膚炎の主な治療法
  • 対症療法 ひとまず皮膚炎に対する治療が行われます。具体的には患部をレーザーで焼き切る、患部の刺激を和らげる薬剤を塗布する、抗生物質を投与するなどです。
  • 基礎疾患の治療  食品アレルギー接触性アレルギーアトピー性皮膚炎といった皮膚病が基礎疾患としてある場合は、それらの病気を治療することが優先です。
  • 飼育環境の見直し  屋外飼育、ニグレクト(散歩に連れて行かなかったり、適度なスキンシップを取らないなど、ペットを無視するような行動全般)、長時間の留守番等、犬にとってストレスの原因と思われる要因を排除します。犬の幸せとストレス
  • エリザベスカラーの装着  なめた部分が化膿したり骨が露出しているような場合は、これ以上症状が悪化しないよう、エリザベスカラーなどを装着して物理的な接触を遮断します。
  • 患部を隠す 前足を包帯、ギブスなどで隠してしまうという方法もあります。しかし根本的な衝動がなくならない限り、こうした遮蔽物の上からなめ続けるということもしばしばです。