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犬の疥癬~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の疥癬(かいせん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の疥癬の病態と症状

 犬の疥癬とは、皮膚にイヌセンコウヒゼンダニが寄生して炎症を引き起こした状態を言います。 犬の疥癬~皮膚を穿孔しながら進むため、広範囲にわたって激しいかゆみと炎症を引き起こす  ダニは季節や犬の年齢・品種に関わりなく感染し、皮膚の最外層である角質層に穴を掘り、そこで産卵しながら約3週間生息します。イヌセンコウヒゼンダニ(sarcoptes scabiei var canis)その間、皮膚の破壊、刺激性分泌物の放出、糞の排泄といった要因が免疫細胞を呼び寄せます。これが「炎症反応」です。免疫細胞は異物を除去しようとして各種の化学物質を放出しますが、異物だけでなく周辺の神経も刺激してしまいます。このようにして激しいかゆみが引き起こされます。
 疥癬は感染してすぐにかゆみが出るわけではなく、通常は2~6週間の潜伏期があります。主な症状は以下です。なおミミヒゼンダニが引き起こす「耳疥癬」に関してはこちらをご参照ください。
疥癬の主症状
  • フケ
  • かゆみ
  • 発疹
  • かさぶた(痂皮, かひ)
  • 耳介ひっかき反射
耳介ひっかき反射
 耳介ひっかき反射とは、親指と人差し指で耳のひらひら部分をこすると、後ろ足を上げて耳を掻こうとする反射のことです。疥癬に感染している犬のうち、約8割で見られます。

犬の疥癬の原因

 犬の疥癬の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
疥癬の主な原因
  • 感染動物との接触  すでに疥癬を保有している他の犬や猫と接触、およびブラシやバリカンの共用などによって感染します。疥癬に感染した犬を抱くと、人間にも移り、激しいかゆみを引き起こしますので要注意です。動物の保護施設、ペット同伴の宿泊施設、ペットホテル、ペット美容室、そして動物病院でさえ、しっかりとした予防策を講じていないと感染源になりえます。

犬の疥癬の治療

 犬の疥癬の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
疥癬の主な治療法
  • 局所療法  殺虫効果のある薬剤をしみこませたスポンジを患部に塗布します。あまり効果が見られない場合は、薬剤を混ぜたお湯に半身浴や全身浴のような形で体を浸すこともあります。
  • 投薬  殺疥癬効果のある薬を投与します。具体的にはセラメクチン、ミルベマイシン、イベルメクチンなどです。ただし最後のイベルメクチンに関しては、フィラリアを保有している犬には使えません。またコリーシェットランドシープドッグオールドイングリッシュシープドッグオーストラリアンシェパードといった犬種においては、遺伝的に重い副作用を引き起こすことがありますので慎重に考慮します。その他、続発性の膿皮症を予防するため、抗生物質の投与が行われることもあります。治癒するまでにかかる時間は、おおむね4~6週間です。
  • 生活環境の改善  こまめに掃除したり部屋中を消毒するなどして、疥癬の繁殖を抑えます。感染していても症状を示さない犬もいるため、たとえ同居動物が無症状でも検査が必要です。