トップ2016年・犬ニュース一覧6月の犬ニュース6月1日

犬の衝動性を変動させるのは、犬種よりも繁殖目的

 たとえ同じ犬種であっても、能力を重視して繁殖された作業犬と、見た目を重視して繁殖されたショードッグでは、「衝動性」の度合いに格差が生まれることが明らかになりました(2016.6.1/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのは、イギリス・リンカーン大学の生命科学チーム。チームはイギリス国内に暮らしているボーダーコリーラブラドールレトリバーの飼い主に対し、18の質問からなる「DIAS」と呼ばれるネット調査を行い、両犬種間の「衝動性」にどのような違いがあるのかを検証しました。その結果、ボーダーコリーの飼い主716人とラブラドールレトリバーの飼い主445人から回答が寄せられ、以下のような傾向が浮かび上がってきたと言います。なお「作業犬」とは能力を優先して繁殖されてきたラインのことで、「ショードッグ」とは見た目を優先して繁殖されてきたラインのことです。
犬の衝動性
  • 犬種間の差異ボーダーコリーはラブラドールレトリバーよりも衝動性、行動制御、攻撃閾値、新奇物への反応で高い値を示した。
  • 繁殖ラインの差異作業犬はショードッグよりも反応性で高い値を示した。
  • 作業犬間の差異作業犬として繁殖されてきた2犬種を比較したところ、ボーダーコリーはラブラドールレトリバーよりも衝動性、行動制御、攻撃閾値、新奇物への反応で高い値を示した。
  • ショードッグ間の差異ショードッグとして繁殖されてきた2犬種を比較したところ、ボーダーコリーはラブラドールレトリバーよりも攻撃閾値、新奇物への反応で高い値を示した。
  • 不妊手術による差異去勢手術を施したオス犬は衝動性、行動制御、攻撃閾値、新奇物への反応で顕著に高い値を示し、反応性で顕著に低い値を示した。一方、メスでは避妊手術の有無にかかわらず大きな差異は見られなかった。
犬の衝動性は、犬種よりも繁殖目的を優先させたほうが大きく変動する  上記したように、犬種間(ボーダーコリー or ラブラドールレトリバー)と繁殖ライン間(作業犬 or ショードッグ)の両方で衝動性に関する差異が見出されたものの、その格差は繁殖ライン間の方が大きかったと言います。また作業犬に属する2犬種間の差異よりも、ショードッグに属する2犬種間の差異の方が小さかったとも。
 こうした結果から研究チームは、ショードッグに属するボーダーコリーとラブラドールレトリバーの「衝動性」の差異が小さい理由は、彼らが行動特性を無視して見た目重視で繁殖されてきたため、内面的な差異が平均化してしまったからではないかとの推論を展開しています。また、ある特定の犬を「犬種」という枠組みにはめて性格判断するのは早計であるとも。同じ犬種であっても、作業犬とショードッグの間で見られたような行動特性の隔たりがあることがザラなので、犬を選ぶときは「犬種」ではなく、あくまでも「その犬」に着目して自分との相性を検討する必要があると警告を発しています。 Differences in Trait Impulsivity Indicate Diversification of Dog Breeds into Working and Show Lines